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打撲と骨折の見分け方を症状別に解説

監修記事

甲斐沼 孟

医師(外科・整形外科他)

交通事故の衝突などで起こる打撲や骨折。打撲と骨折は症状が似ているので、「これって打撲かな?」「痛みが続くから骨折ではないか?」など判断に迷う場面もあろうかと思います。

この記事は、下記のような情報をお探しの方に向けて書いています。

・部位ごと(脛や腰など)の打撲と骨折の見分け方を知りたい方
・部位ごとの打撲と骨折で症状がどのように違うか知りたい方
・骨折しているかどうかセルフチェックの方法を知りたい方

打撲と骨折の痛みの違いの観点では、一般的には打撲は患部が動かせる程度の痛みで、骨折は動かせないほどの激痛と表現されます。その他にも腫れや患部の変形があるか等様々な判断のポイントがありますので詳しくご紹介していきます。

打撲は適切な治療を施して安静にすれば治まりますが、骨折は放置していると骨が変形した状態でくっつく可能性があるので注意が必要です。そこで今回は、打撲と骨折の症状別の見分け方、診察方法をまとめて解説します。

打撲と骨折の見分け方

最初に、打撲と骨折の症状と特徴について解説します。

打撲と骨折それぞれの症状の違い

打撲とは物に強く打ち付けたり転倒するなどした場合に起こる怪我です。

打撲は「打ち身」とも呼ばれていて、大半の場合は傷口はなく内出血(あおたんや青あざ)ができます。打撲はスポーツが原因で起こることが多く、バスケットボールやサッカー、柔道など相手選手との衝突で打撲が起こるケースが多く見られます。

交通事故の怪我:打撲とは?

交通事故の怪我:打撲とは?

骨折は文字通り骨が折れたりヒビが入る状態です。

骨折には完全骨折や疲労骨折、単純骨折や複雑骨折などさまざまな種類があります。スポーツだけではなく、交通事故やつまずきなど日々の生活でも起こる可能性がある怪我です。

打撲と骨折は症状によって違いや特徴があります。以下に打撲と骨折の違いをまとめました。

項目 打撲 骨折
腫れ あり あり
内出血 あり あり
患部の変形 なし あり
痛み ・患部が動かせる程度
・冷やしていると落ち着く
・動かせないほどの激痛
・長期間続く
その他の症状 重度の打撲だとしびれを伴うことがある しびれや麻痺
吐き気や目まい

打撲も骨折も患部の腫れや内出血は起こります。

「患部が動かせるか」「氷のうなどで冷やすことで症状が落ち着くかどうか」などの違いで、打撲か骨折か見極められます。

ただ、患部の変形やしびれや麻痺、めまいや吐き気が見られる場合は骨折の可能性が高いです。

患部が動かせない激痛を伴う腫れが骨折の特徴

交通事故で足を骨折した人

骨折は患部を冷やしても落ち着かないことや、痛みが長時間継続して吐き気なども見られることが特徴です。

「少し冷やせば落ち着くはずだけど、なかなか痛みが治まらない」「何となく体がしびれてきた」と感じるようであれば、骨折の疑いがあります。

また、骨折は患部の変形も特徴の1つです。打撲前と患部の状態が変わった気がする場合は、患部が骨折しているかもしれません。

上記でまとめた表も参考に、打撲か骨折かを判断することが重要です。

関連記事打撲の痛みはいつまで続く?治し方や病院に行く判断基準を解説

部位ごとの打撲と骨折の見分け方

部位ごとの打撲と骨折の見分け方

ここからは、部位別に打撲と骨折の見分け方を解説します。

すね(脛)

すねは日常生活でも打撲しやすい部位です。階段での転倒や家具への衝突、交通事故でのすねへの打撃などで打撲や骨折が起こることが多いです。

実は、すねには筋肉はそれほど存在していません。そのため、すねは打撲よりも骨折する可能性が高い部位です。

強い衝撃で起こる打撲や骨折をした場合は、内出血が原因でしびれといった神経障害が起こる可能性があります。なかでも、足の指に出るしびれが特徴です。

万が一、すねを骨折した場合、荷物を持ったときや歩いているときに強い痛みを感じます。あわせて、熱を帯びた感じや患部の腫れ、患部を触ったときに痛みも伴います。

症状が重い場合は、骨折した患部がズレてしまうこともあります。ちなみに、すねに何度も衝撃が加わることで「シンスプリント(脛骨疲労性骨膜炎)」と呼ばれるすねの障害が起こる可能性があります。

バスケットボールやサッカーなどのスポーツで、相手選手との接触で腰を強く打ち付けることもあるかもしれません。

日常生活でも掃除中に棚から落下したり、高いところからの落下物が腰に当たり痛みを生じる場合があります。

それでも痛みが長く続く場合は、骨折の可能性があります。若年層では腰椎分離症や横突起骨折などが考えられ、高齢者は圧迫骨折が考えられます。

程度がひどい骨折では、身体を起こしたままで保つことが難しく、寝返りもつらい状態となってしまいます。

手首・手の甲・掌(手のひら)

手首や手の甲を打撲または骨折した場合は、まずは内出血が見られます。

そのあとで痛みや腫れを伴って、患部は次第に熱をもつようになります。ただ、この時点では指は問題なく動かせるので安心しましょう。

手首を骨折してしまうと異常な可動性や変形が出現するだけでなく、患部を動かすと「パキパキ」と日ごろは聞こえない異常音がする場合があります。

また、手首を骨折して神経が傷ついてしまうと、親指の付け根の筋肉が萎縮してしまうケースもあります。

手のひらの打撲は、他の部位と同じように内出血が見られ、患部を押すと痛みを感じます。

骨折した場合は手指の関節に圧痛や腫れがでるだけではなく、折れた骨のかけらの位置のズレや回転などで、もともとあった指の位置が偏位する場合もあります。

関連記事【医師解説】頚椎捻挫で手のしびれ?原因や治療法、他の病気の可能性も解説

交通事故の怪我:打撲の症状とは?

▲交通事故の怪我:打撲の症状とは?

膝を打撲や骨折した場合も、他の部位と同様に腫れや内出血が見られます。

膝は骨折すると曲げ伸ばしができなくなる可能性が高いことも特徴です。膝の曲げ伸ばしができないと、日常生活に大きな影響が及んでしまいます。

膝の関節内が骨折した場合は、レントゲンに写りにくいので、CTMRIで詳しく検査した結果、打撲ではなく骨折だと判明する場合もあるのです。

交通事故後に行われるレントゲン検査とCT・MRI検査の違い

▲交通事故後に行われるレントゲン検査とCT・MRI検査の違い

膝関節内だけではなく、膝の皿(膝蓋骨)が骨折する場合もあります。膝を骨折すると体重が掛けられなくなります。

膝の曲げ伸ばしができない場合や体重をかけられない場合は、迷わず整形外科など病院で診察を受けましょう。

腕を骨折している場合は、明らかな変形が見られます。

万が一見た目の変形が見られない場合でも、肘の曲げ伸ばしが難しくなる可能性があります。高齢者の場合は腕の付け根部分を骨折することが多く、子どもの場合は肘の近くを骨折するケースが多く見られます。

腕を骨折すると日常生活にも影響があるので、打撲した場合は速やかに患部を冷やしましょう。それでも痛みや腫れが引かない場合は骨折の可能性があるので、整形外科などの医療機関で診察を受けましょう。

胸部

胸部を打撲すると、特定の場所が痛んだり内出血が見られます。

痛みの程度に個人差はありますが、痛みが大きい場合は体を動かすことが難しいです。あわせて肋間神経もあるので、痛めた場所以外にも痛みが出てしまう場合があります。

胸部の骨折は、呼吸するだけでも痛みが出てきます。骨折の程度にもよりますが、折れた骨が肺に当たることで損傷する可能性もあります。

骨折の状態によっては緊急性があるので、救急車を呼ぶなど、迅速な対応が必要です。

医師監修肋骨の打撲と骨折の違いとは?症状や治療内容を詳しく解説

大腿(太もも)

大腿部を打撲してしまうと患部の腫れや痛みが出たり、内出血をする場合があります。

打撲の程度によって膝や股関節を曲げにくくなる可能性もあり、打撲がひどいと大腿の内圧が高くなってしまうこともあります。

また、血腫*が多い場合はコンパートメント症候群や異所性骨化、骨化性筋炎に注意が必要です。

*血腫…血腫とは、血塊などを含めた血液の凝集成分です。

大腿部の骨を骨折してしまうと足の付け根が痛くなるので、立ったり歩いたりすることが困難になります。ヒビだけで済むこともあるので、そこまで強くない痛みで歩ける場合もあります。

ただ、少しずつヒビが広がっていくので痛みが強くなり、結果的に歩けなくなる場合もあるので注意しましょう。

臀部(お尻)・尾てい骨

尾てい骨:背骨の一番下の三角形の骨(図解)

▲尾てい骨とは?

尾てい骨を打撲すると、周囲の皮下組織が損傷します。

痛みだけではなく内出血を生じる場合もありますが、臀部は脂肪が多い部位なので打撲で済む場合もあります。

ただ、衝撃の度合いによっては骨折する可能性もあるので注意が必要です。

また、尾てい骨を骨折すると立ったり座ったりする日常生活の動作でも痛みが出る可能性もあります。

歩く時にも痛みが出る場合があるので、普段通りに動くことが難しい場合もあります。状態によっては、車椅子なども使いながら回復を待つこともあります。

関連記事尾てい骨のヒビが痛くてつらい!原因と対処法を徹底解説

骨折しているか自分でチェックする方法

骨折しているか自分でチェックする方法

ここでは、骨折を自分で見分ける方法について解説します。

骨折かどうかを判断するには、時間の経過とともに症状を見極める必要があります。

まずは、怪我してすぐの5分から10分以内に患部がどんどん腫れあがっていく場合は骨折を疑いましょう。

なお、10歳以下の子どもでは骨折してもポキっと音はならないので、患部の状態を見て打撲か骨折かどうか判断することが重要です。

また、高齢者や、骨にヒビが入った場合では、痛みをあまり感じず患部が腫れないケースもあります。

その際は、足先などの末端部から体の中心に向けて叩いてみましょう。指を痛めたときはつま先から人差し指、腕の場合は手首を曲げ手のひらを肘に向かってトントンと叩きます。
これで痛みを感じるようであれば、骨折を疑いましょう。ここでのポイントは、直角に叩くことです。

また、飲酒や入浴などで血流が良くなると患部がズキズキと痛みます。このことからも、打撲か骨折かが見極められます。

病院で骨折と診断されるまでの流れ

ここでは、病院で実際に診断されるまでの流れを説明します。

診察

まずは診察から始まります。

保険証を持って受付し、問診票を受け取った場合は、怪我をした日時や場所、状況などを可能な限り詳しく書きましょう。痛みが強く書けない場合は、同行者がいれば代わりに書いてもらうと良いでしょう。

問診票への記入が終わり順番が来たら、医師の診察が始まります。医師には問診票では書ききれなかった点があれば、補足として状況や痛みを伝えましょう。骨折ではなく打撲の可能性がある際も、痛みの程度によってはレントゲン検査でさらに詳しく診察していきます。

また、交通事故の場合は、自賠責保険での受診になる場合が多いです。電話や受付で事前に交通事故である旨を伝え、交通事故の患者の対応ができるかどうか確認しておきましょう。場合によっては治療費の立て替えが発生する場合があります。

自賠責保険とは、自動車やバイクを所有する全ての人に、加入が義務付けられている強制保険。交通事故の被害者の救済が目的で、補償対応は人身事故の被害者。そのため、物損事故あ対象外となる。また、請求できる賠償金には限度額が定められている。

▲自賠責保険とは?

レントゲン検査

診察で骨折が疑われた場合には、レントゲン撮影でさらに詳しく検査します。

多くの場合はレントゲン検査で打撲か骨折の見分けがつきます。

レントゲン検査とは

▲レントゲン検査とは

ただ、レントゲン画像に写りにくい部位(足の甲など)や骨折のズレ(転位)が確認できない場合は、レントゲン検査では判断できない可能性もあります。その際には、この後解説するCT撮影が大いに役立ちます。

なお、子どもの骨はレントゲン画像に写らない部位があり、個人差が大きい事も特徴です。怪我をした部位を骨折した可能性がある際は、無傷の部位もレントゲン撮影して比較する場合もあります。

関連記事交通事故の検査は念のため受けた方がいい?検査費用や慰謝料も解説

CT検査

CT検査とは

▲CT検査とは

レントゲン検査だけでは判断しにくい場合には、CT検査でさらに詳しく診察します。

CT検査は「Computed Tomography」の略称で、コンピューター断層撮影の意味を持ちます。レントゲン撮影では見られない細かな部位が確認できるので、子どもやレントゲン画像に写りにくい部位の打撲や骨折を見分けられます。また、造影剤と呼ばれる医療用薬品を使うことで、出血点の同定や病気の有無、形状なども確認できます。

検査する部位によっては着替えが必要になったり、撮影前の食事が制限される場合もあります。また、妊婦や妊娠の可能性がある方、ペースメーカーを装着している方はCT検査前に医師や担当者に相談しましょう。

関連記事【妊婦さんの交通事故】早急に対応するためのポイントと対策

まとめ

まとめ

今回は部位ごとの打撲と骨折の見分け方、骨折しているかどうかのチェック方法、病院での診察の流れを解説しました。

患部を冷やすと楽になる場合や動かせる場合は打撲の可能性が高いです。

しかし、痛みが続いたりしびれやめまいなどがあれば、すみやかに医療機関で診察を受けることが重要です。

この記事を監修したのは…

専門領域分類
外科, 整形外科, 乳腺外科, 小児外科, スポーツ整形外科, リウマチ, 一般外科, 形成外科, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 消化器外科, 脳神経外科, 美容外科, 大腸肛門科, 内科, 内分泌代謝科, アレルギー・膠原病内科, 神経内科, 肝胆膵内科, 消化器内科, 総合内科, 血液内科, 腎臓内科, 循環器内科, 感染症科, 糖尿病内科, 呼吸器内科, 産業医, サル痘, 医療データ, 血液・感染症, 集中治療, 救急科

経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 
卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医

主な研究内容・論文
〇 「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」
〇 「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」
〇 「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」
〇 「都市部二次救急医療期間の当院における救急要請応需率に関する後方視的検討」
〇 「当院においてリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)投与した播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した感染性敗血症症例の臨床成績」
〇 「腹腔鏡下に治療しえた成人期に発症した先天性Bochdalek孔ヘルニアの一例」

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / A.M
専門学校卒業後は、フリーライターとして様々なジャンルの記事を執筆してきました。現在は交通事故や整骨院に関する知識を身につけるためにまだまだ勉強中ですが、ライターの経験を活かしてみなさんが読みやすい記事を提供していきます!

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