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むちうちを後遺症にしない|症状や治療と後遺障害認定・慰謝料も解説

監修記事

枡中 昂也

理学療法士

むちうちが後遺症となってしまう可能性があることを、知らない方も多いのではないでしょうか?

むちうちを軽視して適切な治療を行わなければ、慢性的な症状が残ってしまう危険性があります。

この記事では首の痛みを残さないためにできることと、後遺症になってしまった際の後遺障害の等級認定の申請や、後遺障害慰謝料についても解説しています。

むちうちの後遺症とは?首の痛みだけじゃない様々な症状

むちうちの症状は改善することが多いですが、重症例であったり適切な治療を行っていないケースでは、むちうちが後遺症へと移行してしまう危険性があります。

また、むちうちは数時間後や数日後に症状が現れる場合もあるため、事故直後の状態を軽視せずに、まずは医療機関に相談するように心掛けましょう。

後遺症とは、病気や怪我によって治療やリハビリを行っていたものの、症状が改善せずに残ってしまうことです。

症状の改善がこれ以上見込めないことを「症状固定」といい、医師に症状固定であると判断されると、「後遺症」としてみなされます。

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

症状固定の目安となる期間は、事故から約6カ月が経過した頃となる場合が多いです。
しかし、怪我の状態によっては1年以上の期間が必要となる場合もあり、治療とリハビリを継続しながら医師や保険会社に相談をすることが大切です。

関連記事むちうちの症状が続く期間は?痛みが引かないときの対処法と休業損害

むちうちの症状とは?むちうちが原因で起こる症状の例

▲むちうちが原因で起こる症状の例

また、むちうちの症状は首の痛みだけではありません。

「むちうち」とまとめて使用されることが多いですが、詳細な病名としては外傷性頚部症候群といわれる頚椎捻挫や頚部挫傷、神経根症などの頚椎椎間板ヘルニア・頚椎症性神経根症、脊髄損傷といった疾患名として診断されます。

▼むちうちの症状の例

  • 痛み(首回り・頭部・頚椎・腕)
  • 痺れ(首回り・頭部・頚椎・腕)
  • 凝り(首・肩・背中)
  • 耳鳴り
  • めまい
  • 眼精疲労感
  • 倦怠感
  • 吐き気
  • 不眠
  • うつ状態  など

ここからは、具体的なむちうちの後遺症の症状について見ていきましょう。

首の痛み

むちうちの後遺症として、首の痛みは頻繁に見られます。「朝起きるとき」「首を振ったとき」など何らかの動きに伴い、痛みも強くなることが特徴です。

むちうちは、追突事故など外から加わる力により首が無理な方向に動かされたことで組織を損傷し、痛みが生じます。

後遺症がある場合は、損傷した筋肉や関節が治癒できていない可能性が考えられます。

筋肉などの組織が治っていても、神経の過敏化によって痛みが残っている場合もあります。神経が過敏になる原因は、痛みの長期化です。長期間痛みが続くと、神経が痛みを感じやすくなる場合もあります。

頭痛

むちうちから来る頭痛の痛みの特徴:脈拍に合わせて痛む・後頭部~頭頂部が締め付けられるような痛み

▲むちうちから来る頭痛の痛みの特徴

むちうちによる頭痛は、緊張型頭痛の可能性があります。

緊張型頭痛とは、首や肩回りの筋肉の硬さから、頭部を巡る血流が悪くなったり、精神的なストレスがかかったりすることで痛みを引き起こしたものです。

基本的に、むちうちが治癒されるに伴い頭痛も消失します。

しかし中には、頭蓋骨や脳の損傷で頭痛を引き起こしている場合があります。次のような症状が思い当たる方は、すぐに病院を受診しましょう。

  • 吐き気を伴う頭痛
  • 手足の動きづらさを伴う頭痛
  • 頭をバットで殴られたような激しい頭痛

関連記事むちうちによる頭痛はどんな痛み?感じ方は天気に左右される?

肩こり

むちうちが原因で、肩こりが残る場合もあります。

今まで寝違えたことはあるでしょうか?寝違えたときは、首に痛みがあるためできるだけ動かさないようにしますよね。それによって「肩周りが凝った」経験のある方は少なくないでしょう。

同じように、むちうちによる症状が続くと意識的に動かさないようにするため、肩こりが起こる場合があるのです。肩こりを改善するには、首の痛みなどの治癒が必要になります。

気圧の変化による悪化

むちうちの後遺症は、天候に影響を受けて症状を悪化させることがあります。

天候の中でも特に影響があるのは「気圧」です。低気圧のとき「頭痛や首の痛みがひどい」と訴える人は少なくありません。

このようなことが起こる理由としては、普段よりも受ける圧が低いことで、血管が膨張し神経を圧迫するためです。

低気圧のとき自律神経の副交感神経が優位になることも、血管膨張に影響しています。

むちうちの後遺症があると後遺障害等級は何級になる?

むちうちが症状固定になったらすべきこと:後遺障害診断書を貰う・後遺障害等級認定を受ける

▲むちうちが症状固定になったらすべきこと

むちうちの治療やリハビリを継続していたが、症状が改善せずに「症状固定」と医師から診断された場合、その残った症状が「後遺障害」であると認定されれば「後遺障害慰謝料」などが請求できます。

後遺障害等級は、1〜14級まで分けられており、後遺症がいずれかの基準を満たすと認定される仕組みです。

ここでは、むちうちで後遺障害認定に申請をした場合、認定される可能性のある等級について解説します。

後遺障害等級14級(14級9号)

むちうちの後遺症は、「後遺障害等級14級9号」に該当する場合があります。

14級9号は「局部に神経症状を残すもの」と定められています。

つまり、交通事故などで受けた損傷によりむちうちを発症し、いまだ何らかの神経症状を残している場合に、後遺障害等級14級9号に認定されます。

神経症状が残っていることを証明するには、知覚検査・徒手筋力検査といった神経学的検査や自覚症状などから、神経症状を残していることを推定できる必要があります。

後遺障害等級12級(12級13号)

むちうちの後遺症の程度が重い場合は、「後遺障害等級12級13号」に認定される可能性があります。

12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」と定められています。

14級9号と12級13号との違いは、「頑固な」神経症状かどうかです。

「頑固な神経症状」を示すには、医学的検査による証明が必要になります。例えば、MRI検査や血液検査などが挙げられます。

関連記事むちうちで後遺障害認定を受けられる確率は?認定率を高める対策も解説

むちうちの後遺症による後遺障害慰謝料や補償

交通事故の慰謝料の3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)

▲交通事故の慰謝料の3つの基準

むちうちの後遺症が後遺障害と認定されると、後遺障害慰謝料や補償を請求できます。

後遺症(後遺障害)があれば後遺障害慰謝料の請求が可能

後遺障害として認定されると、加害者側に対して後遺障害慰謝料を請求できます。

請求できる金額は、認定された等級により異なります。ここでは、先述した12級13号と14級9号で請求できる慰謝料額を見てみましょう。

▼請求できる慰謝料額の相場

自賠責基準 弁護士基準
12級13号 94万円 290万円
14級9号 32万円 110万円

弁護士監修交通事故で症状固定と言われたら?後遺障害も解説

むちうちの後遺障害等級認定の申請の流れ

checkmark,チェック

後遺障害慰謝料を請求するためには、まず後遺障害診断書を取得し後遺障害の等級認定への申請が必要です。

1.後遺障害診断書の取得

後遺障害の等級認定の申請には、まず後遺障害診断書を取得しなければなりません。

後遺障害診断書は医師が作成しますので、主治医に後遺障害診断書を作成してもらいましょう。

また、むちうちの後遺障害診断書を医師が作成する際には、治療経過の記載だけではなく身体検査による現状把握が必要不可欠です。

身体検査ではレントゲンやMRIなどの画像所見、筋力や関節可動性、病的反射などの検査を医師が行い総合的に判断されます。

これらの検査結果から、むちうちの後遺症が実際に存在するか判断するため、後遺障害診断書作成は非常に重要です。

2.後遺障害の等級認定を申請する

後遺障害診断書を医師に作成してもらった後は、後遺障害等級認定を申請する必要があります。

後遺障害等級認定を申請する手続きには「事前認定」と「被害者請求」の2つの方法があり、双方のメリットとデメリットを理解しておくことが重要です。

事前認定

事前認定では任意保険会社が請求に必要な書類や資料を全て揃えてくれ、被害者側は手間がかからないメリットがあります。

しかし、被害者に有利な追加書類の添付ができないため、提出書類の質を高めることができないデメリットがあり、後遺障害慰謝料が減額されたり申請が認定されない可能性もあります。

被害者請求

被害者請求では被害者側が申請書類などを揃えなければならず、手間が掛かってしまうことがデメリットといえます。

しかし、提出時には被害者側に有利な追加書類を添付でき、提出書類の質を高めることが可能で、後遺症の症状を正確に審査機関に伝えられるといったメリットがあります。

これによって後遺障害等級が適切に認定される可能性が高まり、手間はかかるものの被害者側には有利な請求方法といえます。

3.後遺障害に認定されたら後遺障害慰謝料を請求できる

交通事故で後遺障害が認定された場合には「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。

後遺障害慰謝料の金額は後遺障害等級によって決定され、後遺症の重症度に比例して慰謝料が増額します。

また、後遺障害慰謝料は飲酒運転・ひき逃げの有無など加害者側の過失などによって増額されるケースと、被害者側にも事故の原因がある場合には減額されるケースもあります。

4.異議申し立てをする場合も…

後遺障害の等級認定の申請を行っても等級が認定されないことや、想定していた等級よりも低く認定されてしまうケースがあります。

このように満足できない等級となった場合には異議申し立てによって改めて再度申請を行う必要があります。

むちうちの後遺症は数年・10年以上残るケースも

交通事故によるむちうち等の症状で整形外科と整骨院を併用通院した期間

▲交通事故によるむちうち等の症状で通院した期間の集計結果

交通事故にあった後、症状が軽いからといって放置するのは推奨できません。小さな異常から大きな異常に変化するケースは少なくなく、後々、重大な怪我に陥る可能性があります。

悪化した症状は、後遺症となって数年〜10年以上残るケースもあります。事故直後は、無症状でもすぐに病院を受診し、異常がないか診てもらいましょう。

関連記事むちうちは症状が出るまで数日かかる?痛みがあとから出る理由とは

むちうちを後遺症にしないためには適切に治療・通院する

むちうちが後遺症となってしまうと身体的な症状だけではなく、うつ傾向などの精神的な影響も現れ、仕事や私生活に支障をきたしてしまいます。

そのためにも交通事故後は医療機関などで医師の診断を受け、身体の状態を把握し、必要であればむちうちに対する治療とリハビリを継続することが重要です。

交通事故後にむちうちを発症した場合には病院や整形外科で医師の診断を受けて身体の状態を把握し、必要であればむちうちに対する治療とリハビリを継続することが重要です。

場合によっては、整骨院での施術を検討してもいいでしょう。その際には交通事故に対応しているか確認してください。

いずれにせよ自己判断で治療・施術を終了することは避け、適切な診断のもとに治療・施術が終了するまで通院するようにしましょう。

具体的なむちうち症状に対する治療や施術

整骨院・接骨院で受けられる施術の種類

▲整骨院・接骨院で受けられる施術の種類

むちうちの症状に対する治療や施術には様々な方法があり、痛みや症状に合わせて適切なものが選択されます。

主な治療方法である投薬治療、徒手療法、物理療法、運動療法についてご紹介します。

投薬治療

投薬治療とは薬によって痛みを抑制する治療方法です。むちうちに対する治療としては、主には湿布などの外用薬と飲み薬などの内服薬に分類されます。

薬の成分としては、消炎鎮痛作用という炎症を抑制して痛みを緩和させる作用が主となり、事故直後の炎症による痛みに特化した治療方法です。

安静時痛や動作時痛などの私生活や仕事に支障をきたしている方や、夜間痛で睡眠障害が発生している方などは医師に相談してみましょう。

徒手療法

徒手療法とは理学療法士や柔道整復師などの有資格者による「手を使った施術」です。

主に筋肉などの軟部組織に対するマッサージや、関節をほぐす手技などを一人ひとりの状態に合わせて施術します。

痛みや違和感などに関連した筋肉や組織をほぐし、硬くなった関節の可動性を改善させることで日常生活や仕事の復帰を目指していきます。

また、リラックス効果も報告されており、痛みによる心理的な影響にも効果的な施術です。

物理療法

物理療法は電気や超音波、光線、温冷などの熱といったエネルギーを利用する機械を用いた治療方法です。

物理療法では痛みの緩和や循環の改善、リラックス効果などが期待でき、事故直後の急性期から慢性的な痛みまで幅広い症状に適応できます。

運動療法

運動療法は名前の通り「運動」を用いた治療方法です。事故による炎症の痛みが和らいできた時期に適応となる治療方法で、関節や体を正しく動かしながら、柔軟性の改善や筋力強化、筋バランスの修正などを目的として行われます。

自宅で行うことのできるセルフケアなどにも活用できるため、むちうちを後遺症にしないために非常に重要な方法といえます。

関連記事整骨院と整形外科の違いは?どっちがいいか症状やケースにあわせて解説!

まとめ

POINT ポイント まとめ

今回はむちうちを後遺症にしないための方法や後遺障害の等級認定、後遺障害慰謝料などについてご紹介しました。

むちうちは交通事故直後の痛みの有無だけでは判断できず、数時間から数日後に症状が現れることがあります。

また、症状も前述したように様々ですので、まずは医療機関に相談しましょう。その中で、あなたの症状に合ったむちうちの治療・施術方法を選択してくれますので医師や専門家に相談してみてください。

むちうちを後遺症にしないためには適切な診断を受けた上で、症状に合わせた治療を行い定期的に通院することが非常に重要です。むちうちの症状で悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。

この記事を監修したのは…

理学療法士として整形外科病院で患者様に対するリハビリテーションを担当。
現在は病院勤務を行いながら、Webライターとして医療に関する情報発信を行っている。

この記事の執筆者

理学療法士 / 枡中 昂也
理学療法士として整形外科病院で患者様に対するリハビリテーションを担当。 現在は病院勤務を行いながら、Webライターとして医療に関する情報発信を行っている。

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