交通事故によるむちうちで目の症状…眼科への通院や対処法を解説
監修記事
柿野 俊弥
理学療法士
むちうちは、首や肩に症状があらわれるというイメージを多くの方がお持ちだと思います。しかし、実際には腰や後頭部の痛み、目の疲れや複視・視界がぼやける、頭痛、吐き気、倦怠感などの症状を伴う可能性もあります。
その中でも今回は、目の症状について解説していきます。交通事故後の目の症状には、むちうちが原因で起こる症状と、眼球や視神経に損傷を受けたことで起こる症状があります。
交通事故後に目の調子が悪い場合は、早めに眼科を受診して検査を受けることが重要です。
交通事故後に視力低下がみられる、目がぼやける、目がかすむ、目の奥が痛い、眼精疲労があるという方や目の後遺症が心配という方はぜひ参考にしてください。
-
まずはお気軽にご連絡ください
- 電話受付時間 9:00~22:00
-
LINEで無料相談
(24時間365日、受付) -
WEBで無料相談
(24時間365日、受付)
目次
交通事故によるむちうちが原因の目の症状
交通事故後にあらわれる症状として、最も代表的なむちうちですが、首や肩、腰に痛みがあらわれるだけではありません。目の症状があらわれる可能性もあります。
むちうちが原因で起きている症状のため、むちうちが緩和するとともに目の症状もなくなっていくと考えられます。ここでは、むちうちによりどのような目の症状があらわれることがあるのかを解説します。
視力低下・目がぼやける・目がかすむ
視神経や眼球自体に損傷はなくても、むちうちによって交感神経や副交感神経に異常をきたし(バレー・ルー症候群)、ピントを調節する機能「毛様体筋の活動」や、傾きを感知する「前庭神経」を介して眼球運動に異常をきたして、物が二重に見えたりぼやけたりすることがあります。
眼精疲労・目の疲れ
むちうちにより頚部にある交感神経が刺激される(バレー・ルー症候群)ことで、目が疲れる、光が眩しいなどの症状が出ることがあります。
眼精疲労の原因の一つには、先述したピントの調節を担当する「毛様体筋」がかかわっています。毛様体筋は自律神経のはたらきで活動しており、むちうちで交感神経が優位になると毛様体筋が緊張し続け、目の疲れにつながります。
また、周囲が明るいときは瞳孔を小さくする「瞳孔括約筋」がはたらき、周囲が暗いときは瞳孔を大きくする「瞳孔散大筋」がはたらきますが、瞳孔散大筋は交感神経がかかわっています。つまり、むちうちで交感神経が優位になることで、瞳孔が開き、光が眩しいという症状があらわれやすくなります。
目の奥が痛い
目の奥が痛い場合は「三叉神経」と呼ばれる神経が損傷している可能性があります。三叉神経は、主に顔面の感覚を支配している神経です。顔面に広く分布しており、交通事故によって、むちうちとともに三叉神経が損傷する場合があります。
目の奥の痛みに加えて、顔面の麻痺や食べるときに口からこぼれるなどの症状も見られた場合は、三叉神経の障害である可能性が高いといえます。
目以外にもみられるむちうちの症状
むちうちは目の症状以外にも、肩・首・腰の痛み、肩・背中の張り、手や足のしびれ、頭痛、吐き気、発熱、めまいなどの症状があります。
むちうちは頚椎捻挫型・神経根症状型・バレー・ルー症候群・脊髄症状型、神経根+バレー・ルー症候群型という5種類の病型に分類され、それぞれで症状が異なります。目の症状はバレー・ルー症候群に特徴的な症状です。
目の症状も引き起こすバレー・ルー症候群
バレー・ルー(バレリュー)症候群は、交通事故によるむちうちに伴い自律神経が刺激を受け、バランスが乱れることによって発症します。主な症状は、眼精疲労・目のかすみ・二重にみえる・頭痛・手足のしびれ・発汗などです。
関連記事バレリュー症候群とは?症状や通院先、後遺障害の認定などを解説
むちうちの症状はいつごろ出る?
むちうちは、受傷当日から翌日にかけて、症状が出ることが多い怪我です。ただし、症状の出現には個人差があり、数日後や数週間後に症状が出るケースも少なくありません。
とくに、神経障害の場合は症状が緩やかに進行することもあるため、交通事故から少なくとも2週間程度は注意しましょう。受傷後に症状がなくても「問題なし」と自己判断をせず、医療機関を受診することが大切です。
関連記事むちうちとは?原因から症状・治療法や慰謝料まで徹底解説!
むちうちによる目の症状への対処法
むちうちによる目の症状への対処法としては、まず眼科を受診しましょう。原因をはっきりさせなければ、自分でできる効果的な対処法も見つかりません。交通事故によって生じた目の症状であることを医師に伝え、必要に応じて検査をしてもらってください。
受診後は原因に応じて、以下のような対処法を行うと良いでしょう。医師に相談した上で行うと安心です。
- 目を温める
- スマホやPCの使用時間・光の強さ・画面との距離を調整
- 目を適度に休ませる
- 十分な睡眠
- 同じ姿勢で長時間作業しない
- 点眼薬の活用 など
むちうち等、交通事故後の痛みや違和感でお困りではありませんか?
「交通事故病院」の相談窓口なら、交通事故後の通院先について無料相談できます。
質問・ご相談・ご予約、全て0円!
さらに、通院で最大20,000円のお見舞金もあり!(※お見舞金の詳細はこちら)
まずはお気軽にご連絡ください。
(電話受付時間 9:00~22:00)
むちうち以外で交通事故後に目の症状が出る原因
むちうちによる目の症状以外にも、交通事故の衝撃により眼球が直接傷ついたり、視神経が損傷したことが原因で症状があらわれることもあります。
ここでは、眼球やその周辺が直接損傷を受けたときの症状について説明します。
眼球や視神経の損傷
交通事故の衝撃により眼球が傷ついたり、視神経が損傷したりした場合、視力低下の可能性もあります。
また、眼の障害には眼球の障害とまぶたの障害の2つがあり、分類される障害が異なります。
- 眼球の障害:視力障害・調節機能障害・運動障害・視野障害
- まぶたの障害:欠損障害・運動障害
交通事故後、目の症状がある場合は眼科を受診しましょう
交通事故後、最初に整形外科を受診される方も多いでしょう。しかし、眼に違和感や調子が悪いと感じていた場合、整形外科では異常なしと診断されることも珍しくありません。
そんな場合には、眼科へ受診し診断してもらいましょう。
眼科で検査を受けて原因を把握しましょう
交通事故後、眼に違和感を感じ眼科を受診した場合、症状が初期段階であれば眼球の縫合処置と細菌感染対策を行ってもらえます。また、眼球破裂と診断された場合は、CT検査や超音波検査にて異物迷入がないか確認し手術を行います。
眼の痛みだけでなく、首や肩に痛みを感じたり、頭痛やめまい、吐き気などの自覚症状がある場合は、むちうちの可能性があります。その場合には、整形外科へ受診するようにしましょう。
関連記事整骨院と整形外科の違いは?どっちがいいか症状やケースにあわせて解説!
通院期間が長くなってきたら症状固定へ
交通事故後、6ヶ月以上通院が続く場合、担当医師より「これ以上治療を続けても改善の見込みがない」と判断される場合があります。この状態を「症状固定」といいます。
6ヶ月以上通院が続きそうな場合は、担当医師と相談し症状固定を検討しましょう。
症状固定後は後遺障害等級認定の申請を
症状固定と診断されたら、医師に後遺障害診断書の作成を依頼し、後遺障害等級認定の申請を検討してみましょう。後遺障害等級認定を受けることで、加害者側に後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益を請求できるというメリットがあります。
眼科に通った場合の後遺障害等級は?
後遺障害とは、交通事故と症状の因果関係が証明された上で、労働能力が低下したことを指します。その上で、怪我の箇所や程度によって1~14級までの「等級」に分類されます。目の症状に関しては、1~13級の等級にわけられます。
後遺障害として認められる目の症状
後遺障害として認められる目の症状として、以下の内容が挙げられます。
- 視力障害:矯正をしても、一定以上の視力の回復が見込めない状態をいいます。
- 調節障害:レンズのように焦点を合わせる機能が低下した状態をいいます。
- 運動障害:眼球に著しい障害を残すものとし、注視野※が1/2以下に減じた場合を指します。
- 視野障害:正常な状態であれば見える角度の合計が60%以下になった状態を指します。
- 欠損障害:まぶたを閉じた時に黒目を完全に覆えない状態(著しい欠損)もしくは、覆えるももの白目が見えている状態(一部欠損)を指します。
※注視野とは、頭部を固定した状態で、眼球だけを動かして直視できる範囲のこと。
むちうちと視力低下の因果関係を証明するのは難しい
むちうちにより視力低下が引き起こされることもありますが、むちうちと視力低下の因果関係を立証することは難しいといわれています。
そのため、後遺障害等級としてはむちうちによる神経障害が残ったものとして12級か14級の認定を目指すことになります。
関連記事交通事故の後遺症で認定される後遺障害等級14級とは?慰謝料の基礎知識について解説!
眼科での目の症状に合わせた検査
目に後遺障害が残っていると立証するには、症状に合わせた検査を行う必要があります。どのような検査が行われるのか、それぞれご紹介します。
視力障害の検査
視力の低下を確認するために、万国式試視力表を用いた視力検査が行われます。
万国式試視力表とはアルファベットのCの形をしたランドルト環やアラビア数字を用いて作られたもので、切れ目の方向を答えさせることで視力を確認します。
メガネやコンタクトレンズで矯正をしても、視力検査で視力の低下が確認された場合にはじめて後遺障害として認定されることになります。
ほかにも、以下のような検査が行われる場合があります。
- スリット検査:細長い形状にした光を眼球に当てて眼の表面や内部を確認
- 直像鏡による検査:眼の後ろ側を観察できる直像鏡という道具を用いて内部を確認
- ERG検査:網膜に光を当てて電気信号の変化から網膜のはたらきを調べる
- VEP検査:網膜に光を当てて大脳の視覚を司る部位の電気信号の変化を調べる
調節障害の検査
アコモドポリレコーダーという装置を用いて、眼の調整力を測定します。
ただし、眼の調節機能は加齢によって失われることもあり、被害者が55歳以上であった場合は後遺障害として認められない場合もあります。
運動障害の検査
眼球の周りを囲んでいる筋肉の内、いずれかが麻痺したことで注視野が狭くなったり、複視で物が二重に見えることがあります。注視野を確認するには、ゴールドマン視野計という器具が用いられます。複視の場合は、ヘススクリーンテストが行われます。
ヘススクリーンテストとは、赤緑メガネをかけた状態で指標を見て両目の動きが正常に行われているかを調べる検査方法です。ただし、ヘススクリーンテストを行うための装置は一般的な眼科では取り扱われていない場合があります。受診した眼科に装置が取り扱われているか、あらかじめ確認しておきましょう。
視野障害の検査
ゴールドマン視野計を用いて視野を確認します。
日本人の平均的な視野は、耳側に約95度、鼻側に約60度、上側に約60度、下側に約70度といわれており、正常な状態とされています。これより60%以下に視野が狭まった場合、視野障害と判断されるということです。
後遺障害等級によって請求できる慰謝料は異なる
後遺障害慰謝料は、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」の3つの基準をもとに算出されます。それぞれの基準ごとで請求できる慰謝料の金額が異なり、最も低い金額が自賠責基準となり、最も高い金額で算出される基準が弁護士基準となります。
任意保険基準は、自賠責基準より高く弁護士基準より低い金額となりますが、保険会社により異なるため明確ではありません。
眼に後遺障害が残った場合、請求できる金額は以下になります。
等級 | 内容 | 自賠責基準 | 弁護士基準 |
---|---|---|---|
第1級 | 両眼が失明したもの | 1,100万円 | 2,800万円 |
第2級 | 一眼が失明した状態、及び他眼の視力が0.02以下 両眼の視力が0.02以下 |
958万円 | 2,400万円 |
第3級 | 一眼が失明した状態、及び他眼の視力が0.06以下 | 829万円 | 2,000万円 |
第4級 | 両眼の視力が0.06以下 | 712万円 | 1,700万円 |
第5級 | 一眼が失明した状態、及び他眼の視力が0.1以下 | 599万円 | 1,440万円 |
第6級 | 両眼の視力が0.1以下 | 498万円 | 1,220万円 |
第7級 | 一眼が失明した状態、及び他眼の視力が0.6以下 | 409万円 | 1,030万円 |
第8級 | 一眼が失明した状態、又は一眼の視力が0.02以下 | 324万円 | 830万円 |
第9級 | 両眼の視力が0.6以下、又は一眼の視力が0.06以下 | 245万円 | 670万円 |
第10級 | 一眼の視力が0.1以下 | 187万円 | 530万円 |
第11級 | 両眼の眼球に著しい調節機能障害、又は運動障害を残す状態 両眼のまぶたに著しい運動障害を残す状態 一眼のまぶたに著しい欠損を残す状態 |
135万円 | 400万円 |
第12級 | 一眼の眼球に著しい調節機能障害、又は運動障害を残す状態 一眼のまぶたに著しい運動障害を残す状態 |
93万円 | 280万円 |
第13級 | 一眼の視力が0.6以下 | 57万円 | 180万円 |
自賠責基準と弁護士基準では、約2倍近く金額が異なります。後遺障害でお困りの方は一度、弁護士に相談してみるのがいいでしょう。
弁護士監修交通事故で通院したら慰謝料はいくらもらえる?計算方法も解説
交通事故による目の症状が後遺症になりそうな場合にしておきたいこと
「交通事故によって生じた目の症状が、治療を続けているのになかなか治らない」という場合は、後遺症になる可能性があります。後遺症になると、これまで請求出来ていた治療費や入通院慰謝料が請求できなくなります。
そこで後遺症になりそうだと感じた場合にやっておくべき3つのことをご紹介します。
6ヶ月以上の定期的な通院を継続する
後遺障害等級に認められやすくなるように、まずは症状固定と医師に判断されるまで(およそ治療開始から6か月程度経過してからが多い)定期的に通院するようにしましょう。
後遺障害等級に認められるには、基本的に最低6か月以上の通院期間が必要だとされています。通院期間が短いと、本当に後遺症があるのか疑われてしまうため、症状固定までは定期的に通院してください。
眼科で必要な検査を受けて後遺障害診断書に記載
後遺障害等級に認められるには、客観的な証拠も大切になります。そこで最も重要なのが「後遺障害診断書」です。後遺障害等級は、各等級に一定の基準が定められています。
検査結果がなければ、基準を満たすかどうかが判断できないため、申請しても後遺障害として認められることはありません。眼科で必要な検査を受け、後遺障害診断書に結果を記載してもらい、後遺障害等級の申請時に提出しましょう。
交通事故に理解のある眼科や整形外科に通院する
患者が正当な補償を受けるために、医師は書類作成や保険会社への対応、診断書の作成、場合によっては弁護士への対応などを行う必要があります。
そのため、事故による怪我の治療経験が豊富で、理解のある眼科や整形外科への通院がおすすめです。
関連記事交通事故でおすすめの整形外科の選び方|病院以外の通院先も紹介
むちうちによる目の症状まとめ
むちうちを原因とする目の症状は、眼精疲労や目のかすみ、目の奥の痛み、ものが二重にみえるなどの症状があらわれることがあります。また、むちうち以外にも交通事故の衝撃で眼球や視神経を損傷している場合、視力低下や眼球の運動障害といった症状がみられます。
ご自身の状態に合わせて、眼科と整形外科への受診を考えてみてください。その際は、交通事故に理解のある通院先を考えて選んでおくと安心です。
通院期間が長くなってきたら、担当医師と相談し後遺障害の認定を受けることをお勧めします。
参考
1)公益財団法人鳥取県医師会:目の奥の痛み-顔面の痛みは三叉神経-
2)日本眼科学会:調節の緊張緩和と眼精疲労
3)日本眼科学会総会:宿題報告 IV 屈折・調節の基礎と臨床
-
まずはお気軽にご連絡ください
- 電話受付時間 9:00~22:00
-
LINEで無料相談
(24時間365日、受付) -
WEBで無料相談
(24時間365日、受付)
この記事を監修したのは…
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。
この記事の執筆者
カテゴリ一覧
交通事故に関する知識や通院について
無料でサポートいたします。