RICE処置の具体的な方法や目的・効果|間違った処置を防ぐために正しく覚えよう
監修記事
柿野 俊弥
理学療法士
よくスポーツで「RICE処置」という言葉を聞きます。RICE処置は、何らかの怪我をしたときに行われる応急処置の方法です。
本記事では、実際に誰かが怪我をした場面に遭遇したとき、RICE処置を行えるよう、具体的な方法を解説します。繰り返して読み、いざというときのために備えましょう。
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目次
RICE処置の目的・効果
RICE処置は、外傷により損傷したときの応急処置方法です。
- R(Rest):患部を動かさないよう安静にして悪化を防ぐ
- I(Icing):患部を冷やして炎症による腫れや痛みを軽減する
- C(Compression):患部を圧迫して内出血や腫れの悪化を防ぐ
- E(Elevation):患部を心臓より高い位置に挙げ、腫れの悪化を防ぐ
RICE処置は、怪我の治りや悪化防止に重要な役割をもちます。自転車や車の運転、スポーツをする方はとくに、RICE処置を身に付けておくことをおすすめします。
RICE処置の具体的な方法
ここでは、Rest・Icing・Compression・Elevationのそれぞれ具体的なやり方を解説します。間違った方法でRICE処置を行うと、症状を悪化させるおそれがあるため、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。
すみやかに必要物品を集める
まずは、すみやかにRICE処置で必要な物品を集めましょう。可能であれば、必要性が出る可能性のあるときは、必要な物品を持ち歩いておくと、なお良いです。
必要物品 | 使用目的 |
---|---|
厚めのタオル | 足の怪我の場合、血液が滞らないよう足を乗せる 冷却するときに凍傷防止にも使用可能 |
アイスボックスに氷 | ビニール袋や氷嚢に氷を入れて患部を冷やす |
ビニール袋や氷嚢 | アイスボックスの氷を入れて患部を冷やす |
包帯 | 患部を圧迫・固定する |
パッド | 患部に当てて固定する |
安静(Rest)
腫れや血管、神経の損傷悪化を防ぐために、まず安静が重要です。負傷者を安全な場所に移動した後、椅子に座らせたり、仰向けにしたりして安静にさせます。横に寝かせなければいけないわけではありません。怪我をした部位や負傷者の状態に応じた対応が必要です。
また、移動する際に患部が動きそうな場合は、板やタオルなどを用いて固定しておきましょう。
Ice(冷却)
安静な状態にできたら、患部を冷やします。氷をビニール袋や氷嚢に入れて、患部に当ててください。凍傷には注意が必要です。凍傷を避けるために、ビニール袋や氷嚢を患部に充てるとき、タオルを一枚挟みます。「感覚がなくなる程度」まで冷やすのが目安で、時間にすると15〜20分程度となります。それ以上長くすると、凍傷する可能性があるため、一度離して時間を置いてからもう一度冷やしましょう。
Compression(圧迫包帯)
テーピングや包帯で患部を中心に圧迫し、内出血や腫れの悪化を防ぎます。腫れていない患部周囲も軽く圧迫しましょう。圧迫しすぎると、血液の循環を妨げて循環障害を引き起こします。
圧迫の強さは、圧迫した部分の先(膝を圧迫した場合は足先など)がうっ血していないか、しびれが出ていないかの確認をしながらの調整が必要です。患部を冷やしたことで、しびれを感じにくくなっていることもあるため、慎重に行いましょう。
Elevation(挙上)
腫れや内出血を防ぐために、患部を心臓よりも高い位置まで挙げます。心臓から手足の先に血液が流れるため、心臓よりも低い位置にすると、腫れや内出血を悪化させるおそれがあるのです。
具体的には、次のような方法があります。
- 足の怪我の場合:仰向けで椅子の上に足を乗せる、椅子がなければ足の下にタオルを入れる
- 手首の怪我の場合:椅子に座らせて手をテーブルの上に乗せる、または仰向けにして体の上に手を乗せる
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RICE処置にまつわるQ&A
ここでは、よくあるRICE処置に関する疑問点をQ&A形式で紹介します。正しい処置を行い、怪我の状態を最小限に抑えられるよう、ぜひ参考にしてください。
冷却時間・期間はいつまで?
1回につき15~20分程度冷やします。「感覚がなくなる程度」を目安に冷やした後、時間をおき、もう一度冷やすという工程を繰り返しましょう。負傷してから2〜3日は炎症が続くため、毎日冷やし炎症を抑えることが大切です。
冷却には、ビニール袋や氷嚢に氷を入れたものを使うとよいです。氷と一緒に少量の水を入れると患部全体を冷やすことができます。
RICE処置の順番は?症状によって違うの?
基本的にどのような怪我や症状でも、R→I→C→Eの順番で行います。
外傷を受けた後、患部を動かさないよう安静(Rest)にします。次に患部を冷却(Icing)し、腫れや痛みの軽減を図りましょう。冷却した後、患部を圧迫(Compression)して内出血や腫れの悪化を防ぎます。
最後に、患部を心臓よりも高い位置に挙上(Elevation)し、血液が溜まることによる腫れの悪化を防ぐのがRICE処置です。
肉離れの場合
肉離れは、筋肉が断裂する怪我です。筋肉の断裂に伴って炎症や内出血が起こり、痛み、腫れが生じます。
肉離れ直後は安楽な姿勢をとり、すぐに冷やします。
患部を冷やしながら、手やテーピングで患部を圧迫し、筋肉の止血を図りましょう。その後、患部を心臓より高い位置に挙げた状態を維持してください。
関連記事肉離れは交通事故が原因でも起こる?【応急処置や治療法について】
打撲の場合
打撲は、外力による衝撃で筋肉や血管が損傷することを指します。筋肉や血管の損傷で炎症を起こし、痛みや腫れを生じます。内出血を生じている場合、皮膚が「青黒く」見えます。
状態を悪化させないよう安静にします。その後、炎症が広がらないように冷やし、患部への外力を防ぐためにパッドを充てて固定・圧迫してください。
圧迫まで行えたら、タオルなどを用いて高い位置に保ちます。
関連記事打撲の痛みはいつまで続く?治し方や病院に行く判断基準を解説
捻挫の場合
捻挫は、関節を捻ることによって靭帯や筋肉の腱を損傷する怪我です。捻挫をしたら、関節を動かさないように注意しながら安楽な姿勢をとります。患部は炎症を起こしているため冷却し、腫れや痛みの軽減を図ってください。
その後、テーピングで捻挫を起こした関節が動かないように固定し、心臓よりも高い位置に挙げます。
RICE処置に禁忌はある?間違った処置方法を防ぐために
RICE処置を行う身体の部位によって、注意しなければならない点があります。
RICE処置 | 部位 | 注意するポイント |
---|---|---|
圧迫・冷却 | 肘 | 肘の内側に「尺骨神経」があり、神経麻痺を引き起こす可能性 |
圧迫・冷却 | 膝 | 膝の外側に「腓骨神経」があり、神経麻痺を引き起こす可能性 |
安静・冷却・圧迫・挙上 | 足関節 | 身体の他部位と比べて腫れやすいため、RICE処置にて軽減を図る必要性あり |
安静 | アキレス腱 | 断裂が疑われる場合、つま先を下に向けた状態で固定 |
とくに、尺骨神経や腓骨神経の麻痺には、十分な注意が必要です。
尺骨神経の麻痺では、手首や指を動かすことが難しくなり、腓骨神経の麻痺では、つま先を上げる筋肉が効かなくなり、常につま先が垂れた状態になってしまいます。圧迫しすぎ、冷やしすぎに注意しましょう。
RICE処置を適切に行えば症状の悪化や後遺症を防げる可能性が高まる
RICE処置は、怪我の症状の悪化や後遺症を防ぐために重要です。
本記事でRICE処置の意味や具体的な方法は理解できたでしょう。しかし、実行できなければ、いざというときに適切なRICE処置を行えません。
友達や家族、自分の手足で実際に練習しておくと、実際の場面で迅速に対応できます。この良い機会に、RICE処置を身に付けておくとよいでしょう。
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この記事を監修したのは…
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。
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