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交通事故の入院期間はどのくらい?慰謝料や後遺障害も解説

監修記事

島谷 柚希

看護師

交通事故で入院することになってしまい、入院期間はどのくらいになりそうか、慰謝料はもらえるのかどうかなど、不安に感じていませんか?

本記事では、交通事故での平均入院期間や事故直後から入院期間前後の流れ、入院期間後の通院先、慰謝料についてなどを解説しています。

「入院することになってしまったが、これから先の流れが不安……」
「慰謝料についても知っておきたい」
という方は、ぜひ参考にしてください。

【症状別】交通事故での平均入院期間はどのくらい?

交通事故の入院期間は、事故によって損傷した身体部位と、手術をするのか保存療法なのか、複数の部位を怪我しているのか等によっても異なります。

たとえば骨折でも人には200個の骨があり、生命の危険を及ぼす頭部の骨折と四肢の骨折では、重症度も治療期間も異なるためです。

交通事故での代表的な怪我の入院期間についてお伝えします。

骨折の場合

骨折で入院した場合の平均入院日数は以下の通りです。

【自動車交通事故の骨折による平均入院期間】

骨折部位 入院期間(日)
頭蓋内及び顔面 10.6
脊椎・胸部・骨盤 30.0
大腿骨 44.8
四肢 22.8
複数部位・部位不明 43.0

引用:平成29年患者調査「退院患者平均在院日数(外傷)」

骨折の重症度は、車対車の事故なのか、歩行中に車に追突されたのかなど事故の状況などにより大きく異なります。上記入院期間はあくまでも目安としてください。

医師監修骨折を早く治す方法とは?治癒を助ける生活習慣や対処法を解説

脱臼・捻挫の場合

自動車交通事故による脱臼・捻挫の平均入院期間は12.8日(平成29年患者調査より)です。脱臼・捻挫で入院となるのは頸椎・腰椎で重症の場合です。

頸椎捻挫が重症であり、麻痺などが出現するリスクが高ければ長引きますし、四肢の捻挫で歩行が可能で手術が不要であれば入院の必要はありません。

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挫滅損傷の場合

皮膚・皮下組織・筋層が強い衝撃を受けて損傷したものを挫滅損傷と言います。傷は不整でギザギザとしていることが多いのです。切創に比べて縫合も難しく、血流も悪くなりがちであるため治癒には時間がかかります。

自動車交通事故による挫滅損傷及び切断の平均入院日数は17.5日(平成29年患者調査より)です。歩行に支障のある下肢の挫滅創では入院が必要ですが、上肢や顔などでは入院不要であることがほとんどです。

頭蓋内損傷の場合

頭蓋骨から内側の頭部を損傷することが頭蓋内損傷です。頭蓋内損傷は、脳実質の損傷のほか、脳を包む膜に血液がたまる硬膜下血腫のほか、血管などの軟部組織の損傷も含まれます。

自動車交通事故による頭蓋内損傷の平均入院期間は56.6日(平成29年患者調査より)ですが、手術の有無や脳浮腫などを起こしたかどうかによっても経過は変わってきます。

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交通事故から入院期間前後の流れ

交通事故にあった後は動揺して、自分がどのようになってしまうのか不安になるものです。痛みなど身体的な苦痛に加え、心の動揺も強く引き起こされます。

ここでは、交通事故発生から入院まで、さらに退院後までの流れについてお伝えします。

交通事故発生

交通事故発生後、事故の衝撃や頭部外傷や骨折が疑われる・出血があるなど怪我が重症で歩行が困難であれば救急搬送されます。本人に意識がない場合は当然救急搬送です。

一方、怪我による痛みが軽度で意識レベルがしっかりしており、歩行可能であれば警察を呼んだ後、事故処理が済んでから受診することもあります。

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入院期間中の治療

入院に至る病名の診断は、主訴が重要です。身体に痛みや違和感がある場合は診察時にしっかり伝えましょう。

入院期間中は医師の指示により、受傷した怪我に沿った治療が行われます。頭部外傷で意識を失い、手術が必要な場合は手術療法がおこなわれますし、大腿骨骨折で治療後、必要に応じてリハビリが行われる場合もあります。

退院後も適切な通院を続ける

入院中の治療がある程度終了し退院しても、医師の指示により外来通院指示があることがほとんどです。たとえば手術をした方は外来で傷の消毒を継続する場合がありますし、足の骨折などで入院中にリハビリをしていた方が外来リハビリを継続することもあります。

入院中からむち打ちなど肩や首の痛みがある方は主治医に相談し、整骨院への通院を併用してもよいでしょう。慢性的に続く痛みについては、夕方に閉院する外来よりも整骨院の方が通院しやすいケースもあるのです。

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症状固定の判断を受ける

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

症状固定は、交通事故で怪我などの受傷後通院を継続していても「今以上の症状の改善は見込めない」と判断されることです。症状固定は、患者さんの症状をもとに医師が判断します。

保険会社からの意見でそろそろ症状固定にしませんかといった話になることはありますが、判断するのは医師です。患者の診察結果をもとに客観的に判断します。

弁護士監修交通事故で症状固定と言われたら?後遺障害も解説

後遺障害の申請をする

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

症状固定であると診断された場合、症状は残っていても保険による治療は終了となりますので、後遺障害の申請をしましょう。

通院している医療機関の医師に後遺障害診断書を作成してもらい、保険会社に郵送します。保険会社は診断書を損害保険料率算出機構・自賠責損害調査事務所に送り、そこで後遺障害の等級が判断されます。

示談交渉をする

交通事故の示談交渉とは交通事故の加害者と被害者が和解の為に行う話合いのこと

▲交通事故の示談交渉とは

加害者との間で、賠償金の示談交渉を行います。賠償金は、事故によって起こった身体的・精神的・時間的損害を金銭によって支払ってもらうものです。事故やけがの状況にもよりますが、交渉期間は3〜6か月かかる場合もあります。

示談交渉は加害者側の保険会社と被害者本人が行うこともありますが、事故後で精神的・身体的ダメージがある場合は弁護士に相談して任せるのもよいでしょう。

入院期間後の通院先

交通外傷の受傷で入院し、退院した後は直ちに治療が終了するわけではありません。入院するほどのダメージがあったのですからリハビリの継続が必要な場合もあります。

また、痛みや機能障害が残り、通院によって経過観察やケアが必要な場合もあるでしょう。以下に交通事故で入院後、退院した後に通院する場所について解説します。

病院

最も多いのが、入院中に治療をお願いしていた病院の主治医に退院後も継続して通院するケースです。事故後から治療中の経過を把握している主治医ですので、通院する場合も安心感があります。

一方「事故現場の近隣の病院に搬送され、そのまま入院となったが自宅からは遠く、外来通院が困難」な場合もあるでしょう。地理的な原因などで他院後に転院を希望する場合は、紹介状を書いてもらい、自宅近くの病院に転院することも可能です。

交通事故で転院する方法は、まず保険会社と医師に転院したい旨を伝えます。次に、医師に紹介状(診療情報提供書)を作成してもらいます。注意点はできるだけ早めに転院することと、転院回数は最小限にとどめることです。

▲交通事故で転院する方法

医師監修近くの病院に転院したい!手続きや紹介状の書いてもらい方を解説

整骨院

事故後、急性期の炎症など症状が落ち着いたあとも首や肩など慢性的な痛みが継続する場合は、主治医に相談して整骨院に通院する方法もあります。

整骨院では、慢性的な痛みに対しホットパックなどの温熱療法や電気療法などが可能で、痛みの軽減が期待できます。自宅でできる簡単な機能訓練を指導してくれる場合もあるでしょう。

病院に比べて開院時間が長く、夕方以降の治療があるなど仕事の後などに通院しやすいことは大きなメリットです。

交通事故治療で整骨院に通うメリット(営業時間が長い・土日祝日も通える・予約可能)

▲交通事故治療で整骨院に通うメリット

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交通事故で入院・通院をしたら請求できる費用

交通事故で入院・通院したら、治療費・交通費・慰謝料を始め、場合によっては休業損害を請求できます。怪我を受傷して入院するなどの事実は、受傷さえしなければ被害者には起こりえない事だからです。

必要な治療を受けるための費用の請求などは、被害者の当然の権利です。具体的に請求できる費用について解説します。

慰謝料

交通事故の慰謝料は、事故によって被った損害を金銭で支払うものです。交通事故の慰謝料は以下のようなものがあります。

慰謝料の種類 概要 相場
入通院慰謝料 入通院により被った身体的・精神的損害に対する慰謝料 重症で治療期間が1~6か月であれば、28万円~116万円
後遺障害慰謝料 事故の後遺障害によって生じた損害に対する慰謝料 認定される等級により110~2800万円
死亡慰謝料 事故による死亡で生じた損害に対する慰謝料 2,000万円~2,800万円

その他損害賠償

交通事故の損害賠償で請求できるものには以下のようなものがあります。

財産的損害

積極損害 治療費・入院雑費・装具費・付き添い看護費・交通費・葬儀費用
消極損害 後遺障害面質利益・休業損害・死亡損害

精神的損害および物的損害

精神的損害 後遺障害慰謝料・入院慰謝料・死亡慰謝料
物的損害 車の修理費・評価損・代車費用・死亡損害

関連記事交通事故の慰謝料を払うのは誰?治療費がもらえない時の対処法とあわせて解説

交通事故での入院・通院で受け取れる慰謝料はどのくらい?

交通事故によって怪我などを負った場合、入院や通院で受け取れる治療費・慰謝料などの額は、事故の重さや受傷した怪我の重症度、治療内容や治療期間等によって変わってきます。

金額の算定には3つの基準があり、基準によっても算出される額が異なってくるのです。以下に、それぞれ慰謝料の算定基準と金額の目安について解説します。

交通事故の慰謝料の3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)

▲交通事故の慰謝料の3つの基準

自賠責基準

自賠責基準とは、交通事故の損害賠償を自賠責保険から受ける場合の算定基準です。自賠責保険は車を運転するすべての人に加入が義務付けられ、基本的な対人保障についての保証が約束されています。

ただし、他の基準と比較すると、基準額が低いのがデメリットです。また、被害者の過失が100%ですと慰謝料は請求できません。

自賠責基準の補償上限は以下の通りです。

・障害による損害:120万円
慰謝料・入院中の治療費・通院交通費・休業損害などを含んだ合計金額

・後遺障害慰謝料:4000万円(要介護となった1級の場合)
後遺障害の逸失利益・慰謝料を含めた上限額で、認定される後遺障害の等級次第で変動

・死亡による損害:3,000万円
交通事故により亡くなった被害者や遺族への慰謝料、葬儀費用、逸失利益などを含めた上限額

任意保険基準

任意基準とは、加害者側(事故の相手)が任意で加入している保険会社から支払われる金額について、独自に設けている任意の算定基準です。保険会社によって基準は異なっており、算定基準は非公開となっています。

算定額は、自賠責保険とほぼ同等か、被害者が本来受け取れる金額に対し、低く設定される場合があります。理由は、保険会社が営利を追求する企業であるからです。たとえば、任意基準は入院期間や通院日数をもとに算出され、通院が隔日日数よりも空いてしまうと減額されていくことがあります。

算定された先方の額に納得できない場合は、提示額に直ちに従う必要はなく、増額を求めて示談交渉をすることも可能です。

弁護士基準

弁護士基準とは弁護士が交通事故の被害者に代わって慰謝料請求を行う際に使用される基準であり、交通事故専門家や日本弁護士連合会(日弁連)が実務に基づき作成した基準です。過去の交通事故裁判判例を参考にされており、裁判基準ともいわれます。

弁護士基準は日弁連や交通事故専門家が作成したものであり日弁連が発行する書籍「青い本」に掲載され、書籍を購入すれば誰でも閲覧可能です。広く公開されていることからわかりやすく、公平感があります。

メリットは自賠責基準などほかの基準と比較して基準額が高額になる傾向にあること、過去の判例が基準となっているため実際に裁判になった場合もその金額を受け取れる可能性が高いことです。

入院期間を含む治療期間には目安がある?

交通事故の治療期間・入院期間は事故の状況やけがの程度によって変わりますが、保険会社が目安としているDMK135と呼ばれる基準があり、以下の通りです。

・D(打撲)…1か月
打撲は筋肉や血管・皮膚など軟部組織の損傷です。関節付近の打撲で関節可動域の減少などがあれば、治癒期間の遷延もあるでしょう。

・M(むち打ち)…3か月
むち打ちは、事故時に頸部への急激な刺激が加わって生じる、頸部周囲損傷の総称で、治癒までの期間には痛みや機能障害が考慮されます。

・K(骨折)…6か月
骨折の治癒までの期間は、部位にもよりますが平均6か月程度です。骨折の程度や手術後の有無・骨癒合までの期間によっても異なり、リハビリ期間も考慮されます。

上記期間を目安に、保険会社から治療費の打ち切りを打診される可能性があります。症状が残っており、打ち切りに納得できない場合は主治医に相談のうえで保険会社と交渉する方法もあるでしょう。

関連記事保険会社が治療の打ち切りを連絡してきたら?理由と対処法を解説

後遺障害慰謝料について

後遺障害認定の条件5つ

▲後遺障害認定の条件5つ

後遺障害慰謝料とは、交通事故によって負った後遺障害の程度を表すもので、認定基準に基づき請求が可能です。交通事故後に治癒しないと認定される後遺障害認定後(症状固定であると診断された後)に補償されるもので、主な等級例は次のようになっています。

1級: 常に介護が必要な状態
2級: ほとんどの生活動作が自力でできない状態
3級〜14級: 障害の部位・程度に応じて細かく分かれている

後遺障害等級は高い(1級に近い)ほど補償額も大きくなり、低い(14級に近い)ほど小さくなります。たとえば、1級では1000万円以上になることがありますが、14級では自賠責基準75万・任意基準110万、弁護士基準110万円以上などです。

関連記事交通事故の後遺症の種類とは?症状や後遺障害認定を受ける方法を解説

交通事故の入院期間についてまとめ

交通事故の入院期間は、おおよその目安はありますが、事故のエピソード・怪我の部位や手術の有無など治療内容、重症度など事故後の身体や精神の状況によって個人差があります。

また、治療に対しての回復の仕方や合併症の有無など、治療に対する被害者本人の回復力が影響するケースもあります。具体的な期間は医師の治療計画によっても異なるため、気になる症状があれば入院期間中にしっかり伝え、主治医とよく相談する必要があるでしょう。

参考
1)一般社団法人日本脊髄外科学会HP:環軸椎亜脱臼
2)一般社団法人日本創傷外科学会HP:打撲創(挫滅創)
3)慶應義塾大学病院医療・健康情報サイト:頭部外傷とは
4)一般財団法人岩手県医師会:傷痕(きずあと)について
5)平成29年患者調査:「退院患者平均在院日数(外傷)」

この記事を監修したのは…

看護師として小児外科、整形外科、健康診断機関など医療現場などで勤務。
この経験を生かし、疾病の予防や健康増進に関する情報を発信する医療・健康ライターとしても活動をしている。

この記事の執筆者

看護師 / 島谷 柚希
看護師として小児外科、整形外科、健康診断機関など医療現場などで勤務。 この経験を生かし、疾病の予防や健康増進に関する情報を発信する医療・健康ライターとしても活動をしている。

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