むちうちはレントゲンでわかる?異常なしとされた場合の対処法とは
監修記事
甲斐沼 孟
医師(外科・整形外科他)
むちうちは、首に強い力がかかることで起こる頸部の捻挫です。交通事故やスポーツなどでむちうちらしき症状が出たにもかかわらず、レントゲンでは「異常なし」と判断された経験がある方もいるのではないでしょうか。
本記事では、むちうちがレントゲンでわかるのかどうかや、レントゲン以外のむちうちの検査方法などについて解説します。また、むちうちが異常なしと判断された場合の対処法も紹介しますので、症状が現れた際の流れを知りたい方はぜひ最後までご覧ください。
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目次
むちうちの症状はレントゲン検査ではわかりにくい
むちうちになると首の痛みや頭痛、吐き気・耳鳴りなどさまざまな症状が起きますが、レントゲン検査では異常を見つけられないケースがほとんどです。
レントゲン検査は骨の異常を診断するものです。そもそも骨に異常のないむちうちは、痛みや頭痛・吐き気などの症状を含め、レントゲンで見つけることができません。
医学的には頚椎捻挫や外傷性頚部症候群と診断されるむちうちは、筋肉や靭帯、神経などの負傷が症状に関係しています。こういった症状を確認しやすくするためにも、MRIや神経学的検査などを複合的に行うべきでしょう。
一部レントゲンでわかるむちうちもある
基本的にはレントゲン検査ではほとんど見つけられないむちうちですが、骨が変形しているなどが起こっている場合、レントゲン検査でも判断が可能です。
ただしほとんどの症状はレントゲン検査で確認ができないため、やはりほかの検査も併用して行い診断する必要があります。
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むちうちのレントゲン以外の検査方法
ここでは、レントゲン以外でむちうちの症状を診断できる検査方法を紹介します。
MRI検査
MRI検査とは、磁気の力を利用して臓器や血管を撮影する検査です。レントゲンやCT検査と異なり磁力を利用するため、放射線被曝のリスクはありません。
MRI検査により、骨以外の軟部組織の状態や、痛み・しびれの原因(頚椎椎間板ヘルニアなど)の確認が可能です。また、後遺障害等級認定を申請する際などにもMRI検査の結果が重要な証拠となります。
スパーリングテスト
スパーリングテストは、首の神経根に障害がないかどうかを調べるための検査です。
被験者はまず椅子に座って頭を後ろに反らせた状態となり、医師が患者の頭部を右や左に傾け、神経根の出口を狭めます。その状態で肩・腕・手等に痛みやしびれが現れた場合は、陽性であると判断されます。
ジャクソンテスト
ジャクソンテストも、スパーリングテストと同じく神経根障害を調べる検査の手法です。
まずは患者が椅子などに座り、医師が患者の頭部を後ろに曲げながら圧迫します。この際、上腕や前腕、手等に痛みやしびれが広がっていった場合は陽性だと診断されます。
ジャクソンテストとスパーリングテストは、共に特定部位に神経症状が現れていることを検査で実証できるものであるため、MRI検査とあわせて実施しておいたほうがよいでしょう。
腱反射テスト
腕や脚などの腱をハンマーで叩き、反応を見る検査です。大脳や脊髄に異常がある場合は、腱の打診後に異常反応が出ます。
例えば上腕三頭筋反射を調べる場合は、被験者に肘関節を約90度曲げてもらったうえで、肘関節の約3cm近位部伸側をハンマーで叩いて反応を見ます。ほかに上腕二頭筋や腕橈骨筋などの反射を見る方法もありますが、いずれにしても両側を検査して左右を比較することが大切です。
特に反応が見られない場合は、異常なしと判断されます。
筋萎縮テスト
筋萎縮テストは、腕や手にしびれが生じた場合などに、筋肉の萎縮の有無を調べる検査です。
肘関節の上10センチ、下10センチの箇所をそれぞれ測定し、極端に細い場合は筋が萎縮していると判断されます。
むちうちで片方の腕や手にしびれ・痛みが現れると、自然とそちら側の腕は使わなくなり、筋肉が痩せ細っていきます。筋肉が痩せ細っているかどうかは客観的な所見となるため、しびれが生じていることの裏づけになるでしょう。
針筋電図検査
筋力低下の有無や、その原因が神経疾患によるものかどうかを調べる検査が針筋電図検査です。
筋肉に長さ5cm程度の細い針を刺して、電位を測定します。筋肉に力を入れたり抜いたりしたときの波形の大きさ・持続時間などから、末梢神経の疾患かどうかや障害の部位・程度などを判断します。
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むちうちの症状
交通事故やスポーツなどで首に強い負荷がかかることで起こるむちうちには、さまざまな症状があります。ここでは主なむちうちの症状を解説しますので、むちうちを自覚しやすくするためにも特徴を覚えておきましょう。
首の痛み・肩こり
頸部痛や肩こりなど、首回りを中心にした症状は「頚椎捻挫型」と呼ばれ、代表的な後遺症のひとつです。
痛み止め薬や湿布が処方されたり、症状がひどい場合はコルセットをして首の負担を軽減したりする場合があります。
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頭痛・めまい・嘔吐
衝撃により自律神経が損傷されることで、頭痛やめまい、吐き気などの症状も現れます。
これらは「バレリュー症状型」などとも呼ばれ、交通事故にてよく引き起こされる症状のひとつです。基本的な生命維持機能を調節する役割を担う自律神経が乱れると、上記のような症状に加え耳鳴りや微熱が生じることもあります。
しびれ・脱力感・知覚障害
交通事故などにより脊髄に衝撃が加わると、手足のしびれや脱力感・知覚障害などを引き起こす場合があります。
脊髄神経根には、体の感覚を認知したり、脳からの指令を筋肉に伝えたりする役割があります。その神経根が損傷することで、知覚障害や脱力感などの症状が現れるようになるのです。
POINT
神経枝が損傷する
脊椎やそこから伸びている神経枝が損傷することで、しびれや歩行障害などの症状も現れます。
むちうちが異常なしとされた場合の対処法
さまざまな症状が現れるむちうちですが、検査方法によっては異常なしと判断されてしまうケースもあるものです。ここでは、むちうちが異常なしとされた場合の対処の仕方に関して解説します。
軽症の場合はしばらく安静にする
じっとしている時に痛みを感じなかったり、日常生活に支障がなかったりする場合は、軽症のためむちうちが自然治癒するケースもあります。
整形外科を受診した場合も投薬などで対応されることが多いため、しばらく安静にして様子を見るというのもひとつの方法でしょう。
ただし、症状を悪化させないためにも、気になることがある場合はすぐに医師に相談することをおすすめします。
リハビリを行う整形外科を受診する
異常なしと判断されても自覚症状がある場合は、マッサージや運動療法などを行ってもらえる整形外科を受診するとよいでしょう。
軽度の痛みであっても、なかなか改善しない場合は慢性症状として残ってしまう可能性があります。
事故などから数日経って痛みがひどくなるケースもあるので、少しでも異常を感じる場合は放置せず、マッサージやリハビリを積極的に行う整形外科に相談しましょう。
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整骨院・接骨院に通う
整形外科だけでなく、整骨院や接骨院で柔道整復師による施術を受けるのもひとつの手です。
整骨院・接骨院では、マッサージや運動療法・物理療法など、一人ひとりの症状に合わせた施術を行ってもらえます。
物理療法や運動療法などを用いて、レントゲンやMRI検査では異常なしといわれた体の痛みに対処してもらえることもあります。休日や夜遅くまで対応している整骨院・接骨院も多いため、整形外科と併用することで悩みを解決できるケースもあるでしょう。
むちうちの症状が現れた際にすべきこと
重度の痛みやしびれ、歩行障害などにつながる可能性のあるむちうちは、決して軽視すべきものではありません。ここではむちうちの症状が現れた際にすべきことを紹介しますので、まず何をするべきかを理解しておきましょう。
病院を受診する
事故直後は軽症でも大きな損傷を負っている可能性があるため、少しでもむちうちの症状が現れた場合は病院へ行く必要があります。
頭部や背骨周辺には重要な神経が集まっていますので、気になる症状が見られる場合は医師にしっかりと伝えておきましょう。
初期の段階で入念な検査や治療をし、後遺症を残さないように対策していくことが大切です。
レントゲン以外にも必要な検査を受ける
前述したようにむちうちはレントゲンで症状を判別できないケースが多いため、MRIなどの検査を複合的に組み合わせる必要があります。
神経根障害を調べるスパーリングテストやジャクソンテスト、筋肉の萎縮の有無を調べる筋萎縮テストなどのさまざまな検査があるので、医師と相談しながら適切な検査を受けましょう。
治療の面ではもちろん、後遺障害と認められるかどうかという点においても、必要な検査を受けることは重要なポイントになります。
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まとめ
むちうちは筋肉や靭帯、神経などの負傷が症状に関係しているため、骨の異常を診断するレントゲン検査では識別できないケースがほとんどです。
むちうちの症状を適切に診断するには、痛みやしびれの原因を確認できるMRI検査、大脳や脊髄に異常があるかどうかをチェックする腱反射テストなど、ほかの検査も併用して行う必要があります。
むちうちの自覚症状がある場合は、整形外科を受診したり整骨院・接骨院に通ったりするなどして、症状を軽視せず対処していくようにしましょう。
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専門領域分類
外科, 整形外科, 乳腺外科, 小児外科, スポーツ整形外科, リウマチ, 一般外科, 形成外科, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 消化器外科, 脳神経外科, 美容外科, 大腸肛門科, 内科, 内分泌代謝科, アレルギー・膠原病内科, 神経内科, 肝胆膵内科, 消化器内科, 総合内科, 血液内科, 腎臓内科, 循環器内科, 感染症科, 糖尿病内科, 呼吸器内科, 産業医, サル痘, 医療データ, 血液・感染症, 集中治療, 救急科
経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科
卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医
主な研究内容・論文
〇 「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」
〇 「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」
〇 「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」
〇 「都市部二次救急医療期間の当院における救急要請応需率に関する後方視的検討」
〇 「当院においてリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)投与した播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した感染性敗血症症例の臨床成績」
〇 「腹腔鏡下に治療しえた成人期に発症した先天性Bochdalek孔ヘルニアの一例」
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