軽い追突事故でも病院へ?自覚症状がなくとも病院へ行くべき理由とは
監修記事
世良 泰
医師(整形外科他)
普段から車移動をする地域だと「信号待ちをしていたら、軽く追突された」といった話は、身の回りでも耳にしますよね。
そうした軽い追突事故の場合、目に見える怪我はなく、自覚症状も特にないことが少なくありません。
しかし、交通事故の大小に関わらず、病院には行くべきです。
この記事では、軽い追突事故で自覚症状がなくても病院に行くべき理由や、病院に行かなかったときのデメリットなどついて紹介しています。
実際に追突事故にあった方の体験談も紹介していますので、事故にあって病院に行くか迷っている方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
軽い追突事故では病院に行かなくてもよい?
「軽い追突事故で目立った怪我がなかったら、病院までは行かなくても良いかな?」と考えている人は少なくないでしょう。
しかし、軽い追突事故でも、表面的な怪我が見られなくても病院には行くべきだといえます。
その理由について詳しく解説します。
痛みがなくとも病院へ行くべき理由
病院に行くべき理由は次の5つです。
- 身体の内部に損傷がある可能性がある
- あとから症状が出ることがある
- 手続きで診断書が必要な場合がある
- 事故との因果関係や不正請求を疑われないため
- 通院開始が遅いと後遺障害等級認定が受けにくくなる
特に1と2に関しては、今後の健康に影響するもののため注意しなければなりません。
交通事故で多いむちうちは、症状が事故直後ではなく1,2日後に出てくることが典型的な症状経過です。
自分では自覚症状がないと思っていても、あとから症状が現れることで、身体の内部が損傷していても気付かないことがあります。
そのため、病院を受診して、きちんと検査を受けることが重要です。
事故直後に病院へ行かなかった場合のデメリット
交通事故にあった後すぐに病院へ行かなかった場合、被害者に対して様々なデメリットが生じてしまいます。
具体的にどのようなデメリットがあるのか、見ていきましょう。
交通事故と怪我との因果関係が認められない可能性がある
交通事故による怪我は、事故から時間が経過した後に症状があらわれる場合もあります。
交通事故から時間が経った後に痛みがあらわれ、病院へ行ったとしても「本当に事故が原因の怪我なのか?」と疑われてしまう可能性があります。
損害賠償を請求することができない場合がある
交通事故と怪我との因果関係が認められなかった場合、被害者は加害者に対して損害賠償を請求できなくなってしまいます。
相手側へ損害賠償を請求できなくなると、治療費に自己負担が発生する場合もあり、治療の中断といった選択を迫られる可能性もあります。
治療を続けて、身体の健康を守るためにも事故直後はできるだけ早く病院を受診しましょう。
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信号待ちで追突事故にあわれた方の体験談
ここで実際に信号待ちをしている時に、追突事故にあった方へのインタビューを抜粋して紹介したいと思います。
インタビュー記事のページでは、具体的な事故対応に加え、治療や通院についても伺っていますので、ぜひご参考ください。
赤信号で停車中に追突されたやぎぞうさん
やぎぞうさん(40代・公務員)は、同僚を乗せた車で信号待ちをしている際に追突事故にあいました。
後遺症が心配になったとのことですが、実際はどうだったのでしょうか。
―― 交通事故によりどのような症状が現れましたか?
やぎぞうさん:
「事故の翌日にむちうちの症状が現れました。最初は首の痛みだけでしたが、徐々に肩周りにも痛みが広がっていきました」
―― 事故後の症状で特に大変だったことや困ったことを教えてください。
やぎぞうさん:
「首筋の張りがいまだに残っていることと、肩周りの痛みで肩を挙げられなかったことです」
その後、整形外科と整骨院を併用して6ヶ月ほど通院されたやぎぞうさんですが、一番大変だったことを伺いました。
―― では最後に、交通事故で一番大変だったことを教えてください。
やぎぞうさん:
「本来なら仕事を休んで、治療に専念するべきだと思います。現場作業のある仕事に遅れが出てしまうのが申し訳なかったこともありますが、痛みに耐えながら働くのはつらかったです。
また、整形外科での画像検査で異常を確認できなかったため、痛みを伝えても保険会社の方は納得してくれませんでした。
そのため、定期的に保険会社から電話がきたり、後遺障害が認められなかったりと保険会社とのやりとりも苦労しました」
関連記事交通事故後、仕事しながら通院が難しい時の対処法や休業補償を解説
妊娠中、夫との外出中に追突されたnicoさん
nicoさん(20代・会社員)が事故にあったのは、ご家族とお出かけ中のときでした。
信号で停車している際に、携帯を見て前方不注意だった車に追突されたとのことですが、どのような症状が現れたのでしょうか?
―― 交通事故による症状はどのようなものでしたか?
nicoさん:
「首のむちうちと 腰と背中に痛みがありました」―― 症状は事故直後に現れたのでしょうか。
nicoさん:
「首の痛みを感じたのは、事故の数時間後です。翌日には、背中の違和感もありました」―― 事故後の症状で特に大変だったことや困ったことを教えてください。
nicoさん:
「首のむちうちが長引いてしまったことです。首だったので、下を向くと気持ち悪くなったりと大変でした」
その後、妊娠中ということもあり、整形外科で治療を受けられず困っていた際に、整骨院への通院を開始されました。
―― 整骨院に通ったペースを教えてください。
nicoさん:
「週2~3回通院しました」―― 整骨院での施術はどのような内容でしたか?
nicoさん:
「初回は念入りなカウンセリングがありました。その後にマッサージと温め*を行いました。2回目以降は、その日の特に違和感があるところを中心に、マッサージや温めといった施術をしてもらいました」*…温熱療法
また、妊娠中だったために通院先探しに苦労したというnicoさん。
その後、整形外科と整骨院に2ヶ月ほど通院されました。
関連記事整骨院と整形外科の違いは?どっちがいいか症状やケースにあわせて解説!
追突事故による怪我の通院先
たとえ信号待ちで起こったような軽い追突事故であっても、被害者は大きな怪我を負っている可能性があります。
被害者の健康を害したり、金銭的に損したりすることを防ぐためにも、交通事故の後は早めに病院へ行くことが大切です。
交通事故後の通院先は「整形外科」と「整骨院(接骨院)」があります。
それぞれの通院先でどのような治療・施術が受けられるのか、見ていきましょう。
まずは整形外科を受診して診断書を取得する
交通事故にあったら、まずは整形外科で医師の診察を受け、診断書の取得を行いましょう。
診断書は、医師のみが作成でき、交通事故後の怪我による個人情報や疾患名、受傷日時、治療期間の目安などが記載されています。
交通事故と怪我との因果関係を証明する重要な書類です。
また、医師による診察や、CT・MRIで詳しく身体を調べ、薬剤の処方、理学療法士による施術、手術など柔軟な対応も可能です。
関連記事交通事故で診断書を取得するべき理由とは?提出先や期限も解説
整骨院と併用して通院することも可能
整形外科のみでの治療が足りないと感じた場合は、整骨院と併用した通院を検討してもよいでしょう。
整骨院では、国家資格の1つである柔道整復師が、主に手技を用いて施術を行っています。
そのほかに、超音波や電気などを使った「物理療法」、体を動かすことで身体機能の回復を高める「運動療法」などの施術方法を取り入れているところもあります。
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加害者に対して損害賠償を請求するには
交通事故で怪我を負った被害者は、加害者に対して損害賠償を請求することができます。
損害賠償とは、交通事故の被害者が負ったさまざまな損害に対して、加害者が損害の埋め合わせを行うことです。
治療費を請求できるのは人身事故のみ
交通事故には「人身事故」と「物損事故」があります。
人身事故とは、交通事故によって怪我人や死亡者が発生してしまう事故のことです。
一方で、物損事故とは、交通事故による死傷者は発生せず、車や公共物などのモノのみが破損する事故のことです。
交通事故の怪我に対する損害賠償は、人身事故で処理されなければ請求することができません。
交通事故にあってしまった場合、まずは警察に連絡をし、現場に来てもらいます。軽い追突事故で、被害者が事故直後に怪我の症状を感じなかった場合は、その場で警察が「物損事故」として処理することが多いです。
もし事故から時間が経った後に痛みがあらわれたとしても「物損事故」で処理をされている場合は、被害者に対して治療や通院にかかった費用の支払いは行われません。
交通事故直後に怪我の症状がなく、物損事故扱いになっている場合は、人身事故への切り替えを行いましょう。
物損事故から人身事故へ切り替える方法
物損事故から人身事故へ切り替えるには、医師の診断書を警察署へ持っていく必要があります。
いきなり警察署へ出向くのではなく、人身事故の切り替え手続きをしたいという連絡を事前に行ってからにしましょう。
また、警察署で人身事故の切り替え手続きを行うのに、法的な期限はありません。
しかし、交通事故から時間が経過しすぎていると、交通事故と怪我との因果関係を疑われてしまうことがあります。
「交通事故による怪我」であることが証明できない場合、人身事故へ切り替えることができない可能性もあります。
人身事故への切り替え手続きを正確に行うためには、病院で診断書を取得し、事故から10日以内に警察署へ出向くとよいでしょう。
関連記事物損事故と人身事故の損害賠償の違いとは?<弁護士監修>
追突事故の被害者に対する補償
人身事故扱いで処理をした場合、被害者は怪我に対する自賠責保険の補償を受けることができます。
交通事故の被害者が、加害者に対して請求できる損害は、大きく分けて3つです。
車の修理費といった費用であれば、物損事故扱いでも請求できます。
しかし、治療や通院にかかった費用、入通院慰謝料などの補償を受けたい場合は、人身事故と扱われている必要があります。
軽い事故であっても、あとから痛みや症状が出てくる可能性は多いにあります。
自己判断は避けて、病院を受診すると良いでしょう。
関連記事むちうちは症状が出るまで数日かかる?痛みがあとから出る理由とは
信号待ちで軽い追突事故にあったら痛みがなくとも病院へ
交通事故が起こったら、どんなに軽い事故でも病院へ行くことの大切さについて、理解していただけたでしょうか。
交通事故直後に病院を受診しなかった場合、被害者に対してたくさんの不利益が生じてしまうこともあります。
被害者のさまざまな「損」を防ぐためにも、交通事故にあったら必ず病院へ行くようにしましょう。
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この記事を監修したのは…
慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。
池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/
日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター
TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員
AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー
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