怪我のない軽い接触事故が起きた時の適切な対処法は?気付かないまま違反になってしまうケースも
監修記事
鍋谷 萌子
ビジネス実務法務検定3級
交通事故は不幸な出来事ですが、不幸中の幸いとして「交通事故の当事者にはなったが、軽い接触事故にとどまり、怪我はしなかった」ケースもあります。
この記事では、
・歩いていて車と接触したが怪我がなければ通報はしなくていいの?
・運転中にもしかしたら接触したかもしれない、当て逃げになるか不安…
・車同士で接触事故を起こしたが怪我をしていないときの処理がわからない
など、怪我のない軽い接触事故でよくあるお悩みを解決するために解説しています。
怪我のない軽い接触事故でのポイントは、以下の通りです。
- 一見怪我がなくても必ず病院を受診すること
- 通常の物損事故扱いでは、違反点数はつかないが、怪我の治療費も出ない
- 気づかなかった場合でも当て逃げになってしまう可能性はある
軽い接触事故で怪我がないからといって、病院を受診せずに人身事故扱いにしないことは非常に危険です。
本記事では、「怪我のない軽い接触事故に遭った場合に取るべき行動」について解説します。
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目次
怪我なしの軽い接触事故に遭った際にするべきこと
「交通事故が起きたが、軽い接触事故にとどまった」という場合でも、適切な処理を行うことが重要です。ここでは、「怪我なしの接触事故の当事者になったときには、どのように振る舞えばいいか」を解説します。
ポイントは以下の4点です。
- 警察に連絡する
- 交通事故現場を撮影する
- 相手の身元や保険加入の有無を確認する
- 症状がなくても病院に行く
これらのポイントに従えば、接触事故に適切に対処できます。
警察に連絡する
交通事故が起こった場合、怪我がなくても警察に連絡しましょう。道路交通法により、警察への連絡が義務付けられています。この義務を怠ると、懲役刑や罰金刑などが課せられる可能性があります。
また、警察に連絡しなければ、保険金請求に必要な書類を用意することができません。
事故現場を撮影する
交通事故が発生した場合、スマートフォンなどで事故現場を撮影することが重要です。これにより、事故の状況を客観的に把握できるためです。
特に、「交通事故の現場が往来の多い道路であり、双方の車を動かさなければほかの車に迷惑がかかる」という場合には、この対応が重要です。
加害者・被害者、またそこを通行する車に悪意がまったくなかったとしても、「交通事故が起きた現場の様子」が変わってしまうからです。なお、このときは角度を変えたり、破損した部品などを撮影したりと、さまざまな視点から写真を撮っておくことが望ましいです。
POINT
ドライブレコーダーの映像も確保
現在はドライブレコーダーを設置している車も多いかと思われますが、映像記録も速やかに確保するようにします。なぜなら、ドライブレコーダーは上書きを繰り返していくものであり、時間が経過すると交通事故時の映像も消えてしまう可能性があるためです。
相手の身元や保険加入の有無を確認する
自分が加害者になった場合でも被害者になった場合でも、相手の連絡先や氏名、住所、ナンバープレートなどを確認しておきましょう。運転免許証を提示してもらうほうが手っ取り早いかもしれません。
また、相手の任意保険加入の有無や、保険会社の連絡先などを聞いておくことで、交渉がスムーズに行えます。
症状がなくても病院に行く
接触事故が起きた場合、何よりも大切なのは、「たとえ痛みがなくても病院に行くこと」です。交通事故の怪我の痛みは後で出てくることもあり、物損事故から人身事故へと切り替える場合にも診断書が必要になるからです(後述します)。
また、これは被害者だけでなく、加害者を守ることにもつながります。「たしかに交通事故で起きた怪我であること」あるいは「交通事故で生じた怪我ではないこと」を証明するための手立てとなるからです。
どのような軽微な事故であっても、また加害者・被害者どちらの立場の場合でも、警察に連絡し、病院に行く(行かせる)ようにしてください。
物損事故から人身事故への切り替えには診断書が必要
前述したように、「後から痛みが出てきたので、物損事故として処理してもらっていたが人身事故に切り替えてほしい」という場合は、医師による診断書が必要です。この「診断書」は医師しか発行できず、接骨院や整骨院などでは発行できません。
物損事故から人身事故への切り替えは、事故後10日以内にすることが望ましいです。定められた「物損事故から人身事故への切り替えは、〇日を過ぎるとできなくなる」というものはありませんが、事故から時間が経ちすぎると、事故と怪我の因果関係を証明することが難しくなるためです。
関連記事交通事故の物損事故から人身事故への切り替え方法|違いと処分・リスクも解説
怪我なしの軽い接触事故でも違反点数はつく?
ここからは主に「加害者」の立場から、「被害者が怪我をしていない場合でも、違反点数は加算されるのか?」について解説します。
物損事故のみの場合は違反点数がつかない
原則として、物損事故の場合には違反点数がつきません。そのため、物損事故として処理される場合は、免停や免許取り消しになることはなく、ゴールド免許である場合でも維持されます。
しかし、人身事故の場合であり、運転手に何らかの非がある場合は、まず基礎点数として最低2点が加算され、さらに相手の怪我に応じた点数が加算されます。なお、この算定式で最も軽い「安全運転義務違反(わき見運転など)+ 15日未満の加療期間」の場合は、4点が加算されます。
当て逃げをした場合は物損事故でも処分の対象になるため注意が必要
上記では、「物損事故の場合は点数が加算されない」としましたが、当て逃げをした場合は別です。
接触に気づかなかった場合も当て逃げに該当してしまうケースがある
物損事故を起こしてそのまま逃げた場合、2点から5点が追加されます。また、もしそれが「人」である場合、35点という非常に高い点数が課せられます。
また、「当たったことに気づかずに走り去ってしまった」という場合でも、ドライブレコーダーや防犯カメラによって発覚することがあります。気づいた時点で速やかに警察に自己申告を行いましょう。
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接触事故の基本的な過失割合
「過失割合」とは、加害者と被害者のどちらにどれくらいの過失があったかを示すものです。
例えば、以下の事故には「車対自転車の事故であり、自転車側の被害者が10日間の治療を必要とした」という共通点があります。
- 「運転手が酒に酔って信号無視をした上、信号待ちをしていた自転車に接触し、自転車の運転手に10日間の怪我を負わせた」というケース
- 「運転手が制限速度で走行し、信号も守っていたが、自転車が無灯火で信号無視をしたため、避けきれずに衝突し、自転車の運転手が10日間の怪我を負った」というケース
しかし、過失割合は大きく異なります。この「過失割合」は、保険の額や免許の点数を決める上で非常に重要な要素です。
交通事故の状況は多岐にわたり、明確に「このケースではこの過失割合」と言い切ることはできません。ただ、代表的なケースをいくつか取り上げ、その過失割合を説明することはできます。
以下では、よくある交通事故と、その時の過失割合の判断基準をいくつか紹介します。
車同士の接触事故
- 青信号車と赤信号車の事故の場合:赤信号の車の過失が100%
- 赤信号同士の事故の場合:過失割合は50%ずつ
- 対向車同士の事故の場合:センターラインを越えた車の過失が100%
車同士の接触事故では、基本的には過失割合が50:50とされます。
そのため、同等程度の責任がある場合は、双方の過失割合は同じと扱われます。
車と自転車の接触事故
- 車が赤信号、自転車が青信号で接触した場合:車に100%
- 双方が赤信号で接触した場合:車に70%、自転車に30%
- 車が青信号、自転車が赤信号で接触した場合:車に20%、自転車に80%
車と自転車の場合、交通弱者であると判断される自転車の方が、過失割合が軽いとされます。
そのため、自動車と同じように「双方が赤信号で接触した場合」でも、車の方がより重い責任を負うことになります。
車と歩行者の接触事故
- 車が赤信号、歩行者が青信号の場合:車の過失が100%
- 車が青信号、歩行者が赤信号の場合:車の過失が30%、歩行者の過失が70%
歩行者は、道交法において交通弱者として扱われます。
そのため、「車が青信号であり、歩行者信号が赤であった」という「歩行者側に一方的な過失がある状況」であっても、車側には30パーセントの過失割合があると判断されます。
怪我なしの軽い接触事故の示談金相場
「交通事故に遭ったが、怪我はなかった」という場合、示談金や慰謝料はどのように判断されるのでしょうか。
物損のみの場合は、修理費用などの物的被害に対する補償が行われます。「交通事故に遭い、痛みはなく、病院でも怪我がないと判断された」場合は、人身に対する補償は原則として行われません。
そのため、「車の修理費用」「車の代わりに利用しなければならなくなったレンタカー代」などの補償が認められます。したがって、人身事故に比べてもらえる額は小さくなる傾向があります。
例外的に慰謝料が認められるケースも
上記で述べたように、物損事故として扱われた場合は、基本的に慰謝料は支払われません。たとえその車が「20年以上にわたって乗り続けた愛車である」などの場合でも同様です。
ただし、「この世に二つとない芸術品が、交通事故の影響で破損してしまった」などの一部の特例的な状況では、慰謝料の支払いを求められる可能性があります。
怪我なしの軽い接触事故に遭った際に注意すべきポイント
ここでは、怪我のない軽い接触事故に遭った場合に注意すべきポイントを解説します。
事故現場で示談を成立させることは、怪我がない交通事故に限った話ではありませんが、当事者同士でその場で示談を成立させることは極めて危険です。
なぜなら、一度成立した示談は、「後から痛みが出てきたから」「調べてもらったらやはり怪我をしていた」といった事情があっても、覆すことが非常に困難だからです。
交通事故は加害者・被害者どちらからも冷静さを奪います。公平な視点で状況を判断してもらうためにも、「当日その場での示談」は避けるべきです。
交渉が難航しそうな場合は弁護士に相談することも検討する
- 「交渉したいがもめている」
- 「妥当な過失割合がどのようなものか分からない」
- 「相手から脅迫めいた圧迫を受けている」
などの場合は、弁護士に相談することを検討することをおすすめします。
また、ケースによっては、警察に相談することも視野に入れられます。
相手側が対応しない場合は被害届を出す
接触事故が起きたにもかかわらず相手が逃走した場合や、相手が全く交渉に応じない場合は、警察に被害届を出すことを検討しましょう。
ただし、「ナンバープレートを確認する時間がなく、相手が誰か分からない」という場合は、対応が難しい場合があります。なぜなら、加害者が特定できなければ損害賠償請求もできないからです。
この場合は、ドライブレコーダーや目撃者の証言を参考にして、加害者を特定しなければなりません。
また、「相手がナンバープレートを確認していないことを利用して逃げよう」と考える加害者も存在しますが、自分が加害者になった場合、このような行動は非常に危険です。人としての良識の問題がありますが、先述したように、当て逃げは非常に重罪です。
物損で処理された場合でも、2点から5点の加点が課せられます。被害者が怪我を負った場合は、救助義務に違反したとされ、35点が加算されます。
この「35点」という点数は、前歴がない人でも免許を取り消され、3年間は再取得ができなくなるため、非常に厳しい処罰です。前歴が2回以上ある者は、5年間にわたって免許の取り直しができません。
症状が出た場合は早急に医療機関を受診をする
前述しましたが、怪我がないと思っていたとしても病院には行く必要があります。症状が少しでもある場合は、なおさらです。
また、自分が加害者になった場合は、被害者に病院へ行くよう勧めてください。これによって、被害者だけでなく加害者も守れます。交通事故の場合、アドレナリンの影響で痛みや症状が現れにくいこともあります。
上記のアンケート結果の通り、交通事故では思いもよらない症状がでることがあります。
徐々に落ち着いてくると、事故直後には感じなかった痛みや症状が現れることがありますので注意しましょう。
必要に応じて整骨院との併用通院も視野に
交通事故による怪我は、整骨院でも施術を受けられます。そのため、症状やライフスタイルにあわせて、整形外科と整骨院を併用して通院することもおすすめです。「病院は通える時間に開いていないから……」という場合でも、整骨院ならば通えることがあります。また、日常的な身体のメンテナンスにも役立つことがあります。
ただし、少なくとも月に1回は整形外科を受診したり、保険会社の承諾が必要になったりする点は押さえておく必要があります。
POINT
整骨院では「診断書」を発行できない
整骨院で施術にあたる柔道整復師などは専門家ですが、診断書の発行権限はありません。診断書を発行できるのは医師、つまり病院だけです。そして診断書が出なければ、人身事故として処理されません。
さらに人身事故として処理されなければ、当然医療費や慰謝料の請求もできなくなります。このため、「交通事故で負った怪我」は、たとえどれほど軽いものであっても、病院に一度は足を運び、診断書を発行してもらわなければなりません。
なお、整骨院で施術を続けていく場合は、医師の許可を取りましょう。医師の許可がなくても整骨院で施術することは可能ですし、保険会社がこれを認める場合もあります。しかし、裁判になった場合は、「あのときに支払った施術費用は認められない」と判断され、30〜70%程度しか支払ってもらえなくなることもあります。
関連記事交通事故で整骨院へ医師の許可なしで通院できる?注意点も解説!
まとめ
交通事故の当事者となった場合、被害者・加害者いずれの立場であっても、まずは警察を呼び、事故現場を撮影し、お互いの身元や保険会社を確認し、症状がなくても病院に行く(行かせる)ことが必要です。この行動を取ることで、被害者・加害者、双方を守ることができます。
加害者の立場となった場合、「点数」が気になる人も多いことでしょう。相手に怪我が全くなかった場合は、物損事故として扱われるため、原則として点数は加算されません。しかし、当て逃げをした場合は別です。また、「相手に怪我がないと思って走り去ったが、実際には怪我をしていた」という場合は、35点という重い点数が課せられ、一発で免許が取り消しになります。
「過失割合」は、交通事故のあらゆる決定に影響してくる非常に重要なものです。これはそれぞれの事故によって異なりますが、車よりも自転車が、自転車よりも歩行者の方が交通弱者としてみなされます。そのため、自転車や歩行者と車が接触した場合、たとえ「車の方が青信号で、自転車あるいは歩行者が赤信号であった」という場合でも、車の方が過失割合が高くなりがちです。
なお、物損事故として処理された場合は、原則として慰謝料の支払いは行われません。また、交渉が難航しそうならば弁護士に、必要に応じて警察へ連絡することも視野に入れるべきです。
「怪我なしだと思っていたが、実際には怪我をしていた」という場合は、整骨院で施術することも可能です。しかしその前には、医師の診断が必要であり、また医師から出される診断書が人身事故として届け出るための必須書類であることは押さえておきましょう。
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交通事故関係、弁護士事務所・クリニック等でのコラム執筆を数多く経験。確かな情報収集力を元に、常に正しく信頼のおける情報を「誰であっても理解できるかたちで」わかりやすく丁寧に解説していきます。
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