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むちうちのしびれが後から出てきた!行うべき対処法と手続きについて

監修記事

河野 裕也

理学療法士

交通事故で体に衝撃を受けると、何らかの怪我を負うかもしれません。交通事故による怪我で多いのは、「むちうち」だといわれています。

むちうちであらわれる症状といえば、首の痛みをイメージする方が多いのではないでしょうか。しかし、しびれや耳鳴り、吐き気などの症状もあらわれることがあります。

そこで今回は、むちうちで「しびれ」があらわれる原因や治療方法、後遺症が残った場合の対処法などについて解説します。

交通事故でむちうちがあらわれる原因

交通事故にあうと、どうしてむちうちが引き起こされるのでしょうか。

むちうちは名前の通り『鞭(むち)で打つ』ように首が強く『しなる』ことで起こります。交通事故で強い衝撃を受けた際、体がシートベルトなどで急激に固定される事で、固定されていない頭と首に衝撃が集中してしまい、首にむちうち現象が起こります。

その衝撃は大きく、頚椎(首の骨)や筋肉、じん帯などの組織が損傷し、様々な症状があらわれてしまうのです。

むちうちの症状は後から出てくることもある

むちうちの症状は、事故直後にあらわれないことも多くあります。何故そのようなことが起こるのでしょうか。

簡潔にいうと、交通事故という非日常的な出来事に脳がビックリして、正常な反応ができないからです。本来、痛みは『体の痛みがある場所に異常を教えてくれる重要なサイン』です。

しかし、交通事故のように瞬間的で予期できない衝撃によって怪我を負うと、脳が興奮状態になり、体の損傷を痛みとしてうまく認識できないことがあります。

むちうちによるしびれの原因

首に強い衝撃が加わることで首周囲の神経が損傷されると腕や手、指にしびれが出現します。

この神経には「脊髄」と「神経根」があり、脊髄は脳から骨盤まで伸びている神経の太い幹のようなものであり、神経根はこの脊髄から枝分かれした細い神経です。

むちうちが軽傷であれば神経根の損傷の場合が多く、重症になると脊髄が損傷されることがあります。

また、筋肉が損傷されることで筋肉の緊張が高まり、神経根から腕や手にのびる神経を圧迫することでしびれが生じることもあります。

症状があとから出た場合の対処法

むちうちを患うと事故直後には出ていなかった症状が後から出てくることも多くあります。その場合はできるだけ早く医療機関を受診しましょう。

事故直後は突然の出来事に興奮状態となっていることも多く、症状を感じにくくなっていたり首周辺の組織が損傷されてから炎症が生じるまでに少し時間がかかったりすることもあります。

その場合は後から症状が出現してきます。また、交通事故の場合は賠償請求ができますが、症状と交通事故の因果関係の証明が必要となります。これには医師による診断書が必要となりますが、事故から期間が空いてしまうと因果関係を証明することが難しくなってしまいます。

そのため、なるべく早く医師による診断を受けることが重要です。

むちうちの症状は首の痛みやしびれなど様々

むちうちの症状は、首の痛みだけではありません。しびれや耳鳴り、めまい、頭痛など様々な症状があらわれ、以下のように4つの症状型に分類することができます。

  • 頚椎捻挫型
  • バレー・ルー症候群
  • 神経根症状型
  • 脊髄症状型

上記にある4つの症状型について、解説します。

関連記事むちうちはどんな症状?治療方法や完治までにかかる時間

頚椎捻挫型

むちうちで最も多いタイプは、頚椎捻挫型です。レントゲンやMRIでも異常が見つからないことも多く、事故との因果関係が証明しにくいタイプです。

症状は、首周囲に疼痛や自発痛、首や肩、背中の筋肉に異常なコリとつっぱり感、首が動かなくなる可動域制限、動かすと痛い運動痛、上肢のだるさやしびれなどが代表的です。

バレー・ルー症候群

バレー・ルー症候群は、後頚部交感神経症候群とも呼ばれ、事故による衝撃が神経を傷つけた際に発症するものです。頚椎の近くにある後部交感神経が損傷する事で、自律神経のバランスが崩れ、様々な症状を引き起こすと考えられています。

主な症状は、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気などです。その他にも、自律神経失調症と同じ症状である目のかすみや流涙、動悸、発汗なども見られるので、診断に注意が必要です。

神経根症状型

神経根症状型は、脊髄から出る神経の根元(神経根)が引き伸ばされたり、圧迫を受けたりして、様々な症状を引き起こすものです。

主な症状は、首の痛み、腕の痛みやしびれ、倦怠感、後頭部の痛み、顔面の痛みなどです。また、首を動かさない状態では症状がなくても、首を曲げると神経が圧迫されるため、神経症状や痛みが強まることもあります。

脊髄症状型

脊髄は、脳と直接つながる中枢神経で、背骨(脊柱管)の中を通っています。

事故の衝撃で首が振られ脊髄が損傷すると、体の麻痺、知覚障害、運動障害が起こることがあります。例えば、下半身につながる神経が損傷した場合は、下肢のしびれや知覚異常と共に、歩行障害があらわれます。また、膀胱や直腸に障害があらわれ、排便・排尿に支障をきたすこともあります。

そのため、脊髄の損傷は、後遺障害として残る可能性が非常に高く、むちうちの中でも最も深刻なタイプになります。

むちうちによるしびれの治療について

では、むちうちによるしびれは、具体的にどのような治療・施術を受ければよいのでしょうか。

むちうちで起こるしびれの多くは、肩から腕にかけて出てきます。しかし、しびれている肩や腕そのものが損傷していることは少なく、ほとんどが首の神経が圧迫されたり、ダメージを受けたことによって発症しています。

そのため、しびれている箇所だけに施術をしても効果は少なく、首周りの筋肉をほぐしたり、伸ばしたり、温めるといった物理療法が適しているといえます。

むちうちの治療期間はどれくらい?

むちうちの症状は、1回の治療で症状が緩和するものではありません。実際には、どれくらいの治療期間を目安に通院を続ければよいのでしょうか。

治療を受ければ、首の痛みは1~2ヶ月で回復してくるでしょう。しかし、当院では痛み以外の体調も回復するまで、6ヶ月間を治療期間として考えています。

通常、むちうちは3ヶ月ほどで症状が緩和されます。しかし、交通事故の場合は後から症状があらわれたり、体質が変わって頭痛やめまい持ちになることなども考えられます。ですから、治療期間には余裕を持つことが重要です。

日常生活を送るうえでは、症状の程度によりますが、首の筋肉や骨に過度な伸展や収縮をかけないようにしてください。

また、急性期を過ぎてもしびれがある場合、首や肩を冷やしてしまうと、症状が悪化する恐れがあるので、お風呂でしっかりと温めることが大切です。

むちうちのしびれが出た際の通院先について

病院
交通事故でむちうちになった場合、以下の2つの通院先から選択することができます。

  • 整形外科
  • 整骨院・接骨院

では、上記2つの通院先にどのような違いがあるのでしょうか。

整形外科

交通事故後、最初に行くべき通院先は医師のいる「病院」です。むちうちの可能性がある場合は、整形外科を受診しましょう。

整形外科では、主に診断と治療が行われます。
診断では、レントゲンやMRIなどの画像診断や神経学的検査を行い、その診断結果をもとに、カルテや診断書を作成します。

治療内容としては、湿布や注射、痛み止め、しびれ止めの薬を出してくれます。他にも、電気を当てたり、首を引っ張る牽引といった物理療法やリハビリを行うところもあります。

整骨院

整骨院が行う施術は、むちうちの急性期と慢性期によって施術内容が異なります。

そもそも急性期とは、受傷直後から1ヶ月程度のことで、痛みが強い時期を指します。一方、慢性期とは、受傷から3ヶ月以降のことで、痛みの症状が落ち着いてきた時期を指します。

事故直後の急性期に動けないほど痛みが強い場合は、固定やサポートテーピングで補助をします。また、炎症が強い場合は、アイシング(冷却)で痛みを抑えていきます。

慢性期に移行していく時期からは、筋緊張をほぐす施術と可動域を広げるストレッチなどをメインにしていきます。整骨院では病院と同様の物理療法やリハビリが受けられます。

むちうちが後遺症として残ってしまったら

首周辺が痛い女性

むちうちは後遺症になることもあります。したがって、しびれの症状が後遺症となってしまい、日常生活に支障をきたす場合もあります。

交通事故によるむちうちが後遺症になった場合は、後遺障害等級認定を申請するのが一般的です。

後遺障害等級認定の方法

後遺障害等級認定とは、交通事故によって残ってしまった後遺症が1~14級のうち、どの等級に該当するかを認定するものです。後遺障害等級認定を申請し、等級が認定された場合、被害者は後遺障害慰謝料逸失利益などを受け取ることができます。

むちうちのしびれが後遺症になってしまったら、後遺障害等級認定でどの等級が認定されるのでしょうか。むちうちによる後遺障害の認定は、主に14級と12級になります。

簡単にいうと、14級は『レントゲンやMRIには異常がないが、神経症状があることを状況や症状により推定が可能である』、12級は『神経学的検査やレントゲン、MRIなどに神経症状の原因となる明確な異常所見がある』となります。

また、申請には被害者請求と加害者請求の2つの方法があります。メリット・デメリットを考えて、自分に合う方法で申請する事をおすすめします。

被害者請求

被害者請求とは、被害者自身が直接、加害者側の自賠責保険会社に対して後遺障害等級認定の申請を行う方法です。

そのため、後遺障害等級認定に必要な書類の取得や作成を被害者自身で行わなければなりません。

被害者請求を行うと、被害者自身に手続きの手間がかかってしまいます。

しかし、被害者自身で後遺障害等級認定を進めるため、納得のいく認定結果が得られる可能性が高くなります。

加害者請求

加害者請求とは、加害者側の保険会社に後遺障害等級認定の手続きを任せる方法です。

そのため、被害者は後遺障害等級認定の手続きの手間を省くことができます。

後遺障害等級の認定に重要なポイント

後遺障害等級認定は書面主義で行われるため、書類の中で後遺障害が残っていることを証明しなければなりません。

では、後遺障害等級認定において、適切な後遺障害等級が認定されるためには、どのようなことに注意すればよいのでしょうか。

後遺障害等級認定を申請するにあたっての最も大事なポイントは、『後遺症が残ってからではなく、初診の時から後遺症が残る可能性を考慮して治療を受けること』と『後遺障害等級認定の申請に詳しい先生のアドバイスを受けること』です。

他にも、後遺障害等級認定の判断要素を簡単にあげておきます。

  1. できるだけ治療を早く開始し、完治に向けての努力をし、通院実績を残すこと
  2. レントゲンやMRIの画像診断や、神経学的検査などの後遺症の根拠となるものを残すこと
  3. 怪我が原因で事故前にできたことができなくなる等の、重篤性の高さを証明すること
  4. 普段の通院時から一貫した症状を医師に伝えて常時性があることをカルテに残すこと
  5. 症状固定後も自費で治療を継続し、治療の必要性をアピールすること

上記以外にも、事故の規模も1つの考慮要素になります。

例えば、自動車が大きく変形しているといった大きな事故の場合、後遺症状が残る可能性が高いと判断されます。

後遺障害の判断基準の中でも、特に通院実績・重篤性・常時性は、重要なポイントとなります。

例として、適切な治療を受けても手に神経症状が後遺障害として残っている場合をお話します。

この場合、しびれがあっても普通に手を使える状態より、物がつかめない程の状態の方が重篤性があるということになります。

また、気温や湿度の変化、仕事がない休日は症状がマシに感じることはよくありますが、特定の条件がある場合に限らず、常に手のしびれを感じる状態の方が、常時性があると判断されます。

さらに、仕事や事情があって『通院が月に1度しかできない』場合もあるかもしれません。

しかし、保険会社からすると、『月に1度の通院で大丈夫な怪我はたいした怪我ではない』認識になる可能性があるので、後遺障害等級認定の申請時に不利に捉えられるかもしれません。

したがって、施術の開始時期や通院をできるだけ優先して考えてください。

交通事故後はしっかりと通院を

交通事故でむちうちになった場合、しびれの症状があらわれることもあります。

むちうちのしびれは、肩から腕にかけてあらわれますが、その多くは首の神経が圧迫されたり、
ダメージを受けている状態です。したがって、しびれている箇所だけでなく、首から肩にかけての筋肉全体をほぐす・伸ばす・温めるといった物理療法を受けることをおすすめします。

また、むちうちは後遺症が残ることもあるので、その場合は後遺障害等級認定を申請するようにしてくださいね。

この記事を監修したのは…

国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

この記事の執筆者

理学療法士 / 河野 裕也
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

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