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むちうちが疑われる子どもにみられる症状や治療の進め方を解説

監修記事

甲斐沼 孟

医師(外科・整形外科他)

交通事故やスポーツで首に強い力が加わることで起こるむちうち。特に子どものむちうちは深刻な症状になる場合があります。

本記事では子どものむちうちについて、適切な対処法や年齢ごとの治療の進め方を解説します。

子どもでもむちうちになる可能性はある

結論、子どもでもむちうちになる可能性はあります。むしろ身体が未発達なために大人よりも損傷しやすい可能性も考えられます。

「子どもの身体はしなやかだから、むちうちにはならないのでは?」と考える方もいるでしょう。実際に、子どもの筋肉や靭帯は大人よりも柔軟性が高いです。しかし、外から強い力が加われば、首周囲の組織が損傷する可能性は十分にあります。

ただ、子どものむちうちは大人よりも早期発見が難しく、むちうちになっていることに気づかないケースも少なくありません。大人と比べて自然治癒力は高いですが、むちうちの放置は非常にリスクがあるため、交通事故後はすぐに医療機関を受診するなど、なるべく早い対処が求められます。

子どもにむちうちが疑われる時の対処法

子どもがむちうちかもしれない状況の中、冷静でいることは難しいものです。しかし、そのようなときこそ一度落ち着き、適切な対処を行うことが大切になります。

  • 患部が熱を帯びている場合は入浴を避けて冷やす
  • 早いタイミングで医療機関を受診させる
  • 日常生活に支障が出ていないかを確認する

上記内容を基に対処し、子どものむちうちを悪化させないようにしましょう。

患部が熱を帯びている場合は入浴を避けて冷やす

患部に触れた際、他の部位と比べて熱を帯びている場合は、炎症が起きている可能性が高いです。炎症が起きている際は、身体を温めてはいけません。炎症を促し、むちうちの症状悪化につながってしまいます。

特に、誤って行いがちなのが「入浴」です。首を直接温めるのはもちろんですが、身体を温めることも全体の血流が良くなり炎症が助長されてしまうため、入浴は避けましょう。

冷やす際は、氷を入れたビニール袋や湿布で冷やすと良いでしょう。

長時間冷やすと凍傷になる可能性があるため、冷やしすぎには注意が必要です。

炎症が起きているかどうかの判断が難しい場合は、温めることも冷やすことも避けるのが無難です。医療機関を受診した際に医師へ相談し、指示を仰ぎましょう。

早いタイミングで医療機関を受診させる

子どもに限らず、むちうちが疑われる際はすぐに医療機関を受診しましょう。

子どもにむちうちの可能性がある場合、自分の身に起きたことではないため状態の確認が難しい特徴があります。

自分で見極めようとせず、専門家である医師の判断を仰いでください。

また、むちうちの症状がすぐに出るとは限りません。子どもに症状が見られなくても、早めに医療機関を受診することが大切です。

受診する医療機関は、整形外科をおすすめします。整形外科の受診で、医師による診察をはじめ、MRIや血液検査など必要に応じた適切な検査を受けられます。検査でむちうちとは別の原因が判明した場合に対応できるのも安心できるポイントです。

POINT

交通事故とむちうちの関係性を証明

また、医療機関の受診は、交通事故とむちうちの関係性を証明するためにも重要です。被害者側の場合は補償を受けられる可能性があるため、子どものむちうち治療に必要な治療費に充てることができます。

日常生活に支障が出ていないか確認する

子どもは自身の症状を、具体的かつ上手く伝えることができない場合がほとんどです。むちうちに気づかず放置すると、将来的な骨や関節のゆがみにつながったり、慢性的な肩こりや頭痛などの症状を抱えてしまう恐れもあります。

子どもがさまざまなコミュニティに属していて一緒に過ごせる時間が少ない場合は特に、日常生活の中で注意深く観察しましょう。

また、何らかの異常が見られたときには、記録しておくことをおすすめします。日時や具体的な内容を記録することで、受診したときに医師に伝えることができ、子どものむちうち治療に役立ちます。

子どものむちうちはどのような症状が出る?

子どもと大人で、むちうちの症状は変わらず、頭痛、腕や手のしびれ、眠れなくなるといった症状が現れます。

どのような症状が出るかを把握しておくことで、子どもの体調不良に気づき、早期にむちうち治療を開始できるよう確認しておきましょう。

頭痛

むちうちの頭痛は、首周囲の筋肉の緊張が大きな原因として考えられます。

首周囲の筋肉が緊張すると、神経の圧迫や脳への血流を妨げるリスクが生じます。

これらにより生じるのが緊張性頭痛です。緊張性頭痛は、頭をベルトで締め付けられたような痛みがする頭痛で、常に鈍い痛みが続くことが特徴です。低気圧へと変化する雨の日や曇りの日などに、症状が出やすい傾向にあります。

腕や手のしびれ

筋肉の緊張で神経が圧迫され、腕や手にしびれを生じる場合があります。筋肉の緊張が根本の原因であるため、むちうちによる筋肉の異常を治さない限り、症状の改善は見込めません。腕や手のしびれは自然治癒するものではないのです。

「子どもの自然治癒力は高いからいつか治るだろう」と放置しておくと、さらにしびれが強くなり最悪の場合、後遺症として残る可能性があります。

早期に医療機関を受診し、むちうちを根本から治療することが大切です。

眠れなくなる

子どもがむちうちで「眠れない」という症状が見られる場合、2つの原因が考えられます。

  • 痛みや腕のしびれによって眠れない
  • むちうちになった原因による精神的ショックで眠れない

特に子どもが交通事故でむちうちになった場合、与えられた精神的ストレスは非常に大きいと考えられます。不眠は他の体調不良を引き起こす原因にもなります。

子どもの身体的・精神的ストレスが大きくならないよう、日常生活での配慮が必要です。

子どものむちうち治療における年齢別の注意点

子どものむちうちの治療では、年齢別に注意すべきことがあります。

注意点を守らなければ治療の妨げになったり、むちうちの悪化につながったりするため、きちんと把握しておきましょう。

未就学児

0〜5歳の未就学児は、言葉で自分の症状を上手く伝えられません

体調不良に気づくためには、普段と異なる行動がないかを観察することが重要になります。例えば、以下のような様子が挙げられます。

  • いつもより首を動かさない
  • 元気がない
  • 食欲がない

また、未就学児の多くは非常に活発で、じっとしておくことが苦手なため、無意識に首を動かしてしまうことも多いでしょう。首が動かないように頚椎カラーを装着することを検討しても良いかもしれません。ただし実際に装着する場合は、医師に相談してからにしましょう。

6〜12歳の子どもにはなるべく運動を控えさせ経過観察をする

6〜12歳の子どもは、症状を伝えられるようになっているでしょう。ただし、「どのようなときにどのような症状が出る」など、具体的に上手く伝えることはまだ困難だということも少なくありません。

このような場合、会話の中でできるだけ上手く引き出すことが大切です。症状について聞いた後は、安静にするよう子どもに伝えてみましょう。

しかし、6歳から12歳の子どもは運動に対する意欲が高い傾向にあります。中でも6歳程度の子どもにおとなしくするよう伝えても、なかなか受け入れてもらえないことも多いです。代替手段として、お絵かきやエンタメ作品の鑑賞などを提案すると、ストレスを減らしながら安静にしてもらえるでしょう。

13〜18歳程度の子は家庭外のコミュニティ活動に注意させる

13〜18歳の子どもは、部活動をはじめ、家庭外でのコミュニティ活動が多くなる時期です。目が届かないところでの活動が増えるため、心配であれば学校や部活動の先生等に、無理をさせないようあらかじめ伝えておくと安心できるでしょう。

何らかの異変があった場合には、すぐに連絡を取りあえるようにお願いしておくことも忘れないようにしましょう。

関連記事交通事故の検査は念のため受けた方がいい?検査費用や慰謝料も解説

子どものむちうち治療の特徴や進め方

子どもと大人の治療の進め方は同じになります。初期は安静にさせ、並行してアイシングや頚椎カラーでの固定を行い、症状が緩和してきたら理学療法などで徐々に動かします。ここからは、詳しい治療の進め方について解説します。

無理に動かさない

むちうちを起こしたばかりの時期は、安静にするのが第一です。

前述の通り、大人よりも活発な子どもは首を動かしてしまいやすいです。できるだけ安静にしてもらえるよう、日常生活での配慮や頚椎カラーを使用するといった工夫が必要になります。

また、子どものむちうちを早く治したいと思い、自宅で無理に首を動かすなどはしてはいけません。良かれと思って行ったストレッチやマッサージが逆効果になることがあるためです。特に炎症が起きている場合は、炎症を促してむちうちの治癒を妨げてしまうため注意しましょう。

治癒を進める

子どもは柔軟な組織をもつため大人よりも回復は早い傾向にあります。

むちうちの治癒をサポートするために、理学療法や薬物療法を行ったり整骨院を活用すると良いでしょう。

理学療法は、国家資格を有する理学療法士によって行われる治療で、物理療法や徒手療法などを行います。炎症が落ち着いた頃に積極的な理学療法が行われるのが一般的です。

また、薬物療法では主に痛みの緩和を目的にします。痛みの継続は子どもの精神に悪影響を及ぼします。さらに、痛みが慢性化することでむちうちが治癒しても、神経が過敏になって痛みが取り除けない状況に陥る場合があるため、薬剤による痛みのコントロールは重要です。

処方される薬剤は、必要に応じて異なりますが、痛みの緩和に用いられる薬剤としては、ロキソニンや非ステロイド性抗炎症薬が含まれた湿布が多いです。

また、整形外科で初診が済んでいる場合には、整骨院で施術を受ける形で治癒を促すのも良いでしょう。

本当に完治しているか心配な場合はセカンドオピニオンも検討

通院先の病院で完治と言われたものの、日常生活において子どもの体調で気になることがあれば、別の病院を受診し他の医師の意見を聞くことも検討してください。

医療は不明瞭なところも多く、医師によって意見が変わることは珍しくありません。

セカンドオピニオンには、2つの方法があります。

  • かかりつけ医に相談し紹介状を書いてもらう
  • かかりつけ医を通さず自分で医療機関を探して受診する

医師に気が引けて「別の医療機関を受診してみる」と伝えづらい方もいるでしょう。そのようなときは、自分で医療機関を探して受診しても問題ありません。ただし、紹介状がない状態で別の医療機関を初診として受診すると、一から検査を行う必要があるなど費用が発生する場合があります。

セカンドオピニオンの意向を伝えて気分を害す医師は少ないため、勇気をもって伝えた方がメリットは多いでしょう。

関連記事交通事故の怪我でよくある症状と治療法~骨折・むちうち・腰椎捻挫等~

まとめ

むちうちが疑われる子どもには、首の痛みや頭痛、不眠といった症状が見られることがあります。交通事故の後はすぐに医療機関を受診しましょう。また、医療機関を受診した後も油断せず、日常生活の中で異変がないか観察することが大切です。

子どものむちうち治療は、大人のむちうち治療と比較しても大きな違いはありません。できるだけ早めに治療を開始して、完治を目指しましょう。

 

この記事を監修したのは…

専門領域分類
外科, 整形外科, 乳腺外科, 小児外科, スポーツ整形外科, リウマチ, 一般外科, 形成外科, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 消化器外科, 脳神経外科, 美容外科, 大腸肛門科, 内科, 内分泌代謝科, アレルギー・膠原病内科, 神経内科, 肝胆膵内科, 消化器内科, 総合内科, 血液内科, 腎臓内科, 循環器内科, 感染症科, 糖尿病内科, 呼吸器内科, 産業医, サル痘, 医療データ, 血液・感染症, 集中治療, 救急科

経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 
卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医

主な研究内容・論文
〇 「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」
〇 「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」
〇 「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」
〇 「都市部二次救急医療期間の当院における救急要請応需率に関する後方視的検討」
〇 「当院においてリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)投与した播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した感染性敗血症症例の臨床成績」
〇 「腹腔鏡下に治療しえた成人期に発症した先天性Bochdalek孔ヘルニアの一例」

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / T.A
出版社に就職後、書籍や雑誌コラムの執筆・編集を経て、現在はフリーライターとして活動中。家族が交通事故の被害にあった過去の経験をもとに、怪我の治療先や手続きのコツなどをお届けしていきます。みなさんのお悩みが少しでも軽減されますように…。

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