むちうちはどのくらいで治る?治らない場合の手続きについても解説
監修記事
森田 大介
理学療法士
交通事故でむちうちになってしまったら、一刻も早く治療を受けたいですよね。
治療を続けていくうちに、「どのくらいの期間で治るの?」と疑問に思われる方もいるのではないでしょうか。怪我の状態がなかなか良くならない場合、「ここで治療を受け続けていてもいいの?」という不安も生まれますよね。
今回は、
- むちうちが起こる原因
- むちうちの治療先
- むちうちの治療期間
- むちうちの治療にかかる費用
などについて、詳しく述べていきます。
交通事故の被害にあうと、気が動転してしまうかと思います。
この記事を読んで、交通事故に対する不安が少しでも軽減されれば幸いです。
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目次
むちうちとは
むちうちは、交通事故やスポーツの衝撃で、首に不自然な力が加わり、筋肉や神経が損傷することで起こる怪我の総称です。首に力が加わる際に、首が鞭(むち)のようにしなることから、「むちうち」と呼ばれています。
一般的にはむちうちと呼ばれていますが、正式名称は「頚椎捻挫(けいついねんざ)」や「頚部挫傷(けいぶざしょう)」といいます。
むちうちには、いくつかの種類があり、それぞれで症状が変わります。
- 頚椎捻挫型
- バレー・ルー症状型
- 神経根症状型
- 脊髄症状型
頚椎捻挫は、いわゆる「首の捻挫」です。むちうちになった7~8割の人が、頚椎捻挫型になるといわれています。
脊髄症状型は、むちうちの種類の中でも症状が重く、後遺症になってしまう可能性が高いといわれています。
むちうちはどれくらいで治るか
むちうちの治療にかかるおおよその期間はありますが、「この期間治療を続けると絶対に治ります」と断言はできません。
大切なのは、治療を怠らずにしっかりと通院をし続けることです。
むちうちの治療期間
むちうちの治療には、一般的には3ヶ月、怪我の状態によって6ヶ月〜1年以上かかる場合もあります。
むちうちの治療期間が長引く要因は、いくつかあります。まず、むちうちの症状は個人差があり、怪我の程度や治癒力によって異なります。
通常、軽症のむちうちは、症状が比較的軽く、数週間から数か月で症状が改善し、治癒することが多いです。そのため、早期に治癒するでしょう。
一方、重症の場合は、治癒に時間がかかる傾向があります。
例えば頚椎捻挫や神経根症状などの症状が現れる場合、治療期間は1年以上に及ぶこともあります。このような場合は、専門的な治療やリハビリテーションが必要です。
また、むちうちは早期に適切な治療を受けなかった場合や、治療を怠ったり中断したりすると、症状が悪化し、治癒に時間がかかることがあります。
さらに、痛みやしびれだけでなく、頭痛やめまい、集中力の低下などの症状も起こることがあります。これらの症状が合併すると、治療が複雑化し、治癒に時間がかかる可能性が高くなります。
むちうちの通院頻度
むちうちの治療では、通院の頻度も重要です。通常、むちうちの通院は週2〜3回(月10日程度)、3〜6ヶ月程度かかります。
ただし、個人差や症状の程度によって異なりますので、必ずしもこの期間が全てに当てはまるわけではありません。医師の指示に従い、適切な通院頻度を保ちしましょう。
ただし、通院頻度が少なすぎると保険会社から治療費が打ち切られやすくなります。
これは「もう治っているのではないか?」と判断されるためです。
逆に、毎日通院するなど通院頻度が高すぎる場合は、不正請求の疑いなどにより保険会社から打ち切りを受ける可能性もあります。
そのため、通院頻度には注意が必要でしょう。
関連記事交通事故で病院へ通うペースは? 通院頻度と治療費打ち切りの関係とは
むちうちの通院先は?
むちうちの主な通院先は2つ。
- 整形外科
- 整骨院
それぞれの治療先で、受けられる治療内容が変わります。一つひとつ詳しく見ていきましょう。
整形外科
整形外科では、レントゲンやMRIの検査機器で、骨に異常がないかを精密検査してもらうことができます。治療を受けても痛みが引かない場合は、痛み止めや湿布の処方もしてもらえます。
整形外科には、医師が在籍していて、診断書を作成することができます。
診断書は、「この怪我は交通事故による怪我です」と証明するための、大切な書類です。保険金請求の際や、人身事故への切り替えの際にも必要になってきます。
交通事故にあったら、まず整形外科を受診し、診断書を取得しましょう。
整骨院
整骨院では、柔道整復師が施術を行います。
柔道整復師とは、「非観血的療法(ひかんけつてきりょうほう)」という、手術をせずに施術を行う専門家です。
整骨院では、整復法、固定法、後療法という3つの手技を用いて施術を行います。
むちうちの症状は、レントゲンやMRIには写らない場合もあり、整形外科では異常なしと判断されてしまう場合があります。
整骨院では、体に直接触れて施術を行うため、整形外科では見つけられなかった症状を見つけてくれる場合もあります。
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治療費は誰が負担するの?
「むちうちの治療費はどうなるのか」これは交通事故の被害者が気になるポイントの1つではないでしょうか。
ここでは、むちうちの治療費について詳しく説明していきます。
被害者は損害賠償を請求できる
交通事故の被害者は、「交通事故にあってしまった」「これからどうすればいいんだ…」という悲しみや不安を負うことになります。また、怪我を負ってしまったら、入通院のための費用が発生します。
このような損害は、加害者に対して損害賠償として請求することができます。
損害賠償とは、交通事故によって被害者が受けた様々な損害の埋め合わせを、加害者が行うことです。
請求できる損害賠償は3種類
被害者が請求できる損害賠償は、3つ。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
それぞれの内容を、詳しく見ていきましょう。
積極損害
積極損害とは、交通事故にあったことによって、出費を余儀なくされた場合に発生する損害のことです。
積極損害として請求できる主な費用は、以下の通りです。
- 治療費
- 診察費
- 入院費
- 通院交通費
- 付添看護費
- 装具・器具などの購入費
消極損害
消極損害とは、交通事故によって仕事を休まなければいけなくなり、本来得られるはずであった収入が減少した場合に発生する損害のことです。
消極損害として請求できるものは、2つ。
- 休業損害
- 逸失利益
交通事故による怪我の治療をするため、仕事を休まなければいけなくなる場合があります。休業損害では、入通院のために仕事を休んだ場合の、減収分が補償されます。
交通事故の怪我が後遺障害になると、思い通りに働くことができなくなり、以前に比べて労働能力が減少することがあります。
逸失利益は、後遺障害によって労働能力が減少し、本来得られるはずであった収入が得られなくなった場合の減収分のことをいいます。
慰謝料
慰謝料とは、交通事故にあったことによって被害者が受けた精神的苦痛を、金銭で補ったものです。
請求できる慰謝料は、2種類。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
交通事故で怪我を負うと、被害者は治療のために入通院を強いられることになります。入通院慰謝料は、入通院をする際に被害者が感じた精神的苦痛を、金銭で補ったものです。
交通事故の怪我が後遺障害になると「後遺障害になってしまった…」という悲しみを負わなければいけません。後遺障害慰謝料は、交通事故による怪我が後遺障害になったことで、被害者が感じた精神的苦痛を、金銭で補ったものです。
慰謝料の計算における3つの基準
慰謝料の計算を行う際、3つの基準が使われます。
- 自賠責基準
- 任意保険基準
- 弁護士基準
一つひとつの基準について、詳しく解説していきます。
自賠責基準
自賠責保険とは、自動車を所有するすべての運転者に、加入が義務付けられている保険です。
通院1日につき4,300円の慰謝料が発生し、限度額は120万円となっています。
自賠責基準は、交通事故の被害者が受けた損害に対して、最低限の補償を行うことが目的です。そのため、被害者に支払われる慰謝料の金額は、3つの基準の中で最も低い金額になっています。
ここでは、自賠責基準を使った入通院慰謝料の計算方法をご紹介します。
入通院慰謝料の計算を行うには、まず
- 治療期間 入院期間+通院期間
- 実通院日数 (入院期間+実通院日数)×2
上記2つの計算を行います。
実通院日数とは、通院期間のうち実際に通院した日数のことです。
次に、計算結果が少ない数の方に4,300円をかけます。
その金額が、自賠責基準での被害者に支払われる入通院慰謝料となります。
任意保険基準
任意保険とは、運転者の任意で加入を決めることができる保険です。自賠責保険の限度額を超えた場合、不足分は任意保険によって補われます。
任意保険基準は、各保険会社で基準が異なっているため、ほとんど公表されていません。一般的には、自賠責基準より高い金額になるといわれています。
弁護士基準
弁護士基準は、交通事故における過去の判例を参考に、算出されています。「赤い本」という、損害賠償について詳しく記載されている書籍で確認することができます。
被害者に支払われる慰謝料の金額は、3つの基準の中で最も高い金額になるといわれています。
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むちうちが治らない場合
一定期間むちうちの治療を続けても、症状が良くならない場合、医師に「症状固定です」と判断される場合があります。
症状固定とは、これ以上治療を続けても、怪我の状態が改善しない状態のことのことをいいます。
症状固定と判断された時点で、その怪我は後遺症となります。後遺症になると、これまで支払われていた慰謝料は打ち切られる場合があります。
後遺症になった後も慰謝料を受け取りたい場合は、後遺症が後遺障害だと認められる必要があります。後遺障害と認められると、被害者は後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
治療が長くかかる場合は、保険会社から打ち切りの打診も
むちうちの治療を行っているにも関わらず、保険会社に治療費の打ち切りを打診されることもあります。
そもそも治療費の打ち切りとは、保険会社が独自に判断して、被害者に対して支払っていた治療費をやめてしまうことです。
では、治療費の打ち切りを打診されてしまった場合、どのように対処するべきなのでしょうか。
- 保険会社と交渉する
- 健康保険を使って通院する
- 弁護士に相談する
①保険会社と交渉する
「治療費の支払いを継続してほしい」と保険会社を説得する方法です。
保険会社に治療費の支払いを継続してもらうために説得する場合、医師の見解を伝えて、治療の継続が必要だということを説明しなくてはいけません。
その際には、どの程度の治療期間が必要なのか(例:あと○ヶ月は治療が必要です。)を具体的に提示するようにすると、保険会社も納得できるはずです。
②健康保険を使って通院する
保険会社に治療費の打ち切られてしまっても、自費で支払った分は示談交渉で加害者側の保険会社に請求することも可能です。
自費で支払う場合、被害者にとっては大きな負担がかかってしまいます。負担を減らすためには健康保険を使い、治療費を3割負担に抑えて通院するのがよいでしょう。
その後、示談交渉で加害者側の保険会社に請求することができるので、自費で支払った分の領収証は必ず保管しておきましょう。
③弁護士に相談する
弁護士の中には、法律の知識だけでなく、交通事故に関する知識や経験がある方もいます。そのため、説得力のある根拠を述べ、保険会社を説得することができます。
ただし、弁護士に相談したり、依頼をする場合は弁護士費用が必要になります。弁護士費用は、弁護士特約を使えば、保険会社がその費用を一部負担してくれます。
弁護士特約は、自身の加入している保険についていることもあるので、保険会社に問い合わせてみるのがよいでしょう。
後遺障害等級認定を申請
後遺障害には、1級から14級までの等級があります。この等級を認められるためには、後遺障害等級認定の申請を行う必要があります。
後遺障害等級認定の申請をする前に、申請準備をしましょう。
後遺障害等級認定の申請準備で被害者がすべきことは、2つ。
- 症状固定まで通院を続ける
- 後遺障害診断書を取得する
後遺障害等級が認定されるためには、まず症状固定まで通院を続けることが大切です。
症状固定の判断ができるのは、医師のみです。保険会社から症状固定を言い渡される場合もありますが、痛みが残っている場合は、医師と相談をして通院を続けましょう。
症状固定と判断されたタイミングで、医師に後遺障害診断書の作成を依頼しましょう。
後遺障害診断書は、後遺障害等級が認定されるための、大切な資料といえます。被害者は、医師に自覚症状を正確に伝え、納得のいく後遺障害診断書を取得するようにしましょう。
その後後遺障害等級認定の申請準備が整ったら、申請をしましょう。
後遺障害等級認定の申請方法は、2つ。
- 加害者請求
- 被害者請求
加害者請求は、加害者側の任意保険会社に、後遺障害等級認定の申請手続きを委託する方法です。
被害者請求は、被害者自らが、加害者側の自賠責保険会社に直接、後遺障害等級認定の申請を行う方法です。
むちうちの治療期間についてまとめ
交通事故によるむちうちの治療期間は、結果的には人それぞれです。一般的には3ヶ月といわれていますが、6ヶ月~1年の期間を要する場合もあります。
むちうちの症状が軽い場合、通院が面倒になるかと思いますが、通院を怠ることで治療期間が長引いてしまうこともあります。
最低でも2日に1回は通院を続けるようにしましょう。
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この記事を監修したのは…
理学療法士として回復期総合病院に勤務。転倒後高齢者・脳血管疾患など様々な疾患に対するリハビリテーションを経験。
現在は、外来リハビリテーションにて交通外傷や腰痛などの治療に従事。
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