シートベルト外傷とは?損傷部位・症状・治療方法をわかりやすく解説
監修記事

河野 裕也
理学療法士
シートベルト外傷とは、交通事故の衝撃や急ブレーキの際にシートベルトが体に強く当たることによって生じる怪我の総称です。
胸部や腹部、首まわり、骨盤などへの圧迫によって、内臓損傷や骨折を引き起こすことがあります。
外見上は軽傷に見えても重篤な怪我を負っていたり、症状が遅れて現れる場合もあるため、事故後は速やかに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。
本記事では、シートベルト外傷の原因・損傷部位・症状・治療・後遺障害について解説します。
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目次
シートベルト外傷とは
シートベルト外傷とは、交通事故などでシートベルトが体に強い圧力が加わることにより生じる外傷の総称です。
軽度の擦過傷や打撲のほか、骨折や内臓損傷などの重篤なケースまで含まれます。
シートベルトは急激な減速や衝突により体が前方へ飛び出すのを防ぎます。そのためベルトが体に強い圧力を加えます。
特に鎖骨・胸部・腹部の3点に圧力が集中し、皮膚の圧痕や擦過傷、骨折や臓器損傷に至ることがあります。
皮膚に赤い帯状の皮下出血や擦過傷(いわゆるシートベルト痕)が認められることが多く、外見では軽症に見えても内臓損傷など重大な損傷を示すサインの可能性もあります。
重症例では肋骨骨折、胸骨骨折、肝臓・脾臓損傷など生命に関わることもあります。
シートベルト外傷の主な損傷部位・症状
シートベルト外傷では主に皮膚、胸部、腹部、首・肩・鎖骨まわり、骨盤周囲、脊椎が損傷を受けやすくなります。
皮膚、胸部はシートベルトで直接圧迫を受けることで圧痕や擦過傷、肋骨や胸骨の骨折が生じる可能性があります。
腹部は腰ベルトに圧迫され内出血や消化管の穿孔、肝臓・脾臓損傷、首・肩・鎖骨まわりは急激な衝撃によるむちうちや鎖骨骨折が生じやすく、骨盤周囲は腰ベルトによって骨盤骨折を引き起こす可能性があります。
脊椎は急激な減速により強制的に過屈曲されることで、チェンス骨折や圧迫骨折、脊髄損傷などを引き起こす可能性があります。
皮膚の損傷
シートベルト外傷では交通事故の強い衝撃によりシートベルトが直接皮膚を圧迫し、シートベルトの跡が赤紫色に帯状に残る「シートベルト痕」が特徴です。
皮膚がすれることで表皮がめくれたり赤くただれたりする擦過傷や打撲により皮膚下の毛細血管が破れ青あざが広がったり、皮膚の下に血が貯まったりする皮下出血などが見られます。
外見では軽症に見えてもシートベルト痕が強い場合には皮膚の浅い部分だけでなくその下の筋肉や骨、内臓に損傷があるサインの可能性もあるため注意が必要です。
胸部の損傷
交通事故の強い衝撃でシートベルトが胸部を強く圧迫すると肋骨骨折や胸骨骨折を生じる可能性があります。
肋骨骨折では呼吸時や咳で強い痛みが生じます。肋骨が骨折すると骨折した骨が肺や内臓を傷つける可能性もあるため注意が必要です。
胸骨骨折では胸の中央に鋭い痛みや圧迫感が生じます。心臓や大血管へのダメージの恐れもあります。また、胸郭が圧迫されることで肺組織が損傷し呼吸困難になるなど重篤なケースもあります。
はじめは症状が軽くても時間が経過すると症状が悪化することがありますので、医療機関への早めの受診が重要です。
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腹部の損傷
シートベルトが腹部を圧迫することで打撲による内出血が生じます。腹部の張りや圧痛、青あざ、膨満感などの症状が生じます。
また、小腸や大腸など消化管の損傷により消化管に穴があく穿孔や腹膜炎が生じると命に関わることがあるため注意が必要です。
肝臓や脾臓が損傷されるとどちらも血流が非常に多い臓器のため、大量出血を引き起こす危険があります。
ベルト痕と一致する腹部の痛み、発熱や嘔吐といった症状がある場合には内臓の損傷や腹膜炎の可能性があるためすぐに医療機関を受診することが重要です。
首や肩の損傷
交通事故の衝撃により頭や首が大きく振られることで筋肉や靭帯、骨、神経が損傷するむちうちを発症する可能性があります。
首から腕にかけてのしびれや上肢の力が入りにくい、感覚が鈍いといった症状がある場合には神経が損傷している可能性があります。
肩の挙上が困難であったり痛みが強い場合には腱板損傷や滑液包炎など慢性的な肩の不調につながることもあります。
また、シートベルトの斜めの力が鎖骨に集中することで鎖骨骨折が生じることもあります。首や肩の痛みや腕のしびれ、頭痛や吐き気などがある場合には整形外科などでの精密検査が推奨されます。
関連記事むちうちとは?原因から症状・治療法や慰謝料まで徹底解説!
骨盤の損傷
腰ベルトが骨盤を前方から強く圧迫することで骨盤骨折や仙腸関節、股関節の損傷、内臓損傷などが生じる可能性があります。
骨盤骨折では腰から骨盤周りに激しい痛みが出現し、歩行が困難になります。また、骨盤内の大血管が損傷すると出血性ショックを起こす危険があります。
合併症として膀胱や尿道の損傷が伴う場合もあります。骨盤は体の基盤であり、損傷が重いと長期的なリハビリや後遺症につながることが多いため、強い衝撃を受けた際には必ず医療機関を受診し精密検査を受けましょう。
脊椎の損傷
交通事故の際、体が前方へ投げ出される衝撃をシートベルトで抑え込むため上半身が強く折れ曲がる力(過屈曲)が働き、腰椎や胸椎の骨折が生じる可能性があります。
チェンス骨折は腰椎や下部胸椎に起こる水平型骨折(椎体が真っ二つに割れる)であり、消化管や膵臓など腹部臓器の損傷と合併しやすいため注意が必要です。
圧迫骨折は椎体がつぶれる骨折で、特に骨粗鬆症のある高齢者では軽い事故でも生じやすい骨折です。
骨折片が脊髄を圧迫、損傷させる可能性があり、下肢のしびれや麻痺が出現する場合もあります。
背中や腰に強い痛みがあり、シートベルト痕、腹痛などがある場合には緊急で医療機関を受診する必要があります。
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シートベルト外傷の注意点
運転者および同乗者には法律でシートベルトの着用が義務づけられています。そのためシートベルトの着用義務を怠った場合には事故時に過失割合に影響が生じます。
また、怪我を放置すると重症化したり後遺症のリスクがあるため注意が必要です。
シートベルト着用義務を怠った場合は過失割合に影響を与える

▲過失割合とは?
日本では運転者および同乗者にシートベルトの着用義務が法律で定められています。そのため、着用しないで事故が生じた場合は過失割合に直接影響します。
例えばシートベルトをしていなかったことが原因で傷害が重くなったと判断されると賠償責任が増す可能性があります。
さらに、保険会社による補償範囲にも影響を与え、被害者の外傷の程度と過失割合が補償額の調整に反映されます。
そのため、適切な補償を受けるためにも医療機関を受診し医師の診断を受ける際にはシートベルトの状況をしっかりと伝えるようにしましょう。
放置すると重症化や後遺症のリスクがある
事故直後に症状が軽度でシートベルト痕や軽微な打撲として判断され、内出血や臓器損傷が見逃されると数時間〜数日で生命に関わる状態に悪化することがあります。
また、骨折や靭帯損傷などは治療を怠ると慢性疼痛や可動域制限につながり、日常生活への影響が長期間続く可能性があります。
むちうちなどの頚部損傷も、頭痛・めまい・しびれ・倦怠感などが慢性的に残るケースが少なくありません。
そのため、症状が軽度だからと放置せずになるべく早期に医療機関を受診し適切な診断を受けることが重要です。
シートベルト外傷の通院と治療
交通事故では体に想像以上の強い衝撃が加わります。
そのため、事故直後は症状が軽度でも徐々に悪化していくことがあるため、できるだけ早期に医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。
通院先の選び方や診断・検査、治療方法について紹介していきます。
通院先の選び方
▲交通事故通院の病院と整骨院の治療内容の違い
交通事故に遭った場合、緊急性がなければまず初めに整形外科などの医療機関を受診しましょう。
軽いむちうちや打撲、違和感のみでも、徐々に症状が悪化していくことがあるためまずは整形外科でレントゲンやMRIなどしっかりと検査を受ける必要があります。
医師の診断を受けた後に整骨院への通院も可能です。むちうちや打撲など慢性的な痛みの緩和のために整骨院に通院するケースが多く、職場や自宅から近い、夜遅くまで受診が可能など通いやすいというメリットもあります。
整骨院へ通院する場合には、医療機関での検査・治療と併用するのが望ましいです。
関連記事交通事故で整形外科と整骨院は併用可?メリットや注意点を解説
診断・検査
画像検査は、医師の判断により必要に応じて実施されますが初期診断において極めて重要です。
骨折の有無、程度を確認するレントゲン、内臓や骨盤・胸部・脊椎の状態を詳しく見るCT、神経や脊髄圧迫の精査に適したMRIが状況に応じて実施されます。
血液検査では出血や炎症の有無、程度を確認し、身体診察ではシートベルト痕や圧痛部位、呼吸・神経症状を評価します。
特にシートベルト痕が鮮明に残っている場合、その下に深刻な内臓損傷の可能性があるため、精密検査が必要とされます。
そのため、事故後症状が軽度であってもできるだけ早期に医療機関を受診し、適切な診断・検査を受けることが重要です。
治療方法
打撲や擦過傷など軽度の外傷は外用薬や湿布といった保存的治療で回復することが一般的で、数日〜数週間で改善することが多いです。
肋骨や脊椎の骨折では、安静による経過観察や痛み止め、必要に応じて入院による状態管理が行われます。
脊椎の骨折であるチェンス骨折などではコルセット固定や手術が必要になる場合があります。
骨盤骨折では止血管理と固定術が必要なケースもあります。消化管の穿孔が見られる場合には緊急手術が必要となります。
肝臓・脾臓損傷では出血量など状況に応じて手術または保存療法が選択されます。
むちうちなどの慢性症状には、リハビリテーションや整骨院での物理・手技療法が有効で、医師による治療と併用することで後遺症予防に繋がります。
関連記事交通事故の治療を整骨院で受ける|施術内容と保険適用について解説
シートベルト外傷による後遺障害
シートベルト外傷が原因となる後遺障害には、腹部臓器(小腸、腸間膜、大腸、脾臓)損傷と、体幹骨折(肋骨、胸骨、鎖骨、腰椎圧迫骨折など)が主な対象です。
これらが治療後も症状として残る場合には、後遺障害として認定される可能性があります。認定されると、後遺障害等級に応じて慰謝料や逸失利益などの補償が請求可能となります。
医師の診断書や画像所見が後遺障害認定において重要な証拠となるため、医療機関でしっかりと医師の診断を受けることが大切です。
また、自己判断で治療を中断してしまうと後遺障害認定が難しくなるケースがありますので、医師の指示に従って治療を継続するようにしましょう。
関連記事交通事故の後遺症の種類とは?症状や後遺障害認定を受ける方法を解説
シートベルト外傷の予防策
シートベルト外傷を防ぐには、正しい位置でシートベルトを着用し、たるみやねじれがないか確認することが重要です。
また子どもには年齢・体格に合ったチャイルドシートを使用することも大切です。
シートベルトの正しい着用
シートベルトは運転者、同乗者の全員が必ず着用するようにしましょう。
肩ベルトが肩から鎖骨の中央にかかり、腰ベルトが骨盤にしっかりとフィットしていることが重要です。定期的に破損や摩耗がないかを確認し、適切な張り具合を保つようにしましょう。
ベルトがたるんでいたりねじれていたりすると、衝撃時に荷重が一点に集中し、損傷するリスクが高まります。適切な調整が行われているかを運転前にチェックする習慣を持つことが効果的です。
子ども特有のリスクと対策
体格が小さい子どもは、大人向けのシートベルトでは保護効果が不十分になることがあります。
そのため、成長段階に応じたチャイルドシートやジュニアシートの使用が推奨されます。これらを使うことで、ベルトの位置ずれや不適切な圧迫を防ぐことができます。
また、子どもの骨や内臓は未発達なため、同様の衝撃でも重傷化しやすい傾向があります。適切な用品を使用し、定期的にフィット感を確認することが、事故時の安全性を高めます。
【Q&A】シートベルト外傷に関するよくある質問
シートベルト外傷ではどの部位に発生しやすく、どのような症状なのか、保険の補償対象になるのかなどわからない部分が多くあると思います。
ここではシートベルト外傷に関するよくある質問にお答えしていきます。
シートベルト外傷はどの部位に多いですか?
シートベルト外傷ではシートベルトと体が接触している部分に多く発生します。
そのため、主に胸部、腹部、首、鎖骨、骨盤に発生しやすく、とくに胸部と腹部は命に関わる臓器があるため注意が必要です。
シートベルト外傷の症状は?
シートベルト外傷の症状は損傷された組織によって様々ですが主に皮膚の擦過や圧痕、内出血、内臓痛や骨折による痛み、呼吸困難、しびれ、歩行困難などがあり、多岐にわたる症状が見られます。
見た目以上の損傷が隠れていることもあります。
事故直後に痛みがなくても受診すべきですか?
事故直後に症状が軽度であってもなるべく早期に医療機関を受診すべきです。
内臓損傷や出血、骨折などは事故直後に症状が軽度でも徐々に状態が悪化していくことがあります。事故後はたとえ自覚症状が軽くても早めに受診することが重要です。
シートベルト外傷では整骨院に通った方がいいですか?
シートベルト外傷では重篤な状態である可能性もあるため、はじめは医療機関を受診し、しっかりと医師の診断を受けましょう。
その後、むちうちや筋肉の緊張による慢性症状の緩和を目的として整骨院を併用するのは有効です。
シートベルト外傷は保険の補償対象になりますか?
多くの場合、交通事故による損傷は自賠責保険や任意保険の補償対象となります。
ただし、損傷の種類や過失割合、治療内容により補償額や範囲が変わるため、医師の診断書や治療記録を整えて請求することが大切です。
関連記事交通事故の治療費は誰が支払う?手続きの流れや打ち切りの打診について解説
シートベルト外傷は早期受診が重要
シートベルト外傷は、外見では軽傷に見えても、内臓や骨、神経などに重大な損傷が潜んでいることがあります。
自己判断をせず、可能な限り早期に医療機関で精密検査を受けることが重要です。早期受診により、重症化や後遺症のリスクを大きく低減することができます。
事故直後の症状が軽度でも、事故翌日以降に腹痛や倦怠感、しびれ、胸の痛みなどが現れることもあります。
違和感を感じたら、躊躇せず再度医療機関を受診するよう心がけましょう。
〈参考文献〉
シートベルトによる体幹部損傷の検討:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jcts/19/2/19_35/_pdf/-char/ja
シートベルトによる腹腔内臓器損傷に対する治療戦略:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaem/32/7/32_1201/_pdf/-char/ja
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この記事を監修したのは…
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。
この記事の執筆者
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