×

交通事故の後遺症の種類とは?症状や後遺障害認定を受ける方法を解説

監修記事

柿野 俊弥

理学療法士

交通事故の後遺症にはどのような種類があるのでしょうか。交通事故は全身にダメージを負うもののため多くの種類があるイメージを抱いている方も多いでしょう。

実際、その通りで交通事故による後遺症の種類は多岐にわたります。本記事では、交通事故による後遺症の種類やどのような影響をもたらすのかについて解説します。現在、後遺症で悩んでいる方がこれから行うべきこともわかる記事になっているので、ぜひ参考にしてください。

交通事故の後遺症とは

交通事故の後遺症とは

そもそも交通事故の後遺症とは、交通事故で何らかの障害を負い、その症状が残ってしまった状態のことです。例えば、交通事故が原因で脳出血を起こして、手足にマヒが残ってしまうと手足の麻痺が後遺症ということになります。

後遺症の例では、運動障害や神経障害などが挙げられます。これらの後遺症は、痛みや腫れ、機能制限、感覚異常などの症状を引き起こし、心的外傷や精神的な影響も後遺症の一部として考えられます。

後遺症の診断や治療には、医師の専門的な評価と適切な治療が欠かせません。事故の後に症状が出た場合でも、早期の診断と治療が重要です。後遺症は放置すると悪化する可能性があるため、適切なケアを受けることが大切です。

後遺症と後遺障害の違い

後遺症とよく似た言葉に「後遺障害」がありますが、両者は別の意味を指す言葉になります。後遺症は、先述したように症状が残ってしまった状態のことです。一方、後遺障害は「交通事故が原因」で症状が残ってしまったことを言います。

つまり、後遺症が広い意味で症状が残った状態を意味し、その中で交通事故が原因だった場合は「後遺障害」という言い方になるわけです。また、後ほど詳しく解説しますが、厳密に言うと「後遺障害等級」に認定された場合のみ、正式に後遺障害と呼ぶことができます。

交通事故の後遺症の種類

交通事故の後遺症の種類

では、交通事故の後遺症(後遺障害)では、具体的にどのような障害が残るのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

神経障害

交通事故によって神経を損傷し、それに伴う障害を引き起こすことがあります。神経の種類ごとに具体的な障害について紹介します。

  • 中枢神経:脳から脊髄に走る神経で、中枢神経が損傷すると認知機能障害や運動障害、麻痺などが生じます。
  • 脳神経:主に頭部を走る神経で、損傷すると視覚や聴覚の障害、顔面麻痺などが生じます。
  • 末梢神経:脊髄から手足に走る神経で、損傷すると手足のしびれ、痛み、感覚異常などが生じます。
  • 自律神経:生命維持を司り、自律的に働く神経で、損傷すると血圧の乱れ、体温調節の障害、消化器系などが生じます。

このように、神経障害は損傷する神経によって発症する症状が多岐にわたります。早期の専門医の診断と適切な治療が大切で、継続的なリハビリテーションも必要です。

運動障害

運動障害は、体の運動機能に異常が生じた状態を指します。例えば、交通事故で腕を骨折して動かせなくなった状態も運動障害です。さらに具体的な例としては次の通りになります。

  • 筋肉の障害による運動障害:筋肉に痛みや緊張感、けいれんが生じる状態です。筋肉の捻挫、肉離れ、痙攣などが含まれます。これらの状態は、急な運動や身体の過度の負荷、怪我などによって引き起こされることがあります。
  • 関節の障害による運動障害:関節炎や関節の捻挫、脱臼、変形などによる関節の痛み、腫れなどがあります。
  • 神経の損傷による運動障害:神経の損傷や異常によって、筋力の低下、運動の協調性の喪失、感覚の異常が起こることがあります。
  • 姿勢異常:身体のバランスや姿勢を維持するための筋肉や関節の不調で、上手く姿勢を保てない、猫背、脊柱の歪み、骨盤の傾きなどがあります。

欠損障害

欠損障害とは、交通事故などによって、身体の一部が失われる状態を指します。手指や足部の部分的な切断、器官の喪失などが含まれ、身体機能や外見に大きな影響を及ぼします。

また、欠損したことを受け入れることに精神力が必要で、精神面に悪影響を及ぼすことも少なくありません。頭の中ではまだ手足があるように感じて、「幻肢痛」と呼ばれる痛みを感じる症状も生じることがあります。

機能障害

機能障害とは、交通事故によって身体の機能が制限される状態を指します。筋力や運動能力の低下、感覚の異常、神経損傷などが含まれます。機能障害は、日常生活の動作や運動活動に支障をきたす可能性があり、リハビリテーションや治療が必要な場合があります。

変形障害

変形障害とは、交通事故などの外部の要因によって、骨や関節が正常な形状から逸脱する状態を指します。骨折や脱臼が原因となることが多く、身体の一部が歪んでしまうことで機能制限や痛みが生じることがあります。

変形障害は、正しい治療やリハビリテーションを通じて症状の緩和や機能の回復を目指す必要があります。

短縮障害

短縮障害は、交通事故によって足を骨折し、片方の足の長さが短くなる状態を指します。この障害は大腿骨や脛骨の骨折が原因となるケースが多いです。

放置したことで骨や関節が正常な位置に戻らず、片方の足が他方よりも短くなる現象が生じます。医学的には、左右の足の長さの違いを「脚長差」と言い、これが一定の長さを超えると手術が必要です。

また、骨盤の骨折や股関節の脱臼も短縮障害を引き起こすことも多くなっています。極度の脚長差がある場合は、医師の診察を受け、適切な治療やリハビリテーションを行いましょう。

交通事故の後遺症による後遺障害等級の認定

交通事故の後遺症による後遺障害等級の認定

後遺障害等級認定とは、交通事故後に残っている身体障害や症状を客観的に評価して、結果を基に、後遺症として見られるかを判断するものです。等級が1~14級に分けられており、それぞれの等級には特定の障害の程度が細かく定義されています。

いずれかの等級の基準を満たすのか、それとも後遺症ではないかを「損害保険料率算出機構」という機関が審査を行います。

むちうちの例

交通事故の代表的な疾患と言っても過言ではない「むちうち」ですが、後遺症は後遺障害等級の12級9号または14級13号に認められるケースが多くなっています。

  • 12級13号…局部に頑固な神経症状を残すもの
  • 14級9号…局部に神経症状を残すもの

両者の違いは「頑固」の記載があるかどうかです。医学的に客観的な証拠があり、これまでに治療の経緯が確認できれば12級13号に該当します。

関連記事交通事故の後遺症で認定される後遺障害等級14級とは?慰謝料の基礎知識について解説!

交通事故で発生する部位別の後遺障害の種類

交通事故で発生する部位別の後遺障害の種類

交通事故で発生する部位別の後遺障害の種類としては、次のようなものがあります。

部位 後遺症の例
目・耳・鼻・口 視覚や聴覚、嗅覚、味覚の障害または喪失
神経系統・顔・外見 損傷した神経が機能障害を起こし、それに付随する症状(顔面麻痺や感覚異常など)が生じる
上肢・下肢 上下肢の関節可動域制限や筋力低下、麻痺などが生じる
内臓・生殖器 臓器の機能低下や生殖器による生殖能力の低下が生じる
体幹・長管骨 脊髄損傷による麻痺や長管骨の骨折による運動障害などが生じる
手指・足趾 筋肉や神経の損傷による筋力低下、麻痺、切断による機能障害などが生じる

次項からそれぞれ見ていきましょう。

目・耳・鼻・口

目・耳・鼻・口のケースでは、視覚や聴覚、嗅覚、味覚の障害または喪失が見受けられます。

目の障害では、視力障害や失明が起こることで独立した日常生活を送ることが難しくなり、耳の障害では、聴力障害や難聴が現れコミュニケーションが難しくなり、鼻や口の障害では、嗅覚や味覚の喪失が見られることで、食事や環境への適切な対応が難しくなることがあります。

神経系統・顔・外見

神経系統や顔面の障害も後遺症として発生します。神経の麻痺や機能障害により、筋力の低下や感覚異常が生じ、動作が制限されます。また、顔面の変形や外見の傷跡は、精神的な影響を含めて社会的な生活に大きな影響を及ぼすことも少なくありません。

上肢・下肢

交通事故による後遺症の中には上肢や下肢に影響を及ぼすものもあります。骨折や靭帯損傷によって、運動障害や麻痺が生じます。また、関節の機能障害により、日常生活の動作に介助が必要になるケースもあります。

リハビリテーションや専門的な治療を通じて、継続的に機能回復を目指さなければなりません。

内臓・生殖器

交通事故による後遺症は、内臓や生殖器にも影響を及ぼすことがあります。内臓の損傷によっては、心肺機能や消化器官の働きが低下する可能性があります。

また、生殖器の損傷によっては、生殖能力や性機能に影響が出ることが考えられます。脳外傷によって内臓の自律神経制御が変化することや、生殖器の外傷による生殖機能の変化が起こる可能性があります。

体幹・長管骨

交通事故による体幹や長管骨(大腿骨や脛骨など)の損傷は、身体の基本的な動作に大きな影響を与えることがあります。

胸部や脊椎の損傷によっては、運動制限や麻痺が生じ、呼吸や姿勢に支障をきたすことが考えられます。脊髄損傷によって下半身の麻痺や筋力低下が生じる可能性もあります。

手指・足趾足指

手指や足趾の損傷は、日常生活において細かな動作やバランスを保つために重要な役割を果たしています。交通事故による手指や足指の切断や変形、運動制限は、手の動きや足の感覚に支障をきたすことがあります。

これによって、日常生活や仕事、趣味などの活動が制限されることが考えられます。

交通事故で後遺障害認定を受ける方法

交通事故で後遺障害認定を受ける方法

先述したように、後遺障害等級の認定を行っている機関は損害保険料率算出機構です。申請するには、必要な書類を集めて、損害保険料率算出機構へ提出し、申請手続きを行わなければなりません。

主に必要な書類は次の通りです。

  • 後遺障害診断書:主治医に作成してもらう書類で氏名や生年月日などの基本情報から身体障害の状態が記載されています。
  • 事故発生状況報告書:事故発生当時の詳しい状況を説明するための書類です。
  • 検査結果が記載された書類レントゲンMRI、血液検査などの検査結果が載った書類です。
  • 診療報酬明細書:これまでに行った医療の内容や処方薬、診療報酬の点数、診療を開始した日にちなどが記載されています。

申請方法

申請方法は三つあります。一つは、自身で書類を集めて申請する方法です。しかし、交通事故の後遺症に苦しむ状態で書類を集めるのは現実的ではありません。そこでおすすめなのが、弁護士に依頼する方法です。弁護士は専門知識を持ち、適切な手続きや書類の準備を行ってくれます。

保険会社を通じて申請する方法(事前認定)もありますが、会社側の利益もあるため、公正ではない場合があります。弁護士に依頼した方が、依頼者が有利になるよう働きかけてくれるため、後遺障害等級に認定されやすいと言えます。

交通事故の後遺症で押さえたいポイント

交通事故の後遺症で押さえたいポイント

最後に、交通事故で後遺症を生じたとき事前に知っておくべきポイントを紹介します。知っておくことで、自身が不利な状況に陥るような事態を避けられるため、きちんと把握しておきましょう。

症状固定はすぐに応じない

症状固定とは、治療を継続しても改善の見込みがない状態のことです。例えば、交通事故でむちうちを起こし、半年間にわたって首の痛みに対して治療を続けたけれど「これ以上の改善は難しいな…」と医師が判断した場合に「症状固定です」と患者に診断を下します。

時折、医師から診断が下る前に保険会社から「そろそろ症状固定ではないですか?」と連絡が来る場合があります。症状固定になれば、被害者が加害者側の保険会社に対して治療費や慰謝料を請求できなくなるため、保険会社側にしてみると負担が減るためできるだけ早く症状固定としてほしいわけです。

しかし、症状固定は医師が診断するもののため、保険会社からいわれても応じる必要がないため、心配しなくてもよいでしょう。

関連記事むちうちの症状とはどういったものなのか?治療方法についても解説

損害賠償請求権の時効は覚えておく

損害賠償請求権の時効は原則、人身損害であれば交通事故の発生日をスタートとして「5年」と決められています。5年を過ぎれば、加害者に対して損害賠償を請求できなくなるため、覚えておきましょう。

示談交渉に時間がかかるケースも多いため、まだ数年あるからと後回しにすれば「請求する前に時効になってしまった」という事態に陥りかねません。早めの行動を心がけることが大切です。

交通事故の後遺症は医師への相談が大切

交通事故の後遺症は医師への相談が大切

交通事故の後遺症に悩んでいる場合、まずは医師への相談が第一です。今後、後遺障害等級認定を申請する際にも、どちらにしても診察や検査、書類の作成が必要になります。

どうしてもかかりつけ医以外の医師に診てもらいたい場合は、別の医療機関で診てもらうこともできるため、とにかく医師に相談するようにしましょう。受診する医療機関で困っていれば、交通事故病院の相談窓口にいつでもお問い合わせください。

この記事を監修したのは…

理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

この記事の執筆者

理学療法士 / 柿野 俊弥
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

カテゴリ一覧

はじめての交通事故でお悩みの方へ。
交通事故に関する知識や通院について
無料でサポートいたします。
無料 0120-963-887
電話で無料相談する

24H緊急
ダイヤル

0120-963-887

  • お見舞金最大20,000
  • 相談0
  • 安心の365日対応

事故専門の相談員が
無料で完全サポートいたします