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交通事故での診断書は警察に出すべき?出さないべき?

監修記事

柿野 俊弥

理学療法士

交通事故で被害者になってしまったが、診断書を警察に出すべきか?出さないべきか?それぞれのメリットやデメリットはあるのか?と疑問に感じていませんか。交通事故では被害者の立場でどのように対応していけばいいのか迷うことも多いかと思います。

そこで今回は、以下の内容を中心に解説します。

  • 人身事故と物損事故の違い
  • 交通事故で診断書を警察に出さないことのデメリット
  • 交通事故で診断書を警察に提出する期限・方法

診断書の提出について悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

交通事故で診断書を警察に出すと人身事故の届出ができる

人身事故か物損事故かを決めるのは警察です。判断にあたって現場の実況見分を行いますが、それ以上に重要なのが「診断書」の有無になります。

交通事故治療における診断書の内容と役割

▲交通事故治療における診断書の内容と役割

交通事故の直後、目立った怪我がなかった場合は「物損事故」として処理されていることが多いですが、診断書を警察に提出することで「人身事故」の扱いへ切り替えが可能です。

診断書は医師に書いてもらう必要がある

診断書を発行できるのは医師のみです。理学療法士や柔道整復師鍼灸師などは、診断書を交付することはできません。そのため、医師が在籍していない整骨院や接骨院、鍼灸院ではなく、整形外科や脳神経外科などを受診して診断書を書いてもらう必要があります。

交通事故による怪我の痛みを緩和する目的で、整骨院や接骨院に通院するのは問題ありません。整形外科と並行して、整骨院や接骨院に通うのは一つの選択肢です。

関連記事交通事故で整形外科と整骨院は併用可?メリットや注意点を解説

人身事故と物損事故の違い

物損事故と人身事故の違い

▲物損事故と人身事故の違い

人身事故と物損事故の違いは、次のとおりです。

  • 人身事故:被害者が怪我をしたり死亡してしまったりした交通事故のこと
  • 物損事故:モノの故障や破損といった損害のみが生じた交通事故のこと

つまり「人」の損害か「モノ」の損害かによる違いです。人身事故の損害賠償には身体や精神の損害も含まれますが、物損事故の場合は破損車両などの物的損害分だけで済むことがほとんどになります。

また、物損事故は犯罪が成立しないケースがあるため、その場合は事故後の対応が簡略化されやすいのも特徴です。

関連記事物損事故でも治療費は出る?人身切替や念のための病院受診の費用も解説

関連記事人身か物損かは誰が決める?加害者が物損で済ませたい理由や切り替えのメリット

交通事故で診断書を警察に出さないとどうなる?

怪我を負っているにもかかわらず、診断書を警察に提出せず、物損事故の扱いのままだと被害者にとってデメリットしかありません。

具体的にどのようなデメリットがあるのかを見ていきましょう。

自賠責保険に請求ができない

自賠責保険とは、自動車やバイクを所有する全ての人に、加入が義務付けられている強制保険。交通事故の被害者の救済が目的で、補償対応は人身事故の被害者。そのため、物損事故あ対象外となる。また、請求できる賠償金には限度額が定められている。

▲自賠責保険とは?

自賠責保険を請求できるのは、傷害や後遺障害、死亡による損害です。実際には交通事故で、身体的損害を受けていても、診断書を提出せずに物損事故として扱われてしまえば自賠責保険で補償できません

物損事故であっても、加害者側の「車両保険」や「対物賠償保険」といった任意保険で補償できます。ただ、そもそも加害者が任意保険に入っていなければ補償を受けられない可能性があります。

休業損害や入通院慰謝料なども請求ができない

物損事故は、モノの損害が生じた事故です。「怪我をした人がいない」という扱いになるため、休業損害入通院慰謝料を請求することができません。

人身事故扱いであれば、慰謝料や休業損害のほか、治療に関わる費用、必要な書類の発行にかかった費用も請求できます。

人身事故で補償される主な損害 1.積極損害 事故によって受けた、直接的な損害や具体的な支出のこと。医療費、修理費、入通院費、交通費や文書費が補償される。 2.消極損害 交通事故によって受けた、間接的な損害のこと。収入の減少や、仕事に支障が出た場合など、交通事故に遭わなければ得られたはずのお金補償する。 3.慰謝料 交通事故により被害者が受けた精神的苦痛を補償する金銭のこと。交通事故では、主に傷害慰謝料や入通院慰謝料を指す。自賠責保険の場合、入通院慰謝料は1日あたり4,300円。

▲人身事故で補償される損害一覧

弁護士監修物損事故と人身事故の損害賠償の違いとは?

実況見分調書が作成されず過失割合で揉めやすい

過失割合とは?

▲過失割合とは?

人身事故が起きた場合、警察が現場で実況見分を行い、それを基に調書を作成します。実況見分調書は、事故を起こした双方の過失割合を判断する重要な書類です。

しかし物損事故では、そもそも実況見分自体がおこなわれず、聞き取り捜査のみ実施されることが多くなっています。そのため、人身事故であるにもかかわらず物損事故扱いだと、過失割合を判断する材料がないため当人同士で揉めやすいのです。

関連記事追突事故は物損事故ではなく人身事故で処理すべき!その理由を解説

交通事故で診断書を警察に提出する期限・方法

交通事故の後、医師に診断書を作成してもらったら、警察に届け出る必要があります。しかし、人身事故が初めてだという方は、提出期限や方法について分からない方も多いでしょう。

そこで提出期限と方法について解説します。

人身事故への切り替えはなるべく10日以内に

物損事故から人身事故への切り替え(切り替え方法と提出期限について)

▲物損事故から人身事故への切り替え(方法と期限)

警察への診断書の提出期限は、とくに法律で定められていません。しかし、事故発生から長期間経過してから提出した場合、事故との関連性を証明できず拒否されることがあります。

事故発生からできるだけ早いに越したことはなく、遅くとも10日以内には提出するようにしましょう。ただ、怪我によっては事故から数週間経ってから症状があらわれるものもあります。その場合は、症状があらわれてからなるべく早めに病院を受診して、診断書を取得することが大切です。

警察へ診断書を出して人身事故への切り替えをする流れ

物損事故から人身事故へ切り替える手順・流れ

▲物損事故から人身事故へ切り替える流れ

流れをまとめると、次のようになります。

  1. 整形外科に行って診断書をもらう
  2. 加害者側の保険会社に連絡をしておく
  3. 事故現場を管轄している警察署にあらかじめ連絡を入れておく
  4. 警察署の交通捜査係に診断書を提出して手続きを行う

診断書を提出して、無事に物損事故から人身事故への切り替えができたら警察署で実況見分を行ってもらいましょう。その際は極力、加害者と被害者の双方が立ち会い、事実のみを話してください。

加害者に「診断書を出さないで」と言われることも?

交通事故の加害者が被害者に対して「診断書を出さないでほしいです」とお願いすることがあるようです。加害者の要求に応じてしまうと、被害者にとっては、慰謝料の請求や過失割合などさまざまなデメリットを被ってしまいます。

なぜ加害者は、このような要求を行うことがあるのでしょうか。その理由について詳しく見ていきましょう。

人身事故の場合は刑事責任や行政責任を課せられる可能性が高いため

人身事故は、物損事故と違い「犯罪」が成立します。刑事責任や行政責任が課されると、罰金や禁固、懲役、懲戒解雇されて失業、莫大な損害賠償の支払いといった可能性があるため診断書を提出しないよう求めるわけです。

しかし、被害者が身体的・精神的傷害を受ければ、今後の人生に悪影響がでる可能性があります。お金などでは解決できない重要な問題のため、必ず診断書を交付してもらい、人身事故として処理してもらいましょう。

関連記事人身事故で診断書を取り下げてほしいと言われたら?対処法やデメリットを解説

交通事故で診断書を警察に出すことで人身事故扱いにできる

もし交通事故の被害にあったら、すぐに医師の在籍している病院を受診し、診断書の作成を依頼してください。その後、警察に提出することで人身事故扱いにすることができます。物損事故扱いのままではデメリットしかありませんので、必ず提出するようにしましょう。

参考
1)日本損害保険協会HP:交通事故-被害者のために-「自賠責保険とは? 請求方法や必要書類を解説」

この記事を監修したのは…

理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

この記事の執筆者

理学療法士 / 柿野 俊弥
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

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