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【医師解説】頚椎捻挫で手のしびれ?原因や治療法、他の病気の可能性も解説

監修記事

Dr.新堂

医師

交通事故にあわれた方に多く見られる頚椎捻挫は、様々な症状があらわれることでも知られています。

もしも手のしびれが出たら頚椎捻挫のせいなのか、他の病気の可能性もあるのかと不安になりますよね。

今回は「頚椎捻挫と手のしびれ」について、原因や治療法について解説していきます。

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頚椎捻挫とは

頚椎捻挫(けいついねんざ)とは?原因や症状など

▲頚椎捻挫(けいついねんざ)とは?原因や症状など

はじめに、頚椎(けいつい)捻挫」とは、イメージとしては足首の捻挫と同じく、頚椎(首の骨)が正常な角度を超えて一時的に異常に動いてしまった状態の事です。

足首との違いは、頚椎は全身の運動・感覚の情報を、脳とやりとりする非常に重要な神経(脊髄(せきずい))を取り囲むようにして並んでいるところです。

そこに強い衝撃が加われば、骨と骨を固定している靭帯や周りの筋肉に加えて、神経までダメージを受けてしまい、その損傷部位に応じた症状が出てきます。

頚椎捻挫でみられる主な症状

むちうちの症状とは?むちうちが原因で起こる症状の例

▲むちうちが原因で起こる症状の例

頚椎捻挫の症状は非常に多岐にわたって出てきます。

少し医学的な詳しいお話をすると、症状は重症度別に分けられることがあり、その基準の1つとしてケベックガイドラインと呼ばれるものがあります。

ケベックガイドラインでは、症状をグレード0〜4までに分け、それぞれのグレードに合わせて治療法も変わってきます。

この分類が策定される以前は、ほとんど厳密な科学的評価を受けていない状況の中で治療が行われることもしばしばありました。そのため、このようにまず症状を体系的に分類することが、一人ひとりに適した治療法を考えていくために非常に有用です。

ケベックガイドラインによる症状の分類

グレード0 特に症状がみられない
グレード1 首周りの痛みやこわばり、頭痛、耳鳴り、めまいなど
グレード2 首の角域が狭くなる、押すと明らかに強くなる痛み
グレード3 首や手足のしびれなどの感覚異常や腱反射の低下
グレード4 画像検査で首の骨折や脱臼がみられる

特に症状がない「頚椎捻挫」をグレード0として始まります。

グレード1では、客観的には異常が分かりにくい様々な症状が含まれます。例えば首周りの痛みこわばり頭痛耳鳴りめまいなどがあらわれます。

「頚椎捻挫」「むちうち」と診断された多くの外来患者さんがここに該当するのではないかと思います。

グレード2では、首の可動域が狭くなったり、押すと明らかに強くなる痛みなどがあります。

グレード3は、神経的な異常です。首や手足のしびれといった感覚異常や、少し難しいですが腱反射の低下などです。

最重症のグレード4では、レントゲンCT画像を用いた検査で首の骨折や脱臼所見がある方が含まれます。

このように症状別で分かりやすく体系的に分類してありますが、決してご自身では判断せずに必ず医師による診察を受けるようにして下さい。

関連記事むちうちはどんな症状?治療方法や完治までにかかる時間

頚椎捻挫で手のしびれの症状はあらわれる?

頚椎捻挫は、強い衝撃が加わることで、靭帯や筋肉、神経などダメージを受けた部位に応じた症状が出てきます。

さらに強い衝撃が加わり、骨の損傷、つまり骨折がある場合は「頚椎骨折」に、脊髄(せきずい)まで損傷が及ぶと「頚髄(けいずい)損傷」といった診断もつき、より重症に近づいていきます。

「外傷性頚部症候群」や「むちうち」は「頚椎捻挫」と同じ状態を表す診断名として使われています。

一般的に今あげたような病気には全て、肩〜手にかけてのしびれを始めとして肩こりや頭痛などを引き起こす可能性があります。

手のしびれの症状は整形外科だけでなく内科的な疾患でも発症するため注意が必要です。後ほど解説しますので読んで下さいね。

ジャンプする手のしびれの他の病気の可能性についてはこちら

頚椎捻挫で手のしびれが起こる原因とは?

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なぜ「頚椎捻挫」で手のしびれが起こるかを解説します。

先ほど少しご説明したように、首には脊髄が通っており、脊髄から全身に向けて神経が出ています

つまり、手の感覚を司る神経は指先から手首を通り、肘や肩を超えて首にある脊髄へと合流し、最終的には脳へと情報を伝えています。

したがって、理屈としてはこの経路のどこかで神経がダメージを受ければ、脳はその部分が分かるのです。

なぜ首を痛めた頚椎捻挫で手のしびれが起きる?

では、なぜ首のダメージであるはずの「頚椎捻挫」で手のしびれをきたすことがあるのでしょうか?

それは首に入ってきている神経は決して1本ではなく、細かく見ると様々な部位に対応した細い神経の集まりだからです。

そのため、手の感覚に対応する神経ももちろん首へと走っているので、そこがダメージを受けると手のしびれとして症状が出ます。

もちろん同じようなことが肩や腕、足などにも起こる場合もあります。

一方、同じような原理は決して首だけではなく、指先から首までの経路どこでも起こります。

この後で詳しく説明しますが、手首でダメージを受ける「手根管症候群」「ギヨン管症候群」、肘でダメージを受ける「肘部管症候群」、肩でダメージを受ける「胸郭出口症候群」などがあります。

これらは全て手のしびれの症状が出ます。

関連記事交通事故で頚椎捻挫と診断された…。症状や治療方法について解説!

手のしびれは他の病気の可能性はある?

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手のしびれには「頚椎捻挫」だけでなく、内科的な疾患も含め様々な病気のサインであることがあります。

代表的なものとしては、生活習慣病の1つである「糖尿病」です。
一般的には手足の指先がピリピリ・じんじんするような感覚がサインであると言われています。

特に定期的な血液検査を行っていない方や普段から偏った食事をしている方は注意して下さい。
ご心配な方は一般内科もしくは糖尿病専門医の診察をおすすめします。

他に手のしびれをきたす整形外科疾患もあります。

  • 手根管症候群
  • 肘部管症候群
  • ギヨン管症候群
  • 胸郭出口症候群
  • 頚髄症

「手根管症候群」は、人差し指と中指の手のひら側を中心にしびれがくる病気です。
更年期や産前産後の女性に多く発生し、特に夜間に症状を感じる方が多いです。

「肘部管症候群」は、多くは薬指と小指を中心に手首にかけてのしびれから始まり、握力や手の細かい動きに力が入りにくさも自覚する病気です。

「ギヨン管症候群」は、「肘部管症候群」と比べて手の甲にはしびれをきたさず、握力は比較的保たれていることが多いです。

上記の疾患例は、いずれも肘から下で神経が単独に障害される疾患です。

もし、上記のような症状が複数混ざってあらわれるようであれば、同時に数カ所で病気が進んでいるか、もしくはもっと上の首や肩での障害を疑います。

病名としては「胸郭出口症候群」「頸髄症」などがあります。

きちんと診断をつけるためにも、このような症状を感じた時は整形外科を受診するようにして下さい。

頚椎捻挫による手のしびれの治療法について

先ほどもご説明したように、「頚椎捻挫」は重症度に応じて治療法が変わってきます

その基準の1つであるケベックガイドラインでは、重症度別に5段階に分けています。それぞれの治療法を解説します。

一般的に多くの「頚椎捻挫」は、適切な期間の鎮痛薬使用ときちんとした安静を行うことで症状は落ち着いてきます。

ただし、4〜42%の人が慢性的に症状が続くとの報告も一部あり、慢性化してしまう人はなかなか治療がスムーズに進まないのも事実です。

*ケベックガイドラインによる分類

グレード0 特に症状がみられない
グレード1 首周りの痛みやこわばり、頭痛、耳鳴り、めまいなど
グレード2 首の角域が狭くなる、押すと明らかに強くなる痛み
グレード3 首や手足のしびれなどの感覚異常や腱反射の低下
グレード4 画像検査で首の骨折や脱臼がみられる

グレード1では、基本的に特別な治療は必要とせず、安静も必要ありません。
鎮痛薬は患者さんの判断で痛みが強ければ頓服のようにして使うこととなる場合が多いです。

グレード2と3では、必ずしも安静が必要という訳ではありません。しかし、症状やレントゲンCTMRIなどの検査結果に応じて、数日から1週間ほど頚椎カラーを首に巻いて固定することがあります。
一概には言えず、個々のケースで担当医の判断となるでしょう。

さらに痛みに対しては1週間ほど鎮痛薬を使用します。
もし、受傷直後にかなり痛みが強い場合は麻薬性鎮痛薬と言って、強力なカテゴリーの鎮痛薬を使用するケースもあります。

グレード4では、首の不安定性が強いため手術の適応となることがしばしばあります。

骨折部位、持病や年齢などの個々のケースにおいて術式などが変わってきます。

手術のリスクが非常に大きい場合は、しっかりとした硬い頚椎カラーを数ヶ月使用する保存療法を選択することもあります。

以上のように受傷後の急性期治療を終えても、症状が慢性的に続くようであれば、神経ブロック治療電気療法、機能・筋力回復のための運動療法を行っている病院もあります。

頚椎捻挫は早めに整形外科の受診を

「頚椎捻挫」は交通事故に代表される普段はかからないエネルギーが首に加わると起こる病気です。

軽症から重症まで様々な症状が出ますが、手のしびれは代表的な症状の1つです。

重症度に応じて治療法が変わりますが、軽症・中等症であれば基本的には安静もしくは固定と鎮痛薬の使用で対応できます。

自己判断で受傷直後にきちんとした治療を受けないと、症状が慢性化してずっと残ってしまうかもしれません。

たいしたことないと思っても、必ず早めに整形外科を受診することをおすすめします。

この記事を監修したのは…

都市部の大規模病院で外科系の医師として邁進する日々。「外来診療・救命救急・手術」と幅広い領域で揺るぎない高度医療を受け継ぎながら、年間100件ほど執刀。英語力を活かし、海外医師の通訳/翻訳の仕事も行う

この記事の執筆者

医師 / Dr.新堂
都市部の大規模病院で外科系の医師として邁進する日々。「外来診療・救命救急・手術」と幅広い領域で揺るぎない高度医療を受け継ぎながら、年間100件ほど執刀。英語力を活かし、海外医師の通訳/翻訳の仕事も行っている。

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