交通事故でむちうちに…コルセットを使う目的は?
監修記事
宇賀神 絵里
看護師
交通事故は、人生で何度も経験するものではありませんから、不安を感じて当然です。
追突事故などの交通事故にあうと、むちうちや腰椎捻挫になり、体に痛みが出る方が多いですよね。その中で、首が痛くなった場合、コルセットで固定することを想像する方も多いと思います。しかし、このコルセット、「本当に必要なの?」と疑問を持つ方も少なくないのではないでしょうか?
そこでこの記事では、コルセットの必要性やむちうちについて解説していきます。損害賠償についても解説しておりますので、ぜひ最後まで読み進めてみてくださいね。
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目次
むちうちとは
むちうちとは、交通事故やスポーツの衝撃によって、首が鞭(むち)のようにしなることで起こる症状です。一般的にはむちうちといわれていますが、正式には「頚椎捻挫」や「頚部挫傷」といいます。
むちうちは、事故直後に、症状が発症するものだけとは限りません。時間が経過してから痛みが出てくる場合も多くあります。
また、むちうちの症状は、首の痛みだけではありません。頭痛やめまい、体のだるさや吐き気など「風邪かな?」と勘違いしてしまうような症状が起きるのも、むちうちの特徴です。
むちうちの種類別症状
むちうちには、いくつか種類があり、それぞれで症状が変わってきます。
頚椎捻挫型
頚椎捻挫とは、頚椎(首の骨)の周りの筋肉や靭帯、軟部組織の損傷です。むちうちになった際、7割から8割の人が、この頚椎捻挫に該当するといわれています。
主な症状はこちら。
- 首や肩の痛み
- 首や肩、背中のこり
- 首や肩が動かない、または動かしにくい
- 首を動かすと痛い
バレー・ルー症状型
後頚部交感神経症候群ともよばれ、交通事故による衝撃が原因で、神経が損傷した場合に発症します。
主な症状はこちら。
- 頭痛
- めまい
- 耳鳴り
- 吐き気
神経根症状型
神経根症状型は、神経を支える根本が圧迫されたり、引き伸ばされることによって負荷を受け、頚椎の並びにゆがみができることで、発症します。
主な症状はこちら。
- 首の痛み
- 後頭部の痛み
- 顔面の痛み
- 腕の痛みやしびれ
- 倦怠感
これらの症状は、くしゃみや咳をしたり、首を横に曲げたり、回したりする際に、強くあらわれます。
脊髄症状型
脊髄症状型は、脊髄が傷つくことによって起こる症状です。脊髄は、脳から連続する中枢神経(※)です。
主な症状はこちら。
- 体の麻痺
- 知覚障害
- 歩行障害
- 排泄が困難になる
(※)神経系の中で、多数の神経細胞が集まり大きなまとまりになっている領域。
むちうちの通院先
交通事故にあい、「むちうちかも?」と思ったら、一刻も早く治療を始めたいですよね。しかし、「どこで診てもらえばいいの?」と、通院先に悩まれる方もいるのではないでしょうか。
むちうちの通院先としては、整形外科と整骨院があります。整形外科と整骨院では、受けられる治療内容や施術内容が変わってきます。しっかりと理解し、ご自身に適した通院先を選択するようにしましょう。
整形外科
整形外科には、医師が在籍しています。
治療内容としては、レントゲンやMRIなどの検査機器を使って、骨の異常を診てもらうことができます。治療を受けても、痛みが引かない場合は、痛み止めや湿布の処方もしてもらえます。また、切り傷やすり傷などの、外傷の治療も得意としています。
整形外科では、診断書を取得することもできます。診断書の内容としては、怪我の症状や病名、治療期間の見通し、病院名や医師名などが記載されています。
画像診断、投薬、診断書の発行ができるのは医師のみです。診断書は、人身事故への切り替えや、保険金を受け取る際にも必要となってくる、大切な書面です。したがって、交通事故にあったら、まずは整形外科へ行き、医師の診断を受けて診断書を取得するようにしましょう。
整骨院
整骨院では、柔道整復師が施術を行います。柔道整復師とは、国家資格の一つです。交通事故やスポーツが原因で起こった、骨や筋肉、関節などの損傷に対して、マッサージなどの手技療法や、電気などの物理療法などの様々な治療法を受けられます。鍼灸治療が受けられる整骨院もあります。
特にむちうちは、レントゲンやMRIなどの検査機器には、写らない場合があります。整骨院では、検査機器には写らない症状も、見つけて施術を行うことが可能です。また、普段の生活の中で気を付ける点やセルフケアなどのアドバイスを聞くことができます。
整形外科へ通院を続けても、痛みが良くならないという場合は、保険会社からの了承を得てから、整骨院への転院または、整形外科との併用を検討してみましょう。
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むちうちの施術でコルセットを使う目的とは?
むちうちには、急性期と慢性期という時期があります。
- 急性期:怪我になり始めた時期のことで、この時期は炎症を起こして熱を持っている。
- 慢性期:痛みや炎症が落ち着き、長期的な施術を行う時期。
急性期は、3日~1週間くらい続きます。この期間は痛みのある箇所を動かすと、炎症が悪化してしまう可能性があります。
そのため、むちうちの炎症が悪化しないよう、急性期にコルセット(頚椎カラーと呼ばれる場合もあります)で固定をします。コルセットで固定をすれば、怪我した箇所を動かさないようにすることができるのです。
仕事やプライベートの関係で、通院が難しい場合は、自宅にあるフェイスタオルを、コルセットの代用として使用する方法もあります。
コルセットを使用するのはいつまで?
むちうちは、組織や筋肉の損傷によって発症します。筋肉は、時間が経過すると緊張が強くなり、固まってしまいます。動かすことで血流は良くなりますが、コルセットを使い固定することで、緊張が強くなり、症状が悪化してしまう場合もあります。
安静にするべき急性期には、コルセットは役立ちますが、本格的な施術を行う慢性期に、コルセットは必要ないといえるでしょう。
よって、コルセットを使用するのは、交通事故から1週間程度になります。
むちうちの治療費はどうなるの?
むちうちの治療期間は、一般的には3ヶ月程度といわれています。しかし、交通事故で受ける衝撃が大きく、症状が強く出た場合は、6ヶ月または、それ以上かかることもあります。
このように、むちうちの治療は長期に渡ります。そのため、被害者は治療費や通院する際の交通費に金銭的な負担がかかってしまう恐れがあります。
では、被害者の金銭的な負担を軽減させるにはどうすればよいのでしょうか。
被害者は損害賠償を請求できる
交通事故の被害にあうと、被害者は加害者に治療費や慰謝料などの損害賠償を請求することができます。賠償金を加害者に請求することで、費用を負担することなく、怪我の治療を受けられるようになります。
損害賠償とは、交通事故によって被害者が受けた損害を、加害者が埋め合わせすることをいいます。賠償金は、加害者側の保険会社または、加害者本人に請求します。まず、加害者側の自賠責保険から支払われ、足りない分は任意保険が補う、という形になります。
被害者が加害者に請求できる損害賠償は、大きく分けて3種類。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
それぞれの内容を詳しく見ていきましょう。
積極損害
交通事故で怪我を負うと、怪我の治療をするために、交通事故が原因で、通院や入院を強いられた時に発生する損害です。
請求できる積極損害は、主に治療費や通院交通費があります。他にも、手術費用や車椅子などの購入費、被害者が死亡してしまった場合は葬祭費用などを請求することができます。
消極損害
消極損害とは、被害者が本来得られていたはずの利益が、交通事故が原因で得ることができなくなったことに対する損害です。消極損害には、休業損害と逸失利益の2つがあります。
休業損害
交通事故の怪我が原因で、仕事を休まなければいけなくなった場合、休んでいる期間は収入や利益が減ってしまいますよね。休業損害は、仕事を休まなければ、本来得られていたはずの収入の補償を目的としています。
逸失利益
交通事故が原因で後遺症が残ってしまうと、交通事故にあう前に比べて、労働能力が低下してしまう場合があります。逸失利益は、後遺症が残ったことが原因で労働能力が低下し、収入が減額した場合、交通事故にあわなければ得られていたはずの収入との差を表します。
慰謝料
慰謝料は、交通事故の被害にあったことによって、被害者が受けた精神的苦痛に対する損害を賠償するものです。交通事故の場合、入通院慰謝料と後遺障害慰謝料2つの慰謝料があります。
- 入通院慰謝料:交通事故が原因で入通院を強いられたことによる精神的苦痛を補償するもの
- 後遺障害慰謝料:後遺障害が残ったことに対する精神的苦痛を補償するもの
むちうちに対する損害賠償はどうなる?
むちうちに対する損害賠償を請求するには、保険会社に示談書を提出する必要があります。
示談書は、示談(※)が終了すると、保険会社から被害者に示談書の案が送られてきます。示談書には、事故が起きたという事実や賠償金の決定額、支払い方法などが記載されています。被害者は、示談書の案の内容をよく読み、納得したところで押印・署名をして加害者側の保険会社へ送り返します。
加害者側の保険会社は、被害者から返送された示談書の事務的な手続きを行い、被害者の指定した口座へ賠償金の振り込みを行います。
(※)被害者と加害者側の保険会社が、被害者に支払われる損害賠償の最終金額を、話し合いで決めること
賠償金はいつもらえるの?
被害者が賠償金を受け取ることができるのは、被害者と加害者側の保険会社との示談が終了してからになります。加害者側の保険会社から示談書が届いてから、賠償金が支払われるまで、約2〜3週間ほどで振り込まれます。
※交通事故の状況や怪我の具合によります。
むちうちが後遺症になったら、慰謝料はどうなる?
交通事故の怪我の治療が長引くと、これ以上治療を続けても、症状が良くならない、と医師に判断されてしまう場合があります。これを症状固定といい、症状固定した段階で残っている症状を、後遺症といいます。
後遺症と判断されると、これまで支払われていた治療費や慰謝料は、打ち切られてしまいます。
しかし、後遺症が後遺障害と認定されることで、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。後遺症が後遺障害になるには、いくつかの条件があります。その条件を満たすことで、後遺障害と認められます。
後遺障害等級認定を申請しましょう
後遺障害には、1級から14級までの等級があります。この後遺障害等級によって、支払われる慰謝料の金額が変わります。1級が最も高い金額となり、14級が最も低い金額となります。
後遺障害等級が認定される方法は、2つ。
- 症状固定まで通院を続ける。
- 後遺障害診断書を取得する。
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
症状固定まで通院を続ける
まずは、医師に症状固定と判断されるまで、通院を続けましょう。
症状がまだあるにも関わらず通院を終了してしまうと、治癒したと判断され、その時点で治療費の支払いは打ち切られてしまいます。その場合、後遺症が認定されることは難しくなるケースがほとんどです。
保険会社の担当者から症状固定を勧められた場合でも、症状固定の判断ができるのは医師のみです。痛みなどの症状が少しでも残っている場合は、通院先の医師と相談をし、通院を続けることが大切です。
後遺障害診断書を取得する
後遺障害と判断されたら、後遺障害診断書を取得しましょう。
後遺障害診断書は、医師のみが作成できます。整骨院で後遺障害診断書を取得することはできません。また、交通事故にあった際に取得する、自賠責用診断書とは異なりますので、注意しましょう。
後遺障害診断書は、後遺障害等級が認定されるための、重要な書面です。作成後の内容に納得がいかない場合は、きちんと医師に伝え、納得のいく診断書を取得しましょう。
後遺障害慰謝料の請求方法は?
後遺障害等級認定の申請準備が整ったら、後遺障害慰謝料の請求を行います。
後遺障害慰謝料の請求方法は、2つ。
- 事前認定(加害者請求)
- 被害者請求
事前認定
事前認定で請求する際に被害者が行うことは、取得した後遺障害診断書を、加害者側の任意保険会社へ送ることのみです。
請求の手続きを、加害者側の任意保険会社がすべて行うことから、加害者請求とも呼ばれています。
被害者請求
被害者請求とは、被害者が直接、加害者側の自賠責保険会社へ請求を行う方法です。
被害者が加害者側の保険会社に後遺障害診断書を提出することの他に、様々な書面を被害者自身で取り寄せ、提出する必要があります。
被害者請求に必要な書類は、
- 交通事故証明書
- 事故発生状況報告書
- 通院交通費明細書
- 後遺障害診断書
- 自賠責保険用診断書
などがあります。
手続きをすべて被害者自身で行わなければいけない被害者請求は、少し手間がかかります。しかし、被害者自身が手続きを行うことで、有利に事を進められたり、手続きの内容が明確になるというメリットがあります。
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むちうちで使うコルセットについてのまとめ
交通事故でむちうちになってしまったら、まずは安静にすることが大切です。
無駄な動きや、自分でマッサージをしたりすることは避けましょう。また、むちうちは事故直後に発症するものだけではありません。交通事故にあったら、痛みや違和感がなくとも、医療機関へ行き症状を診てもらいましょう。
通院先にお困りの際は、交通事故病院相談窓口へお電話ください。
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この記事を監修したのは…
総合病院脳神経外科勤務後、産婦人科クリニック、消化器内科クリニックにて勤務。現在は内科、消化器内科、リウマチ科、小児科、美容皮膚科クリニックにて看護主任として勤務中。看護師のほか、メディカルアロマセラピスト、ベビーマッサージインストラクターの資格を持つ。
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