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むちうちは自然治癒する?治療や通院は必要?正しい対処法を解説!

監修記事

河野 裕也

理学療法士

交通事故にあわれた方に多く見られる「むちうち」の症状。

軽い事故だと、治療やリハビリをしなくても自然治癒するか気になりますよね。

結論をお伝えすると、軽度の症状であれば自然治癒する場合もあります。

しかし、症状が強いむちうちの場合、しっかりと治療や通院をした方が良いでしょう。

今回は、交通事故によるむちうちの自然治癒について解説していきます。

むちうちの症状とは

むちうちとは、正式には「頚椎捻挫(けいついねんざ)」や「頚部挫傷(けいぶざしょう)」と診断される症状の総称です。

主に交通事故やスポーツで、首に過度な力が加わり、筋肉や靭帯、関節包といった軟部組織を損傷することで起こります。

むちうちの症状とは?むちうちが原因で起こる症状の例

▲むちうちが原因で起こる症状の例

むちうちでは、代表的な首の痛みだけでなく、しびれや頭痛、めまい、吐き気、倦怠感といった、さまざまな症状が現れます。

むちうちは何が原因?

むちうちによりさまざまな症状が出現しますが、その原因とは何でしょうか?

炎症

交通事故による急激に外から加わる力によって、首の筋肉などに炎症反応が生じます。

炎症とは、組織などに傷ができたときに生じる生理的な反応であり、腫れ・熱感・赤くなる・疼痛を主症状とします。

通常は3日程度で徐々に痛みは引いていきますが、首はむやみに動かさない方が良いでしょう。

筋肉の損傷

急激に外から加わった力で筋肉が引き伸ばされ、部分的に損傷してしまいます。

痛みは炎症反応と同様です。
基本的には3日が痛みのピークであり、徐々に痛みは引いていきます。

首のズレ

背骨は椎体(ついたい)と呼ばれる骨が連続して構成されています。

交通事故による外力で骨がずれてしまうことがあり、脊髄を圧迫することで脱力感や神経症状を発症します。

神経の損傷

末梢神経は背骨の中を通る脊髄から分岐しています。

交通事故で腕や首が引っ張られることで、末梢神経が脊髄から引き抜かれてしまうことがあり、このことを腕神経叢損傷(わんしんけいそうそんしょう)と言います。

交通事故によるむちうちの特徴

むちうちの特徴に、あとから痛みが現れるケースが多い点があげられます。

むちうちが交通事故後すぐに痛みとして現れないことがある理由は?

▲むちうちの症状が事故後すぐに出ない理由

当日から翌日に症状が出るケースが多く、事故当初はほとんど違和感がなかったものの、次の日に症状が重くなるケースもあります。

むちうちの症状が出るまでの期間には個人差があり、数週間程度してから自覚することもあります。

原因のひとつは、交通事故が起こり興奮状態になると、アドレナリンが分泌され痛みや疲れを感じにくくなることです。

アドレナリンは極度の緊張や不安などを感じることにより分泌されるため、予期せぬアクシデントに遭遇した場合は感覚が麻痺しやすくなると言われています。

精神的に落ち着いた段階で症状に気がつくのは、興奮状態が収まり本来の痛みや疲れを感じるようになるからだと考えられます。

むちうちの特徴「症状が後から現れる」「診断が難しい」

▲むちうちの特徴「症状が後から現れる」「診断が難しい」

むちうちの症状は自然治癒するのか

さまざまな原因によって起こるむちうちですが、自然治癒するのでしょうか?

軽症なら自然治癒する場合もある

むちうちの症状が軽症であれば、下記のように段階を踏んで自然治癒する可能性があります。

  1. 炎症がおさまる
  2. 損傷した組織が修復する
  3. 首や腰の負担が軽減する

炎症がおさまる

急激な外力で組織が損傷した場合、炎症反応が起きると説明しました。

一般的には3日間が症状のピークであり、時間の経過と共に組織が修復することで症状が改善していきます。

患部の安静が絶対条件なので、コルセットなどで固定すると良いでしょう。

損傷した組織が修復する

首の筋肉が損傷した場合にも炎症反応は起きます。

受傷から3日間が症状のピークになりますが、筋肉が完全に修復するまでには最低でも2週間の時間を要します。

その間は無理に首を動かさないなどの工夫が必要になります。

首の筋肉に熱感がある場合では、氷枕などで冷やすことで炎症反応を早期に改善することに繋がります。

首や腰の負担が軽減する

人間は痛みを感じると、逃避行動として姿勢を変えます。

その姿勢は痛みを回避するといった点では非常に有効ですが、首や腰の筋肉に負担がかかる場合があります。

むちうちによる痛みが軽快すると姿勢も修正されるため、腰痛などの痛みは軽減していきます。

痛みが残る場合には、無理のない範囲で体のストレッチやトレーニングが必要になります。

関連記事むちうちの正しいストレッチ方法は?治療を受ける場所や注意点も解説

症状が強い場合の自然治癒は難しい

むちうちの症状が強い場合は自然治癒が難しいことがあります。

どのような症状が、該当するのでしょうか?

首のズレによる神経の圧迫

交通事故の影響で首の背骨がずれてしまうことがあり、脊髄を直接圧迫することで神経症状が出現します。

ズレが軽度であれば、筋肉のストレッチなどによって元に戻すことも可能ですが、骨のズレが大きく、常に神経を圧迫してしまっている場合には手術が必要になります。

神経損傷

交通事故により腕や肘あたりの神経の損傷であれば、時間の経過と共に回復はしていきますが、末梢神経(腕神経叢(わんしんけいそう))が脊髄から引き抜かれてしまった場合は、予後はとても悪いです。

痺れが強く出る、肩が上がらなくなるなどの症状が出現します。

神経の回復が見込めない場合には、神経移行術などが必要になりますが、中には後遺症を残してしまうケースもあります。

不良姿勢の形成

痛みを避けてしまうことで、一時的に姿勢が悪くなる人がいます。

症状が軽症であれば痛みが引くとともに姿勢も改善していきますが、症状が長く続き姿勢自体が悪くなってしまう人がいます。

不良姿勢が続くと筋膜性の痛みが出るので、専門家による治療が必要になります。

むちうちが自然治癒する期間やセルフケア

むちうちの自然治癒が見込める期間はどのくらいなのでしょうか?
また、自然治癒を促進するためにできるセルフケアはあるのでしょうか?

自然治癒までの期間はどのくらい?

むちうちの自然治癒する期間には個人差があり、重症度によっても異なります。

一般的に首の痛みや可動域の制限が軽度のむちうちの場合は、数週間程度で症状が緩和することが多く、自然治癒による回復を期待することができます。

首の痛みや可動域の制限が中等度の場合は、治癒までに数週間から数ヶ月程度かかることがあります。

中等度の場合は医師による適切な診断のもと痛み止めや物理療法、リハビリテーションなどが必要な場合があります。

首の痛みや可動域の制限が重度の場合は、治癒までに数ヶ月から半年と長期間に渡る可能性があります。

特に上肢のしびれや感覚麻痺、運動麻痺など神経を損傷している場合には長期化する傾向にあります。

重度の場合は初期から継続的な治療・通院が必要となります。

半年が経過しても症状が残っている場合には「症状固定」といい、これ以上の症状の改善が見込めない状態で後遺障害と診断される場合があります。

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

自然治癒を促進するためにできること

むちうちの自然治癒を促進するためにはまず首の負担をできる限り減らす必要があります。

成人の頭の重さは約4〜6kgあり、うつむくだけで頭の重さの数倍の負荷が首に加わると言われています。

そのため、頭が前に出てしまうような不良姿勢をとることで首には常時大きな負担がかかり続けていることになります。

このような理由から、特に姿勢に注意する必要があります。

むちうちの急性期と慢性期における対処法の違い

▲むちうちの急性期と慢性期における対処法の違い

また、むちうちが回復する過程には「急性期」と「慢性期」の2つの時期があり、それぞれの時期に合わせた対処をすることで治癒を促進することができます。

急性期はむちうちを発症したばかりの時期であり、この時期はまず炎症を抑える必要があります。

特に患部に熱感がある場合にはアイシングをして冷やします。

入浴すると血流が良くなり炎症を活性化させる可能性があるため入浴は避ける必要があります。

急性期に対してある程度症状が落ち着いてくる時期が慢性期です。

この時期は急性期とは逆に温めて血流を促したり、無理のない範囲で首を動かしていくことで痛めた組織の修復を促すことができます。

むちうちに治療や通院は必要?

むちうちの症状を認めた場合は、以下の理由からまず医療機関の受診をおすすめします。

  1. 正確な診断名をつけるため
  2. 進行するリスクがあるため
  3. 適切な治療を受けるため

正確な診断名をつけるため

むちうちといっても、症状の原因は多岐にわたります。

そのため、原因を精査して特定するためにも、医師に診てもらうことは非常に大事です。

また、痛みが強い場合には湿布薬や痛み止めの処方により、症状を緩和して過ごせるメリットがあります。

進行するリスクがあるため

むちうちの症状には、神経の圧迫などで進行するリスクがあります。

放っておいて重症化してからでは手遅れになる場合もあります。

基本的には自然経過で良いのか、医師に判断してもらうことが必要です。

症状が進行して手術に至ってしまうケースもあるので注意しましょう。

適切な治療を受けるため

むちうちの症状にはいくつかの原因があり、原因に沿った適切なアプローチが重要となります。

自己判断では間違った対処になってしまうので、必ず医師の指示に従うようにしましょう。

関連記事追突事故で痛くなくても病院受診する理由 – 痛みが出た時へ備えよう

むちうちの治療法や通院先

では、むちうちの症状が出た場合の、具体的な治療方法や通院先について紹介していきます。

むちうち症状の治療法

  • 徒手療法
    マッサージやストレッチなど、実際に身体に触れて施術します。
    患者さまの状態に沿った治療・施術を提供することができます。
  • 物理療法
    電気療法やホットパックなどの温熱療法があります。
    設定した値の刺激を一定量与えることができ、治療者の技量に左右されないといったメリットがあります。
  • 運動療法
    エクササイズを中心として、機能不全を起こした筋肉の使い方を再学習していきます。

通院先①:整形外科(病院)

交通事故後の整形外科受診は①検査(レントゲン・MRI)②診断書の発行③痛み止めや湿布の処方等ができる

▲交通事故後の整形外科受診

整形外科では、医師による診察や薬の処方を受けられます。また、レントゲン検査といった画像診断も整形外科で行えます。

大きな病院の場合は、必要に応じてCTやMRIなどの精密検査にも対応しています。
リハビリテーション科のある病院では、理学療法士によるリハビリを実施している場合もあるので、診療科目を確認しておきましょう。

また、交通事故で必要になる機会の多い診断書も、医師のみが作成できます。

交通事故治療における診断書の内容と役割

▲交通事故治療における診断書の内容と役割

通院先②:整骨院(接骨院)

整骨院・接骨院とは、柔道整復師という国家資格者が施術を行います。

柔道整復師によって、主に手技を中心とした施術をしていきます。

土日・祝日や夜に営業している場合も多く、通院しやすいメリットがあります。

交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

▲交通事故の怪我で整骨院と整形外科を併用通院する為のステップ

交通事故のむちうち治療や通院にかかる費用や期間はどれくらい?

では、いざむちうちの治療を受けたい場合、治療や通院にかかる費用はどうなるのでしょうか?また、通院期間はどのくらいかかるのでしょうか?

治療費は加害者側の保険会社が支払う

自賠責保険とは、自動車やバイクを所有する全ての人に、加入が義務付けられている強制保険。交通事故の被害者の救済が目的で、補償対応は人身事故の被害者。そのため、物損事故あ対象外となる。また、請求できる賠償金には限度額が定められている。

▲自賠責保険とは?

交通事故によるむちうちの場合、多くのケースで自賠責保険による通院となります。

そのため、被害者であれば加害者側の任意保険会社が窓口となり、治療費や入通院費用、交通費や車の修理代の支払い等を行います。

平均的な通院や治療にかかる期間

交通事故によるむちうちの通院期間や治療にかかる期間は個人差や重症度、事故の状況によって異なります。しかし、一般的には1〜3ヶ月であり長くても6ヶ月程度になります。

首の痛みや可動域制限が重度であったり、上肢にしびれなどが生じたりするような神経が損傷している場合では、通院期間が長引く傾向にあります。

交通事故によるむちうち等の症状で整形外科と整骨院を併用通院した期間

▲交通事故によるむちうち等の症状で通院した期間の集計結果

また、通院頻度が少なかったり間が空いてしまったりすると、それだけ適切な治療が受けられていない可能性があります。そのため通院期間が長引き、通院頻度が多いほど通院期間が短くなる可能性があります。

痛みが緩和されたとしても完全に修復されていなかったり、可動域の制限が残っていたりすると症状がぶり返すこともあります。

そのため、症状が比較的早期に緩和してもできうる限り通院は継続して、しっかりと治癒させることが重要です。

まとめ

POINT ポイント まとめ

むちうちは自然治癒する場合もありますが、なかには症状が強く、自然治癒が難しい場合もあります。

症状が進行してしまうことがあるため、まずは病院の受診をおすすめします。

自分の判断で間違った対処をしてしまうと、症状が悪化してしまい、場合によっては手術に至るケースもあります。

適切な診断と専門的な治療・リハビリを受けることで、後遺症を残さずに済む場合が多いです。

まずは医師の診察を受け、指示に従うようにしましょう。

この記事を監修したのは…

国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

この記事の執筆者

理学療法士 / 河野 裕也
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

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