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頚椎捻挫でMRI撮影は必要?受けるメリットや注意点について解説

監修記事

甲斐沼 孟

医師(外科・整形外科他)

頚椎捻挫でMRI撮影は必要?受けるメリットや注意点について解説

頚椎捻挫は、衝撃が加わることで首がしなり、周囲の筋肉や靭帯などが損傷する怪我のことで、交通事故で負う怪我として最も代表的なものです。

頚椎捻挫が疑われる際、MRI検査まで行う必要があるのでしょうか。本記事では、頚椎捻挫でMRI検査をする必要性や受けるメリット、費用について解説します。

MRI検査を受けるかどうかで悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。

頚椎捻挫が疑われる際にMRI検査は必要?

頚椎捻挫が疑われる際、MRI検査も選択肢の一つです

レントゲンCTと比べて検査の精度が高く、頚椎捻挫の症状の原因特定に役立ちます。

もし、MRI検査を行って「異常なし」と判断されても安心材料になるでしょう。ただし場合によっては数万円程度の費用がかかるほか、検査を受けられる期間や健康状態に制限がある点には注意が必要です。もちろん、医師が必要ないと判断した場合は、指示に従うと良いでしょう。

MRIとレントゲンの違い

MRIとレントゲンでは、検査の原理や特定しやすい病状に大きな違いがあります。

MRIは、電磁波に反応する「水素分子」を利用して画像に映し出します。電磁波を当てると、当てられた方向に水素分子が向きます。しばらくしてから電磁波を止めると、水素分子は元の向きに戻りますが、分子によって戻る速度が異なり、速度の違いが「白黒」として映し出されるのがMRIの原理です。

水素分子は脊髄や靭帯などの軟部組織に多く含まれるため、軟部組織の異常を見つけるのに優れた検査方法になっています。

一方で、レントゲンはX線と呼ばれる放射線を用いた検査方法です。

一方向から身体に向かってX線が放射され、身体の向こう側にある受信器がX線を受け取り、画像が映し出されます。

X線は、骨などの密度が高いものに吸収されやすく、水などの密度が低いものは透過しやすい性質をもちます。この性質が利用されているため、骨折など骨の異常を見つけるのに優れているのが特徴です。

また「放射線」と聞くと被ばくの心配をする方もいますが、使用される放射線の量は微量で、人体に影響がない程度のため基本的に心配する必要はありません。

ただし、妊婦さんや放射線過敏症の方は影響を受ける可能性があるため、避けておいた方が良いでしょう。

MRIのレントゲンの違いは下表の通りです。

項目 MRI レントゲン
原理 電磁波と水素原子の共鳴 X線の透過性
検査時間 長時間 短時間
検査費用 比較的高め 比較的安い
画像 ・MRIの種類によるがレントゲンと同様に白黒で映る ・骨:白く映る
・軟部組織:黒く映る
得意 軟部組織の異常を見つけるのに優れている 骨の異常を見つけるのに優れている
被ばく 可能性なし 可能性あり(基本的に心配いらない)
注意点 ・金属類を検査前に外す
・ペースメーカーなどが体内にある人は基本的に検査を受けられない
・撮影部位に付いたもの(湿布など)を取り外す
・妊娠またはその可能性がある場合は避けることが望ましい

頚椎捻挫の症状をMRIで検査するメリット

頚椎捻挫でMRI検査を受けるメリットについて解説します。

頚椎捻挫の症状の原因がわかる可能性がある

頚椎捻挫では、いつまで経っても首の痛みや腕のしびれが治らないケースが多々見られます。そこで、電磁波により細部の異常を見つけやすいMRI検査を行うことで、治らない原因を判明させられる可能性があります。

また、頚椎捻挫だと思っていても別の思わぬ病気や怪我が原因で、MRI検査をきっかけに発見できることもあります。

POINT

MRI検査も万能ではない

ただし、MRI検査も万能ではなく、原因を突き止められない場合もあります。

その場合は、医師による診察や自覚症状、神経学的所見などから総合的に判断されることになるでしょう。

適切な頚椎捻挫の治療を進められる

MRIで症状の原因がわかれば、適切な治療を進めることができます。

頚椎捻挫では、診察を受けても原因がわからず、湿布や痛み止めなどの対症療法を行うケースは少なくありません。しかし、MRI検査で原因を突き止めることができれば、根本の原因に対してアプローチできるため、完全な治癒を目指せるでしょう。

後遺障害等級の12級認定を受けられる

頚椎捻挫は、1年以上経過しても症状が改善されないといった方が少なからず存在します。症状の改善が見られない場合、医師から「症状固定(これ以上治療を続けても改善の見込みがない状態)」と告げられます。

症状固定と告げられた後、正式に後遺症として認められなければ、積極的な治療を続けることができなくなります

後遺障害等級認定を受けるためには、医学的な証明が必要です。

MRI検査の結果は身体の異常について医学的な証明となり、後遺障害等級の認定を受けられるようになるケースも考えられます。

頚椎捻挫は、後遺障害等級の12級13号に認定されやすいです。

後遺障害等級認定とMRI検査の関係について詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

関連記事むちうちでMRI検査を受けるべき理由とは|後遺障害や慰謝料を解説

頚椎捻挫のMRI検査を受けられる医療機関

いざ頚椎捻挫でMRI検査を受けたくても、どこで受けられるのかがわからないという人も少なくありません。ここからは、MRI検査を受けられる医療機関を紹介します。

大きな病院や整形外科で受けられる

MRI検査は、大きな総合病院や整形外科でMRI検査は受けられます。特におすすめなのは、整形外科でのMRI検査です。同じ科内で検査結果が共有されるため、スムーズに治療へ移行できます。

MRIの精度が医療機関によって異なることには注意が必要です。原因の特定や後遺障害等級認定の認定には、できるだけ精度の高いMRIで検査してもらう方が有利になります。

MRIの精度は、「テスラ(解析度)」の高さで決まります。低いもので0.5テスラ、高いもので3テスラです。3テスラのMRIで検査を受けた方が、原因を特定しやすく信頼性も高いとされています。

通院先にMRIがない場合は紹介状を書いてもらう

小さな病院や整形外科に通院している場合、MRIの設備がないこともあります。

いつも診てもらっている医師に相談し、MRI検査を受けられる医療機関を紹介してもらいましょう。

紹介の際、紹介状を書いてもらうメリットとして、以下の理由が挙げられます。

  • 受診~治療までがスムーズになる
  • 検査費用や選定療養費の節約になる

紹介状には、患者の基本情報や病状、治療経過などが書かれています。

紹介先の医師が見ることで、現状を把握できます。また、特定の病院の初診時は、7,000円以上の支払いが義務化されました。

紹介状があれば初診料の負担がなくなるため、書いてもらうようにしましょう。

整骨院ではMRIを受けられない

そもそも整骨院には医師が在籍していません。そのため、MRI検査やレントゲンといった画像検査、薬の処方などの医療行為は認められていません

整骨院では、国家資格者の柔道整復師による施術を受けられます。整形外科と同様に、健康保険自賠責保険といった公的な保険を利用して、継続的な施術を受けることも可能です。

また、大きな病院と比べて待ち時間が少なかったり、じっくり時間をかけてもらえたりするメリットがあります。そのため、頚椎捻挫を起こした方の中にはどうしても整骨院で施術したい方も多いです。

先に総合病院や整形外科にて検査を受けた後、整骨院へ通うと良いでしょう。

関連記事交通事故で整骨院へ医師の許可なしで通院できる?注意点も解説!

頚椎捻挫のMRI検査を受ける際の流れや費用

頚椎捻挫のMRI検査を受けるうえで、医療機関ごとに必要な費用や検査の流れに違いがあります。ここからは、一般的なMRI検査の流れと費用相場について解説します。

MRI検査の流れ

MRI検査を受ける一般的な流れは次の通りです。

  • 予約をする
  • 予約時間の15分前には受付に受診票を提出する
  • 問診表を記入(紹介状がある場合は必要なしの場合も)
  • MRI検査を行う場所の近くに待機
  • 病院スタッフから呼び出しを受ける
  • 貴重品や金属類を外して着替える
  • 検査前に持ち込んではいけないものがないか再チェック
  • 造影剤を使用する場合は血管確保と造影剤の服用
  • 検査
  • 検査終了

造影剤とは、画像がより鮮明に映るようにする薬剤のことです。注射で血管に投与するものと飲用するものの2種類があります。

MRI検査にかかる費用の相場は3万円から6万円ほど

MRI検査にかかる費用は、非造影か造影か、設けられているMRIの精度の高さなどによって変動します。保険が適用されなければ約3万円から6万円が費用相場となります。一方で、保険が適用されると約3,000円〜2万円が相場です。

保険適用(1割負担) 保険適用(3割負担) 保険非適用
造影 3,500~6,000円 10,500~18,000円 35,000~60,000円
非造影 2,500~3,500円 7,500~1,0500円 25,000~35,000円

症状があれば保険適用で受けられる

MRI検査は、何らかの自覚症状があり、医師が「MRI検査の必要あり」と判断した場合に保険が適用されます。そのため、医師がMRI検査は必要ないと判断した場合は、全額自己負担で受けなければなりません。

また、何も症状がなく念のために受けておく目的で検査を受ける場合は、保険適用とならないため注意しましょう。

頚椎捻挫のMRI検査を受ける際の注意点

最後に、正確なMRI検査を受けるための注意点について解説します。

最低でも3カ月以内に受ける

頚椎捻挫の原因が交通事故である場合、長期間経ってから検査を受けて頚椎捻挫が判明しても「交通事故とは関係がない」と判断されてしまう可能性があります。

交通事故で被害者側だった場合、状況に応じて一定の補償を受けられますが、交通事故とは関係がないと判断されれば補償は受けられません。

それにより、治療費の負担が大きくなってしまう可能性もあります。

また、3カ月も検査をせずに頚椎捻挫を放置すると症状の悪化につながる場合もあります。なるべく早い段階でMRI検査を行うことを意識し、最低でも3カ月以内にはMRI検査を受けるようにしましょう。

ペースメーカー等が体内にある場合は受けられない

ペースメーカーをはじめとする「金属」が体内にある場合はMRIを受けられません

最大の理由は、心臓の機能を維持しているペースメーカー自体が、MRIの電磁波によって壊れる可能性があるためです。また、他にも以下の理由があります。

  • 検査結果に悪影響を及ぼす
  • 金属が熱を帯びて怪我をする

これらの理由から、ペースメーカー等の金属が埋め込まれている場合は基本的にMRI検査は受けられず、検査を受ける前には金属類を外すようになっています。

ただ、近年では、条件がそろえばMRI検査を受けられるペースメーカーも登場しています。基本的にペースメーカーが体内にある場合はMRI検査を受けられませんが、例外もあるため、医師に確認してみましょう。

まとめ

頚椎捻挫では、医師が必要ないと判断した場合を除いて、MRI検査は受けた方が良いでしょう。検査を受けることで症状の原因がわかる可能性があり、適切な治療につなげられます。また、後遺症として頚椎捻挫の症状が残った場合に、首周囲に異常があることの証拠となり、後遺障害等級認定を受けられる際に役立てることができます。

MRI検査を受ける場合は、大きな病院または整形外科を受診してください。医師がMRIの検査が必要だと判断すれば、保険適用内で検査が受けられます。

検査時は、金属類が身についていない状態にしておきましょう。

この記事を監修したのは…

専門領域分類
外科, 整形外科, 乳腺外科, 小児外科, スポーツ整形外科, リウマチ, 一般外科, 形成外科, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 消化器外科, 脳神経外科, 美容外科, 大腸肛門科, 内科, 内分泌代謝科, アレルギー・膠原病内科, 神経内科, 肝胆膵内科, 消化器内科, 総合内科, 血液内科, 腎臓内科, 循環器内科, 感染症科, 糖尿病内科, 呼吸器内科, 産業医, サル痘, 医療データ, 血液・感染症, 集中治療, 救急科

経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 
卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医

主な研究内容・論文
〇 「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」
〇 「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」
〇 「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」
〇 「都市部二次救急医療期間の当院における救急要請応需率に関する後方視的検討」
〇 「当院においてリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)投与した播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した感染性敗血症症例の臨床成績」
〇 「腹腔鏡下に治療しえた成人期に発症した先天性Bochdalek孔ヘルニアの一例」

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / T.A
出版社に就職後、書籍や雑誌コラムの執筆・編集を経て、現在はフリーライターとして活動中。家族が交通事故の被害にあった過去の経験をもとに、怪我の治療先や手続きのコツなどをお届けしていきます。みなさんのお悩みが少しでも軽減されますように…。

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