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【妊婦さんの交通事故】早急に対応するためのポイントと対策

監修記事

柿野 俊弥

理学療法士

本記事では、妊婦さんが交通事故に遭ったとき、何をすべきかを中心に解説します。受診の流れや注意点についても紹介しているので、ぜひ参考にしてください。

妊婦さんの交通事故はすぐに対応

妊婦さんの交通事故はすぐに対応

妊婦さんが交通事故に遭ったら、以下の対応をすぐに行いましょう。

  • 警察・救急にすばやく連絡する
  • 人身事故として話しあう
  • 整形外科・産婦人科で検査を受ける

それぞれ詳しく見ていきます。

救急・警察にすばやく連絡する

まずは、身の安全とお腹にいる胎児の安全が大切なため、救急にすばやく連絡しましょう。もし、難しい状況であれば周囲の人に助けを求めてください。待っている間は、事故現場を保存し、今後の手続きの証拠として残すためにも警察へ連絡することが大切です。写真を撮っておくのも一つの手になります。余裕がある場合は、保険会社にも連絡をしておくと今後の手続きがスムーズに進みやすくなります。知っている弁護士がいれば、優先的に連絡をして、任せるのもよいでしょう。

整形外科・産婦人科で検査を受ける

救急車に乗り、整形外科または産婦人科で検査を受けましょう。妊娠中のため、胎児の状態を確かめるためにも産婦人科を受診するのが望ましいです。基本的に、駆けつけた救急隊員に妊娠中であることを告げれば、適切な医療機関に向かってもらえます。どこの医療機関や科を受診すればよいかに関しては、心配しなくても問題ありません。

人身事故として話しあう

物損事故と人身事故の違い

▲物損事故と人身事故の違い

交通事故が起きた場合、相手との間で人身事故としての話しあいが必要です。保険会社や弁護士に連絡をしてアドバイスを仰ぎながら、適切な対応を取りましょう。妊娠中であることも相手に伝え、胎児の安全と妊婦さん自身の健康を最優先に考えた解決策を探ることが大切です。このとき、証拠となる写真や証言などを収集しておきましょう。

ただ、交通事故を起こした時点で正式に示談交渉をする必要はありません。検査後や出産後でなければ、胎児にどのような影響があるかが分からないためです。

関連記事交通事故の物損事故から人身事故への切り替え方法|違いと処分・リスクも解説

交通事故後に妊娠が発覚した場合は?

交通事故後に妊娠が発覚した場合は?

交通事故の後に妊娠が発覚した場合、一度冷静になり、胎児や母体の安全を最優先に考えましょう。医療機関を受診した後、医師の指示に従い、妊娠の進行や胎児の状態を確認することが大切です。また、医師の診断に基づき、出産や流産のリスクや影響を把握しましょう。

交通事故の損害賠償については、妊娠が確定してから示談交渉を行うのが一般的です。先述したように、まずは胎児の健康や母体の安全を最優先に考え、出産や流産等の結果が明確になるまで待つことがおすすめされます。同時並行として、この期間中に弁護士や保険会社と連携し、適切な法的手続きを進めていきます。妊娠中の交通事故における示談交渉には専門知識が必要です。、専門的な知識をもつ弁護士に相談しましょう。

交通事故で妊婦さんと胎児に起きる影響妊婦さんの交通事故は慰謝料も忘れずに

妊娠している際に交通事故を起こすと、母体や胎児にどのような影響をもたらすのでしょうか。発生し得る疾病や症状を6つ紹介します。

切迫流産・早産

切迫流産・早産とは、流産や早産となる危険性が高い状態のことを言います。交通事故の衝撃や急激な減速により、子宮にかかる圧力や振動が増加し、流産や早産のリスクが高まってしまうのです。

切迫流産は、少量の出血をともなうことが特徴になります。一方、切迫早産は、子宮の収縮が頻回に起こったり子宮の出口が開いたりするのが特徴です。両者が起きた場合は妊娠を継続できるように治療を進めます。

胎児が十分な発育を続けるためにも、早急な医療ケアと適切な安静が必要です。

胎盤早期剥離

胎盤早期剥離とは、本来、子宮体部に付いている胎盤が剥がれてしまうことです。交通事故の衝撃によって、胎盤が子宮から早期に剥離する可能性があるわけです。

胎盤早期剥離が起こると、次のような症状が生じます。

  • 出血
  • 下腹部の痛み
  • お腹の張り
  • 子宮の収縮

母体と胎児の循環系に影響を及ぼし、胎盤から胎児に栄養や酸素を送れなくなり出産できても後遺障害を残すことも多いのが特徴です。上記の症状に該当した場合、すぐに医療機関を受診しましょう。

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

子宮破裂

交通事故での強い衝撃や怪我によって、子宮が破裂する可能性があります。子宮破裂は帝王切開や子宮全摘出などの緊急手術を必要とする重大な疾患です。状態に応じて症状が異なるため一概には言えませんが、腹部の痛みや出血、胎児の心拍数の異常が見られた場合は、即座に医療機関を受診する必要があります。

頸椎捻挫・腰椎捻挫

頚椎捻挫(けいついねんざ)とは?原因や症状など

▲頚椎捻挫(けいついねんざ)とは?原因や症状など

交通事故での急激な動作や衝撃によって圧力がかかり、頚椎や腰椎を捻挫する可能性があります。頚椎の捻挫は、一般的に言われる名称として「むちうち」と呼ばれることも多いです。

これらは、痛みやしびれを生じ、日常生活に支障をきたす場合も少なくありません。重度の場合は、後遺障害として症状が残ることもあります。早期に治療を始め、無理のない身体の動かし方を学びながらリハビリテーションを進めていくことが大切です。

とくに妊婦さんは、首や腰に負担のかかりやすい姿勢になっているため、専門家のアドバイスを仰ぎながら、慎重に治療を進めましょう。

胎児母体間輸血症候群

胎児母体間輸血症候群とは、胎児の血液が母体の循環系に入り込んでしまうことで発症します。交通事故の衝撃や振動により、胎児の血液と母体の血液の間で不均衡が生じると、胎児母体間輸血が生じる可能性があるのです。

この症候群の一番の問題は、胎児が貧血を起こす点です。胎児の成長や発育に重大な問題を引き起こすことがあるので、早期の診断と適切な治療が大切です。

胎児の骨折・頭蓋内出血

交通事故の衝撃によって、胎児が骨折や頭蓋内出血を起こす可能性があります。胎児の骨や頭部は未発達なため弱く、衝撃による損傷が生じやすいです。検査で胎児の動きや異常な症状に注意しながら、治療を受けることが重要です。

関連記事むちうちの症状とはどういったものなのか?治療方法についても解説

交通事故で妊婦さんが受診する流れ

交通事故で妊婦さんが受診する流れ

交通事故に遭った妊婦さんが適切なケアを受けるために、これから紹介する受診の流れを把握しておきましょう。

検査を受ける

交通事故後、医療機関を受診した際には検査が行われます。救急隊から医師に伝えられていることも多いですが、直接医師に胎児がいることを伝えるようにしましょう。

検査の中には、妊婦さんが実施すべきではないものもあります。例えば、レントゲン検査のエックス線による被ばくの可能性です。基本的に胎児への影響はないとされていますが、念のため医師に確認しておくと安心して検査を受けられます。

レントゲン検査とは

▲レントゲン検査とは

治療を受ける

医師の指示に従って治療を受けます。胎児に影響が出ない安全な方法で治療を行うためにも、治療方法や使用する薬剤に制限が出る場合があるため、医師とよく相談して治療を進めることが大切です。

胎児の状態に応じて交渉する

交通事故の被害により、胎児に影響がある可能性がある場合は、胎児の状態に応じた対応や交渉が必要です。しかし、出産や流産などが確定してから示談交渉に入りましょう。

繰り返しになりますが、実際に出産しなければ、胎児にどのような影響があるかが分からない場合があります。

まずは、自身や胎児の健康を最優先に考えて、検査や治療を進めることが大切です。健康状態が悪い中、法的な手続きや補償を検討しても身体への負担が大きくなるだけです。

必要な治療やケアを受けた後で、法的な手続きや補償については検討しましょう。

妊婦さんの交通事故での注意点

妊婦さんの交通事故での注意点

ここでは、妊婦さんが交通事故を起こした際の注意点について解説します。

妊婦であることはすぐ伝える

何をするにも妊婦であることを伝えましょう。妊婦であるかどうかは、受診から治療、その後の対応において大きな影響を与えます。医師や救急隊員に妊婦であることを伝えることで、適切な医療ケアや対応ができます。

示談交渉は出産後にする

交通事故の示談交渉とは交通事故の加害者と被害者が和解の為に行う話合いのこと

▲交通事故の示談交渉とは

交通事故による損害賠償や保険の示談交渉については、出産後に行うことをおすすめします。交通事故の影響や妊娠中の状態によっては、損害の全容が明確になるまで時間がかかる場合があります。しかし、交通事故で何らかの怪我を負い、加害者に対して損害賠償請求するまでの時効期間は、基本的に「5年」とされています。十分、期間はあるため、焦らずに自身や胎児の健康を優先にしましょう。

シートベルトの着用方法に注意する

シートベルトは道路交通法によって装着することが義務付けられていますが、妊娠中で健康面において適さない場合は、免除されます。しかし、万が一救急車での移動中に事故に遭ったり急ブレーキがかかったりして、体に負担がかかる場合があるため「シートベルトをしない」のは、望ましくありません。

そこで、腹部への圧迫を避けた妊婦さんのシートベルト着用方法を実践しましょう。肩ベルトを肩と胸の間に通し、腹部を避けます。腰ベルトも腹部を避けて、できるだけ腰の低い位置に着用してください。

POINT

捻じれがあると圧迫の原因に

着用するとき、捻じれがあると圧迫の原因になるため、捻じれがないかを確認することも大切です。

妊婦さんが交通事故に遭ったときの受診先

交通事故に遭った後、救急車を呼べば救急隊が最適な医療機関に連れていきます。しかし、自身でも受診先によってどのような検査、治療を受けられるのか、医療機関の特徴を知っておくことが大切です。

妊婦さんが交通事故に遭ったときには、基本的に産婦人科または整形外科に受診することになります。選択肢としては整骨院も一つになりますので、整骨院を含めてそれぞれ詳しく解説します。

交通事故通院における整形外科と整骨院の治療内容の違い

▲交通事故通院の病院と整骨院の治療内容の違い

産婦人科

産婦人科は、女性特有の臓器(子宮や卵巣など)の異常に対して専門的な治療を行う医療機関です。交通事故後、母体よりも胎児への影響が心配される場合は、まず産婦人科を受診した方がよいでしょう。妊娠による母体や胎児の状態を評価し、必要な検査や治療を行うことができます。

整形外科

交通事故によって起こる怪我や身体的な問題に対して、専門的な治療を行う医療機関です。交通事故での打撲や骨折、ねんざ、捻挫などの外傷に対して適切な診断と治療を行います。妊婦さんが交通事故で怪我をした場合は、安全な方法で痛みの軽減や怪我の治療を提供します。医師が在籍しているため、必要に応じて検査を行うこともできます。

整骨院

整骨院は整形外科と同様に、交通事故での怪我や身体的な問題に対して治療を行う施設です。骨折やねんざ、捻挫、打撲などの軽度な外傷や痛みに対して、整骨院での施術やリハビリテーションを受けるのもよいでしょう。

ただし、妊娠中の場合は、リハビリ方法や使用する治療器に制限が出てきます。整骨院に通う場合は、妊婦さんの対応をしっかりと行ってくれる整骨院を探すことが大切です。

妊婦さんの交通事故は慰謝料も忘れずに

交通事故の損害賠償の内訳

▲交通事故の損害賠償の内訳

交通事故に遭った妊婦さんは、慰謝料を含む損害賠償の請求を忘れずに行いましょう。

  • 胎児に影響がなかった場合:妊娠中の交通事故で胎児に明らかな影響がなかった場合でも、母体の身体的・精神的苦痛や受けたダメージに対する慰謝料を請求できます。
  • 障害をもっていた場合:もしも、交通事故によって胎児が障害をもって生まれた場合、将来の医療費や介護費用、教育費用などを含む損害賠償を請求できます。
  • 中絶した場合:交通事故の影響で妊娠を継続できなかった場合、中絶に関わる医療費や精神的な苦痛に対して慰謝料を請求できます。

必要な手続きや証拠の収集のために、交通事故の状況や損害については記録を残しておきましょう。

妊婦さんの交通事故はすぐ受診

妊婦さんの交通事故はすぐ受診

交通事故に妊婦さんが遭ったら、すぐに救急車を呼び、医療機関を受診することが何よりも大切です。待っている間に余裕がある場合は、弁護士、警察、保険会社への連絡や状況証拠の記録を行っておきましょう。

示談交渉は、母体や胎児の安全が確認されてからでも、十分に間にあうので焦らないことが大切です。もし、分からないことがあれば「交通事故病院窓口」で相談を受け付けているので、お気軽にご相談ください。

この記事を監修したのは…

理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

この記事の執筆者

理学療法士 / 柿野 俊弥
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

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