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バレリュー症候群とは?症状や通院先、後遺障害の認定などを解説

監修記事

世良 泰

医師(整形外科他)

交通事故にあい、しばらく経過した後にめまいや頭痛、耳鳴り、だるさなどの症状がある場合はバレリュー(バレー・ルー)症候群の可能性があります。

いわゆる「むちうち」の1つであるバレリュー症候群について、診断基準や検査方法、治らないことはあるのか、また後遺障害の認定や何科に行けばよいのか等について解説しています。

バレリュー症候群の診断を受けた方やバレリュー症候群の疑いがあり不安な方は、ぜひ参考にしてください。

バレリュー(バレー・ルー)症候群とは?

バレリュー症候群とは、むちうちが引き金となり発症すると考えられている自律神経失調症状を指します。自律神経症状が主なため「自律神経失調症」と間違われることが多いです。特徴的な点として、受傷してから2~4週間が経過してから症状が現れます。

通常のむちうち(頸椎捻挫)の治癒期間と比べて、長期にわたって改善が見られない場合にバレリュー症候群と診断されることがあります。

バレリュー症候群になる原因

バレリュー症候群は、交通事故などの強い衝撃によって自律神経の一つである「交感神経」に異常をきたすことが原因だと考えられています。

交感神経のはたらきには、脳血管を収縮する、瞳孔を拡大する、消化を抑制する、心拍数を増やす、汗を分泌して体温を下げるといったものがあります。これが過剰になると、次項で解説するような症状が現れます。

バレリュー症候群の症状

先述のとおり、バレリュー症候群は自律神経症状が主です。次のような自律神経のはたらきが影響して生じる症状がみられます。

  • 頭痛やめまい
  • 不眠
  • 耳鳴り
  • 視力の低下
  • 倦怠感・疲労感
  • 頭重感
  • 肩こり
  • 動悸
  • 食欲不振

交感神経自体は、人が命を維持するのに必要不可欠なものであり悪いものではありません。異常をきたし、副交感神経とのバランスが乱れてしまうことが問題です。

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バレリュー症候群はむちうちの一種

「むちうち」とは?発症の原因や症状等

▲「むちうち」とは?発症の原因や症状等

そもそもむちうちとは、外部からの強い衝撃で首がむちのようにしなることで生じる障害のことです。
そんなむちうちによって引き起こされるのが、バレリュー症候群です。医学的に、むちうちは5つの型に分けられており、そのうちの1つがバレリュー症候群となっています。

ちなみに、他の4つの型は次のとおりです。

  • 頸椎捻挫型:首の関節を構成している筋肉や靭帯などが過剰に引き伸ばされて損傷した病態
  • 神経根症状型:外部からの衝撃で首の骨にゆがみが生じ、中を通る神経が損傷した病態
  • 根症状+バレリュー症候群型:神経根症状型とバレリュー症候群の病態や症状が混在した病態
  • 脊髄症状型:背骨の中を通る神経が強い衝撃で損傷した病態

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バレリュー症候群の診断基準・検査方法

バレリュー症候群はCTMRIなどの画像検査でわかるものではありません。交通事故によってむちうちとなり、画像検査での異常が出なかった場合、本人の自覚症状を基に「バレリュー症候群」と診断されます。

バレリュー症候群は何科を受診する?

バレリュー症候群はむちうちの一種のため、まずは整形外科を受診してください。

交通事故後の整形外科受診は①検査(レントゲン・MRI)②診断書の発行③痛み止めや湿布の処方等ができる

▲交通事故後の整形外科受診

交通事故の後、自覚症状のみで「バレリュー症候群」だと自己判断することは難しいため、医師の診察や怪我を総合的に検査を受けられる整形外科がおすすめになります。

治療していくなか、症状の改善が見られない場合は脳神経外科などを受診することも検討してみてください。しかし、バレリュー症候群であれば、あくまで交感神経と副交感神経のバランスの崩れが原因のため、必要以上に不安を抱える必要はありません。

そのため、病院の変更を検討する前に、まずは整形外科の医師に相談して指示を仰ぎましょう。

関連記事整骨院と整形外科の違いは?どっちがいいか症状やケースにあわせて解説!

整骨院への通院もあり

整骨院・接骨院の交通事故施術とは?

▲整骨院の交通事故施術内容の種類

整形外科での治療だけでは足りないと感じる場合、並行して整骨院に通院するのも一つの選択肢です。交通事故の被害者の場合、自賠責保険が適用されます。整骨院での施術に関わる費用を請求できるため、費用の心配なく通院することが可能です。

整骨院で施術を受けるメリットは、怪我に対する施術に充てる時間を増やせるのと、診療時間が比較的長いため、忙しい方にとって通いやすいことです。柔道整復師による施術や物理療法が受けられるため、バレリュー症候群の改善に役立つでしょう。

交通事故治療で整骨院に通うメリット(営業時間が長い・土日祝日も通える・予約可能)

▲交通事故治療で整骨院に通うメリット

関連記事むちうちで整骨院に通院していい?いつから通えるかや施術も解説!

バレリュー症候群の治療・施術

バレリュー症候群の治療は「神経ブロックによる治療」が有効だとされています。神経のはたらきを正常に戻し、症状の緩和および改善の効果が期待できます。基本的に、発症から3ヶ月以上経過している場合に、1~2週間に1回実施されます。

ただ、ベースは「むちうち」のため、治療はむちうちの治療に準じて行われます。具体的には、急性期は安静が最優先で、並行して薬による痛みの抑制を図ります。また、病院では理学療法士によるリハビリテーション、整骨院では柔道整復師による施術(機能訓練)を受けることができます。

バレリュー症候群は治らない?

軽症の場合は数週間で自然治癒することがあります。しかし、中には数年にわたって改善が見られないケースもあるため一概には言えません。改善が見られないケースでは、過剰な不安や経済面などが影響していることもあります。

自律神経の症状であるバレリュー症候群はとくに、身体的な症状だけでなく、精神的な症状や社会的な要素も改善を図る必要があるでしょう。

バレリュー症候群は後遺障害として認定される?

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

結論、バレリュー症候群による症状の程度によります。

次項から、バレリュー症候群が後遺障害として認定されるケースと認定されなかった場合の対処法について解説します。

バレリュー症候群が後遺障害として認定されるケース

後遺障害認定の条件5つ

▲後遺障害認定の条件5つ

バレリュー症候群になってから、長期間治療を続けているにもかかわらず改善が見込めない場合は、後遺障害として認定される可能性があります。認定される場合は、後遺障害等級の14級9号か12級12号に認定される可能性が高いです。

しかし、バレリュー症候群は画像検査による客観的な証拠ではなく、自覚症状をもとにした診断のため、後遺障害と認めないケースは少なくありません。認定されなかった場合の対処法については次項をご覧ください。

関連記事むちうちを後遺症にしない|症状や治療と後遺障害認定・慰謝料も解説

バレリュー症候群が後遺障害として認定されない場合の対処法

申請の仕方によって、認定されるかどうかが変わってくる場合があります。

認定されないケースの多くが、自身での申請や保険会社を通した申請を行っている場合です。後遺障害等級の認定には、これまでの治療経過や検査結果、通院日数といった情報が必要です。しかし、自身での申請や保険会社を通した申請では、情報が不十分なことが多くなっています。

そこで困った際に行うと良いのが弁護士への依頼です。弁護士に依頼した方が、必要な情報をきちんと集めるために、医師との意見交換や交渉まで行ってくれるため、正当な審査結果が降りる可能性が高くなります。一度、認定が拒否されても異議申し立てできますので、困った場合は弁護士に相談してみましょう。

関連記事むちうちで後遺障害認定を受けられる確率は?認定率を高める対策も解説

交通事故でバレリュー症候群になってしまったら?

バレリュー症候群は、むちうちの一種で自律神経症状を主とする病気です。受傷から2~4週間後に発症することが多いため、事故直後に症状がなくとも油断は禁物になります。

まずは整形外科を受診して、医師の診察や検査を受けてください。自然治癒する場合もありますが、必ず医師の指示を仰ぎ、きちんと治療を進めましょう。もし、長期化してしまったら後遺障害の申請を行うとよいです。

参考
1)日本ペインクリニック学会:ペインクリニック治療指針改訂第6版 「外傷性頸部症候群」

この記事を監修したのは…

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。

池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/

日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター

TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員

AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー

この記事の執筆者

理学療法士 / 柿野 俊弥
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

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