交通事故のあとから痛みが出た時の通院先は?整形外科と整骨院の違い
監修記事
河野 裕也
理学療法士
交通事故に遭った場合に事故当日は症状が軽度だったり無症状だったとしても事故あとから痛みが増悪したり出現したりすることは珍しくありません。特にむちうちを患うとこのように時間が経過してから症状が出現することがあります。
交通事故の場合、損害賠償請求など通常の手続きとは異なるため、受傷直後の対応が重要となります。今回は事故のあとから出る痛みについて解説をします。
▶︎参考:軽い追突事故でも病院にいくべき理由とは?通院日数と損害賠償の関係
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目次
交通事故であとから痛みが出たらすぐ受診
交通事故に遭った場合にはすぐに整形外科などの病院を受診しましょう。交通事故では身体へ想像以上の衝撃が加わります。頭も大きく揺さぶられたり打ったりしている可能性もあるのでしっかりと医師の診察や検査を受ける必要があります。
可能であれば総合病院などMRIやCTの検査機器が備えられており、神経内科や脳神経外科など他の診療科とも連携が取りやすい病院を受診することをおすすめします。
また、事故直後には症状が軽度であったり無症状だったとしても時間が経ってから症状が出現してくることもあります。損害賠償請求などの手続きにおいて、交通事故と症状の因果関係を明らかにする必要があるためなるべく早く医療機関を受診しましょう。
病院へ受診
交通事故で痛みなどの症状が出現したらすぐに病院を受診しましょう。損害賠償請求には診断書が必要となります。この診断書は交通事故と症状の因果関係を証明する書類であり、警察へ提出する必要があります。この診断書は病院の医師にしか発行することができません。
また、事故からの期間があいてしまうと因果関係を証明するのが難しくなる可能性もあります。そのため、交通事故に遭ったらすぐに病院を受診しましょう。
保険会社に連絡
交通事故に遭い、病院を受診する場合は治療費や通院費などを加害者側の保険会社が支払うことが多いです。そのため、交通事故のあとから痛みが出て病院を受診する場合には被害者側の保険会社と加害者側の保険会社の両方に連絡を入れましょう。
あとから痛みが出現して病院を受診する場合、そのことを加害者側の保険会社が把握できていないとトラブルが生じ、上記のような対応を受けることが難しくなる可能性があります。トラブルを未然に防ぐためにも、病院を受診する前に加害者側の保険会社に連絡を入れておくと良いでしょう。
物損から人身への切り替え
病院を受診し、医師から診断書をいただいたら警察署へ提出し、物損事故から人身事故に切り替える必要があります。交通事故直後に痛みなどの症状がなく怪我がないと判断された場合、警察は物損事故として処理しているはずです。
しかし、あとからでも痛みなどの症状が出現した場合は物損事故ではなく人身事故になるため、切り替える手続きが必要となります。そのため、病院で診断書を受け取り、その診断書を警察へ提出し、加害者・被害者双方の立ち会いで実況見分が行われて、人身事故へと切り替える必要があります。
交通事故であとから痛みが出る理由
交通事故の直後には痛みが軽度であったり無症状だったりすることがあります。しかし、その後時間の経過とともに痛みが悪化したり生じてきたりすることは珍しくありません。
交通事故の後から痛みが出る理由はいくつかあります。
精神面
「交通事故被害者の支援〜担当者マニュアル」というものを警察庁が公表しています。
これによると人は「知覚と意識の解離」といって交通事故のような重大なアクシデントが生じたときに、その出来事を受け入れられずに感覚が麻痺してしまうという精神的な反応があり、これによって交通事故の直後では感覚が麻痺してしまい痛みを感じにくいということです。
身体面
交通事故の直後は突然の出来事で興奮している状態となっていることが多いです。この興奮状態のとき、体内ではアドレナリンというホルモンが分泌され、これが鎮痛作用として働くことで痛みを感じにくくさせているといわれています。また、βエンドルフィンというホルモンも分泌されます。
βエンドルフィンは脳内麻薬の作用があり強い鎮痛作用として働くことで痛みを感じにくくなります。また、組織が損傷した場合は炎症反応により腫れが生じます。
POINT
痛みはこの腫れの強さに比例
痛みはこの腫れの強さに比例しますが、事故直後は腫れが小さく、時間の経過とともに腫れが大きくなることで痛みが出現してくることが考えられます。
内部損傷
骨折や裂傷などは事故直後から痛みがあったり外見で判別できますが、交通事故で最も多いむちうち症(頚椎捻挫)は事故直後では痛みがでず、外見ではわかりにくく後になってから症状が出現することがあります。また、脳の障害(脳内出血など)も外見ではわからず後になってから症状が出現し悪化することがあります。
そのため、交通事故に遭った場合は直後に痛みがなくてもすぐに病院を受診しましょう。
交通事故であとから痛みが出る原因:むちうち
交通事故では衝撃により頭が大きく揺さぶられ、頭を支える首に大きな負荷が加わります。そのため首周囲の筋肉や靭帯が損傷されいわゆる「むちうち」になってしまうことが多いです。このむちうちにはいくつか種類があり、それぞれ出現する症状に違いがあります。
頚椎捻挫型
むちうちを患った人の7〜8割が頚椎捻挫型を発症するといわれています。交通事故の衝撃が身体へ加わると頭が大きく揺さぶられます。頭を支えている首には大きな負担がかかり首周囲の筋肉や靭帯、関節包などを損傷します。首や背部の痛み、肩こり、頭痛、めまいなどの症状が出現します。
また、首の動く範囲(関節可動域)が制限され、上を向いたり下を向いたり、左右に振り向くような動作が難しくなります。
神経根症状型
むちうちでは筋肉や靭帯の損傷の他に神経組織が損傷されている場合があります。首は7つの骨が上下に重なっています。その上下の骨の間に椎間孔という隙間があり、そこから神経の根っこ(神経根)が出てきます。
この神経根は主に上肢を支配している神経で、事故の衝撃でこの椎間孔の部分で神経根に負荷がかかり、損傷したり圧迫されると神経伝達が阻害され腕や手の痛み、しびれ、感覚障害、反射障害、筋力低下などの症状が出現します。
バレー・ルー症状型
首の周囲には交感神経という自律神経があります。首への負担によりこの交感神経にも障害が生じることがあります。交感神経が障害されると頭痛や吐き気、耳鳴り、難聴、めまい、視力低下、不眠などさまざまな症状が出現します。
バレー・ルー症状型はレントゲン検査やMRI検査の所見上では問題がないなど他覚的な所見に乏しく、自覚症状が中心のため判断が難しいことがあります。交感神経ブロックなどの治療により症状の改善が見られることがあります。
脊髄症状型
交通事故の衝撃により、首の骨の中を通る脊髄が傷ついてしまった場合にしびれや力が入らないといった筋力低下、感覚障害、反射障害などが生じ、歩行障害や膀胱や直腸がうまく働かなくなる膀胱直腸障害によって排尿や排便に支障をきたすなど日常生活に大きく影響を及ぼします。
むちうちの中で最も重症であり、後遺症が残ってしまう可能性が高くなります。
むちうちはセルフケアでは治らない
むちうちによる痛みは、自然治癒したり、自分で治せるものではありません。
山田先生の答え
「昨今、ウェブサイトで色々と情報が収集できるようになって、むちうちに関しても多くのメディアが存在していますが……正直にいうと、自分でできるむちうちの対処法はありません。というのも、素人が施して悪化する方が怖いので、もしも痛くて通えないくらいだったら、自分でどうにかしようとせずに、まずは安静な状態を探すことが先決です。痛みを抑えるツボなども、炎症期は痛みが悪化する場合もあるので独断では絶対にやらないでください。もしセルフケアをやりたいのであれば、痛みを少し我慢してしっかりと医療機関へ通院し、その人の症状をしっかりと判断した上の的確なアドバイスを受けてからやることです。人によって症状が違うので、全ての悩みや痛みを解決できるセルフケアはありません。」
首のむちうちの治し方は?具体的な方法と自宅で治療するときの注意点
したがって、必ず医療機関へ通うようにしましょう。また、むちうちによる痛みをそのままにしてしまうと、後遺症が残る恐れもあるため、治療を行うようにしてくださいね。
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交通事故による痛みの治療は整形外科?整骨院?
交通事故後は、どんなに小さな事故であったとしても、必ず整形外科や総合病院で怪我をしていないか診察をしてもらいます。
なぜかというと、交通事故による怪我の診断書は、整形外科(病院)でしか作成してもらえないからです。この診断書は、怪我をしていた場合に、治療費や慰謝料などの損害賠償を加害者側の保険会社に請求するときに必要になります。
診断書は人身事故の切り替えにも必要
交通事故による怪我は、事故後すぐに症状があらわれるとは限りません。したがって、事故直後は物損事故として処理してしまう方も多いようです。交通事故から時間が経過した後に症状があらわれた場合、人身事故への切り替えを行う必要があります。
人身事故で処理していなければ、被害者は加害者に治療費や慰謝料などの損害賠償を請求することができません。
人身事故へ切り替えるときは、整形外科で取得した診断書を警察に提出しましょう。あまり時間が経ってしまうと、事故と怪我との因果関係を疑われる可能性もあります。そのため、事故から10日以内を目安に切り替えるようにしましょう。
交通事故治療における整形外科と整骨院の違い
交通事故後、整形外科に必ず行かなければなりません。前述したとおり、診断書の作成・発行は、病院でしかできないからです。
しかし、「痛みが引かない場合も、痛み止めや湿布で我慢しなければいけない」訳ではありません。症状が良くなるまで通院し続けるのは体力のいることですが、まずは「自分の体を治すこと」「症状に合わせて通院すること」が大切です。
整形外科
整形外科は、骨折の有無(レントゲン)・神経損傷の有無(MRI)といった設備が整っています。医師免許を持つ医師が西洋医学の知見から、的確に身体に問題がないかを判断します。また、医師免許を取得した医師しかできない、診断書の発行、手術や薬の処方ができます。
整骨院(接骨院)
まず、整骨院と接骨院は、呼び名が違うだけで、施術メニューや療術の内容は変わりありません。整骨院は柔道整復師という国家資格所有者が運営する施術(療術)院です。主に手技療法(骨接ぎ、マッサージ、牽引療術、電気療術など)で施術を行います。整骨院によっては、理学療法や運動療法などを行ってくれるところもあるので、自分の症状にあった療術を選ぶことができます。
ただし、最初から整骨院に通うのはよくありません。きちんと骨や神経内部まで損傷がないかを整形外科で診断してもらい、診断書を作成してもらってから通院することが大切です。また、後遺症が長引く場合も後遺障害診断書が必要になるので、この場合も整形外科で診断してもらう必要があります。
交通事故で悩んでいるなら併用がおすすめ
整形外科は、もちろん適切な治療をしてくれます。しかし、むちうちなどの症状はレントゲンにはうつりにくく、「経過観察」を余儀なくされることも。
そこで交通事故病院では、柔道整復師がいる整骨院に整形外科と併用して通院することをおすすめしてます。なぜかというと、整骨院は関節や筋肉へ直接的にアプローチし、施術を行ってくれるからです。
また、整骨院なら加害者側の保険会社に慰謝料請求ができます。「整形外科でないから治療費は支払われない」と思っている方は多いようですが、整骨院の場合でも、慰謝料として通院日数や施術期間に従って算出されるようになっています。
整骨院の場合、各エリアに数多くある、夜遅くまでやっているなど、通院のしやすさもポイントです。もしどちらか迷っているなら併用することも可能です。
併用して通院する時
- ①まずは、必ず整形外科で診てもらい、診断書を発行してもらうようにします。
- ②相手方の保険会社に整骨院にも通院する旨を伝え、ご希望の整骨院で施術をしてもらいます。
- ③整骨院で補完治療(理学療法や針灸、マッサージなど)を受けて、症状が良くなるまで通院をします。
整形外科と整骨院を併用して通う際は、加害者側の保険会社へ連絡することを忘れないようにしましょう。加害者側の保険会社への連絡を怠った場合、適切な損害賠償を支払われない可能性があります。
交通事故と痛みのFAQ
交通事故による怪我の場合、通常の怪我と対応が異なります。そのため、適切に対応するために交通事故と痛みに関してよくある質問とその回答について紹介します。
交通事故からすぐ痛みが出ないのはなぜ?
交通事故のような突然のアクシデントが生じると、人はその出来事を受け入れない精神的な反応が生じます。一次的に感覚が麻痺し、事故の直後では痛みを感じにくくなります。
また、事故直後は興奮状態となっており、体内ではアドレナリンというホルモンの分泌量が多くなります。さらにβエンドルフィンという脳内麻薬の作用のあるホルモンも分泌されます。
これらのホルモンは鎮痛作用として働くため、事故直後では痛みを感じにくくなり、興奮がおさまったころで痛みを知覚するためあとから痛みが出現するという状況が生じます。
交通事故であとから別の部位に痛みが出たら?
保険会社に別の部位に痛みが出たことを連絡し、すぐに医療機関を受診しましょう。特に相手側の保険会社が別の部位に痛みが出たことを把握していない場合、それについての慰謝料などの手続きの際にトラブルになる可能性があります。
そのため事前に保険会社に連絡してからなるべく早く医療機関を受診しましょう。
交通事故であとから痛みがあるなら受診
今回は交通事故であとから出る痛みについて解説しました。交通事故では事故直後ではなく、時間が経過してから痛みなどの症状が出現することが珍しくありません。
事故直後に無症状だとして人身事故ではなく物損事故になっている場合には切り替える必要もあります。そのため、あとから痛みが出た場合でもすぐに医療機関を受診し医師の診察を受けましょう。
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この記事を監修したのは…
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。
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