×

交通事故の慰謝料を払うのは誰?治療費がもらえない時の対処法とあわせて解説

監修記事

鍋谷 萌子

ビジネス実務法務検定3級

交通事故は、突然起こる事態であり、被害者にとっては大きな苦痛を伴うものです。しかし、交通事故による損害賠償については、誰が責任を負うのか、どのように支払われるのかを知ることは重要です。

本記事では、交通事故の慰謝料や治療費、修理費などの費用をどのように支払うべきか、そして被害者が支払われない場合の対処法などについて詳しく解説します。

交通事故の慰謝料は誰が支払うべき?

交通事故の慰謝料は誰が支払うべき?

交通事故における「慰謝料」は、「示談金」の一部です。ここではまず「この『慰謝料』は誰が払うことになるのか」を解説します。

一般的には加害者側の任意保険会社が支払う

車を運転している人のうちの約90パーセントは、任意保険に加入しています。

加害者が任意保険に加入している場合は、その加入先の保険会社から慰謝料が支払われることになります。

ただ、もし「残りの10パーセント」にあたった場合は、加害者本人が支払い先となります。

この場合、加害者本人に支払い能力がない場合は、慰謝料を支払ってもらうことが困難になることもあります。

自賠責保険で足りない部分を任意保険で補う

自賠責保険とは、自動車やバイクを所有する全ての人に、加入が義務付けられている強制保険。交通事故の被害者の救済が目的で、補償対応は人身事故の被害者。そのため、物損事故あ対象外となる。また、請求できる賠償金には限度額が定められている。

▲自賠責保険とは?

上では「加害者が加入している任意保険の会社が、原則として慰謝料を支払うことになる」としました。

しかし実際にはその前に一段階、「自賠責保険による補償」があります。自賠責保険とは、車の所有者すべてに加入が義務付けられている保険であり、「被害者に対する最低限の補償」を担保するものです。

ただしこの自賠責保険では、最大でも120万円の給付しか行われません。交通事故の慰謝料は120万円で収まる場合ばかりではありません。

その時に、「自賠責保険では払いきれなかった金額」を、任意保険でカバーするという考え方がなされます。

関連記事交通事故の検査は念のため受けた方がいい?検査費用や慰謝料も解説

交通事故の治療費は誰が支払うべき?

交通事故の治療費は誰が支払うべき?

上記では「交通事故の慰謝料は、加害者側(の加入している保険会社)が支払う」としました。

それでは「治療費」は誰が負担することになるのでしょうか

一般的には加害者側の任意保険会社

交通事故の被害者にかかる治療費は、原則として加害者側の任意保険から支払いが行われます。

ただし、一般的な判断基準からみて明らかに長すぎる治療期間であったり、症状が固定されたり、通院頻度が著しく低かったりした場合は、治療費の支払いが打ち切られることもあります。

被害者が立て替えて支払う

上記でも述べたように、被害者側の治療費は基本的には加害者側の保険会社が負担します。

しかし加害者が任意保険に加入していなかった場合や、加害者側の任意保険会社が一括での対応を拒否した場合は、一時的に被害者側が治療費を立て替える選択肢を視野に入れなければならなくなります。

ちなみにこの場合は、後で請求をかけられるため、領収書などをきちんと保管しておきましょう。

なお、このときの治療には健康保険を利用できます。その場合は、加入している健康保険組合などに「第三者行為による傷病届」を出しましょう。

ちなみに例外的な話ではありますが、被害者側の過失割合が非常に高い場合(加害者6割:被害者4割など)の場合は、加害者に請求できる治療費の額が少なくなります。この「請求できる治療費の額」をオーバーした分の治療費に関しては、被害者が支払うことになります。

労災保険から支払う

「通勤中や勤務中に事故にあった」という場合は、「労災保険」を利用することになります。

またそのうえで、労災保険と補償内容がかぶらない部分に関してのみ、加害者の自賠責保険や任意保険への賠償請求を行えます。

※労災の対象となる交通事故であるにも関わらず、健康保険で処理をすることは法律で禁じられています※

被害者が立て替えた治療費を回収する方法

被害者が立て替えた治療費を回収する方法

上で「被害者が治療費を立て替えることもある」としました。それではこの立て替えた治療費はどのようにして請求していけばよいのでしょうか。

加害者側の自賠責保険に被害者請求をする

まず考えられるのが、「被害者本人が、加害者側の自賠責保険会社に請求する」という手法です。もともと治療費は、示談が成立すれば加害者の加入している自賠責保険と任意保険から支払われることになりますが、示談成立前であっても、自賠責保険分のみは請求が可能です。

ただしこの方法を取る場合は、怪我をしている被害者が自分で手続きを行わなければなりません。また示談成立前に支払ってもらうことはできるものの、「治った」あるいは「症状が固定した」と判断されなければ支払いを受けることはできません。

また、上述したように、自賠責保険で支払われる金額の上限は120万円です。

仮渡金制度を利用する

聞きなじみのない人も多いかと思われますが、自賠責保険には「仮渡金」という考え方があります。

すでに述べた通り、自賠責保険は治療終了後あるいは症状が固定してからではないと支払われないのが原則ですが、この仮渡金制度を利用すれば、治療中であっても支払いが受けられます。

ちなみに上限は40万円までです。「当座の生活費がない」という人は仮渡金制度を利用しましょう。なお仮渡金制度を使う場合は、診断書および支払いの請求書の提出が求められます。

また当然のことながら、のちに治療費が支払われる場合は、その総額からこの仮渡金分が引かれます。

POINT

支払いまでの期間の短さ

この3つのなかでもっとも早い→仮渡金(治療中でも可)

2番目に早い→自賠責保険の被害者請求(示談前でも可能)

3つのなかで一番遅い→任意保険の支払い(示談終了後)

被害者本人の人身傷害保険を利用する

「人身傷害保険」とは、「その車に乗っている人が怪我を負ったり亡くなったりした場合、過失割合を問うことなく、損害額を補償する制度」のことです。

「自分が加害者側になったときでも適用される」というのがこの人身傷害保険の大きなメリットですが、「被害者側の立場の人が、人身傷害保険に入っていた」という場合も人身傷害保険を利用できます。

「自分の保険」であるため、加害者側の保険の加入状況に関わらず、受けた損害を補償してもらえるのが非常に大きなメリットです。

関連記事交通事故で打撲に…慰謝料の金額を知りたい!計算方法とは?

慰謝料・治療費のほかに支払われる可能性がある費用

慰謝料・治療費のほかに支払われる可能性がある費用

ここまでは主に「怪我」について触れてきましたが、それ以外にも支払われる可能性のあるお金があります。

車両の修理費

交通事故によって車(など)が壊れた」という場合は、その修繕費用を出してもらうことができます。修繕費用は、基本的には加害者側の任意保険会社が負担します。

なお自賠責保険はあくまで「人身に対する最小限の補償」を目的としたものであるため、自賠責保険からは修繕費用は支払われません。

ちなみに相手が無保険であったときには被害者側が自分の保険を使って直すことになりますが、この場合は翌年の保険料が値上がりする可能性があるので注意しましょう。

休業損害(休業補償)

「交通事故の被害者となったことで、仕事を休まなければならなくなった」というときに支払われるお金です。ちなみに名前こそ「休業損害(休業補償)」ですが、主婦・主夫、学生などでも請求が可能になるケースもあります。

なお有休を使用した場合でも、休業損害(休業補償)を受けることができます。請求できる金額の計算式は決まっていて、「1日の基礎収入×休業日数」です。

慰謝料や治療費の支払いがされない時には弁護士へ相談する

慰謝料や治療費の支払いがされない時には弁護士へ相談する

交通事故のほとんどすべてのケースは、(多少交渉がこじれることがあったとしても)しかるべき手続きを経て、きちんと加害者側の任意保険会社から慰謝料・治療費・そのほかの費用が支払われます。

しかし「相手が任意保険に加入していない」「保険会社が交渉に応じない」という場合は、弁護士に依頼することも視野に入れなければなりません。

弁護士特約が利用できる場合がある

自動車の任意保険のなかには、「弁護士特約」がつけられているものがあります。「弁護士を使うことになったときに、自己負担金0あるいは非常に少ない額で弁護士を雇うことができます」という制度です。

弁護士特約がついているのならば、ぜひ利用してください。なお、かかった弁護士費用に関しては、示談金から支払うこともできます。

まとめ

まとめ

交通事故の被害者になった場合の肉体的・精神的な痛みは、非常に大きいものです。ここに「金銭的な負担」がさらにプラスされることのないように、しっかりと請求先やその方法を押さえておきましょう。

この記事を監修したのは…

交通事故関係、弁護士事務所・クリニック等でのコラム執筆を数多く経験。確かな情報収集力を元に、常に正しく信頼のおける情報を「誰であっても理解できるかたちで」わかりやすく丁寧に解説していきます。

この記事の執筆者

ライター / 鍋谷 萌子
ビジネス法務検定資格取得者。赤本を元に交通事故関係の記事を多数作成してきました。弁護士事務所・クリニックなどでのコラム作成経験が非常に豊富です。確かな情報収集力を元に、常に正しく信頼のおける情報を「だれであっても理解できるかたちで」、分かりやすく丁寧に解説していきます。

カテゴリ一覧

はじめての交通事故でお悩みの方へ。
交通事故に関する知識や通院について
無料でサポートいたします。
無料 0120-963-887
電話で無料相談する

24H緊急
ダイヤル

0120-963-887

  • お見舞金最大20,000
  • 相談0
  • 安心の365日対応

事故専門の相談員が
無料で完全サポートいたします