むちうち症の通院期間はいつまで?交通事故でもらえる慰謝料とは
監修記事
島谷 柚希
看護師
交通事故による怪我で、最も負う可能性が高いといわれている「むちうち」。
交通事故でむちうちになった場合、いつまで通院するのか、後遺症を残さないためにはどうすれば良いのか、気になる方も多いかと思います。また、通院期間や日数によって、もらえる慰謝料の金額も変わってきます。
今回は、交通事故によるむちうちの通院期間や慰謝料などについて解説します。
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目次
誰にでも潜む「交通事故」の危険
交通事故による怪我や症状は、上記のアンケート結果からも分かる通り多岐にわたります。しかし、その中でも特に多いとされているのが「むちうち」です。
交通事故でむちうちになった場合、いつまで通院するのか、通院日数は慰謝料と関係あるのか、それによってもらえる慰謝料の金額や後遺障害認定について詳しく述べていきます。
そもそも「むちうち」はどんな症状?
むちうちとは、正式名称を「頚椎捻挫(けいついねんざ)」「頚部挫傷(けいぶざしょう)」「外傷性頚部症候群(がいしょうせいけいぶしょうこうぐん)」といいます。
首が何らかの衝撃によって、鞭(ムチ)のようにしなったために頚椎周囲の筋御部分断裂や筋緊張が起こり、痛みや吐き気などを引き起こす症状のことです。交通事故による追突や衝突、急停車などで起きることが多く、さまざまな症状を引き起こします。
代表的な症状は首や肩の痛みで、その他にも頭痛や腰痛、吐き気や手足のしびれなど、症状はさまざまあります。
医師監修むちうちはどんな症状?治療方法や完治までにかかる時間について解説
むちうちと診断されたら?
むちうちと診断された場合、診断書の取得だけで満足せずに、定期的に通院をしましょう。まれに、あまり痛みがないからといって通院しなくなる方が見受けられます。
しかし、むちうちは交通事故から3日以上経過してから症状がひどくなる場合もあります。なぜかというと、交通事故直後は興奮状態にあり、痛みになかなか気がつかないからです。普段の生活に戻り精神的に安定すると、痛みが出てくるというのはよくあることです。
診断書の取得だけではなく、通院を続けることがのちの示談交渉の際にも大切な記録となります。面倒だと思わずに、自分の体のために通院しましょう。
医師監修むちうちの症状が出るまでの期間は?すぐに症状が出ない理由も解説
むちうちの通院先と治療法
首周囲の痛みや違和感がある場合、どこ(何科の病院)へ行くのか迷う方もいるようです。第一選択は整形外科ですが、急性期の症状が落ち着いたのちに整骨院に通う方法もあります。
それぞれの治療(施術)内容について述べていきます。
1.整形外科
医師免許保有者が診察し、薬・湿布の処方、必要に応じてリハビリの指示を出します。「自分が今どんな状態なのか」を知るための検査(レントゲンやMRIなど)を扱うこともできます。診断をするためにも、交通事故後は必ず行くべき医療機関です。
2.整骨院
整骨院では、国家資格の1つである柔道整復師が施術を行います。柔道整復師には、スポーツトレーナーとして活躍する方も多いようです。整骨院での施術費用は、損害賠償として請求できる適用範囲内にあります。
整骨院では、痛みの程度を確認することはもちろんのこと、関節可動域(首がどこまで動かすことができるのかの範囲)の確認や後療法の手技による施術を行います。
また、自宅でできるストレッチなど運動のアドバイスを通じて、後遺症が残らないようにサポートしてもらうことも可能です。
関連記事交通事故の治療を整骨院で受ける|施術内容と保険適用について解説
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むちうちの通院期間はいつまで?
むちうちと診断された場合、「どのくらいの頻度」で「いつまで通院」すれば症状がよくなるのかも気になるところですよね。ここでは「通院頻度」と「通院期間(治療期間)」について述べていきます。
むちうちと診断された場合の「通院頻度」と「通院期間(治療期間)」は、以下の通りです。
- 通院頻度:最低でも「週1回」
- 通院期間:一般的に「1〜3ヶ月」(長くても6ヶ月)
通院頻度や通院期間は、交通事故の状況や怪我の度合いによって変動するものです。そのため、あくまで目安として覚えておいてください。
また、通院頻度は保険会社からの治療費の打ち切りにもつながります。医師の指示通りに通院するようにしましょう。
関連記事むちうちの治療期間はいつまで?慰謝料打ち切りにならないための通院頻度とは
むちうちが後遺症になってしまうことも…
定期的な通院を怠ってしまうと、場合によってはむちうちが後遺症になってしまうこともあります。
むちうちは適切に診察を受け、経過観察をすれば、ほとんどの症状は改善していく可能性が高いです。ただ、怪我が治ったかどうかの判定を、痛みがあるかないかなどの表面上の症状のみで判断すべきではありません。後々痛みが再発したり、後遺症として残ってしまうことがあるからです。
また、むちうちの初期症状が軽度で、事故の程度が軽いからと放置してしまった場合でも、後遺症になってしまうことがあります。後遺症を残さずにむちうちを緩和させるには、症状の判断を専門家に任せることが大切です。
関連記事むちうちを後遺症にしない|症状や治療と後遺障害認定・慰謝料も解説
むちうちで慰謝料はもらえる?
交通事故の被害にあい、怪我人が出た場合は、物損事故(車や物が壊れる事故)ではなく、人身事故の扱いになります。物損事故の場合、被害者は慰謝料を受け取れません。しかし、人身事故の場合、被害者は慰謝料を受け取れます。
慰謝料とは?
「慰謝料」は、被害者が交通事故にあって、怪我の痛みや精神的苦痛、万が一障害が残ってしまった時の将来的な治療費などを金銭的に評価したものです。
交通事故の被害にあってしまった場合、被害者は加害者に損害賠償を請求できます。加害者が被害者に与えた損害を、金銭的に填補することが義務付けられているからです。
この「損害賠償(そんがいばいしょう)」の中に含まれるものの一つが「慰謝料」です。
慰謝料には種類がある
よく耳にする「慰謝料」ですが、以下のような種類があります。
- 入通院慰謝料(傷害慰謝料)
入院慰謝料(損害慰謝料)は、交通事故で怪我をしてしまい痛い思いをしたり、病院へ入院したり通院したりする精神的なショックを対価で表し、鎮めようとしたものです。 - 後遺障害慰謝料
懸命に治療を続けたにも関わらず症状がよくならず、医師が「症状固定」と判断したあと障害が残ってしまい、後遺症として残ってしまう精神的ショックを対価で評価したものです。これを後遺障害認定と言います。後遺障害を認定されると、後遺障害慰謝料を請求できます。
また、後述もしますが、後遺障害等級認定には決められた等級があり、決められた等級によって、支払われる金額が異なります。
むちうちの慰謝料の相場は?
慰謝料と一口にいっても、どこに請求するかで受け取れる金額が変わってくることもあります。
慰謝料の基準は主に3つあり、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準となります。それぞれの基準の相場について述べていきます。
3つの基準の使い分け方は?
慰謝料の計算には、自賠責保険基準・任意保険基準・弁護士基準と3つの基準がありますが、どのように使い分けるのでしょうか。
3つの基準の使い分け方は、以下の通りです。
- 自賠責基準
慰謝料・治療費・休業損害などをあわせた賠償金の支払総額が120万円以下の場合に適用される。 - 任意保険基準
被害者に支払うべき賠償金の総額が120万円を超える場合、加害者の保険から補填する。 - 弁護士基準
弁護士が保険会社と交渉する場合に適用される。また、双方が示談に納得が行かず裁判になる場合に適用される。
自賠責基準の場合のむちうち相場
自賠責保険基準は『1日あたり4,300円』、限度額は総額120万円(慰謝料を含むすべての賠償金)と決められています。
(※この120万円の限度額を超えてしまった場合には、任意保険の基準で慰謝料を算出することになります。)
計算方法は、実通院日数×2と、通院期間で、どちらか少ない方の日数をもとに4300円掛けて計算します。
- (例)むちうちで2ヶ月の間に20日通院した場合
実通院日数の2倍である40日を基準にして計算すると、入通院慰謝料の金額は、
【4300円×40日=17万2000円】が相場となります。
任意保険基準の場合のむちうち相場
これは、事故の状況や怪我の度合いによっても変動があります。各保険会社で、基準がことなるようです。
大まかな慰謝料基準は、入院していた期間(1ヶ月30日算出)と、通院していた期間(1ヶ月30日算出)によって計算されます。
- (例)入院の場合:252,000円 通院の場合:126,000円
詳しくは加害者側の保険会社にお尋ねください。
弁護士基準の場合のむちうち相場
弁護士基準の場合、治療期間2ヶ月の通院の場合には、36万円~52万円程度が相場となるようです。
弁護士基準を使う場合、弁護士に依頼をしなくてならず、弁護士費用がかかってしまいます。しかし、自身の加入している保険に弁護士特約がついているのであれば、弁護士費用を保険会社が負担してくれます。
一度、自身の加入している保険会社に確認してみるのがよいでしょう。
むちうちの治療費(慰謝料)を打ちきられることも…
加害者側の保険会社が治療費を支払ってくれるのには、期限があります。一つは、被害者の怪我が完治(治癒)したとき。もう一つは、被害者の症状がよくならず、症状固定と医師に診断されたときです。
しかし、これ以外にも、保険会社が「治療費を打ち切り」にしてくるパターンがあります。
保険会社が治療費の打ち切りをする原因3つ
保険会社も、客観的な立場で判断しなければなりませんので、痛いのかそうでないのかわからない人に、延々と治療費を支払ってくれる訳ではありません。保険会社が治療費を打ち切りにするのは、3つのパターンがあります。
通院頻度が低い
前述しましたが、医師の指示通りに通院しましょう。目安は週に1~2回です。
1ヶ月に1回、隔週など、お仕事もあるのでなかなか難しいかもしれませんが、あまり通院を続けないと保険会社から「本当は痛くないのでは?」と思われてしまう可能性があります。
漫然治療
その怪我にあまり関係のない治療や施術ばかりやっていると、これも通院頻度が低い場合と同様に「あまり痛くないのでは?」と思われる可能性があります。また、炎症が抑えられ、痛みが減ってくると、マッサージや整体だけでは「すでに回復した」と思われるかもしれません。
自分が今受けている治療や施術が、何のために行っているものかを確認する必要があります。
関連記事漫然治療とは?交通事故の治療費が打ち切りにならないためにできること
保険会社に感情的にあたる
感情的に接し、あたると、賠償金を多くもらえると思う方も多いようですが、そうではありません。論理的に、根拠に基づいて判断をしています。感情的になって、話の通じない被害者では、すんなりと示談に進めません。
納得できない示談になってしまったとき、異議申し立てをすることは可能です。ご自身も冷静な判断は忘れずに。
保険会社から治療費を打ち切られないようにするには
上記で述べたように、保険会社から治療費を打ち切られてしまう理由は様々です。それでは、治療費を打ち切られないようにするには、どのような通院の仕方や治療の受け方をすればよいのでしょうか。
整形外科での検査を定期的に受けながら症状の経過を追い、整骨院での施術を受けるとよいでしょう。整骨院では、患部を温める罨法(あんぽう)や後療法、電気療法の施術を受けることがおすすめです。
痛みがある場合でも、加害者側の保険会社が治療費を出し続けてくれるわけではありません。後遺症を残さず、早期に症状を緩和させるためにも、定期的な通院を続けることが大切です。
関連記事保険会社が治療の打ち切りを連絡してきたら?理由と対処法を解説
症状固定後も保険会社に治療費を請求できる?
症状固定後に加害者側の保険会社へ治療費の請求をすることは難しいと言えます。しかし「後遺障害等級認定」を受けられない場合に、今後も自分で治療費を払って行かなければならないのは、金銭的にも精神的にも負担が大きいはずです。
もし症状がつらく通院を余儀なくされたら、しばらくは自分の健康保険を使用して、通院を続けることをおすすめします。場合によっては「打ち切られた後の治療費を自分の健康保険で支払い、後から示談金として一括で請求する」ことができるからです。
関連記事むちうちの症状固定とは?期間の目安や受け取れるお金の変化まで解説
むちうちの後遺障害は認められないことがある
医師から症状固定と判断されて、誰しもが「後遺障害等級認定」を受けられると思っているかもしれませんが、後遺障害等級認定を受けられるのはまれなケースです。
しっかりと通院をしていても「後遺障害等級認定」を受けられるのは、医師から後遺障害であると診断を受けた人のみです。つまり、証明できるものを用意できなければ、症状固定後の治療費は自己負担となります。
むちうち後遺障害慰謝料を得る3つのポイント
後遺障害慰謝料を請求する場合には、もちろん「後遺障害認定」を受けることが必須です。むちうちの後遺障害等級認定のポイントを3つにまとめました。
1.後遺障害診断書を書いてもらうこと
医師から症状固定と診断されたのち「後遺障害診断書」という物を発行してもらいます。この「後遺障害診断書」がなければ、後遺障害認定はできません。
2.むちうちの診断に必要な検査
むちうちの症状は、レントゲンに映らないものです。むちうちの診断には以下のような検査があります。事故のエピソードや病態など必要に応じて医師の判断で行われます。
- SLRテスト:椎間孔を圧迫して痛みが発生するかどうかを確認することにより、神経根症を確認するテスト
- 徒手筋力テスト:筋力の程度を調べるテスト(整骨院などでも)
- 知覚テスト:皮膚の触覚や痛覚などの知覚の程度を調べるテスト
- 腱反射テスト:腱などの神経該当箇所を叩いて反射の程度を確認する方法で、脊髄や神経の異常を調べるテスト
3.むちうちの後遺障害等級認定
交通事故でむちうちになった場合の後遺障害認定等級は、12〜14等級が一般的なようです(交通事故病院編集部調べ)。
14等級の場合では、以下のことが認定の必須条件となるようです。
- 交通事故当初から病院へ通院継続している
- 事故当初からの症状の訴えが、連続性・一貫性をもっている
- 症状がそれなりに重篤で、常時性が認められる
関連記事むちうちで後遺障害認定を受けられる確率は?認定率を高める対策も解説
むちうちの通院についてのまとめ
むちうちの通院期間は一般的に1〜3ヶ月、長くても6ヶ月ほどです。忙しくてなかなか病院に通えないという場合でも、通院日数が一ヶ月あたり10日未満であると相場よりも慰謝料が減額されてしまいます。
必要な治療は、仕事を休んででも受けましょう。仕事を休んだ分の休業損害についてはきちんと保険会社に請求し、自分の体を大切にしてください。
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この記事を監修したのは…
看護師として小児外科、整形外科、健康診断機関など医療現場などで勤務。
この経験を生かし、疾病の予防や健康増進に関する情報を発信する医療・健康ライターとしても活動をしている。
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