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交通事故の吐き気の原因はむちうち?何科に行くべき?

監修記事

世良 泰

医師(整形外科他)

交通事故の後には、むち打ちや腰痛などはっきりした症状だけではなく、吐き気や不快感などの不調が起こる場合があります。

一見、吐き気は問題がない症状に見えますが、中には何らかの病気の表れであることもあるのです。

今回は、交通事故後の吐き気の原因・症状が起きたときの受診先などを解説します。

交通事故で吐き気 原因は?

吐き気

交通事故にあうことで、身体の痛みやしびれ、頭痛やめまいといった、様々な症状が現れる可能性があります。幅広い症状の中の1つに「吐き気」があります。

交通事故による吐き気は、どういった原因があるのでしょうか?

むちうち

交通事故による症状で、多くの方にみられるのが「むちうち」です。

むちうちとは、人間の頭部を支える首が、強い衝撃でむちのようにしなることから、むちうちと呼ばれています。

「むちうち」とは?発症の原因や症状等

▲「むちうち」とは?発症の原因や症状等

正式には「頸椎捻挫(けいついねんざ)」「頚部挫傷(けいぶざしょう)」などと診断されるものです。

むちうちの症状は主に、以下の5つに分けられます。

  • 頚椎捻挫(けいついねんざ)型
  • 神経根損傷(しんけいこんそんしょう)型
  • 脊髄症状(せきずいしょうじょう)型
  • バレー・リュー症候群型
  • 脳脊髄液減少症(のうせきずいえきげんしょうしょう)

その中の「バレー・リュー症候群型」「脳脊髄液減少症」にみられる症状の1つに「吐き気」がみられます。

バレー・リュー症候群型
自律神経が損傷しています。むちうち動作が原因となりおこったと考えられる自律神経失調症状のことです。頭痛、めまい、吐き気、耳鳴り、難聴などの症状があります。

脳脊髄液減少症(のうせきずいえきげんしょうしょう)
脳髄液腔から脳髄液が漏れ、さまざまな症状がでます。慢性的な頭痛や首の痛み、めまい、耳鳴り、聴覚障害、吐き気や視力低下、全身の倦怠感などの症状があります。

頭部の外傷

交通事故により、頭部が衝撃を受けることで、怪我を負ってしまった場合もあります。

以下のような怪我の場合にも、「吐き気」の症状がみられる可能性があります。

  • 脳しんとう
  • 脳出血
  • 脳挫傷(のうざしょう)
  • 頭蓋内出血
  • 頭部打撲(皮下血腫を伴うものなど)
  • 頭部の切創

交通事故の直後には、脳が興奮状態にあることで、すぐに自覚症状が現れない場合があります。

また、吐き気の中には、頭の中に血がたまり、頭蓋内圧亢進(脳が張れた状態)をおこし、症状として吐き気や頭痛が現れる場合もあるのです。

まずはしっかりと病院を受診し、診察を受けましょう。

吐き気は何科に通院すればいい?

交通事故のあとに吐き気がある場合、事故の状況によって受診する科は異なります。

追突されて首に負荷がかかった、急ブレーキをかけた時、ハンドルに頭をぶつけた時など。

それぞれの状態に応じて受診するべきかを紹介します。

整形外科

交通事故後の整形外科受診は①検査(レントゲン・MRI)②診断書の発行③痛み止めや湿布の処方等ができる

▲交通事故後の整形外科受診

事故のエピソードが「車に乗車中、追突された」などで、むちうちが疑われる場合には、 「整形外科」を受診しましょう。

むちうちは、交通事故によって強い外力が頸部にかかり、前後にゆすられ、筋肉等に負荷がかかった状態で発症します。整形外科は、筋肉や骨を専門的に診察する診療科であり、レントゲンやMRI・CTなどの画像検査を受けられます

交通事故にあった際警察などに提出する診断書は、医師が作成するものですので、医療機関の受診をお勧めします。

脳神経外科

事故の時に「頭をぶつけてコブがある」「事故後から頭痛がする」など頭の症状がある場合は、脳神経外科を受診します。

脳神経外科では頭部CTやMRIのほか、医師の診察で神経学的な所見の有無も確認します。事故の時に頭部をぶつけ、後に頭の中に血液がたまる頭蓋内血腫では命にかかわる場合もありますので、頭部の違和感を覚えた場合はすぐに脳外科を受診しましょう。

一方、事故の時のけがで髄液漏を発症し、吐き気が起こる場合があります。

髄液漏は、脳せき髄を包む膜に穴が開き、中から髄液が漏れ出す病気で、頭痛・めまい・吐き気・真っ直ぐ歩けないなどの症状が出るのです。髄液漏の診断も脳外科で可能です。

整骨院・接骨院

整骨院・接骨院の交通事故施術とは?

▲整骨院の交通事故施術内容の種類

むちうちの症状が長引いて痛みやコリ・違和感がつらい場合、通院の選択肢として接骨院があります。

接骨院ではマッサージなどの手技や物理療法・ストレッチなどの運動療法を一人ひとりの状態に合わせて行い、症状の軽減を目指します。夜間や土日も営業しているところが多く、通院しやすいのがメリットです。

接骨院などの治療院に通いたい場合は、診断を受けた整形外科の主治医に相談しましょう。患部の状態や受傷からの経過時期によってはマッサージなどの治療により筋肉組織の炎症が悪化するからです。

なお、接骨院と整骨院の違いですが、名称の違いのみでどちらも柔道整復師が開業する治療院です。

▶︎参考:整骨院でのむちうち施術について詳しく知りたい方はこちら

診断書を取って人身事故に切り替えをしましょう

交通事故には物損事故と人身事故がありますが、事故によってけがを負った場合は人身事故としての処理が必要です。

人身事故の処理とは、警察に人身事故である旨を届けることと、保険会社に保険使用の旨を申し出ることです。人身事故扱いにするには、医療機関の診断書が必要ですので、先ずは受診をし、医師に診断書の発行の希望を伝えましょう。

交通事故治療における診断書の内容と役割

▲交通事故治療における診断書の内容と役割

診断書には、負傷した方の傷病名・受傷の状況・症状などが記載されます。この診断書は後に損害補償や休業補償にかかわってくるため非常に重要です。

警察用と保険会社用を書いてもらいますが、コストがかかり、一時的に立て替える必要があります。(医療機関によって異なる場合がり、2,000~3,000円程度)

もし、物損事故として処理されている場合は、人身事故への切り替え手続きが必要です。

吐き気が後遺症になったら慰謝料は受け取れる?

交通事故による怪我の治療を一定期間続けても、症状が緩和されない場合 に、担当医から「症状固定」であると判断されることがあります。

症状固定とは、今後治療を続けても将来的に回復が見込めない状態のことです。症状固定は医師のみが判断でき、症状固定と判断された時点で「後遺症」となります。

交通事故による怪我が後遺症となった場合、「後遺障害等級認定」を申請し、認められることで後遺症は「後遺障害」となります。

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

後遺障害の等級に応じて「後遺障害慰謝料」を受け取れます。

しかし「吐き気」の症状では後遺障害の等級に認定されません。吐き気の原因となる「むちうち」や「頭部の外傷」では、認められる場合があります。

慰謝料は損害賠償に含まれている

慰謝料とは「損害賠償」の1つに含まれます。

交通事故の損害賠償の内訳

▲交通事故の損害賠償の内訳

損害賠償とは、交通事故により被害者が被った損害を、加害者が主に金銭に換えて埋め合わせすることです。被害者が加害者に請求できる損害賠償には「積極損害」「消極損害」「慰謝料」の3つがあります。

積極損害

積極損害とは、交通事故によって実際に支払いが発生したお金のことです。治療費や通院の交通費、手術費などが含まれます。

消極損害

消極損害とは、交通事故がなければ得られるはずだったお金が損なわれた場合に発生します。消極損害には「休業損害」「逸失利益」の2つがあります。

休業損害

休業損害とは、交通事故によって仕事を休むことになり、収入が減少した場合の損害です。交通事故による減収分が補われます。

逸失利益

交通事故による怪我が後遺障害となり、思い通りに働けなくなる場合があります。逸失利益とは、交通事故にあわなければ、将来得られるはずだった収入が減少した場合の損害です。

慰謝料

慰謝料とは、交通事故によって被害者が受けた精神的苦痛を、加害者が金銭で補うものです。慰謝料には「入通院慰謝料」と、「後遺障害慰謝料」の二種類があります。

入通院慰謝料

入通院慰謝料とは、入通院することになった交通事故の被害者が負う精神的苦痛を、金銭で補うものです。

後遺障害慰謝料

「後遺障害の等級認定」を受けると、後遺障害慰謝料を請求できます。後遺障害慰謝料は、後遺障害の等級により金額が異なります。

後遺障害等級認定の申請

書類に書き込む様子

後遺障害には、1〜14級までの後遺障害等級があります。1級が最も重く、14級が最も軽い症状となります。

後遺障害等級認定の申請方法には「加害者請求」「被害者請求」の2種類があります。

加害者請求

加害者請求とは、後遺障害等級認定の手続きを、加害者側の任意保険会社に任せる方法です。被害者がするべきことは加害者側の保険会社に「後遺障害診断書」を提出するだけで、様々な手続きをする必要がありません。

ただし、加害者側の任意保険会社に手続きを任せるため、どのような手続きが行われているかを知ることはできません。

被害者請求

被害者請求とは、被害者が直接、加害者側の自賠責保険会社に後遺障害等級認定の申請を行う方法です。被害者は、申請に必要なすべての書類を自ら集め、加害者側の自賠責保険会社へ送付する必要があります。

被害者請求は、加害者請求と異なり被害者自身が申請の手続きをしなくてはなりません。そのため手間や時間がかかってしまいます。ですが、どのような手続きが行われているか把握しながら進めることができます。

ただの吐き気と思わずまずは通院しましょう

ひらめいた!

交通事故による吐き気の原因となる怪我や症状は多くあります。ただの吐き気だと思わずに、まずは病院を受診しましょう。

また、むちうちによる吐き気の場合、接骨院といったむちうち施術を得意とする通院先を選択肢に入れることも可能です。

この記事を監修したのは…

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。

池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/

日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター

TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員

AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー

この記事の執筆者

看護師 / 島谷 柚希
看護師として小児外科、整形外科、健康診断機関など医療現場などで勤務。 この経験を生かし、疾病の予防や健康増進に関する情報を発信する医療・健康ライターとしても活動をしている。

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