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交通事故後の流れ|病院やセカンドオピニオンの検討・自賠責保険も解説

監修記事

河野 裕也

理学療法士

交通事故は予期しないときに起きてしまうもの。
予期せぬ交通事故で被害者になってしまったあなた、「交通事故にあった後って、どうすればいいの?」と悩んでいませんか?

交通事故にあってしまうと動揺して冷静な判断ができなくなってしまいます。
大した外傷がなくても、筋肉や靭帯を損傷している可能性があるので安心はできません。

そこで今回は、以下の内容を中心に解説します。

  • 交通事故にあった直後から病院を受診する流れ
  • 診断書を取得する流れ
  • セカンドオピニオンの検討
  • 自賠責保険や任意保険などによる治療費の請求
  • 後遺症への対処法

「これからどのように対処していけばいいの?」「治療費は払ってもらえるの?」など不安に感じている方はぜひ参考にしてください。

交通事故後の流れ〈事故直後〜病院受診〉

「交通事故にあってしまった後って、どうすればいいの?」と悩む方も多いかと思います。そこで、まずは交通事故後の流れについてご紹介していきます。

交通事故にあった後、必ずすべきことは以下の5つです。

  1. 警察へ連絡する
  2. 加害者情報の確認
  3. 自分でも記録を行う
  4. 保険会社へ連絡する
  5. 病院へ受診

1つずつ解説していきます。

1.警察へ連絡する

交通事故にあった後、警察へ連絡することが法律で義務付けられています。
警察へ連絡をしなければ、交通事故証明書が発行されません。交通事故証明書は、後に被害者が、保険金を請求するときに必要になります。

交通事故証明書とは:交通事故が起きた事を証明する書類

▲交通事故証明書とは?

交通事故証明書とは、交通事故が起きたということを証明する書類です。加害者へ損害賠償を請求するときに必要になります。

交通事故証明書の交付は、自動車安全運転センターで行っています。申請の手続きは、郵送やインターネット、ゆうちょ銀行、郵便局、センターの窓口で行うことが可能です。しかし、申請ができるのは、交通事故の加害者や被害者、損害賠償の請求権がある親族などとなっているので注意しましょう。

2.加害者情報の確認

損害賠償請求のやりとりは、加害者本人や加害者の加入している保険会社と連絡をとりながら行います。そのため、加害者の情報を確認する必要があります。

最低限確認すべき加害者の情報は、以下の通りです。

  • 加害者の氏名、住所、連絡先
  • 加害者の車両の登録番号、所有者(※)
  • 加害者が加入している保険会社(自賠責保険任意保険

※損害賠償を行うのは、加害者が乗っていた車の所有者になります。事故当事者と車の所有者が異なる場合もあるので、確認するようにしましょう。

万が一、加害者の情報が確認できなかったという方は、警察を通して加害者の情報を取得することができますので、安心してください。

目撃者の確認も忘れずに
第3者である目撃者は、示談の際に重要な証人になってくれる場合があります。また、被害者にとって有益な情報を持っているかも知れません。目撃者がいる場合は、住所や連絡先を聞いておくとよいでしょう。

3.自分でも記録を行う

自分で記録を行うときは、その記録が残るようにメモや写真などを使用するとよいでしょう。頭で記憶するだけでは、時間が経過すると共に曖昧になり、交通事故当時の証拠として弱いものになってしまいます。

4.保険会社に連絡する

交通事故にあった場合は、保険会社への連絡も必要です。警察に連絡をしてから、現場に駆け付けるまでには、時間がかかることがあります。その間に、保険会社への連絡も済ませておくと良いでしょう。

5.病院へ行く

交通事故後に病院へ行くことで、医師が書く診断書を受け取ることができます。診断書は、物損事故から人身事故へ切り替える際に必要です。また、賠償請求にも必要なものになりますので必ず受け取りましょう。

診断書の取得方法については、次の章でお伝えします。

病院で診断書を取得する流れ

交通事故治療における診断書の内容と役割

▲交通事故治療における診断書の内容と役割

診断書には、交通事故による怪我の受傷日時や症状、治療期間の目安、医師名などが記載されています。交通事故と怪我との因果関係を明確にするための書面なので、被害者が納得できるものを取得しましょう。

また、加害者側の保険会社へ保険金を請求する際や、人身事故に切り替える際にも必要となります。

1.まずは整形外科へ

交通事故後の整形外科受診は①検査(レントゲン・MRI)②診断書の発行③痛み止めや湿布の処方等ができる

▲交通事故後の整形外科受診

交通事故にあったら、すぐに病院の整形外科へ検査を受けに行きましょう。症状が軽度であっても実は骨にヒビが入っていたというケースもあるため、骨や筋に異常がないかを一通り検査しておくことが必要です。この際のレントゲンMRIといった精密検査は、整骨院・接骨院では受けることができません。注意しましょう。

すでに痛みがある場合、その痛みが弱かったり、肩が張っている程度のものだと感じても、時間の経過とともに痛みが強まってくることもあります。症状が軽度であっても必ず医師に伝えるようにしましょう。事故発生時から間が空きすぎてしまうと、症状と事故との因果関係を証明することが難しくなり、「その痛みは事故によるものとは限らない」と判断されてしまう可能性があります。

整形外科で検査を受けたら、医師に診断書の作成を依頼しましょう。この時、検査結果だけではなく、被害者の自覚症状もしっかりと伝えることが大切です。

2.当日の支払いはどうなるの?

お金を渡す女性の手

加害者が加入している保険会社と連絡を取れている場合は、病院側とやり取りをしてもらい、窓口での診療代の支払いが不要になるケースもあります。しかし、事故が夜間に起こり、速やかに保険会社と連絡が取れない場合など、いったん被害者が治療費を立て替える必要が生じることもあります。

病院によっては、加害者への聞き取りから保険会社への請求の問い合わせまでを請け負ってくれ、初診時から被害者の窓口請求がないように取りはからってくれるところもあります。

関連記事交通事故での病院受診や治療の流れはどうするべき?注意点も解説

3.警察で人身事故扱いにしてもらう

物損事故から人身事故への切り替え(切り替え方法と提出期限について)

▲物損事故から人身事故への切り替え(方法と期限)

物損事故で処理をされた場合は、診断書を取得し警察に届け出なければ、人身事故扱いになりません。そして被害者であっても、人身事故扱いにしてもらわなければ「交通事故証明書」を発行してもらうことができません。

警察署に診断書を提出するのに法的な期間はありませんが、交通事故から時間が空きすぎてしまうと、事故と怪我との因果関係を疑われてしまう可能性があります。確実に切り替えを行うためには、事故発生後から10日以内を目安に、診断書の提出を行うとよいでしょう。

弁護士監修物損事故と人身事故の損害賠償の違いとは?

交通事故後、病院を受診するべき理由

交通事故にあい、特に体の痛みもないと感じる方もいるでしょう。また、物損事故で処理をすれば、被害者側の手続きも簡単で済むので、そのままにしておく方も多くいます。

では、事故後に病院に行くべき理由とは一体なんなのでしょうか。

以下の理由から、交通事故において怪我がなくても一度は病院でみてもらうことを推奨しています。

  1. 時間が経ってから人身事故に切り替えるのは難しい
  2. 怪我をしていると気がついても、物損事故のままでは慰謝料が出ない
  3. 症状が後遺症として残っても、後遺障害慰謝料を受け取ることができない

関連記事追突事故で痛くなくても病院受診する理由 – 痛みが出た時へ備えよう

交通事故後に病院へ通う上でやってはいけないこと

交通事故の被害にあい怪我を負ってしまったら、被害者の方は治療を受けるために通院しなければいけません。
怪我の治療費は、加害者側の保険会社に対して請求することができます。しかし、間違った通院をしてしまった場合、適切な支払いを受けられない可能性があります。

ここでは、交通事故の怪我で通院をする際に「やってはいけないこと」を解説します。交通事故の怪我で通院をする際にやってはいけないことは、主に3つです。

  • 「痛みがないから」と病院へ行かない
  • 通院頻度が少なすぎる
  • 自己判断で通院を中止する

それぞれの理由を見ていきましょう。

「痛みがないから」と病院へ行かないこと

交通事故後、痛みがなくても病院に行くべき理由

▲交通事故後、痛みがなくても病院に行くべき理由

軽い追突事故などの小さな事故では、事故後に痛みを感じない場合があります。そのような場合、「病院へ行かなくていいのでは?」と考える方もいるでしょう。
しかし、交通事故による怪我は、事故から時間が経過した後に症状があらわれることも多くあるのです。

交通事故から時間が経過した後に痛みがあらわれ通院したとしても、「交通事故による怪我」という証明ができず、治療費を請求できなくなる場合があります。

交通事故と怪我の因果関係を明確にし、適切な治療費を受け取るには、「交通事故にあったら、痛みがなくとも病院へ行く」ことが大切なのです。

通院頻度が少なすぎること

交通事故による怪我の治療をしようと思っても、仕事の都合や予定などで、思うように通院できないことも多いかと思います。

しかし、通院頻度が少ない場合、加害者側の保険会社から「本当に痛いの?」と疑われてしまう場合があります。そして、「治療費を支払う必要性がない」と判断されてしまった場合は、治療費の支払いを打ち切られてしまうのです。

交通事故の怪我で通院する際は、1週間に3回程度の通院頻度を保ち、定期的に通うことが大切です。

自己判断で通院を中止すること

怪我の治療が順調に進むと、徐々に症状が緩和していくでしょう。しかし、「もう痛くないから」といって、自己判断で通院をやめてはいけません。「治った」と思っていても、天候や気圧の変化などで症状が再びあらわれることもあります。

加害者側の保険会社に「怪我が完治した」と判断されると、その時点で治療費の支払いは終了します。自己判断で通院をやめてしまったけれど、再び痛みがあらわれた場合、被害者の方は自費で通院しなければいけなくなります。

交通事故による怪我の通院先は主に整形外科

交通事故にあった場合の通院先は主に整形外科ですが、主治医の指導のもと、整骨院も併用して通うことが可能です。それぞれの治療内容をみていきましょう。

交通事故通院における整形外科と整骨院の治療内容の違い

▲交通事故通院の病院と整骨院の治療内容の違い

整形外科の治療内容は?

医師が検査・治療を行います。整形外科の場合、治療方法としては、湿布や投薬、痛み止めの注射などが主なようです。

また検査設備が充実しているので、交通事故に多いむちうちに限らず、いま現在自分がどのような負傷を負っているのかをレントゲンやMRIなどの設備を駆使して把握し、治療ができます。

整形外科は、あくまでも「骨折」や「裂傷」などの外傷の治療をメインに受け持っています。具体的な外傷がない場合、湿布や痛み止めの注射、投薬といった治療方法をとる場合が多いようです。

また、リハビリ室がある整形外科では理学療法士によるリハビリを受けることも可能です。症状や状態に合わせてストレッチや運動療法、身体の使い方などの指導を受けることができます。

整骨院の施術内容は?

整骨院では、柔道整復師が施術を行います。施術内容としては、さまざまな症状に応じてマッサージや電気療法、冷罨法、温罨法、固定、物理療法等の施術をします。

交通事故に多いむちうちの施術に豊富な経験を積んでいる柔道整復師が在籍している整骨院では、事故の状況などを丁寧にヒヤリングし、その人にあった施術を行ってくれるのが特徴です。

関連記事整骨院と整形外科の違いは?どっちがいいか症状やケースにあわせて解説!

交通事故の治療費は加害者に損害賠償として請求できる!

交通事故の損害賠償の内訳

▲交通事故の損害賠償の内訳

交通事故による怪我の治療費は、加害者に損害賠償として請求することができます。損害賠償とは、交通事故によって様々な損害を負った被害者に対して、加害者がその損害の埋め合わせを行うことです。

被害者が請求できる損害賠償は、大きく分けて以下の3つあります。

  • 積極損害
  • 消極損害
  • 慰謝料

それぞれの内容を見ていきましょう。

積極損害とは?

積極損害とは、交通事故によって被害者が出費を余儀なくされた場合に発生する損害です。

積極損害として請求できる代表的なものは、以下の通りです。

  • 治療費
  • 手術費
  • 入院費
  • 通院交通費
  • 入院雑費
  • 付添看護費
  • 装具・器具等の購入費   など

消極損害とは?

消極損害とは、交通事故が原因で被害者が本来得られるべきであった収入や利益が減少した場合に発生する損害です。

消極損害は、「休業損害」と「逸失利益」の2つに分かれています。

休業損害
交通事故の怪我で入通院する際に仕事を休み、被害者の収入が減少してしまった場合の減収分が補償の対象となります。

逸失利益
交通事故の怪我が後遺障害になってしまったことで被害者の労働能力が低下し、本来得られたであろう収入が減少した場合の損失分が補償の対象となります。

休業損害は、被害者の職業によって請求できる金額が変わってきます。

慰謝料とは?

慰謝料とは、交通事故にあったことによって被害者が負った精神的苦痛を加害者が金銭で補ったものです。

交通事故で怪我を負った場合に請求できる慰謝料は、以下の2つあります。

入通院慰謝料
交通事故の怪我で入通院をする際に被害者が感じた精神的苦痛を、加害者が金銭で補うといったものです。

後遺障害慰謝料
交通事故による怪我が後遺障害になってしまったことで被害者が負った精神的苦痛を、加害者が金銭で補うといったものです。

入通院慰謝料の計算方法

交通事故の入通院慰謝料は、計算によってだいたいの相場を知ることができます。入通院慰謝料を計算するには、3つの基準と計算式が必要です。

3つの基準とは

交通事故の入通院慰謝料を計算するには、「自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準」の3つの基準から1つの基準を使います。

交通事故の慰謝料の3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)

▲交通事故の慰謝料の3つの基準

  • 自賠責保険基準
    自賠責保険を使って計算するときの基準です。自賠責保険は、車を運転する人が必ず加入することを義務づけられています。交通事故の被害者を救済するために、最低限の保障を行うことが目的の保険です。そのため、自賠責保険基準で計算すると、3つの基準の中で最も低い金額になります。
  • 任意保険基準
    任意保険を使って計算するときの基準です。そもそも任意保険は、加入が義務づけられていない保険ですが、多くの人が加入しています。その理由は、自賠責保険でカバーできない部分を補償してくれるためです。
    任意保険基準は、各保険会社で異なる基準になっていますが、公表されていません。慰謝料の金額は、自賠責保険基準の金額より高く、弁護士基準の金額より低くなります。
  • 弁護士基準
    弁護士を使うときの計算基準です。弁護士基準で計算すると、3つの基準の中で最も高い金額になります。しかし、弁護士費用が発生するため注意が必要です。

入通院慰謝料の計算式

自賠責保険基準を使った計算方法は、明確に決められています。そこで今回は、自賠責保険基準を使った入通院慰謝料を計算する方法を説明していきます。

自賠責基準の場合、慰謝料は1日あたり4200円です。

日数は、

実通院日数:(実際に通院した日数)×2
または
通院期間:通院を開始した日から、完治または症状固定した日

をそれぞれ計算して、比較したときに小さい数字を使います。

このことから計算式は、4200円×(実通院日数 または 通院期間)になります。

(例)打撲の入通院慰謝料を実際に計算すると?

入通院慰謝料の計算方法がわかったところで、実際に打撲の場合の入通慰謝料を計算してみましょう。

先程も述べたように、打撲の治療期間は1ヶ月程度です。では、通院期間を1ヶ月(=30日)、実通院日数を12日(=週3で通院)と仮定します。

実通院日数:12日×2=24
通院期間:30日

この場合、実通院日数の計算結果の方が小さいため、実通院日数を使います。

4200円×24日=100,800円となり、今回の入通院慰謝料は100,800円となります。

交通事故で使える保険は主に自賠責保険と任意保険

慰謝料計算の説明でも登場しましたが交通事故で使える保険としては、以下の2つがあります。

  • 自賠責保険
  • 任意保険

自賠責保険

自賠責保険とは、自動車やバイクを所有する全ての人に、加入が義務付けられている強制保険。交通事故の被害者の救済が目的で、補償対応は人身事故の被害者。そのため、物損事故あ対象外となる。また、請求できる賠償金には限度額が定められている。

▲自賠責保険とは?

自賠責保険は、国の機関である国土交通省が運営しており、車を運転する人の加入が義務づけられています。交通事故の被害者を救済することを目的に、最低限の保障を行ってくれます。そのため、被害者1人に対する自賠責保険の支払い上限金額が、以下のように定められています。

  • 傷害による損害:120万円
  • 後遺障害による損害:(後遺症の程度に応じて)75~3000万円
  • 死亡による損害:3000万円

したがって、上記の支払い上限金額を超えてしまった場合は、被害者が自己負担しなければならない可能性があります。

また、自賠責保険は、人に対する損害の保障しか行っていないので、車や公共物などモノに対する損害の賠償金は支払われません。

任意保険

自動車保険

任意保険は、民間企業が運営しており、加入を任意で決めることができます。また、自賠責保険の支払い上限金額を超えた分は、任意保険から支払われます。そして、自賠責保険とは異なり、人とモノの両方の損害に対して補償を行ってくれるのです。

ただし、通院先の選択によっては、上記の保険が使えるところ・使えないところがあるので注意が必要です。

関連記事自賠責保険は使うとどうなる?任意保険との併用や手続き方法を解説

交通事故で健康保険は使えない!?

先ほど説明した自賠責保険や任意保険は、加害者側の保険です。誤解されていらっしゃる方も多いようですが、交通事故にあった場合の怪我の治療でも健康保険を使って治療を行うことが可能です。
厚生労働省や裁判の判決中でも交通事故で健康保険を使用できることは当然であることが述べられています。

ただし、交通事故の治療で健康保険を使用することを拒むところもあるので、一度聞いてみるとよいでしょう。

ここでのポイントは、健康保険を使う場合は病院に健康保険証を提示するだけでなく、健康保険を使用する意思を伝える必要があることです。もし、健康保険を使って治療することを希望するときはその意思をしっかり病院に伝えましょう。

交通事故後の通院期間はどのくらい?目安は3~6ヶ月!

通院先についてや治療費、保険の適用については理解できたかと思います。しかし、通院期間や通院頻度はどのくらいなのでしょうか?

交通事故によるむちうち等の症状で整形外科と整骨院を併用通院した期間

▲交通事故によるむちうち等の症状で通院した期間の集計結果

通院期間について

主な交通事故の怪我であるむちうちの通院期間は、症状の程度によって異なりますがだいたい3〜6ヶ月です。
通院する場合は、症状が完治するか・症状固定(※)になるまで通うようにしましょう。

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

※症状固定とは、これ以上治療を続けても、症状の緩和が見込めない状態のことです。これは医師が判断します。

通院頻度について

交通事故に多いむちうちの場合、どのような通院頻度で通院するのがよいのでしょうか。

痛みのあるうちは、基本的に毎日通いましょう。相手方の保険会社が治療費を支払ってくれるのにも、ある程度の期限があります。

基本的には怪我が治るまで通院を行います。しかし、完治する前よりも早く、治療費打ち切りになるケースもあります。一日でも早く、症状改善に努めるのが最適です。

またむちうちの場合は、通院を途中でやめたり、症状を放っておいてはいけません。

自己判断で通院を止めてしまうと、後から痛みや他の症状がぶり返した場合、その怪我の治療費を補償してもらえない可能性があります。なぜなら、治療期間が一定日数空いてしまうと、相手の保険会社の担当者が「もう治ったのか、辛くはないのかな」と思ってしまう恐れがあるからです。

また、完治していない状態で通院を止めてしまうと、後遺障害等級認定の手続きを踏めないこともあるようです。

したがって、通院頻度に関しては、基本的に毎日通うのが好ましいです。むちうちの場合は、通院を途中でやめたり・症状を放っておくと後遺症になることもあるので、担当医の指示に従って通うことをおすすめします。

弁護士監修交通事故の治療費は誰が支払う?手続きの流れや打ち切りの打診について解説

通院してもよくならない時はセカンドオピニオンもあり?

しっかりと通院している場合でも、症状が「良くなった」と感じられないケースもあります。治っている感覚がないまま時間だけが過ぎてしまう、主治医に不安を訴えても「もう少し様子を見ましょう」としか言ってくれない…。
「本当に治るのかな?」と心配になることもあります。
どうしても改善が見込めない時は、セカンドオピニオンなど自分からさまざまなアクションを起こしてみるのがおすすめです。

通院先を変える(転院・セカンドオピニオン)

交通事故で転院する方法は、まず保険会社と医師に転院したい旨を伝えます。次に、医師に紹介状(診療情報提供書)を作成してもらいます。注意点はできるだけ早めに転院することと、転院回数は最小限にとどめることです。

▲交通事故で転院する方法

「セカンドオピニオン」を知っている人は多いと思います。ひとつの病院に留まらず、別の病院に移ってみることで症状が改善する可能性があります。

一口に整形外科、整骨院と言っても、設備の充実度や医師の専門性、経営方針などはさまざまです。これまで特別良くなったと感じられなかった方でも、別の病院で治療や施術をしてもらうことによって、ガラッと良くなるということもあります。

他の病院に移ること自体は、決して悪いことではありません。患者が望めばいつでも可能です。

ただし、転院したからといって確実に治る訳ではありません。大切なのは、自分自身の症状とその通院先の治療や施術内容がマッチしているか、担当の先生が真摯に向き合ってくれるかを考えましょう。

医師監修近くの病院に転院したい!手続きや紹介状の書いてもらい方を解説

併用して通院してみる

交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

▲交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

現在の治療や施術で良くなるのか不安なものの、いきなり転院するのも抵抗を感じる方は少なくありません。そんな時は、現在通っている病院で治療を続けながら、並行して通える通院先を増やしましょう。

並行して別の病院や整骨院を利用する場合、特におすすめしたい方法は、整骨院と整形外科に同時に通う方法です。先ほど紹介したように、整骨院と整形外科はそれぞれ異なった視点からむちうち症の緩和にアプローチできます。

また、被害者の場合は加害者の保険会社から慰謝料が支払われますので、保険会社に連絡をしてから通院するようにしてください。

関連記事整形外科から整骨院へ転院・併用はできる?同意書や診断書が必要な理由

後遺症が残った場合の対処法

むちうちなどが後遺症になった場合でも、治療を受けることはできますが、後遺症に対する治療費を加害者に請求することはできません。そのため、むちうちが後遺症になってしまった場合は、後遺障害等級認定を申請しましょう。

後遺障害等級認定とは?

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

後遺障害等級認定とは、交通事故が原因で残ってしまった後遺症が、後遺障害の等級に該当するかの認定を行うものです。後遺障害等級認定で後遺障害の等級が認定された場合は、後遺障害慰謝料逸失利益を受け取ることができます。後遺障害の等級は1~14級まであり、認定された等級に応じた金額の後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができます。

むちうちの場合、12級または14級の後遺障害と認められる可能性があります。

12級
頑固な神経症状を残す場合。他覚的所見となる客観的な資料がある。

14級
神経症状を残す場合。他覚的所見がない、または乏しいが神経症状を残すと認められる。
「他覚的所見」とは、CTやMRIなどの詳細な画像診断や、神経検査といった客観的な検査による診断のことです。

ただし、後遺障害等級認定を申請する場合は、以下の5つの条件を満たしていなければ、等級が認定される可能性は低いです。

  • 医療機関へ定期的に通院していること
  • 交通事故の状況と被害者が申告する症状の程度が一致していること
  • 交通事故当初から、被害者の訴える症状が続いており、一貫性があること
  • 後遺症が医学的に(画像診断や検査結果など)証明できること
  • 症状が重く、日常的に症状が続いていること

後遺障害等級認定の申請方法

後遺障害等級認定の申請は、事前認定または被害者請求で行います。

【事前認定】
事前認定とは、後遺障害等級認定の手続きを加害者側の保険会社に任せる方法です。そのため、被害者は手続きの手間を省くことができ、精神的ストレスを軽減できます。

しかし、事前認定の場合、どのような内容で手続きが行われているのかを被害者は知ることができません。したがって、後遺障害等級認定の結果が非該当になったり、予想していた等級よりも低い等級になる可能性もあるのです。

【被害者請求】
被害者請求とは、被害者が直接、加害者側の自賠責保険会社に後遺障害等級認定の申請をする方法です。そのため、被害者自身で後遺障害等級認定に必要な書類を取得・作成しなくてはなりません。

事前認定に比べると手間はかかりますが、手続きの内容を把握し、納得しながら進めていくことができます。また、後遺障害等級認定に有利になるような意見書の作成を、医師に依頼することもできます。

後遺障害が認定されたらどうなるの?

後遺障害が認定されると、後遺障害慰謝料と逸失利益というものを受け取ることができます。その詳しい内容がこちらです。

後遺障害慰謝料

後遺障害慰謝料とは、交通事故が原因で後遺障害が残った場合に被害者が受けた精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったものです。
後遺障害には1級〜14級までの等級がついており、これを後遺障害等級といいます。1級が最も重い症状、14級が最も軽い症状となり、症状が重くなるにつれて後遺障害慰謝料の金額も上がっていきます。

後遺障害慰謝料の相場

慰謝料を計算する場合、3つの基準があります。それは、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準というものです。どの基準で計算するかによって後遺障害慰謝料の金額も異なります。任意保険基準は、各保険会社によってばらつきがあるため、今回は自賠責保険基準と弁護士基準の後遺障害慰謝料の相場を提示します。

等級 自賠責保険基準 弁護士基準
第14級 32万円 110万円
第12級 93万円 290万円

このように、自賠責保険基準と弁護士基準で受け取ることができる金額に差が出ます。したがって、どの基準を使うかをしっかりと考える必要があります。弁護士基準を使う場合は、弁護士費用がかかる場合もあるので、注意が必要です。

逸失利益

逸失利益は、交通事故による後遺障害で被害者の労働能力が低下してしまい、本来得られたはずの利益が得られなくなったことに対する賠償をあらわします。

逸失利益の計算

逸失利益には、決められた計算式があります。

逸失利益=基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数

  • 基礎収入:事故前に受け取っていた収入額
  • 労働能力喪失率:後遺障害等級別に決まっている(14級→5%、12級→14%)
  • 労働能力喪失期間:原則として症状固定後から67歳までの年数(※今回のような神経症状の場合、5年程度のように制限することもあります。)
  • 労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数:年数によって決まっている(例:1年→0.952、5年→4.329)

これらは、治療費や入通院慰謝料などとは別に支払われるものです。したがって、慰謝料をさらに増額することができます。

関連記事交通事故の後遺症の種類とは?症状や後遺障害認定を受ける方法を解説

交通事故後の流れまとめ

交通事故にあってしまった直後から治療や通院の流れ、後遺症が残ってしまった場合の手続きまで解説をしました。被害者になってしまった場合は、加害者側から適切に治療費等を支払ってもらえるように手続きをしつつ、自分に合った医療機関で治療を進められると良いでしょう。

交通事故後の対応の流れや通院、治療費について全体像を把握した上で、安心して治療に専念してください。

この記事を監修したのは…

国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / T.N
大学を卒業し、出版社で取材や編集業務を経験。その後、WEBメディアの執筆に転向し、事故に関する様々な知識を多くの人に届けるべく、日々邁進中。現在は、交通事故専門士の資格を取得するために勉強をしている。座右の銘は、格物究理。

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