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むちうちは一生治らないって本当?完治に向けできる治療や対処法とは

監修記事

河野 裕也

理学療法士

交通事故によるむちうちの症状が出現し、治療・通院されている方は非常に多いです。

むちうちの症状がなかなか改善しないと「もしかして一生治らないのでは?」と不安になってしまうのも仕方ありません。

しかし、多くの場合でむちうちは治っています。

一方で、治療が長期化する方や、後遺症が残ってしまう方がいるのも事実です。

今回は交通事故のむちうちをしっかりと完治させるための治療や対処法を解説しています。

むちうちは後遺症になる可能性がある

「むちうち」とは?発症の原因や症状等

▲「むちうち」とは?発症の原因や症状等

ほとんどの場合は時間の経過とともに症状が改善していき、完全に回復することが期待されます。

しかし、一部のケースでは症状が長期化したり、後遺症として残ってしまったりすることもあります。

交通事故では頭部や頚部に想像以上の強い衝撃が加わります。そのため、事故の重症度によっては後遺症になる可能性があります。

また、事故直後から適切な治療を受けるか受けないかも後遺症の発症に影響があると考えられます。

さらに事故前にすでに首部分などに問題があった場合(頚椎椎間板ヘルニアを患っているなど)、それが症状を増幅させて後遺症となる可能性もあります。

そして、むちうちの回復には個人差が大きく、同様な交通事故でも出現する症状や回復の過程は人それぞれ異なります。

ただし多くの場合でむちうちは治っている

交通事故によるむちうち等の症状で整形外科と整骨院を併用通院した期間

▲交通事故によるむちうち等の症状で通院した期間の集計結果

むちうちの症状は、軽症例の場合や、軽症でなくとも適切な治療を受けることで多くの場合は回復しています。

その根拠として、一施設のむちうち症状を有する989名の治癒率を報告した論文*では97.4%が1年以内に完治したと報告されています。

症状が長期化するケースとしては、神経の損傷や骨のずれによる神経圧迫など、身体の構造上の問題は後遺症を伴いやすいと言われています。

しかし、実際にはそれだけでなく医療機関の通院や治療を怠ってしまうことによる不適切な管理も多いです。

また、痛みは心理的要因の影響を受けるものであり、悩みを1人で抱えてしまう方は痛みの症状が残りやすいでしょう。

他にも、痛みが長期化してしまうことで触覚などの別の刺激を痛みとして脳が受け取ってしまうこともあり、これを神経障害性疼痛と言います。

1年以内に完治するケースがほとんどですが、むちうち症状は早期より治療することが望ましいでしょう。

*出典:香川,堺 (2017). 交通事故によるいわゆる“むち打ち損傷”の
治療期間は長いのか―損害賠償を含む心理社会的側面からの文献考証―
 共済総合研究, 75,98.

むちうちを完治させるために必要なこと

むちうちは軽症例であれば、自然治癒でも回復することはあります。

しかし、自然治癒では完治が困難な方が多いのも事実であり、その場合はどのようにしたらよいのでしょうか。

適切な診断と治療を受けること

むちうちの症状を自覚したら、すみやかに医療機関を受診しましょう

特に交通事故といった大きな外力が働いて受傷した場合には、頚椎症など他の病気の可能性も考えなければなりません。

MRICTなど精密機械を用いた画像評価はむちうちの診断に有用です。

交通事故後に行われるレントゲン検査とCT・MRI検査の違い

▲交通事故後に行われるレントゲン検査とCT・MRI検査の違い

診察により医師から適切な診断を受けることは、その先の治療を決定していく上で必要になります。

症状にもよりますが、むちうちによる治療は大きく分けて2つあります。

  1. 痛み止めや湿布
  2. リハビリなどの施術

医師は症状に合わせた対処法を選択することができます。

身体の構造自体の損傷や、症状の進行リスクがある場合には手術が必要になるので、自己判断ではなく医師に相談しましょう。

症状によりリハビリや施術を受ける

画像検査の結果、特に大きな問題がない場合には、リハビリや施術を受けることで症状が緩和することがあります。

むちうちの症状で多い訴えは以下の通りです。

  • 痛み
  • 指先の痺れ
  • 頭痛や吐き気

特に「痛み」は時期によって原因が異なります。

炎症由来の痛みは冷却と安静による対処が必要であり、リハビリや施術治療の対象になるのは筋肉由来の痛みです。

関連記事交通事故で整形外科へ…なぜリハビリしてくれないの?転院するべき?

むちうちが長引きやすい理由

痛みを回避するために不適切な姿勢を繰り返してしまうと、その姿勢を維持するために必要以上に筋肉に負担をかけてしまいます。

その状態が長期化することで筋肉自体に痛みを伴い、最初は首だけであった痛みが腰にも出現してしまうことになります。

筋肉は骨に付着するため、偏った筋活動は骨をずらしてしまうこともあります。
その結果神経を圧迫してしまうと指先の痺れに発展してしまいます。

つまり、適切な治療を受けなければ、症状を悪化させる悪循環に陥ってしまいます。

自分が正しいと思っている姿勢が間違っていることもあるので、治療が必要な場合は通院を心がけるようにしましょう。

むちうちを放置するとどうなるのか

むちうちを放置すると、頚部や肩、背中などに慢性的な痛みが残る可能性があり、日常生活や仕事に支障をきたすことがあります。

慢性的な痛みは精神衛生上にも悪影響を与え、うつ病や不安症などを発症する可能性があります。

また、むちうちでは痛みだけでなく頚部の筋肉や靭帯が損傷し硬くなることで、頚部の可動域の制限が生じます。

頚部の可動域が制限されると頚部の動きを背中や腰で代償することが多くなり、背中や腰の痛みなどの二次的な身体の痛みが生じることが考えられます。

痛みを回避するような姿勢をとることで姿勢のバランスも崩れていきます。

放置することによって、場合によっては症状が悪化していくことも考えられます。

関連記事軽いむちうちは放置していい?病院受診の目安や治療法を解説!

むちうちを改善させたい時にできること

治療を受けていても、なかなか改善している実感が得られない場合もあるでしょう。

その際にできることを紹介していきます。

継続して治療・通院を続ける

交通事故によるむちうちは頚部(首部分)に想像以上の強い負担が加わり、頚部の筋肉や靱帯、関節包、神経など多くの組織を損傷する可能性があります。

むちうちの症状とは?むちうちが原因で起こる症状の例

▲むちうちが原因で起こる症状の例

そのため、出現する症状も頚部の痛みや腕のしびれ、頭痛、吐き気、めまい、倦怠感など様々です。

治療にも長期間が必要になる場合があります。そのため、むちうちの症状はすぐには改善しないことが多いと念頭に置いておく必要があります。

症状がなかなか改善してこなくても、焦らずにしっかりと継続して治療や通院を続ける必要があります。

また、治療を継続することは後遺障害認定を受ける際にも重要となります。

改善してる・していないにも関わらず途中で治療を中断してしまうと、むちうちが治ったものと判断されてしまう可能性があり、適切な後遺障害認定を受けられない恐れがあります。

関連記事むちうち症の通院期間はいつまで?交通事故でもらえる慰謝料とは

セカンドオピニオンを受ける

長引く症状により改善するのかどうか不安がある場合にはセカンドオピニオンを受けることも可能です。

事故直後に受診した際の医師の診断や治療計画に疑問がある場合には、別の病院の医師の診断を受けてみましょう。

治療方法や回復の見立てなど、違う意見を参考にすることで疑問が解消しやすくなります。

また、セカンドオピニオンを受ける場合には、事前に保険会社に連絡をしておく必要があります。

交通事故の場合、基本的に治療費や通院費は加害者側の保険会社が負担することになります。

そのため、セカンドオピニオンを受けることや、そのまま転院することを保険会社が承諾していない場合は、保険会社からの支払いが打ち切られてしまう可能性があります。

保険会社には事前に連絡をしておきましょう。

関連記事交通事故のセカンドオピニオンは可能?すべきことや注意点を解説

整骨院・接骨院での施術も検討する

交通事故治療で病院と整骨院の併用はできる?

▲交通事故治療で病院と整骨院の併用と注意点

交通事故によるむちうちでは、まず医療機関を受診し、医師による正確な診断を受けましょう。

そして、むちうちの症状と事故の因果関係を証明する診断書を発行してもらう必要があります。この診断書によって保険会社から適切な補償を受けることができます。

しかし、医療機関によってはリハビリ施設がなく、痛み止めや湿布などの対症療法にとどまりなかなか症状が改善しない場合もあります。

その場合は、交通事故(自賠責保険での施術)を扱っている整骨院や接骨院で施術を受けることも検討してみましょう。

柔道整復師による徒手療法や物理療法によって症状の改善が期待できます。

また、その際は医師に相談したり保険会社に承諾を得てから整骨院や接骨院に通院すると手続きがスムーズです。

関連記事整形外科と整骨院は併用できない?整骨院への通院で気になるポイント4つ

交通事故によるむちうちの通院先

むちうちによる症状にはリハビリや施術が必要な場合があります。

交通事故によるむちうちで治療を受けられる通院先を紹介します。

整形外科(病院)

交通事故後の整形外科受診は①検査(レントゲン・MRI)②診断書の発行③痛み止めや湿布の処方等ができる

▲交通事故後の整形外科受診

整形外科とは、筋肉や骨に関する患者を対象とした診療科です。

投薬や手術、レントゲンといった画像検査、診断書の発行が行えます。

また、大きな病院であればCTやMRI検査といった精密機械が充実している場合や、医師だけでなくリハビリテーション専門の理学療法士等が在籍しています。

交通事故通院における整形外科と整骨院の治療内容の違い

▲交通事故通院の病院と整骨院の治療内容の違い

整骨院(接骨院)

整骨院・接骨院は柔道整復師という国家資格者が施術を行います。

柔道整復師は骨折や脱臼、捻挫などの怪我を対象に手技を用いる施術をしていきます。

整骨院と接骨院の名称は異なりますが、治療内容などに大きな変わりはありません。

土日祝日や夜の時間帯に営業している場合も多いので、仕事や家事に忙しい人でも通いやすいことが特徴です。

関連記事整骨院と整形外科の違いは?どっちがいいか症状やケースにあわせて解説!

リハビリで行われる施術

リハビリで行われる施術は、おおよそ以下の3つに分けられます。

  • 徒手療法
    マッサージやストレッチなど、施術者が実際に患者に触れて施術をしていきます。触診により患者さまに合わせた施術が可能です。
  • 物理療法
    電気療法、牽引療法やホットパックによる温熱療法などがあります。設定した値の刺激を提供できるため、施術者の技術に左右されることがなく施術を受けることができます。
  • 運動療法
    エクササイズを中心として機能不全に陥っている筋肉の使い方を学習していきます。機能不全の改善により全身の筋バランスが整うことで体の負担を軽減することができます。

整骨院への通院は併用通院が基本

交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

▲交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

整形外科ではレントゲンといった画像検査上に問題がない場合に「異常なし」と判断されてしまうことがあります。

そうした事情から整骨院への通院を検討する方もいるでしょう。

しかし、整骨院へ通院する場合は、必ず整形外科と併用しての通院をしましょう

まず、柔道整復師は医師ではないので診療行為ができません。医師による経過観察が必要になります。

関連記事接骨院と整形外科の併用について詳しく知りたい方はこちら

むちうちの通院先を選ぶ際の注意点

交通事故によるむちうちでは、整形外科と整骨院への併用通院ができるとわかりました。

では、いざ通院先を選ぶ際にどのように選べばよいでしょうか?

ポイントとしては以下の通りです。

  1. 通いやすさ
  2. 保険適用
  3. 治療や施術の内容
  4. 実績や評判

まず、数ヶ月に及ぶ場合もある通院を行うのはあなた自身です。立地や時間的に通院しやすいかどうかチェックしておきたいですね。

また、どんな治療や施術を受けられるのか。実績や評判も参考程度に調べておくと良いでしょう。

むちうちの治療費と保険適用について

交通事故によるむちうちの場合、基本的には加害者側の強制保険である自賠責保険によって治療費や通院費が補償されます。

自賠責保険とは、自動車やバイクを所有する全ての人に、加入が義務付けられている強制保険。交通事故の被害者の救済が目的で、補償対応は人身事故の被害者。そのため、物損事故あ対象外となる。また、請求できる賠償金には限度額が定められている。

▲自賠責保険とは?

しかし、全ての医療機関や整骨院が自賠責保険に対応しているわけではありません。

医療機関や整骨院と保険会社が契約を結ぶことで自賠責保険が適用されます。

この契約がされていない場合には医療機関であっても自賠責保険が適用されない可能性があります。

そのため、被害者が自賠責保険を利用して治療を受ける場合には、事前に医療機関に自賠責保険に対応しているかどうかを確認する必要があります。

また、保険会社にもあらかじめ確認を行い、しっかりと対応している医療機関を選択するようにしましょう。

関連記事自賠責保険は使うとどうなる?任意保険との併用や手続き方法を解説

もしもむちうちが治らなかったらどうすればいい?

通院を継続してもむちうちの症状が治らない場合はどうしたらよいのでしょうか。

ここでは症状固定や、後遺障害等級の認定申請に必要な手続きについて解説します。

症状固定まで通院・治療を継続する

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

治療を継続しても症状が変わらない、もしくは治療により一時的に回復しても元に戻ってしまう場合は、これ以上の回復が望めないといった状態で「症状固定」と診断されます。

医師が症状固定と判断するまでは回復の可能性があるだけでなく、治療費の支払いや休業補償を保険会社から受けられます。

そのため、継続して通院や治療は続けることをおすすめします。

後遺障害診断書を取得して後遺障害等級認定を申請する

症状固定と診断されると、後遺障害の等級認定を申請を決めたり、すすめられたりするでしょう。

その場合、まず後遺障害の等級認定や賠償金額の算出をするために「後遺障害診断書」の作成が必要です。

後遺障害診断書は、後遺障害を証明する書類であり、医師のみが作成できます。

  • 治療開始日
  • 入院や治療日数
  • 傷病名
  • 身体検査結果

記載する内容は、上記のように後遺障害の詳細が分かる内容になっています。

後遺障害の等級認定の申請方法

後遺障害等級認定の申請方法は大きく2つに分かれます。

  • 被害者請求:被害者自身が手続きを行う
  • 事前認定:保険会社が手続きを行う

つまり手続きをする人の違いになりますが、被害者請求の方が適正な等級が認定される可能性が高いです。

事前認定では情報収集といった手間が省けますが、不備があっても確認できない場合は不利な等級をつけられることもあります。

また、後遺障害として認められるための条件として、以下があげられます。

1.後遺症が交通事故が原因のもので、肉体的・精神的に損害を負っていること。
2.被害者が感じている後遺症と交通事故との因果関係が明確であること。
3.今後の生活の上で、症状が寛解(かんかい)*1・増悪(ぞうあく)*2
する見込みはないと医師に判断されていること。(症状固定)
4.後遺症の原因が、医学的に証明または説明できるものであること。
5.後遺症の症状が、自賠責保険の後遺障害認定基準に該当していること。

*1 寛解(かんかい)とは…完治したとまではいえないけれど、一時的(もしくは継続的)に症状が軽減した状態のこと。
*2 増悪(ぞうあく)とは…症状が悪化すること。

交通事故で症状固定と言われたら?後遺障害も解説<弁護士監修>

申請後は自賠責調査事務所で審査が行われ、後日結果が通知されます。

申請から通知までの期間はおおよそ1ヶ月〜3ヶ月程度になります。

関連記事整形外科が後遺障害診断書を書いてくれない理由は?具体的な対処法を解説

まとめ

checkmark,チェック

むちうちの症状は9割以上が完治しているとの報告がありますが、それは適切な診断や治療を受けているためです。

自己判断で放置すると症状が長期化するだけでなく、悪化してしまうリスクがあります。

また、整骨院に通院したい場合でも、医師による経過観察が必要です。

さらに、適切な治療を継続しても、それ以上の回復が見込めない場合には症状固定、つまり後遺症となります。

むちうちの症状を残さないためにも、まずは医療機関を受診して適切な診断や治療を受けるようにしましょう。

この記事を監修したのは…

国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

この記事の執筆者

理学療法士 / 河野 裕也
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

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