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むちうちの症状が出るまでの期間は?すぐに症状が出ない理由も解説

監修記事

甲斐沼 孟

医師(外科・整形外科他)

「むちうちは交通事故に遭ってしばらく経ってから症状が現れる事がある」と聞くけど本当なのでしょうか?

この記事は、下記のような方に向けて書いています。

・交通事故から少し時間が経って首の痛みや違和感が出てきた方
・後からむちうちの症状が現れる事がある理由を知りたい方
・交通事故後、現状は特に症状は感じないけど本当に大丈夫?と思われている方

交通事故やスポーツなどによって、首に強い力がかかることで起こる「むちうち」は、その症状が出るまでの期間は人によって様々です。交通事故後すぐに痛み等の症状が現れた人もいれば、長い方だと受傷から数週間経って症状が現れた人もいます。

本記事では、むちうちの症状が出るまでにどれくらいの期間がかかるのか、またむちうちの症状がすぐに出ない理由や症状が出たときの通院先・治療法などもあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

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むちうちの症状が出るまでの期間

一般的な外傷とは異なり、むちうちは受傷後すぐに症状が出ないケースも少なくありません。ここでは、むちうちの症状が出るまでの期間について解説しますので、自覚症状が出るまでの流れを理解しておきましょう。

当日から1週間のうちに症状が出るケースが多い

むちうちは当日から翌日に症状が出るケースが多く、事故直後ではなく数時間以上経ってから症状が現れることもあります。

事故にあった日より翌日のほうが痛みが強くなる場合もあり、事故当初はほとんど違和感がなかったものの、次の日に症状が重くなったというケースもあります。

また、筋肉などの損傷が原因で炎症反応が起こった場合は、3〜5日以内が痛みのピークだともいわれています。

数週間経ってから時間差で発症するケースもある

むちうちの症状が出るまでの期間には個人差があり、数週間程度してから自覚することもあるものです。このケースの場合、症状は緩やかに進行します。

「最初は指先だけの痺れだったが、腕の方まで広がった」

「最初は肩こりだけだったが、腰も痛くなってきた」

「冷え性がひどくなってきた」etc…

事故から2週間程度はいつ痛みやしびれなどを感じてもおかしくないため、注意して経過を観察するようにしましょう。

むちうちの症状がすぐに出ない理由

ポイント,注意点

事故の翌日や、場合によっては数週間後などに症状が出るケースもある「むちうち」。ここでは、むちうちの症状がすぐに出ない3つの理由に関して解説します。

興奮状態で痛みを感じにくくなっている

交通事故が起こり興奮状態になると、アドレナリンが分泌され痛みや疲れを感じにくくなります。

アドレナリンは極度の緊張や不安、怒りなどを感じることにより分泌されるため、予期せぬアクシデントに遭遇した場合は感覚が麻痺しやすくなってしまうのでしょう。

帰宅後精神的に落ち着いた段階や、日々の生活を取り戻したあとに症状に気づくのは、興奮状態が収まり本来の痛みや疲れを感じるようになるからだと考えられます。

脳内出血を起こしている場合は発症までに時間がかかる

頭部を損傷して脳内出血を起こしている場合は、血液が脳を圧迫するため症状が出るまでに時間がかかることがあります。

事故直後に軽いしびれが出るだけのような場合でも、時間の経過とともに出血が広がり、症状が進行する可能性があるので注意が必要です。

脳そのものが痛みを感じることはないため、自分では判断せず医師の診察を受けることが大切です。

痛みを避けようと楽な姿勢をとるため

交通事故などにより頚部痛の症状が出た場合、痛みを避けようと楽な姿勢をとり続けてしまうケースがあります。

この際、首の痛みは和らいでも肩まわりなどに負担がかかってしまい、肩甲骨や背中周りなどに痛みが生じてしまうことも。

その結果、肩こりなどの症状が日が経つに連れ現れるようになり、あとから症状を実感することにつながります。

むちうちの症状や特徴

むちうちの症状とは?

むちうちが原因で起こる症状の例

むちうちは事故などで衝撃を受けた際に、頚部が鞭がしなるように動くため「むちうち」と呼ばれており、正式な傷病名ではありません。医師の診断書には、頚椎捻挫や外傷性頚部症候群などと記載されます。

ここでは、むちうちの主な症状を紹介しますので、特徴を理解しておきましょう。

合わせて読みたい!むちうちはどんな症状?治療方法や完治までにかかる時間

首の痛み・肩こり

むちうちの主な症状として、頚部痛や肩こりなど、首回りを中心にした症状が挙げられます。首の痛み・動かしづらさなどが、負傷から数時間後や翌日などに現れます。

発症してすぐは炎症が起こっている可能性が高いため、首周りを無理に動かさないことが大切です。

頭痛・めまい・嘔吐

事故などの衝撃により自律神経が不安定になることで、頭痛やめまい、吐き気などの症状も現れます。自律神経は、体温調節や循環・呼吸などを調節する役割を持っているため、乱れることでめまいやむかつきなどの症状が出てしまうのです。

症状を緩和するには、自律神経の緊張を抑え働きを正常に戻す必要があります。

しびれ・脱力感・知覚障害

脊髄に衝撃が加わると神経の働きが障害を引き起こしてしまい、手足のしびれや脱力感・知覚障害などが引き起こされます。

外傷はないものの神経が損傷してしまい、腕のしびれや感覚障害・運動麻痺などの症状が現れるのです。

また、もともと無症状だった既存の頚椎症や椎間板ヘルニアなどが、事故をきっかけに発症してしびれなどの原因になるケースもあります。

むちうちの症状が出たときの通院先

交通事故のむちうちの治療先(病院・整形外科、整骨院・接骨院)

交通事故のむちうちの治療先の選択肢

ここでは、むちうちと考えられる症状が出た場合の通院先について解説します。

整形外科を受診する

むちうちの症状が現れた場合は、骨や関節、筋肉などに関する症状を扱う整形外科を受診するようにしましょう。骨の異常を調べるレントゲン検査や、神経根などの異常を確認するMRI検査などを受けたうえで、治療法を提示してもらいます。

POINT

事故直後は自覚症状がなくても

なお、たとえ事故直後は自覚症状がなくても、大きな損傷を負っているケースもあるものです。そのため、軽症もしくは症状がない場合でも、基本的には整形外科を受診する必要があることを覚えておきましょう。

症状によっては整骨院でもケアできる

むちうちは、症状によっては整形外科とあわせて整骨院・接骨院に通うことでもケアできます。整骨院・接骨院ではレントゲン・MRIなどの検査は行えないものの、外傷の痛みを薬などに頼らず軽減する施術をしてもらえます。

さまざまな治療法を用いてマンツーマンで体をケアしてもらえるため、身体的・心理的な苦痛を緩和したい場合は、整骨院・接骨院にも通ってみるとよいでしょう。

昔から「ほねつぎ」「接骨師」として広く知られ、現在は大学で解剖学、生理学、運動学、病理学、衛生学、公衆衛生学などの基礎系科目と柔道整復理論、柔道整復実技、関係法規、外科学、リハビリテーション学などの臨床系専門科目を履修します。

国家試験を受け、合格すると厚生労働大臣免許の柔道整復師となります。

引用:公益社団法人 日本柔道整復師会

▶関連記事:むちうち症の通院期間はいつまで?交通事故でもらえる慰謝料とは

病院・整形外科での治療法

ここでは、病院や整形外科における主なむちうちの治療法を紹介します。

消炎鎮痛剤(痛み止め)等の処方

発症直後に整形外科を受診した場合は、消炎鎮痛剤(痛み止め)や湿布、筋弛緩薬などを処方されることが多くなっています。また、首に負担をかけないよう頚椎カラー(首の固定用装具)を使用するケースも。

原則的に手術の必要はほとんどないため、保存療法を行ったうえで日常生活での安静を求められる流れとなるでしょう。

ブロック注射やトリガーポイント注射

症状によっては、局所麻酔により痛みや筋肉の緊張をとるブロック注射や、押すと痛いツボを見つけ、そこに麻酔薬を注射するトリガーポイント注射なども行われます。

首や肩だけでなく、腰・手足など全身の痛みに有効な治療法です。

理学療法

炎症が落ち着いてきたら、首の機能を回復させるために理学療法を行います。理学療法には、熱や電気などにより刺激を加え改善を促す物理療法や、体を動かし機能不全の改善を目指す運動療法などがあります。

症状が重くない場合は、3カ月程度物理療法や運動療法を用いることで、むちうちの症状が回復することでしょう。

整骨院・接骨院での治療法

整形外科に加え、整骨院や接骨院に通うことでもむちうちの症状を緩和できます。整骨院・接骨院では、むちうちの痛みや不快感を取り除くために、柔道整復師という国家資格者が施術を行います。

ここでは、整骨院・接骨院における主なむちうちの治療法を紹介します。

徒手療法

整骨院や接骨院での施術は、リラクゼーションやストレッチなどにより筋肉をほぐし、関節の可動域を向上させる徒手療法が中心です。

事故直後は首を痛める原因になるためマッサージなどは行わず、痛みが落ち着いた段階で、筋肉をほぐし関節の可動域を広げていきます。

実際に体に触れて施術してもらえるため、一人ひとりの状態に合った内容を行ってもらえるでしょう。

物理療法

物理療法は、電気や熱などの物理的なエネルギーを利用して施術を行うものです。首の筋肉を温める温熱療法や、患部に電気刺激を与える電気療法、首を引っ張って症状を緩和する牽引療法などの治療法があります。

機械を用いて治癒するため、施術するスタッフの技術に左右されず一定の刺激が与えられる点が特徴です。

鍼灸治療

経穴(ツボ)を刺激し、自然治癒力や免疫力を上げる鍼灸治療も、整骨院・接骨院で受けられる施術として挙げられます。

むちうちは、鍼灸適応症のなかでも効果が上がりやすい疾患のひとつです。独特な鎮痛作用で筋肉の緊張を緩和し、血行を促進することで症状の改善が期待できます。

痛みの緩和はもちろん、めまいや吐き気・耳鳴りなどさまざまな症状に効果を発揮するでしょう。

▶あわせて読みたい:交通事故の後、病院は何日以内に行けば大丈夫?支払いや人身切り替えは?

まとめ

むちうちの症状が出るまでの期間には個人差があり、事故などの翌日に症状が現れたり、数週間程度してから自覚したりする人も少なくはありません。

その理由としては、受傷直後は興奮状態となっているため痛みを感じにくくなっていたり、痛みを避け続けようと楽な姿勢をとり続けた結果、別の部位に痛みを感じたりすることが挙げられます。

むちうちでは、事故直後は自覚症状がなくても、大きな損傷を負っているケースもあるものです。軽症もしくは症状がない場合でも基本的には整形外科を受診し、症状によっては整骨院・接骨院でもケアしていくようにしましょう。


この記事を監修したのは…

専門領域分類
外科, 整形外科, 乳腺外科, 小児外科, スポーツ整形外科, リウマチ, 一般外科, 形成外科, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 消化器外科, 脳神経外科, 美容外科, 大腸肛門科, 内科, 内分泌代謝科, アレルギー・膠原病内科, 神経内科, 肝胆膵内科, 消化器内科, 総合内科, 血液内科, 腎臓内科, 循環器内科, 感染症科, 糖尿病内科, 呼吸器内科, 産業医, サル痘, 医療データ, 血液・感染症, 集中治療, 救急科

経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 
卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医

主な研究内容・論文
〇 「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」
〇 「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」
〇 「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」
〇 「都市部二次救急医療期間の当院における救急要請応需率に関する後方視的検討」
〇 「当院においてリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)投与した播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した感染性敗血症症例の臨床成績」
〇 「腹腔鏡下に治療しえた成人期に発症した先天性Bochdalek孔ヘルニアの一例」

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / T.N
大学を卒業し、出版社で取材や編集業務を経験。その後、WEBメディアの執筆に転向し、事故に関する様々な知識を多くの人に届けるべく、日々邁進中。現在は、交通事故専門士の資格を取得するために勉強をしている。座右の銘は、格物究理。

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