追突事故で痛くなくても病院受診する理由 – 痛みが出た時へ備えよう
監修記事
河野 裕也
理学療法士
交通事故で痛みがない場合に通院をする必要があるのか、気になる人も多いのではないでしょうか。中には症状がないからといってその場で示談にしてしまう方もいるようです。
しかし示談が成立してしまうと、後に症状が出現した時に慰謝料の請求ができなくなってしまうので、判断は慎重にならなければなりません。
今回は、交通事故に遭っても痛みなどの症状がない場合でも通院をするべき理由について解説していきます。
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目次
追突事故後に身体が痛くなくても病院に行くべき理由
受傷直後に痛みがなくても、何かしら怪我をしている可能性があります。痛みがないからといって受診を怠ってしまうと、損害賠償金が受け取れない可能性も。
ここでは、痛みがなくても通院をするべき理由について解説します。
痛みがなくても身体の内部に損傷はある可能性がある
骨折や内出血など、見た目に何らかの変化がない場合は怪我がないように思われますが、外傷がないからといって問題がないわけではありません。
実際には、脳出血や神経損傷など見た目では判断できないようなことが起きている可能性があります。
MRIやCTなどの精密機器を用いた画像検査でないと病気を見つけられないこともあるため、外傷がない=怪我ではないということを念頭に置き、そのままにしないようにしましょう。
予想外に重度の怪我である可能性も捨てきれません。例えば、頭部を打って脳内出血を起こした場合、見た目には出血が分かりません。
脳内出血していても、その血液が脳を圧迫するまでに時間がかかることから、発見が遅れることがあります。
脳内出血は後遺症が残る場合がありますので、このようなリスクを防ぐためにも、自己判断ではなくきちんとした受診が必要です。
交通事故は後から症状が出ることもある
交通事故とは不意に巻き込まれることが多く、予期しない出来事です。
交通事故後は脳が興奮状態となっているため、脳内麻薬のアドレナリンが過剰に分泌されている状態となります。人間は興奮状態になると痛みに気が付きにくくなります。
時間が経過して落ち着いてから首の痛みや腕のしびれといったむちうちの症状を自覚するケースもあります。
そのため、交通事故に遭った直後に症状を認めなかったとしても、病院を受診して検査するようにしましょう。
関連記事むちうちの症状が出るまでの期間は?すぐに症状が出ない理由も解説
手続きや保険請求で診断書が必要な場合がある
交通事故に遭っても通院していない場合は、「物損事故」の扱いになります。物損事故と人身事故では受け取ることができる賠償金は大きく異なります。
例えば人身事故では治療費や慰謝料、場合によっては休業損害や後遺障害への補償金など非常に高額になることもあります。しかし、診断書がなければ人身事故に切り替えて慰謝料を請求することができません。
また、通院開始が遅れても保険金を受け取れない可能性があるので、受傷直後で症状がなくても通院して検査を受けましょう。
関連記事人身か物損かは誰が決める?加害者が物損で済ませたい理由や切り替えのメリット
交通事故との因果関係や不正請求を疑われないため
高額な慰謝料や治療費を請求するために、交通事故を偽装する保険金詐欺や、虚偽の診断書に基づく不正請求をする人が存在します。
また、完治しているにも関わらず不要な通院を続ける場合も保険金詐欺に該当するので注意してください。
そのため、症状がない場合に保険会社は嘘ではないかと疑いをかけることもしばしばあります。
賠償が受けられても厳しく確認されることがあるため、医師の診察を受けて診断書を書いてもらうようにしてください。
通院開始が遅いと後遺障害等級認定が受けにくくなる
交通事故による後遺症が一定の等級に認定されることを後遺障害認定と言いますが、通院開始が遅くなると不利益を被ることがあります。
後遺障害認定を受けるためには医師が作成する後遺障害診断書が必要になりますが、資料を作成するには受傷直後のMRIやレントゲンなどの検査を受けなければいけません。
必要な資料がなければ後遺障害認定が申請できない場合や非該当とされることがあるので、交通事故のあとは速やかに通院を開始しましょう。
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追突事故後に受診すべき病院の選び方
交通事故後はなるべく早く病院を受診しましょう。
受診する病院は、選び方を間違えてしまうと治療を適切に受けられなかったり賠償請求において不利となってしまうこともあります。
そのため、交通事故の治療実績が十分にある病院を選ぶことがポイントです。
交通事故(自賠責保険)に対応している病院を受診する
交通事故による怪我の治療は被害者と加害者がいるため、通常の怪我とは異なる手続きが必要となります。
そのため、病院を選ぶ際にはしっかりと交通事故に対応しているかどうかを調べる必要があります。また、全ての病院が交通事故にしっかりと対応している訳ではありません。
特に自賠責保険にしっかりと対応している必要があります。
自賠責保険は被害者に対する賠償責任を確保するための保険であり、治療費や通院費などを賠償金として被害者に支払われることになります。
交通事故による怪我は長期間の治療が必要なことが多くあります。
医師が検査や治療に理解があり、損害賠償請求の際に必要な診断書や後遺障害診断書をしっかりと作成してくれることも重要となります。
まずは整形外科を受診する
整形外科では、MRIやCT、レントゲンなどの精密機器を用いて骨や筋肉、神経の異常を正確に検査することができ、結果次第では手術を行います。
必要であれば痛み止めや湿布などを処方したり、医療国家資格である理学療法士のリハビリを受けることができるなど、必要な治療を選択して受けることが可能です。
交通事故後に自覚症状がないと怪我の存在に気が付きにくい場合もあるので、正確な診断を受けるためにもまずは整形外科を受診しましょう。
関連記事交通事故でおすすめの整形外科の選び方|病院以外の通院先も紹介
病院までの交通費はどうなる?
交通事故の被害にあった場合、事故がなければ必要のなかった金銭的な負担は加害者の保険会社に請求することができます。
そのため、病院までの交通費も請求することができます。
しかし、全ての交通費が認められるという訳ではなく、あくまで交通事故との因果関係があり必要な範囲内であることが条件となります。
例えば、公共交通機関であるバスを利用できるにも関わらずタクシーを利用して通院した場合は必要な範囲を超えていると判断され、請求が認められないこともあります。
また、自家用車での通院の場合は駐車料金やガソリン代などは認められます。
早期に通院開始ができる場所を選ぶ
交通事故にあった場合、なるべく早期に病院を受診し適切な治療を受けるために通院を開始する必要があります。
交通事故は想像以上の衝撃が身体へ加わるため、重篤な病態であったり治療が遅れたりすることで後遺症が残ってしまう可能性があります。
また、損害賠償を請求する際には事故と症状の因果関係を証明する必要があります。
事故から時間がたってから受診したり間をあけて通院を開始すると事故との因果関係が否定されてしまい十分な賠償を受け取れなくなる可能性もあります。
そのため、早期に病院を受診しすぐに通院が開始できる病院を選択しましょう。
評判や口コミも参考にする
病院を選択する上で評判や口コミを参考にしてみるのもいいでしょう。
実際に交通事故にあった方が病院を受診してどのような治療や手続きなどの対応をしてもらえたのか生の声を確認することができます。
あるいは、信頼できる知人から直接聞いた情報であれば信憑性もあるかと思います。
しかし、口コミサイトなどの情報はネット上で誰が投稿しているものかわかりません。誰でも簡単に投稿できるため、もしかすると実際に利用していない人の口コミである可能性もあります。
そのため、口コミサイトなどの情報は完全に信頼せずにあくまで参考程度にするのがよいでしょう。
交通事故では整骨院へも併用通院できる
交通事故の場合、整形外科と整骨院を併用して通院することができます。
整骨院は、医療国家資格である柔道整復師を取得した技術の高い施術を受けることができます。
柔道整復師は手で触れる徒手療法や整復法、超音波や電気などの物理療法、筋肉の使い方を学習する運動療法などさまざまな施術が可能です。
医師が不在のため、正確な診断を受けたり診断書を作成してもらうことはできないので、整形外科を定期的に受診するようにしましょう。
土日祝日や遅い時間帯まで営業しているので、仕事で忙しい方でも通院しやすいのが特徴です。
関連記事整骨院と整形外科の違いは?どっちがいいか症状やケースにあわせて解説!
病院と整骨院を併用して通院する流れ
整形外科と整骨院を併用通院するためには、「診断書を必ず取る」「加害者側の保険会社に了承を得る」等手続き上必要なこともあります。
- 整形外科を受診し、診断書を取得する
まずは、現在通院している整形外科に相談しましょう。まだ整形外科を受診していない場合は、あらかじめ整骨院への通院に理解のある病院を選ぶとよいでしょう。 - 保険会社に連絡する
交通事故の被害者の場合、怪我の治療費を支払うのは加害者側の保険会社です。加害者側の保険会社に、整骨院に通院することを伝えておきましょう。保険会社に連絡をしておかないと、適切な損害賠償が支払われない可能性があります。 - 整形外科で経過観察を受ける
整骨院への通院を開始した後も、経過観察のため2週間に1回から月に1回は整形外科で医師の診察を受けましょう。
また、注意したい点として、同じ日に整形外科と整骨院の両方に行くことはできません。さらに、整骨院では施術が行えない症状もあります。
整形外科と整骨院の違いをきちんと理解して、両者を上手に使い分けて交通事故の痛みを改善させましょう。
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身体が痛くはないが病院を受診する時の注意点
身体に痛みなどの症状がない場合に病院を受診する際はいくつか注意が必要です。
交通事故では通常の怪我での通院とは異なる手続きとなり、不備があると損害賠償を受けられなくなってしまう可能性があります。
そのため、以下のことをしっかりと確認をしておきましょう。
保険会社との連携や必要な手続きを行う
交通事故による治療費や通院費などは基本的に加害者側の保険会社が支払うことになります。
そのため、病院に受診・通院する旨を保険会社に事前に連絡をしておく必要があります。
保険会社が病院への受診・通院の状況を把握していればスムーズに手続きができます。
しかし、その状況を保険会社が把握していない場合は対応に時間がかかってしまったり手続きなどに不備があったりして、場合によっては十分な補償が受けられずに自己負担が発生するといったトラブルが生じることもあります。
そのため、事前に保険会社へ病院への受診・通院の旨を連絡し、しっかりと連携をとりながら必要な手続きがあればすぐに対応できるようにしておきましょう。
事故発生から早めに受診する
交通事故にあった場合はなるべく早めに病院を受診しましょう。
交通事故では治療費や通院費、慰謝料などの損害賠償を請求するなど通常の怪我の手続きとは異なります。その際に医師が作成する診断書が必要となります。
十分な補償を受けるには交通事故と症状の因果関係を明らかにする必要があり、それを証明するものが診断書になります。
また、交通事故の場合は後になって痛みや症状が強く出現してくることも多くあります。
その際に事故発生からすぐに受診していれば後から出てきた症状に対しても事故との因果関係が認められやすくなります。
しかし、事故発生から時間が経ってしまうと事故と症状の因果関係を証明することが難しく、相手側の保険会社に疑問を抱かれる場合もあり、十分な補償を受けられない可能性があります。
そのため、事故が発生した場合にはできるだけ早めに病院を受診し、しっかりと検査や診断を受けて医師による診断書をもらう必要があります。
事故の詳細や身体の状態を正確に伝える
交通事故に遭い病院を受診する場合、医師に事故の詳細や身体の状態をできる限り正確に伝える必要があります。
まずは医師の診察の際に交通事故に遭ったことを伝え、自分が運転していたのか助手席にいたのか後部座席にいたのかや停車中に後方から追突されたのか、右折または左折する際に側方から追突されたのかなどできる限りどのような事故だったのかを伝えましょう。
事故の詳細から身体へどのような衝撃がどの程度加わっているのかなど医師が想像しやすくなります。
そして、交通事故後から生じている痛みや違和感などがあればその部位や程度などをできるだけ正確に伝えましょう。
痛みなどの症状がない場合でも交通事故では身体へ想像以上の強い衝撃が加わっているため、数日または数週間後から症状が強くでてくる場合も多くあります。
そのため、今は痛みがないが後からでてこないか不安であることを医師へ伝え、しっかりと検査をしてもらいましょう。
追突事故による治療費は加害者側の保険会社に請求
保険金の請求をするときには、保険を請求する任意保険会社、または自賠責保険会社に診断書を提出します。なお、診断書は写しで済ませてくれるところが多いので、一通取得しておけば足りるでしょう。
会社に休業の申し込みをするために提出するのか、警察や保険会社に提出するのかで医師に記載してもらう内容も異なってきます。事前にどのような目的で診断書が必要なのかを伝えておきましょう。
関連記事交通事故から示談までの流れを簡単解説!<弁護士監修>
あとから痛みが出てきたらどうするべき?
ではあとから痛みが出てきてしまった場合は、どのように対応すればよいでしょうか。
加害者側の保険会社へ連絡する
まずは、相手側の保険会社に痛みが出てきたので病院を受診したい旨をあらかじめ伝えておきましょう。
連絡を怠ってしまうと対応に時間がかかってしまう場合もあるので、病院を受診する前に保険会社に連絡を入れるようにしてください。
すみやかに病院を受診する
痛みが出てきたら、なるべく早く病院を受診しましょう。
我慢できると思っていた痛みが後遺症になる可能性は決して否定できません。
通院開始が遅れた場合は、補償を受け取れない場合もあるので、症状を自覚したらすみやかに病院を受診しましょう。
診断書を取得する
保険会社や警察に提出する診断書は、医療機関の医師しか作成できません。
後々に行う損害賠償請求を考慮しても、医師による診断を受けておくことが有効となります。
また、後遺障害診断書を作成する場合も、医師による診療記録を残しておくことが非常に重要です。
事故から10日以内に人身事故への切り替え手続きをする
診断書を取得したら、事故現場の管轄の警察署に行きましょう。物損事故から人身事故へ切り替えの手続きをしてもらいます。
警察への届け出に具体的な申請期間はありませんが、目安として事故から10日以内に病院で診察を受けるようにしましょう。
事故発生からあまりにも時間が経ってしまうと、“事故との因果関係を証明できない”と判断され、人身事故に切り替えられないことがあります。
物損事故から人身事故への切り替えをするときは、実況見分をしてくれた担当の警察官が調書を取ることになるので、事前に連絡をしておくとスムーズです。
まとめ:軽い追突事故でも必ず病院へ
今回は交通事故に遭って症状がない場合でも通院が必要になる理由を解説しました。
むちうちなどの症状は受傷直後では気が付きにくいこと、画像検査でなければ見逃されてしまう怪我が存在する可能性を考えると、整形外科は受診しておくべきです。
また、整骨院への通院を希望する場合でも、慰謝料の請求や後遺障害認定の申請の際には、医師の診断書や検査結果の資料が必要になるので整形外科を併用しましょう。
通院開始の前にはスムーズに手続きをするためにも、保険会社への連絡を忘れないようにしてください。
参考
1)日本交通科学学会誌 第17巻 第1号 平成29年:交通事故後の高次脳機能障害
2)警視庁:交通事故被害者の支援 第3章 交通事故が被害者に与える精神的影響
3)一般社団法人 JA共済総合研究所:交通事故による いわゆる“むち打ち損傷”の 今日的問題点 ―海外文献動向を中心に―
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この記事を監修したのは…
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。
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