交通事故で「腰椎捻挫」になった場合、治療期間はどれくらい?
監修記事
世良 泰
医師(整形外科他)
交通事故後に、腰痛の症状があらわれている場合、腰椎捻挫を発症しているかもしれません。しかし、腰椎捻挫といわれても「どのような症状か」「どんな治療を受けるべきか」などわからないことが多いと思います。
そこで今回は、交通事故で発症する腰椎捻挫の症状や治療方法などについて解説してきます。
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目次
交通事故で発症する腰椎捻挫とは
腰椎捻挫は、腰椎の周囲の筋肉や靱帯、関節包などの組織が損傷された状態を指します。主に、外から作用する力が原因で発症するといわれています。したがって、車との衝突時に外から衝撃を受ける交通事故にあうと、腰椎捻挫を発症することがあるのです。
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腰椎捻挫の主な症状
腰椎捻挫であらわれる症状は、主に腰や脚の痛み、しびれなどで、体を動かしたときに痛みが強くなるという特徴があります。
また、強い衝撃による人体の反応として筋肉の緊張が強くでることがあります。腰椎捻挫では腰椎の動きが制限されることがありますが、この筋肉の緊張によるものも多くあります。
これらの症状が残ってしまった場合には、後遺障害等級認定を申請しましょう。後遺障害等級認定とは交通事故が原因で後遺症として症状が残ってしまった場合、認定されると等級に従った後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることが可能です。等級が認定されるにはいくつかポイントがありますのでしっかり確認をしておきましょう。
腰椎捻挫の治療方法
腰椎捻挫の場合、炎症が生じている時期は体を動かすことで痛みが強くなるため、基本的には安静にすることが大切です。安静にする際は、コルセットを使うことをおすすめします。コルセットを使うことにより、腰回りの動きが制限され、腰の負担軽減につながります。
その他にも腰椎捻挫の場合、以下のような治療が有効とされています。
- 痛み止めを服用する
腰椎捻挫による痛みが強い場合は、痛み止めを服用することで軽減できる。 - 痛みを感じる部位に湿布を貼る
受傷直後は、冷たい湿布を貼って腰椎捻挫の炎症を抑える。
受傷から時間が経って痛みが落ち着いる状態であれば、温かい湿布を貼って血行を促し、痛みを緩和させる。
症状が軽減してきたら筋力や柔軟性の改善のために運動療法やストレッチングを行います。具体的な方法は専門家である理学療法士などの指導を受けるとよいでしょう。
治療期間はいつまで?
腰椎捻挫の治療期間は、怪我の程度や治癒力によって個人差がありますが、だいたい3~6ヶ月程度といわれています。腰椎捻挫の受傷直後は、できるだけ期間を空けずに治療を受けることが大事です。通院頻度を空けてしまうと、後に後遺症が残る可能性があります。
腰椎捻挫の治療期間が長引く理由
腰椎捻挫の治療期間が長引く理由にはいくつかあり、事故の状況や個人の状態によって異なりますが、特に組織損傷の程度、合併症、活動の制限、適切な治療の遅れなどが考えられます。組織損傷の程度が大きければ大きいほど、神経の圧迫などの合併症が強いほど回復に時間がかかります。また、安静にする期間が長いと筋肉の萎縮や関節の可動域制限を引き起こし症状の再発や慢性的な症状が残り治療期間が長引く可能性があります。早期から適切な治療がなされない場合も回復に時間がかかる傾向にあります。
腰椎捻挫が後遺症になったら
腰椎捻挫であらわれる症状のうち、しびれが後遺症になることがあります。後遺症が残った場合、加害者が被害者に支払っていた治療費や入通院慰謝料は打ち切りとなり、支払われなくなります。なぜならば治療費や入通院慰謝料の支払いは、被害者の症状が完治または後遺症(症状固定)になるまでと決められているためです。
後遺症が残ってしまった場合は、病院や整形外科で後遺障害診断書を取得し、後遺障害等級認定の申請をしましょう。後遺障害等級認定の申請を行うことで、治療費や入通院慰謝料とは異なるお金を受け取ることができます。後遺障害等級認定とは、交通事故で残った後遺症が後遺障害に該当するか、該当する場合はどの等級に当てはまるかを審査するものです。後遺障害等級認定を申請するメリットとしては、後遺障害慰謝料や逸失利益というお金(賠償金)を受け取ることができます。
ただし、後遺障害慰謝料や逸失利益は、後遺障害等級認定で等級が認定されなければ受け取ることはできません。また、後遺障害慰謝料や逸失利益は、認定された後遺障害の等級に応じて金額が決まっています。
腰椎捻挫で等級が認定されるには?
交通事故で腰椎捻挫の後遺症が残った場合、後遺障害等級認定で以下の等級が認定される可能性があります。
- 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号:局部に神経症状を残すもの
しかし、腰椎捻挫の後遺症は他覚的所見があるわけではなく、痛みやしびれといった自覚症状がほとんどです。そのため、後遺障害等級認定で等級が認定されるのは、難しいといわれています。
後遺障害等級認定で等級が認定されるには、以下の条件を満していることがポイントになります。
- 医学的に証明できる
- 継続的な通院を行っている
- 事故の程度と症状が一致している
- 受傷直後から症状固定まで、症状の一貫性・連続性がある
医学的に証明できる
腰椎捻挫の症状を医学的に証明するには、MRIの検査や神経学的検査を受ける必要があります。
MRIの検査は、磁気の力を利用した検査で、特に脊椎や四肢、脳などに生じた異変を画像によって確認できます。一方、神経学的検査は、どの部位に神経症状があらわれているかを検査するものです。腰椎捻挫で神経症状が後遺症として残った場合に受けるべき神経学的検査は、以下のように様々な検査があります。
- SLRテスト
方法:仰向けに寝た状態で、膝を曲げずに伸ばしたまま、脚を徐々に上げる
結果:脚の裏側に痛みが生じて70度以上あげられない場合は、陽性(※1)と判断される - FNSテスト
方法:うつ伏せ寝た状態で手を臀部で固定して膝を90度曲げ、大腿を持ち上げながら股関節を伸ばす
結果:大腿全面に痛みを感じたり、神経を圧迫するような症状がみられた場合、陽性と判断される - 腱反射テスト
方法:打腱器で腱を叩き、反射(※2)があるかを診る
結果:反射の亢進(※3)や反射の低下がある場合は、陽性と判断される
※1 陽性とは、神経症状があるということ。
※2 反射とは、意識とは無関係に起こる反応のこと。
※3 反射の亢進とは、反射の反応が過剰に強くあらわれること。
継続的な通院を行っている
腰椎捻挫の後遺症が等級として認定されるには、通院実績がなければなりません。通院頻度が少ない場合は、軽い症状だったと判断され、後遺症は残らないだろうと判断されてしまいます。したがって、交通事故で腰椎捻挫を負った場合は、継続的に通院を行う必要があります。
事故の程度と症状が一致している
腰椎捻挫の後遺症が等級として認定されるには、事故の程度と症状が一致していなければなりません。例えば、低速度で追突された場合は、後遺症が残る程の事故ではないと判断される恐れがあります。
このような事態を防ぐためにも、事故車の写真や事故で負傷に至る経緯をできるだけ明確に記録しておくことも重要です。
受傷直後から症状固定まで、症状の一貫性・連続性がある
後遺障害等級認定では、受傷直後から症状固定まで一貫して症状が続いていない場合、等級が認定されない可能性があります。
例えば、事故直後は頚部の痛みを主張していたが、途中で腰部の痛みを主張し始めたといった場合です。また、一度完治した後に痛みが再発した場合も後遺障害等級認定で非該当となります。したがって、担当医に自覚症状を伝えるときは注意しましょう。
腰椎捻挫についてのまとめ
交通事故で腰に強い衝撃を受けた場合、腰椎捻挫が発症する恐れがあります。腰椎捻挫は、腰椎が伸びすぎて関節包や椎間板、靭帯、筋肉などに損傷が生じた状態です。腰や脚の痛み、しびれなどが主な症状で、体を動かしたときに痛みが強くなるという特徴があります。
腰椎捻挫の治療方法は、基本的に安静を保つことで、状況に応じて痛み止めや湿布などを使用します。このような治療を約3~6ヶ月行うと、症状が緩和されるといわれています。しかし、大きな事故の被害にあった場合は、腰椎捻挫の後遺症が残ることもあるため注意しましょう。
もしも腰椎捻挫によって後遺症が残った場合は、後遺障害等級認定を忘れずに申請するようにしてくださいね。
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この記事を監修したのは…
慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。
池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/
日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター
TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員
AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー
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