むちうちの診断書の取り方|注意点や提出先・期限も解説
監修記事
五十部 紀英
弁護士
交通事故で怪我を負った場合、加害者へ損害賠償金を請求するために、「診断書」の内容がとても重要になってきます。
今回は交通事故の怪我で代表的なむちうちが発症した場合に、医師に診断書を作成してもらう時の大切なポイントや、診断書が必要となるタイミング、提出期限について詳しく解説していきます。
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目次
むちうちの診断書の取り方とポイント
交通事故に遭い、むちうちなどを発症した場合、病院へ行って医師に診断書を作成してもらう必要があります。
診断書の発行には、文書料が別途かかります(3,000~5,000円程度)。そのため、交通事故の怪我で受診していても自動発行はされません。
病院を受診する時に、受付で診断書の発行を事前にお願いしておきましょう。
尚、診断書の費用は加害者側の保険会社へ請求できます。もしご自身で費用を立て替えた場合は、領収書を発行してもらい必ず保管しておきましょう。
次に診断書を作成してもらう上で大切なポイントをご紹介します。
自覚症状を細かくしっかりと伝える
まず、交通事故によるむちうち症状であることを前もって伝えておきましょう。
先に伝えておくことで、事故時の状況の詳細や、その状況から今後起こるかもしれない症状についての受診時の評価が、より念入りにカルテに記録されます。後で何らかの症状が出た場合でも、事故との関係性が証明されやすくなります。
また、むちうちはレントゲンなどの画像所見では異常がみられないこともあります。症状を医学的に証明できない場合は、被害者が訴える自覚症状の内容が重視されます。
医学的に証明ができなくても、申告された自覚症状から医学的な説明が可能であれば、後遺症が残った場合に後遺障害の等級認定を受けられる可能性があります。
受傷直後は軽い症状であったとしても、体に少しでも違和感や気がかりなことがあった場合は、医師にしっかりと伝えることが大切です。
関連記事むちうち症状の伝え方ポイント4つ!伝え方が重要な理由も解説
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診断書はどのタイミングで必要?
交通事故で怪我を負った場合は、まず病院へ行き、診断書を取得する必要があります。
それでは、取得した診断書はどのような場面で必要になるのでしょうか。
診断書を警察に提出して物損事故から人身事故に切り替える
交通事故の被害者に怪我がなかったとみなされると、「物損事故」として処理されることがあります。
交通事故により怪我を負った場合は、必ず人身事故へ切り替えましょう。
怪我をしているのに物損事故として処理されると、加害者側に治療費や慰謝料などの損害賠償を請求できなくなってしまいます。
また、物損事故の場合は実況見分調書が作成されないため、加害者側と過失割合について争いが発生したとき、事故の状況を証明できなくなる恐れがあります。
したがって、交通事故後に医師からむちうちと診断を受けたら、診断書を作成してもらい、警察に提出して人身事故へ切り替えることが重要です。
関連記事物損事故と人身事故の損害賠償の違いとは?<弁護士監修>
診断書は3種類存在する
交通事故でむちうちになった時、作成される診断書は3種類あります。
- 警察への提出用
- 保険会社への提出用
- 後遺障害等級認定用
それぞれ必要な理由を、具体的に解説していきます。
警察への提出用
上記で解説したように、物損事故から人身事故へ切り替えるために、警察へ診断書を提出します。
この診断書の書式は、病院所定のものです。
保険会社への提出用
交通事故の被害者は、加害者側の保険会社を通して賠償金を受け取ることが出来ます。賠償金を請求するには、加害者側の保険会社へ診断書を提出する必要があります。
この診断書の書式は、保険会社所定のものです。
示談が成立する前に、加害者の自賠責保険会社に対して被害者請求をすることによって、自賠責保険からの支払い分の賠償金を受け取ることができます。
賠償金の請求方法によって、診断書などの提出先が異なりますので、よく確認してから請求するようにしましょう。
後遺障害認定用
後遺症が残った場合、後遺障害等級の認定基準を満たしていることを証明するために必要な、後遺障害診断書を提出する必要があります。
後遺障害診断書は、通常の診断書とは異なります。交通事故による後遺障害が残った場合に、後遺障害の内容を証明するための診断書です。
勤務先へ提出する場合もある
交通事故によるむちうちが原因で仕事を休むとき、通常は勤務先に診断書を提出します。
この場合、診断書には、むちうちにより就労が不可能である旨を医師に記載してもらいましょう。
仕事を休んだことで収入が減少すると、「休業損害」として減収分を加害者側へ請求することができます。
しかし、休業損害を請求するには、就労が不可能な状態であることを客観的に証明する必要があるため、医師が発行する診断書が重要になります。
関連記事交通事故後、仕事しながら通院が難しい時の対処法や休業補償を解説
診断書の提出期限はあるの?
作成してもらった診断書を実際に提出する際、期限は定められているのでしょうか。
警察、保険会社への提出期限について説明します。
警察への提出期限
警察への提出については、法律上定められた期限はありません。
ただし、事故発生から時間が経ちすぎると、怪我と交通事故との関係性が疑われてしまいます。
その結果、人身事故への切り替えが出来なくなってしまう恐れがありますので、なるべく早めに提出することが大切です。事故発生から2~3日以内がベストといわれています。
保険会社への提出期限
人身事故の損害賠償請求の期限(時効)は、法律上、5年と定められています(民法第724条の2)。なお、物損事故の場合の期限は、3年です(同法第724条)。
これらの期限を経過してしまうと、損害賠償を請求することができなくなりますから、早めに診断書を提出するとよいでしょう。
診断書と同意書の違いは?
交通事故の被害者には、相手側の保険会社から、同意書を記入するよう求められます。
この同意書とは、被害者の医療情報を病院から保険会社へ開示することに対する同意を示すための書類となり、診断書とはまったく異なるものです。
病院が加害者側の保険会社へ治療内容や治療費の明細を伝えることで、病院の窓口でかかった治療費を、加害者側の保険会社が直接支払ってもらえるようになるというメリットがあります。
同意書を提出しなければ、加害者側の保険会社が治療費の支払いに対応する事ができません。
被害者が一時的に治療費を立て替え、後から加害者側の保険会社へ請求するという遠回りな方法になってしまいます。
むちうちの診断書に書いてもらえる内容は?
- 怪我の名称
- 症状の状態
- 治療内容
- 治療の日数
- 作成日時
- 医師名
- 病院名
などを記載してもらうことができます。
後遺障害の等級認定を申請する際に必要な診断書とは
症状の程度によって異なりますが、一般的なむちうちの治療期間は3ヶ月程度だといわれています。
一方で、3ヶ月以上治療を続けても症状に変化が見られなくなった場合は、後遺症として残ってしまう可能性が高いです。
後遺症が残ったときは、後遺障害の等級認定を受けることで、後遺障害慰謝料を請求することができます。
関連記事交通事故の後遺症で認定される後遺障害等級14級とは?慰謝料の基礎知識について解説!
後遺障害の等級認定に必要な後遺障害診断書
交通事故によるむちうちの治療を6か月以上続けても、完治には至らず症状が残った場合には、医師から症状固定の診断を受けることがあります。症状固定と診断されると、後遺障害の等級認定を申請することができます。
申請には、症状が後遺障害に該当していることを証明するための後遺障害診断書を提出する必要があります。適切な等級の認定を受けるためにも、後遺障害診断書に書いてある内容は重要となります。
レントゲンやMRIなどの画像検査の結果で症状が認められた場合は、検査結果の画像を添付することで、等級認定の可能性を高めることができます。
また、画像検査の結果で症状を確認できなかった場合は、ジャクソンテストやスパーリングテストなどの神経学的検査を受けるとよいでしょう。
画像検査の結果と合わせて、神経学的検査の結果を後遺障害診断書に記載することで、等級の認定を受けられる可能性を高めることができます。
- ジャクソンテスト
座った状態で頭を後ろに倒した人に対して、下から頭を押し上げることで痛みやしびれが出るかを調べる検査です。 - スパーリングテスト
後ろから頭を掴み、症状が出ている側に傾けることで痛みやしびれが出ないかを調べる検査です。
このような神経学的検査で痛みやしびれが出た場合は、神経症状が認められることでしょう。したがって、後遺障害の等級認定を受けるための証拠になります。
後遺障害診断書は書いてくれない場合も?
前述のように、後遺障害の等級認定を受ける際は、後遺障害診断書を主治医に作成してもらう必要があります。
しかし、中には後遺障害診断書の作成に対応してくれない医師もいます。
理由としては、交通事故の被害者に対応した経験が浅く、後遺障害診断書を書く機会が少ないため、後遺障害診断書の書き方が分からないからと言われています。
後遺障害診断書は、書き方に不備があると責任を問われる可能性があるため、対応してくれない医師もいるということです。
交通事故の対応経験が浅い病院ではこのようなリスクが生じますので、通院先選びも慎重に行うことをおすすめいたします。
まとめ
適切な金額で損害賠償金を請求するには、診断書に記載されている内容が重要となります。
自覚症状は医師へ細かく伝えること、保険会社から治療費の打ち切りを打診されたら医師へ相談することを覚えておきましょう。
交通事故の対応に慣れた病院でしっかりと治療を受け続け、適切な診断書を作成してもらい、提出することが大切です。
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この記事を監修したのは…
弁護士法人プロテクトスタンスの代表弁護士。多くの病院や整骨院等の法律顧問に就任。医事法に関する研究部会に所属し、医療法制に精通。交通事故の示談交渉で豊富な解決実績があり、特に保険会社対応に定評がある。
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