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交通事故のむちうちで頭痛に!?治療方法や後遺症を防ぐポイント

監修記事

世良 泰

医師(整形外科他)

交通事故では身体に想像以上の大きな衝撃がかかります。特に頭が大きく揺さぶられることによりむちうちを患うことが多いです。

むちうちではさまざまな身体の不調が出現しますがその中でも頭痛は生じやすい症状の1つであり、慢性的な頭痛に悩まされる場合も多くあります。そこで今回は交通事故後のむちうちによる頭痛の主な原因や対処法、後遺症を防ぐポイントについて紹介します。

むちうちの頭痛が出る期間

むちうちの頭痛が出る期間

むちうちの程度により異なりますが軽いむちうちであれば1ヶ月、場合によって3ヶ月から1年以上続くこともあります。交通事故の衝撃により頭が大きく揺さぶられることで首周りの筋肉や靭帯が損傷し、血流が悪くなります。

首周りの血流が悪くなることで頭への血流も悪くなります。血流が悪くなると疼痛誘発物質が溜まるようになり痛みが生じます。また、首から出る神経には頭部の知覚を支配している神経があります。

この神経の周囲に炎症が起こったり圧迫されたりすることで頭痛が生じやすくなります。むちうちの改善とともに頭痛も改善しますが、場合によってはむちうちが完治しても頭痛だけが後遺症として残ることもあります。

むちうちで起きる頭痛で気をつけたい症状

むちうちで起きる頭痛で気をつけたい症状

むちうちによる頭痛は頭が締め付けられるような痛みやズキズキやガンガンするような脈動に合わせた痛みが後頭部を中心に広がっていくのが特徴的です。

これは緊張型頭痛といい、首周囲の筋肉の緊張により頭部への血流不良が生じることが原因と考えられます。しかし、交通事故では頭が大きく揺さぶられるため、脳への衝撃が大きくなり脳の重大な疾患を患う可能性があります。

POINT

頭痛で次のような症状がある場合は早めに医療機関を受診

頭痛で次のような症状がある場合は早めに医療機関を受診しましょう。

  • 通常とは異なる激しい頭痛
  • 和らぐことがない持続的な頭痛
  • 日を追うごとに痛みが増していく頭痛
  • めまいや吐き気が伴う頭痛
  • 高熱を伴う頭痛
  • 嘔吐を伴う頭痛
  • 手足のしびれを伴う頭痛
  • 歩行障害を伴う頭痛

頭痛のタイミング

むちうちによる頭痛は天候に左右されることがよくあります。雨の日や曇りの日などは頭痛が出やすかったり痛みが強かったりと症状が悪化する傾向にあります。

これは気圧の影響だと考えられます。天気の悪い日は低気圧が近づいており大気の気圧が下がるため、体内の血管が圧迫され血流が悪くなり頭痛の症状が出やすくなると考えられます。

また、冬の寒い時期も血流が悪くなるため同様に頭痛の症状が悪化しやすくなります。

むちうちの種類で変わる頭痛の症状

むちうちの種類で変わる頭痛の症状

むちうちは原因や症状によって「頚椎捻挫型」「神経根損傷型」「脊髄症状型」「バレー・リュー症候群型」「脳脊髄減少症」の5つに分類されます。

  • 頚椎捻挫型:頚椎の筋肉や靭帯が損傷されるいわゆるむちうち症で頚椎の筋肉の緊張が高まり血流不全が生じることで頭痛が出現しやすくなる。
  • 神経根損傷型:頚椎に歪みが出ることで後頭部の知覚を支配する神経が圧迫されると後頭部へ広がる痛みが出現する。
  • 脊髄症状型:脊髄を損傷することで、腕の痺れや痛み、感覚障害などの神経症状、歩行障害、筋力低下等が出現する。
  • バレー・リュー症候群型:自律神経系の異常により、めまいや吐き気の症状とあわせて頭痛が生じる。
  • 脳脊髄減少症:脳脊髄が漏れ出ることで髄液が減少し、頭痛やめまい、ふらつき、吐き気、耳鳴りなどの症状が出現する。

むちうちで頭痛になる原因

むちうちで頭痛になる原因

交通事故後に生じる症状の1つに頭痛があります。この頭痛の原因はまだ詳しくは解明されていませんが脳(頭)への血流が悪くなること、頚椎周辺にある神経が圧迫されること、頚椎周囲の筋の緊張によるものなどが考えられています。

血流の悪化

交通事故では身体へ強い衝撃が加わります。その衝撃により頭が大きく揺さぶられることで首の周りの筋肉や靭帯などが損傷され血流が悪くなります。

脳(頭)への血流は首から繋がっているため、首周囲の血流の悪化が脳(頭)への血流の悪化も招くことになります。血流の悪化によりプロスタグランジンなどの疼痛誘発物質という痛みを誘発する物質が溜まってくることで頭痛が生じやすくなると考えられています。

神経の圧迫や損傷

むちうちでは頚椎の歪みにより、頚椎の間から出る神経の根元の通り道が狭くなり神経を圧迫したり、損傷したりすることがあります。特に後頭部の知覚を支配する神経が圧迫されることで後頭部へ広がる頭痛が生じることがあります。

また、自律神経系の交感神経が過敏になることで血管が収縮し血流が悪くなり頭痛が生じやすくなります。脊髄が損傷されている場合では歩行障害や排泄がうまくできない膀胱直腸障害が生じるため注意が必要になります。

関連記事むちうちの痛くない寝方とは?首の負担が少ない寝姿勢を解説

筋肉の緊張

むちうちによって首の周りの筋が過剰に緊張します。この筋の過剰な緊張により神経を圧迫することで頭痛が生じやすくなります。

特に大後頭神経と小後頭神経という神経が首の筋の間を抜けて後頭部の知覚を支配しており、この神経が筋の緊張により圧迫されることで後頭部を中心とした頭痛が生じやすくなります。

また、筋の緊張が高まることで血流が悪くなり、疼痛誘発物質が溜まることで頭痛を引き起こすと考えられています。

交通事故によるむちうちと頭痛の証明方法

交通事故によるむちうちと頭痛の証明方法

交通事故にあった場合はまず整形外科などの医療機関を受診しましょう。交通事故の治療には損害賠償請求や治療費の請求といった通常の怪我とは異なる手続きが必要となります。

この手続きには交通事故によるむちうちと頭痛の因果関係を証明する必要があり、それには医師による診断書が必要となります。

また、後遺症として症状が残ってしまう場合にも医師による後遺症診断書があれば後遺障害等級の認定を受けることができ、後遺障害慰謝料の請求などができる可能性があります。

そのため、まずはじめに整形外科などの医療機関を受診して医師の診断をしっかり受け、継続して治療を受けることが大切です。また、むちうちの症状は事故直後には出ずに後日になって出現することもあります。

そのため、症状がなくても交通事故に遭った当日に医療機関で検査を受けましょう。

むちうちと後遺障害等級

むちうちの治療を一定期間通院して続けても症状が残る場合、永久的に治療を続けることはできないため、ある時期をもって症状固定としなければなりません。

その時点で症状が残っている場合は、症状固定日以降の分の精神的苦痛に対して後遺障害慰謝料という形で補償を受けることができます。

そのために「後遺障害等級」を認定してもらう必要があります。むちうちの場合は12〜14等級が一般的だといわれています。

関連記事交通事故の後遺症で認定される後遺障害等級14級とは?慰謝料の基礎知識について解説!

むちうちで頭痛が続くなら受診を

むちうちで頭痛が続くなら受診を

今回は交通事故後のむちうちによる頭痛の主な原因や対処法、後遺症を防ぐポイントなどについて紹介しました。交通事故は身体へ想像以上の強い衝撃が加わっているため、むちうちの症状が場合によっては長期間の治療が必要になります。

その中でも頭痛はむちうちの特徴的な症状の一つです。通常の頭痛とは異なる激しい痛みや持続的な痛みの場合は脳の障害の可能性もあります。むちうちによる頭痛が続くようであれば医療機関を受診しましょう。

この記事を監修したのは…

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。

池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/

日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター

TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員

AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー

この記事の執筆者

理学療法士 / 河野 裕也
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

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