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交通事故による整形外科はいつまで通院するべき?通院頻度も解説

監修記事

柿野 俊弥

理学療法士

交通事故による体の痛みや怪我で通院する場合、いつまで、どのくらいの頻度で通えばいいのかわからないことが多いですよね。

今回は、交通事故による怪我で通院するときの、通院頻度や期間、また頻度や期間に関係してくる慰謝料についても解説します。

まず、交通事故による怪我には、どのような通院先が考えられるのでしょうか。

交通事故で多い「むちうち」とは

「むちうち」とは?発症の原因や症状等

▲「むちうち」とは?発症の原因や症状等

交通事故による怪我には、骨折や打撲といったものがあります。その中でも多くの方にみられるものに「むちうち」と呼ばれる症状があります。そもそもむちうちとは、どのような症状なのでしょうか?

むちうちとは、正式には「頚椎捻挫(けいついねんざ)」「頚部挫傷(けいぶざしょう)」「外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」などと診断される症状です。

スポーツや交通事故で首が衝撃を受け、むちのようにしなることから、むちうちと呼ばれています。首や肩の痛みから、頭痛やめまいまで幅広い症状が起こります。

交通事故の怪我の通院先「病院」について

交通事故後、痛みがなくても病院に行くべき理由

▲交通事故後、痛みがなくても病院に行くべき理由

交通事故にあった後は目に見える怪我の有無や症状の有無にかかわらず、必ず病院を受診してください。受診を薦める理由は2つです。

1つ目は、その場で症状が出ていなくとも身体に異常が起きている可能性があるためです。
CTやMRIで検査をすると、表面上ではわからない異常を発見することがあります。

2つ目は「診断書」の発行が後々の治療に響いてくるためです。
診断書は交通事故による怪我の病名や症状、治療期間の見通しなどが書かれています。

しかし、役割は病状の把握に限りません。怪我が交通事故によるものだという「証明書」にもなります。加害者に対する慰謝料の請求や後遺障害認定に必要な書類になってくるため、交通事故にあった後は必ず病院へ行きましょう。

最初に受診すべき病院は「整形外科」または「神経内科・脳神経外科」です。その後、必要に応じた診療科の受診も検討しましょう。では、それぞれの病院について見ていきます。

整形外科

交通事故後の整形外科受診は①検査(レントゲン・MRI)②診断書の発行③痛み止めや湿布の処方等ができる

▲交通事故後の整形外科受診

交通事故にあったら、まずは整形外科を受診しましょう。むちうちは、軽いものから重いものまで症状が幅広いです。

また、あまり痛みがないような場合でも、交通事故の後に脳が興奮状態にあると、 すぐには痛みを感じないケースもあります。

整形外科では、骨や筋肉、腱といった部位を専門的に診療します。レントゲンやMRI・CTといった詳細な検査を受けることも可能です。

レントゲン検査とは

▲レントゲン検査とは

正確な症状を知り適切な治療を受けるためにも、交通事故にあったらまずは整形外科で医師の診察を受けましょう。

神経内科・脳神経外科

頭部を強く打ったり、外傷が疑われる場合や、整形外科では原因がわからなかった場合には、「神経内科」を受診するといいでしょう。

神経内科では、MRIやCTによる検査で脳に損傷がみられるかどうかが判断されるそうです。また、脳の損傷が大きいと診断されたときに、脳神経外科や脳外科を紹介される場合があります。

MRI検査とは

▲MRI検査とは

CT検査とは

▲CT検査とは

心療内科・精神科

交通事故による影響は、身体だけが受けるものではありません。記憶障害や睡眠障害、気分の落ち込みなどが起こる場合があります。神経内科で検査を受け、脳に損傷がない場合、心因性の症状であると疑われます。

心因性の症状が疑われる場合には心療内科や精神科を受診することになります。

交通事故の怪我の通院「整骨院」について

整骨院とは、国家資格者である柔道整復師が主に手技療法を用いて施術を行います。物理療法や運動療法を用いる場合もあります。

整骨院・接骨院の交通事故施術とは?

▲整骨院の交通事故施術内容の種類

交通事故による怪我は、レントゲンに写るような症状ではない場合もあります。整骨院の手技療法は、柔道整復師が直接触れて施術するため、症状がわかりやすいメリットがあります。

接骨院とは、整骨院と名称が異なるだけで、実際に行う施術に変わりはありません。

整形外科と整骨院は併用可能

整形外科と整骨院を併用して通院することは可能です。

整骨院の場合、土日祝日や夜の時間帯にも営業しているところもあります。こうした通いやすさも、自分に合った通院先を選ぶポイントの1つです。

▶参考:整骨院と病院の併用のポイントについて詳しく知りたい方はこちら

交通事故後の通院頻度や期間とは

交通事故による怪我で病院へ通院する場合、どれくらいの期間や頻度で通院を続ければよいのでしょうか?

交通事故にあった方に多く見られる、「むちうち」を例に見てみましょう。

一般的なむちうちの通院期間

交通事故でむちうちと診断された場合、一般的に1~3ヶ月、長くても6ヶ月程度です。

しかし、通院期間は症状によって変わるため、あくまでも目安として参考にしてください。

また、治療を続ける中で、医師にこれ以上症状の回復が見込めない「症状固定」と判断された場合、「後遺症」とみなされます。

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

「後遺症」が交通事故によるものであり、後遺障害等級のいずれかの等級に該当すると認められた場合「後遺障害」となり「後遺障害慰謝料」を受け取ることができます。後遺症だと判断された場合でも、希望すれば治療を続けられます。

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▶参考:最適な通院ペースについて知りたい方はこちら

むちうちにおける通院頻度

通院頻度は最低でも週に1度は通うといいでしょう。通院頻度が少なく、施術ごとの期間が空いてしまうと、通院期間が長引いてしまう場合があります。

  • 日常生活に支障はなく、動かすと軽く痛む程度
    理想の通院頻度は週1~3回程度です。
  • 仕事や作業に集中できず、動かなくても痛みがある程度
    理想の通院頻度は週3回以上です。
  • 頭痛やめまいなどがひどく、日常生活が困難な程度
    理想の通院頻度は、可能な限り毎日です。また入院を希望するような重い症状の方もいます。

整形外科と整骨院を併用した場合の通院期間・頻度

整形外科と整骨院を併用しても、治療に充てた時間が同じであれば、基本的に通院期間や頻度は先述した「1~3ヶ月」あるいは「6か月」と変わりません。

つまり、整形外科だけに週3日通い続けた場合と、整形外科と整骨院を併用してトータル週3日通い続けた場合とでは、結果に大きな差は生まれないということです。

整形外科と整骨院を併用して通院する場合は、整形外科への通院をメインにしましょう。整骨院への通院をメインにすると、後遺障害が残った場合に申請する「後遺障害認定」で不利になる可能性があります。

交通事故の怪我における通院頻度が重要な理由

頭を抱えて悩む男性

これらの通院頻度や通院期間は、何に関係しているのでしょうか?

治療費打ち切りにも関係するため

交通事故による怪我で通院しているときに、相手側の保険会社から「そろそろ治療を終了してほしい」と伝えられる場合があります。

交通事故により発生した治療費を支払うのは、加害者側の保険会社です。そして加害者側の保険会社が治療費を支払う期間は、「被害者の怪我が治るまで」「被害者の怪我が症状固定となるまで」の間です。そのため、通院の期間や頻度によって、慰謝料といった保険会社から支払われる金額が変わってしまいます。

加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されたらどうする?

▲加害者側の保険会社から治療費の打ち切りを打診されたらどうする?

また、まだ怪我が治っていないのに、加害者側の保険会社から治療費の打ち切りをされることがあります。治療費を打ち切られる理由は主に3つあります。

  • 通院頻度が低い
    あまり通院していない状態になってしまうと、保険会社に被害者は「怪我が治った」「そもそも症状が軽い」と判断され、治療費の打ち切りに繋がる場合があります。
  • 漫然治療
    怪我にあまり関係のない治療をしていたり、湿布やマッサージばかりなどの場合です。通院頻度と同じく「もう怪我が治った」「症状が軽い」と判断され、治療費の打ち切りに繋がる場合があります。
  • 保険会社に感情的にあたる
    保険会社に感情的に当たってしまうと、感情的で話の通じない被害者だと判断されてしまう場合があります。

交通事故は精神的な負担も多く、ご自身で冷静な判断が難しい場合には、保険会社との交渉を弁護士に任せるという手立てもあります。

関連記事治療費の打ち切りについて詳しく知りたい方はこちら

入通院慰謝料に関係するため

交通事故の被害者の場合、相手側の保険会社から、損害賠償が行われます。

損害賠償のうちの1つに「慰謝料」があります。通院頻度や通院期間は、慰謝料の1つの「入通院慰謝料」に関係します。

入通院慰謝料とは、怪我をしたことによる、精神的苦痛に対して支払われるお金です。入通院でかかった治療費や交通費とは別に支払われます。

通院日数で計算されるため、入通院期間が長いほど金額が増えます。しかし通院期間が長い場合でも、通院頻度が低いと、入通院慰謝料は少なく計算されてしまいます。そのため、しっかりと継続して通院する必要があります。

通院したいが仕事が忙しい場合は、「休業損害」を使おう

きちんと通院したいと思っていても、そのためには仕事を休まなければならない場合があります。

交通事故による怪我で通院するために、仕事を休む場合には「休業損害」を請求することができます。

「休業損害」とは

休業損害とは、交通事故によって仕事を休む必要がある場合に、収入が減少することで起こる損害です。交通事故によって減収した分が補われます。

また、休業損害で対象となるのはサラリーマンだけでなく、自営業、パート・アルバイトや専業主婦の方にもあてはまります。

休業損害の3つの基準

休業損害は、1日あたりの基礎収入と休業日数をもとに計算されます。1日あたりの基礎収入には、「自賠責基準」「任意保険基準」「弁護士基準」という3つの基準があります。

交通事故の慰謝料の3つの基準(自賠責基準・任意保険基準・弁護士基準)

▲交通事故の慰謝料の3つの基準

自賠責基準

自賠責基準は、すべての運転者に対する強制保険である自賠責保険を基準としたものです。
自賠責保険は、人身事故における被害者の損害を最低限保証するための保険です。そのため、3つの基準の中で最も金額が低いとされています。

自賠責保険基準の場合、1日あたりの基礎収入は5,700円となっています。
そのため、自賠責基準の休業損害は、「5,700円×休業日数」となります。

ただし、1日の休業損害が5,700円を超えるときは、給与明細・源泉徴収票などで証明できれば19,000円まで、日額の増額が認められます。

任意保険基準

任意保険基準は、運転者が任意で加入している任意保険を基準としたものです。

任意保険基準は、任意保険会社がそれぞれ基準を設けています。そのため、保険会社ごとで基準が異なり、ほとんど公表されていません。一般的に任意保険基準の金額は、自賠責基準よりも高く、弁護士基準より低いとされています。

弁護士基準

弁護士基準は、交通事故における過去の裁判例をもとに、弁護士会が公表しているものです。弁護士基準による基礎収入は、3つの基準の中で最も金額が高いとされています。

任意保険基準・弁護士基準の場合は、「1日あたりの基礎収入×休業日数」で計算されます。

損害賠償

交通事故の損害賠償の内訳

▲交通事故の損害賠償の内訳

休業損害とは、損害賠償の補われる損害の1つです。そもそも損害賠償とは、被害者が交通事故で被った様々な損害を、加害者が主に金銭で補うものです。
損害賠償の損害は、「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3つがあります。

  • 積極損害
    積極損害とは、交通事故によって実際に支払いが発生したお金のことです。治療費や通院の交通費、手術費などが含まれます。
  • 消極損害
    消極損害とは、交通事故がなければ得られるはずだったお金が損なわれた場合に発生します。消極損害には「休業損害」と、「逸失利益」の2つがあります。
  • 慰謝料
    慰謝料とは、交通事故によって被害者が受けた精神的苦痛を、加害者が金銭で補うものです。慰謝料には「入通院慰謝料」と、「後遺障害慰謝料」の二種類があります。

交通事故の通院についてのまとめ

交通事故にあったら、まずは病院を受診しましょう。その後、ご自身の都合や症状に合わせて、整骨院・接骨院と併用するのも選択肢としてあります。

仕事を休む必要がある場合には、休業損害で補われます。まずは、しっかりと継続して通院しましょう。

この記事を監修したのは…

理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

この記事の執筆者

理学療法士 / 柿野 俊弥
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

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