×

むちうちはどんな症状?治療方法や完治までにかかる時間について解説

監修記事

甲斐沼 孟

医師(外科・整形外科他)

「交通事故の後から首と肩が痛くてつらい」

「めまいと吐き気がするようになった」

交通事故を起こしてから、上記のような症状が出ている場合、むちうちになっている可能性があります。

本記事では、交通事故で生じやすいむちうちの症状について詳しく解説するとともに、治療方法や病院での症状の伝え方や治療方法について、完治までの期間とあわせて解説します。

交通事故の怪我で多いむちうちの症状とは?

むちうちの症状とは?むちうちが原因で起こる症状の例

▲むちうちが原因で起こる症状の例

まずはじめに、交通事故の怪我で多いむちうちの症状について詳しく解説します。

さまざまな症状が同時に出ている可能性もあるため、自覚症状がある場合には速やかに医療機関を受診してください。

首・肩・腕の痛みや頭痛

むちうちになった人のほとんどに、痛みの症状が発生します。

むちうちは首がしなることで引き起こされるため、首だけに痛みが出ると思われがちですが、首以外にも肩や腕の痛みや、頭痛の症状が現れる場合があります。

最初は首の痛みだけだったのにもかかわらず、時間が経過するとともに、他の部位も痛み始めることも少なくありません。これは、首の痛みから身を守るために、自然と身体に力が入ることで筋肉が緊張し硬くなることが原因だとされています。

詳しく知りたい!むちうちはどのような痛み?治し方や放置するリスク

関連記事交通事故後にあらわれる肩こりとむちうちの違いは?

関連記事むちうちで頭痛が起こる?原因・症状~治し方まで易しく解説

腕がだるい

腕のだるさが生じる場合もあります。これは、神経の異常が原因として考えられます。

筋肉は、脳から首を経由した神経によってコントロールされています。

そのため、むちうちによって神経が損傷したり、首の筋肉が硬くなり神経を圧迫したりすると「腕のだるさ」として症状が現れます。

関連記事むちうちで腕がだるい原因は?治療法と自宅でできるセルフケアの方法

手のしびれ

神経に異常が生じている場合、腕にだるさだけでなく、しびれが生じるケースもあります。

腕がだるくなる原因と同じように、筋肉の緊張と神経の圧迫から手のしびれが起きると考えられています。自然治癒するものではないため、むちうちの根本的な治療が必要です。

関連記事【医師解説】頚椎捻挫で手のしびれ?原因や治療法、他の病気の可能性も解説
もっと知りたい!むちうちによるしびれの原因は?後遺症が残った時の対処法も解説

吐き気

むちうちと吐き気は関係ないように見えますが、むちうちで生じる筋肉の緊張や自律神経の乱れ、めまいなど他の症状が原因で、吐き気を起こす場合があります。

むちうちによる吐き気は、多くの場合1カ月ほどで改善が見られるといわれています。

もっと知りたい!むちうちによる吐き気はいつまで続く?症状の原因や治らない時の改善方法について

めまい

むちうちで生じる可能性のあるめまいには、2種類あります。

  • 回転性めまい:動いてないにもかかわらず自分または周囲が動いているように感じる
  • 浮動性めまい:足元がふわふわするように感じる

めまいの症状から吐き気につながるケースも少なくありません。

関連記事交通事故でむちうちに!めまいの症状があらわれたときの対処法

交通事故のあとむちうちの症状が出るまでの時間

交通事故の後、むちうちの症状が出るまでの時間について解説していきます。

すぐに症状が出るケースもありますが、事故からしばらく経ったあとで症状が出てくるケースもあるため注意が必要です。

症状の出方は様々

むちうちが交通事故後すぐに痛みとして現れないことがある理由は?

▲むちうちの症状が事故後すぐに出ない理由

交通事故を起こしたあと、当日から翌日にかけて症状が出るケースが多いです。

例えば交通事故の直後に痛みを感じたり、朝起きたら首が動かなくなっていたりするケースがこれに該当します。

しかし、症状が出るタイミングには個人差があります。「症状がすぐに出ないから大丈夫だろう」と油断するのは非常に危険です。

翌日から1週間程度経過して症状が出るケースも

交通事故から数時間、あるいは1日以上経過してからむちうちの症状が出るケースもあります。原因のひとつとして、交通事故によって交感神経が興奮しすぎて痛みがすぐに出ないことが考えられます。

この場合、交感神経から痛みを抑制する効果をもつ「ドーパミン」が放出され、一時的に痛みを感じにくくしていると考えられます。痛みの症状が出ていなくとも、実際は身体に異常が出ている可能性もあるでしょう。

そのため、交通事故を起こした後は、症状の有無にかかわらず、すぐに病院を受診するなどの対処が重要です。

関連記事むちうちの症状が出るまでの期間は?すぐに症状が出ない理由も解説

むちうちが疑われるときは整形外科を受診する

交通事故後の整形外科受診

▲交通事故後の整形外科受診

「いま出ている症状はむちうちが原因かも」と感じた場合、すぐに整形外科を受診することが重要です。接骨院や整骨院ではなく、まず整形外科を受診するべき理由について解説します。

レントゲン撮影やMRI検査ができる整形外科を受診

整形外科には医師が在籍しています。そのため、診察をはじめ、レントゲン検査やMRI検査といった画像検査などの検査を受けることができ、診断書を作成してもらえます。

例えば、むちうちの症状が長期間にわたって残ってしまった場合、後遺症として認定を受ける必要が出てくるかもしれません。その際、治療を受けている医療機関で診断書をすぐに作成してもらえるため、手続きがスムーズに進められるメリットがあります。

以上の理由から、むちうちが疑われる場合は整形外科を受診するようにしましょう。

病院でのむちうち症状の伝え方

むちうちでは、MRIなどの画像検査を行っても症状の原因を特定できない場合があります。医師に症状を伝えなければ、医師がどのような症状に悩まされているのかに気づけず、適切な治療ができなくなってしまうかもしれません。

そのため、整形外科を受診した際、むちうちの症状を正確に伝えることは非常に重要です。次のポイントを参考に、むちうちの症状を正確に伝えましょう。

  • 具体的に症状を伝える:「寝ていても首のつけ根がズキズキする」など痛みの位置や強さ、どのようなときに痛むのかなどを具体的に伝える。
  • その場で伝えるのが難しいときはメモを渡す:緊張で上手く伝えられそうにないときは、あらかじめ症状についてメモ書きしておき、渡す選択肢もある。

症状を誇張したり、出ていない症状を伝えたりすると、治療が長引く可能性があります。交通事故を起こしてから現れた症状について、正確に伝えることを意識しましょう。

もっと詳しく知りたい!むちうち症状の伝え方ポイント4つ!伝え方が重要な理由も解説

慢性期の治療には整骨院で受ける施術も効果的

交通事故を起こした後は、まず整形外科を受診することが大切です。

しかし、むちうちが慢性期に入れば、整骨院で施術を受けることも選択肢の一つに含めることも検討してみましょう。

整骨院・接骨院の交通事故施術とは?

▲整骨院の交通事故施術内容の種類

整形外科だと、慢性期に入ったむちうちは積極的な治療が難しくなります。一方、整骨院では時間をかけて電気療法や牽引療法、マッサージなどの施術を受けられるため、長期的なケアにも向いています。

むちうちの治療法は?

むちうちの一般的な治療法は、薬物療法による痛みや筋肉の緊張のコントロールのほか、理学療法での治療、手術療法での根本的な治療が基本となります。

それぞれの治療方法について解説します。

薬物療法

痛みや炎症の緩和を目的に、薬での治療を行います。痛みや炎症が続くと慢性化してしまい、治癒までの期間が長引く可能性があります。また、神経が過敏に働くようになり、原因を取り除いても痛みが残るケースがあります。

さらに、痛みは筋肉の緊張や血流の悪化につながり、再び痛みにつながることもあります。そのため薬によって一度緩和させ、悪循環を断ち切ることが大切です。

POINT

薬物療法は根本的な治療にはならない

特に、むちうちを起こしたばかりの炎症が起きている時期には効果が高いとされています。しかし、薬物療法は根本的な治療にはならないため、あくまで治療のサポート的な位置づけで行い、並行してむちうちの根本的な治療を行う必要があります。

理学療法

理学療法とは、国家資格をもつ理学療法士によって行われる治療で、主に物理療法運動療法などを行います。一人ひとりの身体の状態を把握してから原因を判断し、必要に応じた治療を行っていくのが一般的な理学療法の流れです。

また、むちうちが生じる前の生活に戻るために、生活における動作やトレーニング等の指導をすることも少なくありません。

手術療法

むちうちの治療は基本的に、薬物療法や理学療法といった手術をしない治療が多いです。しかし、むちうちに伴い骨折や脱臼をしている場合や症状がひどい場合は、手術療法が選択される場合があります。

特に、骨折や脱臼を放置すると、首が横に曲がったままの状態になるなど、身体構造の「歪み」につながります。身体構造の歪みは、神経の損傷も起こしかねないため、手術が必要となるのです。医師と相談し、適切な治療の選択が大切です。

痛みが強い場合にはコルセットで固定することも

首のむちうちにおけるコルセットの役割

▲首のむちうちにおけるコルセットの役割とは?

むちうちの症状で、痛みが強い場合には頚椎カラー(首のコルセット)で固定することがあります。首はどうしても日常生活で動いてしまう部位であるため、負担がかかりやすいです。

そこで、首の負担を減らして安静にすることを目的に頚椎カラーを使用する場合があります。長い期間にわたって頚椎カラーを装着すると首の周囲の筋肉が落ちるため、装着期間は1カ月以内になることが多いです。

むちうちの症状が治るまでの期間は?

交通事故のむちうちの治療期間の目安

▲交通事故のむちうちの治療期間の目安

むちうちの症状が治るまでの期間は、1カ月から3カ月が目安です。

軽度の場合は1ヵ月程度で完治することも多いですが、重度の場合は3カ月以上かかるケースもあります。

もっと知りたい!むちうちの症状が続く期間は?痛みが引かないときの対処法と休業損害

治療が半年から1年以上経過すると、医師から「症状固定」と告げられる場合がほとんどです。症状固定とは、これ以上治療を続けても改善が見込めない状態で「後遺症」が残ったとされる状態を指します。

むちうちの後遺症が治らないケースはある?

むちうちの症状が後遺症として残った場合、治らないケースはあるのでしょうか。長期間にわたって症状が残る人の割合などについて解説します。

1年以上治らないケースもあるといわれている

むちうちは、受傷してから時間が経っても症状が残る可能性があります。1年以上が経過してから治癒する患者は非常に少なくなり、一部の患者で後遺症が残ってしまうケースもあるとされています。

体の痛みやしびれのほか頭痛などが後遺症として認定されるケースも

後遺症として正式に認定されるには「後遺障害等級認定」に申請をして、基準を満たす必要があります。むちうちの症状で認定されやすいのは、身体の痛みやしびれなどの症状です。

画像検査と各所見、自覚症状などが合致すると、後遺障害等級認定の12級13号に認定される場合があります。

詳しく知りたい!交通事故による頚椎捻挫の後遺症とは?後遺障害認定を受けるためには

むちうちの症状を一時的に緩和する方法

むちうちの症状を緩和するためには、病院を受診し、首や肩の筋肉の緊張を和らげるリハビリや運動療法を受ける必要があります。具体的な方法について詳しく解説します。

むちうちは温めるべき?冷やすべき?

▲むちうちは温めるべき?冷やすべき?

炎症のある時期は冷やす

炎症のある時期は、落ち着かせるために「冷やす」ことが大切です。

温めると、炎症を促進してしまい症状が悪化するおそれがあります。そのため、交通事故を起こしてむちうちを発症したばかりの時期は、身体が温まり過ぎるような入浴は避け、シャワーのみにしておきましょう。

また、マッサージも炎症を促進してしまうため、痛みが出て気になるところですが、触らないように注意が必要です。

炎症がなくなってからは温める

炎症が落ち着いたら「温める」ことで治癒の促進につながります。筋緊張の緩和や血流の改善によって、痛みや腕・手のしびれの緩和が期待できます。

炎症が落ち着く頃には、マッサージや運動療法などを積極的に行えるため、症状の改善を目指しましょう。

痛みが強い場合は鎮痛剤を処方してもらう

強い痛みを我慢すると、痛みから筋緊張の亢進、血流の悪化、可動域の低下につながり悪循環に陥ります。医師に鎮痛剤を処方してもらい、痛みをコントロールすることが大切です。

具体的な薬剤としては、ロキソニン内服やロキソニンを含んだ湿布外用などが挙げられます。効果が見られない場合は、ブロック注射で痛みの緩和を図る方法もあります。

むちうちが「症状固定」になったらどうすればいい?

むちうちが症状固定になったらすべきこと

▲むちうちが症状固定になったらすべきこと

ここでは、むちうちの治療を続けていくなかで、医師に症状固定と告げられた場合の対処法を紹介します。具体的な方法は次の通りです。

  • 医師に診断書を書いてもらう
  • 後遺障害等級の認定を受ける

それぞれ詳しく見ていきましょう。

医師に診断書を書いてもらう

後遺症として正式に認めてもらうには、後遺障害等級の認定を受ける必要があります。申請には「後遺障害診断書」が必要で、医師のみ作成可能です。診断書には、むちうちの治療を開始した日にちや症状固定日、血液検査や画像検査などの検査結果、症状といった内容が記載されます。

後遺障害等級の認定を受ける

後遺障害等級認定における手続きの大きな流れは次の通りです。

  • 後遺障害診断書などの申請に必要な書類を作成および収集
  • 「損害保険料率算出機構」に書類を送付する
  • 書類を基に後遺障害等級に該当するかが判断される

申請する方法として、保険会社に依頼する方法などもあるため、実際に申請をする前に再度調べておくと安心です。

詳しく知りたい!むちうちの症状固定とは?期間の目安や受け取れるお金の変化まで解説

まとめ

むちうちの症状は多岐にわたります。多くのケースで3カ月以内に治癒しますが、1年以上経過しても治らないケースもあります。治療を開始するタイミングが、完治に影響する可能性もあるため、交通事故を起こしてむちうちが疑われるときは速やかに整形外科を受診しましょう。

この記事を監修したのは…

専門領域分類
外科, 整形外科, 乳腺外科, 小児外科, スポーツ整形外科, リウマチ, 一般外科, 形成外科, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 消化器外科, 脳神経外科, 美容外科, 大腸肛門科, 内科, 内分泌代謝科, アレルギー・膠原病内科, 神経内科, 肝胆膵内科, 消化器内科, 総合内科, 血液内科, 腎臓内科, 循環器内科, 感染症科, 糖尿病内科, 呼吸器内科, 産業医, サル痘, 医療データ, 血液・感染症, 集中治療, 救急科

経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 
卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医

主な研究内容・論文
〇 「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」
〇 「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」
〇 「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」
〇 「都市部二次救急医療期間の当院における救急要請応需率に関する後方視的検討」
〇 「当院においてリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)投与した播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した感染性敗血症症例の臨床成績」
〇 「腹腔鏡下に治療しえた成人期に発症した先天性Bochdalek孔ヘルニアの一例」

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / T.A
出版社に就職後、書籍や雑誌コラムの執筆・編集を経て、現在はフリーライターとして活動中。家族が交通事故の被害にあった過去の経験をもとに、怪我の治療先や手続きのコツなどをお届けしていきます。みなさんのお悩みが少しでも軽減されますように…。

カテゴリ一覧

はじめての交通事故でお悩みの方へ。
交通事故に関する知識や通院について
無料でサポートいたします。
無料 0120-963-887
電話で無料相談する

24H緊急
ダイヤル

0120-963-887

  • お見舞金最大20,000
  • 相談0
  • 安心の365日対応

事故専門の相談員が
無料で完全サポートいたします