追突事故は物損事故ではなく人身事故で処理すべき!その理由を解説
監修記事
オオクマ サキコ
看護師
追突事故の被害にあった場合、人身または物損のどちらか処理を行うことになるでしょう。しかし、「人身と物損のどちらで処理をすべきなのか」「人身と物損の処理によって、どのような違いがあるのか」など疑問が出てくるかもしれません。
万が一追突事故にあってしまった場合に困らないよう、人身事故と物損事故の違いや、切り替えの手続きまでわかりやすく解説していきます。
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目次
追突事故の怪我について
追突事故の被害にあった場合、「人身事故」または「物損事故」のどちらかで事故処理を行います。
- 人身事故:怪我人がいる場合の事故
- 物損事故:怪我人はいないが、モノが壊れてしまった場合の事故
人身事故と物損事故は、上記の定義によって分類されます。しかし、追突事故による怪我の症状が、事故処理の際に現れているとは限りません。
先程も述べたように、追突事故による怪我の症状は、すぐに現れるとは限りません。数時間後~数日後というように、事故より時間が経過してから、怪我の症状が現れる場合もあります。
事故後の身体は、興奮状態になっている可能性があります。身体が興奮状態になると、痛みを感じとる感覚器官が麻痺してしまいます。そのため、事故から数時間後~数日後という、身体の興奮状態が落ち着いた時に、怪我の症状に気づく場合があるのです。
事故直後に怪我の痛みがなかった場合は怪我人がいないと判断され、物損事故で処理されます。しかし、事故から時間が経って怪我の痛みが現れた場合、物損事故で処理したままだと被害者側は損をする可能性が高いです。そのため、人身事故への切り替えを行うようにしましょう。
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人身事故と物損事故の違い
交通事故における人身事故と物損事故の定義は、どのように異なっており警察で双方に対する扱いに違いはあるのでしょうか。ここでは正確に違いを押さえておきましょう。
定義上の違いについて
物損事故と人身事故の定義上の違いは、発生した交通事故により「人が怪我をしたり、死亡したかどうか」という点のみです。道路交通法の67条に定められてされています。
怪我の程度にこそ差はあっても、基本的に分類する条件の例外はありません。骨折のような明らかな傷害から、時間が経過してから発生する、むちうち症も人身事故と定義されます。
人身事故は「人」への損害が発生した時のことを指します。一方で物損事故は、車や電柱などの「モノ」に損害を発生させた場合を言います。
では、次のようなケースはどうでしょうか。あなたが追突事故にあい、車を傷つけられて数日経過してから首の痛みがでてきたとします。このように人身事故と物損事故の両方が交通事故で起きた場合、どちらに定義されるのでしょうか。答えは「人身事故」の扱いです。
しかし、事故の発生から時間が経過して症状が出ていることから、手続きの対応には注意が必要です。
警察での扱いについて
追突事故でも、人身事故か物損事故のいずれかにより、警察での扱いも異なってきます。人が怪我をしたり、死亡してしまった場合、人身事故の扱いとなります。免許の違反点数が加算され、場合によっては一回で免許が取り消しとなることもあります。また刑事罰を科されます。危険運転致死傷罪や過失運転致死傷罪といった刑罰について、聞いたことのある方もいらっしゃることでしょう。これらの刑罰は罰金、場合によって懲役や禁固刑に処されることもあります。事故についても、人身事故は詳細に内容を調査し、調書を作成します。
一方物損事故の場合は、加害者が刑事罰に問われず、免許の違反点数も加算されることがありません。事故の記録についても残らず、物損事故は聞き取り調査のみとなるため人身事故と比較すると、事故の証明となる客観的証拠が乏しいとも言えます。
追突事故は物損から人身へ切り替えるべき理由
体に痛みや違和感を感じた場合、追突事故は物損事故から人身事故へ切り替えるのがよいでしょう。慰謝料で損をしないためにも、忘れないようにしたい手続きです。理由は以下の通りです。
慰謝料の範囲が変わるため
事故から時間が経って怪我の痛みが現れた場合、どうして物損事故から人身事故への切り替えなければならないのでしょうか。その理由は、「加害者から受け取れる損害賠償の範囲」が異なるからです。
「加害者から受け取れる損害賠償の範囲」について、人身事故で処理した場合と物損事故で処理した場合に分けて、以下の表にまとめました。
人身事故の場合 | 傷害に対する損害 (加害者の自賠責保険または任意保険から支払われる) 治療費 慰謝料 手術費 通院交通費 休業損害 逸失利益 付添看護費など |
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モノに対する損害 (任意保険から支払われる) 修理代 代車使用料 買い替え費用など |
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物損事故の場合 | モノに対する損害のみ (加害者の任意保険から支払われる) 修理代 代車使用料 買い替え費用など |
このように、物損事故で処理したままでは、怪我の治療費や慰謝料を受け取ることができません。
また交通事故による怪我で、症状が継続する、後遺症が発生するケースも少なくありません。それでも物損事故の扱いの場合、後遺障害に対する慰謝料は支払われません。したがって、怪我を負った場合は人身事故で処理することが大切です。
事故状況の証明がしにくくなるため
物損事故の場合、人身事故とは異なり、聞きとりの調査のみのため事故状況の証明が困難になります。一方、人身事故の場合は、実況見分(※)を行い、それを元に事件の証拠となる調書(刑事記録)が作成されます。調書があることで、事故状況の証明は、容易になる可能性があります。調書はどこへ提出するにしても、事故であることが証明されるわけですから、賠償金や保険金の受け取りについて、少しでもスムーズに進めるためには必要です。
※実況見分…当事者と被害者の状況や事故車両の確認を行い、事故について、警察官が調査をすることです。加害者や被害者からの事情聴取だけでなく、目撃者からの聴取、ドライブレコーダーや現場にのこるブレーキ痕なども確認する
物損から人身への切り替え方
物損事故から人身事故への切り替えは、以下のような手順で行います。
- 病院または整形外科で診断書を取得する
- 事前に警察署へ連絡を入れ、人身事故への切り替えをしたい旨を伝える
- 今回の事故を管轄している警察署に必要な書類を提出し、手続きを行う
ただし、物損事故から人身事故への切り替えは、7~10日以内を目安に行うようにしましょう。事故から時間が経ってしまうと、怪我と事故との因果関係が曖昧になってしまうからです。したがって、人身事故への切り替えは、早めに行うようにしましょう。
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人身の事故処理についてのまとめ
追突事故の被害にあった場合、人身事故と物損事故のどちらで処理されたかがとても重要です。
人身事故と物損事故では、被害者が受け取れる損害賠償の範囲が以下のように異なります。
- 人身事故の場合:人身傷害に対する損害、モノに対する損害
- 物損事故の場合:モノに対する損害のみ
また、物損事故から人身事故への切り替えは、早く行わなければ認められない場合があります。したがって、事故から7~10日以内を目安に人身事故へ切り替えるようにしましょう。
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この記事を監修したのは…
看護学校卒業後、総合病院にて外科病棟、救急病棟、外来等、急性期看護を経験。結婚・出産を経て、看護師として臨床以外でスキルを磨けるライターに魅力を感じ、活動を開始。現在、医療福祉系の記事を中心に執筆中。
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