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追突事故による腕の痛み…。何が損傷して症状があらわれるの?

監修記事

宇賀神 絵里

看護師

追突事故は、突然後ろから追突される事故です。そのため、身構えることなく衝撃を受けてしまい、腕の痛みがあらわれることがあります。

そこで今回は、追突事故後にあらわれる腕の痛みの症状について解説していきます。

追突事故後にあらわれた腕の痛みの正体とは?

はてな

追突事故の被害にあい、腕の痛みがあらわれることがあります。腕の痛み以外にも、以下に当てはまる場合は、むちうちによるものの可能性があります。

  • 頭痛・疲れやすい・不眠・めまいなどの症状がある
  • 長い間、痛みが断続的に続いている
  • 身体に違和感があり、医師に診察してもらったが、異常なしといわれた
  • 天候の変化によって症状のあらわれ方が異なる
  • 集中力がなく、仕事に支障が出てしまっている

そもそもむちうちとは、追突事故やスポーツなどの際に受けた衝撃で起こるものです。衝撃によって首が鞭のようにしなり、首周辺の筋肉や靱帯などを損傷してしまい、腕の痛みや頭痛などの症状があらわれるのです。

どんな状況の事故でも起こり得るむちうちですが、追突事故の場合は、よりむちうちになりやすいといわれています。

関連記事むちうちはどんな症状?治療方法や完治までにかかる時間

追突事故におけるむちうちの起こり方

むちうち発生のメカニズム

▲むちうち発生のメカニズム

追突事故の場合、後ろから追突されるため、全く危険を予知していないことが多いです。そのため、首の筋肉は緩んでおり、軟部組織である靱帯のみに大きな力が加わるので損傷が起こりやすくなるのです。

また、人間の頭の重さは体重の約10%程度(※1)だといわれており、首の負担は大きいです。そのため、走行速度が低かったり、停車中だったとしても、追突事故が起こった場合はむちうちになってしまうので注意が必要です。

※1 例:体重が60㎏の場合、頭の重さは6㎏というような状態。

追突事故によるむちうちの症状について

むちうちによる症状は腕の痛みだけではなく、様々な症状があらわれるため、4つの症状型に分類することができます。

むちうちは4つの症状型がある

むちうちには、頚椎捻挫型・バレー・ルー症状型・神経根症状型・脊髄症状型の4つの症状型に分類することができます。

頚椎捻挫型

首周辺の筋肉や靱帯の損傷によるもので、むちうちと診断された方の70~80%が頚椎捻挫型に該当するといわれています。

頚椎捻挫型の主な症状は、首や頭部などの痛み、肩や背中のこり、関節の可動域制限などです。

バレー・ルー症状型

追突事故の衝撃で損傷した部分が神経にまで達したとき、バレー・ルー症状型に該当します。首の骨に沿って走る神経が損傷し、脳や脊髄の血流が低下するため、自律神経のバランスが崩れて様々な症状があらわれます。

バレー・ルー症状型の主な症状は、頭痛、めまい、耳鳴り、吐き気などです。

神経根症状型

追突事故によって、脊髄から出る神経を支える根元が引き伸ばされたり、圧迫されて負荷を受けたときに神経根症状型に該当します。

神経根症状型の主な症状は、首の痛み、腕の痛みやしびれ、倦怠感、後頭部の痛み、顔面の痛みなどです。したがって、追突事故後にあらわれた腕の痛みは、神経根症状型の可能性があります。

また、神経根症状型はヘルニアの原因ともなる症状型です。安静にしているにもかかわらず、咳やくしゃみをしたり、首を曲げたときに痛みが強くなる場合は注意が必要です。

脊髄症状型

追突事故の衝撃で脊髄が損傷してしまったときに、脊髄症状型に該当します。脊髄症状型の場合、首よりも脚にあらわれる症状が多いという特徴があります。

脊髄症状型の主な症状は、身体の麻痺、知覚障害、歩行障害などで、むちうちの症状型の中でも重い症状があらわれます。

追突事故によるむちうちの特徴2つ

追突事故によってむちうちが発症した場合、以下の2つの特徴があります。

むちうちの特徴「症状が後から現れる」「診断が難しい」

▲むちうちの特徴「症状が後から現れる」「診断が難しい」

  • ①腕の痛みは事故直後にあらわれないことも
  • ②むちうちの診断は難しい

①腕の痛みは事故直後にあらわれないことも

追突事故後は、突然の出来事に身体が興奮状態になり、アドレナリンβエンドルフィンといった物質が分泌されます。アドレナリンやβエンドルフィンには、痛みを抑制する作用があるため、追突事故直後に痛みを感じないことがあるのです。

したがって、追突事故直後ではなく、身体の興奮状態が落ち着いたときに、痛みがあらわれます。そのため、追突事故直後に痛みがあらわれていなくても、一度病院で診察を受けることをおすすめします。

②むちうちの診断は難しい

むちうちは、筋肉や靱帯など身体の内部の損傷によって起こるため、身体の外側には傷や症状があるわけではありません。また、MRIやレントゲンなどの検査に、身体の内部の損傷が見つけられないこともあります。このような理由から、むちうちの診断が難しいといわれているのです。

むちうちを診断してもらう場合、MRIやレントゲンなどの検査でなく、神経学的検査が適しています。神経学的検査は様々な種類があり、以下のような検査方法があります。

  • 頚部(首)の症状に対する神経学的検査
    スパーリングテスト
    ジャクソンテスト           など
  • 腰部の症状に対する神経学的検査
    ラセーグテスト
    SLRテスト              など

関連記事腰部の症状に対する神経学的検査について

むちうちによる腕の痛みの治療方法

むちうちによって生じる痛みは様々ですが、基本的にどの症状に対しても同じ治療を行います。むちうちの治療は、急性期慢性期によって、適している治療が異なります。

急性期と慢性期で異なる治療

むちうちの急性期と慢性期における対処法の違い

▲むちうちの急性期と慢性期における対処法の違い

急性期とは、受傷直後から1ヶ月までの期間のことで、痛みが強い時期のことです。そのため、急性期の治療は安静にすること、コルセットやネックカラーを使い、痛みのある部分を固定することが大切です。また、あまりにも痛みが酷い場合は、痛み止めや湿布などを処方してもらうとよいでしょう。

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慢性期とは、受傷してから3ヶ月以降のことで、痛みが強く出ておらず、落ち着いている時期のことです。そのため、痛みのある部分に直接触れることも可能になります。

したがって、慢性期にはマッサージや電気療法、牽引、はりや灸、神経ブロックなどの治療を行います。

通院先の選択肢は3つ

先程紹介した治療方法は、整形外科・整骨院・鍼灸院の3つで受けることができます。

  • 整形外科:医師が治療を行い、痛み止めや湿布の処方、レントゲンやMRIなどの検査が受けられる
  • 整骨院:柔道整復師が施術を行い、マッサージや電気療法、牽引などが受けられる
  • 鍼灸院:はり師と灸師が、はりと灸を使った施術がうけられる

このように、それぞれの通院先によって受けられる治療・施術が異なります。通院先は、被害者自身で決めることができるので、症状にあった治療・施術が受けられる通院先を選択するようにしましょう。

追突事故による腕の痛みについてのまとめ

いかがでしたか。

追突事故後にあらわれた腕の痛みは、むちうちによる症状の1つです。むちうちは筋肉や靱帯など、身体の内部の損傷が原因で症状があらわれます。そのため、MRIやレントゲンでも確認できず、医師から異常なしといわれることも多いです。

自覚症状があるにもかかわらず、異常なしといわれた場合は、神経学的検査を受けることをおすすめします。

この記事を監修したのは…

総合病院脳神経外科勤務後、産婦人科クリニック、消化器内科クリニックにて勤務。現在は内科、消化器内科、リウマチ科、小児科、美容皮膚科クリニックにて看護主任として勤務中。看護師のほか、メディカルアロマセラピスト、ベビーマッサージインストラクターの資格を持つ。

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / T.N
大学を卒業し、出版社で取材や編集業務を経験。その後、WEBメディアの執筆に転向し、事故に関する様々な知識を多くの人に届けるべく、日々邁進中。現在は、交通事故専門士の資格を取得するために勉強をしている。座右の銘は、格物究理。

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