交通事故のトラウマで運転できない…PTSDの症状や車の運転が怖い場合の克服方法を解説
監修記事

河野 裕也
理学療法士
交通事故に遭った後「怖いから車を運転できない」と感じる方は多くいます。事故のショックでトラウマを抱え、再びハンドルを握ることができない自分を責めてしまうかもしれません。しかし、それは誰にでも起こりうる自然な反応です。
本記事では、交通事故のトラウマで運転できない原因や症状、克服するための方法をわかりやすく解説します。
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目次
交通事故のトラウマで車を運転できないと感じることはよくある
交通事故にあった後に「怖いから車を運転できない」と感じる人は珍しくありません。事故の恐怖体験が頭から離れず、運転席に座るだけで動悸や息苦しさを覚えることもあります。
しかし、このような恐怖心は一時的である場合も多く、適切な治療や周囲のサポートを受けながら少しずつ回復していくことが可能です。「誰にでも起こりうること」であると理解し、焦らず自分のペースで克服していくことが大切です。
ただし、日常生活にも支障が出るほどの精神状態が続く場合は医療機関への受診が必要です。
交通事故によるトラウマとは?
交通事故によるトラウマとは、事故の衝撃で心に深い傷を負い、強いストレス反応が続く状態を指します。
文部科学省によると、トラウマは「心的外傷体験」とされ、生命の危機を感じるなど強い恐怖を伴う出来事によって心が深く傷つけられることと定義されています。交通事故もその一つで、内閣府の資料では、事故後に心身の不調が現れることがあると説明されています。
具体的には、以下のような症状が挙げられます。
- 事故の記憶がフラッシュバックする
- 事故現場や運転そのものを避ける
- 音や光に過敏になる
- 怒りや苛立ちが強くなる など
交通事故後、数日以内に現れる急性ストレス障害(ASD)や、1か月以上続く心的外傷後ストレス障害(PTSD)などがあり、これらは放置すると慢性化してしまうこともあります。
ASD(急性ストレス障害)
ASD(急性ストレス障害)は、交通事故や災害、犯罪被害など、命の危険を感じるような出来事を体験した直後に現れる心の不調です。
内閣府によると、ASDは「事故後2日以上経ってから4週間以内に診断され、フラッシュバックや悪夢、過覚醒、感情麻痺、集中力低下などの症状が現れる」とされています。事故当時の映像が頭から離れず、思い出すたびに強い恐怖感や動悸、吐き気を感じることもあります。
ASDの症状は事故の恐怖体験を脳が処理しきれずに起こるもので、放置して自然に回復することもありますが、約半数は1か月以上続きPTSDへ移行するといわれています。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)
PTSD(心的外傷後ストレス障害)は、交通事故など命の危険を感じる体験をした後、1か月以上経過しても強い恐怖心や不安、過覚醒などの症状が続く精神疾患です。
文部科学省によると、PTSDの診断基準には以下のような内容が含まれます。
- 事故を繰り返し思い出すフラッシュバックや悪夢などの再体験症状
- 過剰な警戒心やイライラ、不眠などの覚醒亢進症状
- 事故を思い出させる場所や会話を避ける回避行動
- 感情の麻痺や無感覚 など
内閣府でも、交通事故によるPTSDは日常生活や仕事に大きな影響を及ぼし、長期間続くと人間関係の悪化やうつ病を併発する可能性があると指摘しています。
PTSDの治療には、認知行動療法や薬物療法などが行われ、早期に治療を開始することで回復が期待できます。
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交通事故により車を運転できないトラウマを克服する方法7つ
交通事故によるトラウマで運転できない状態は、以下のような方法により克服していくことが可能です。
- 心療内科や精神科での治療
- 無理をせず少しずつ運転を再開する
- 運転中のリラックス方法
- 周囲からのサポート
- ペーパードライバー講習
- 事故原因の分析と対策
- 安全装備の追加
各方法について、以下で詳しく解説します。
①心療内科や精神科で治療を受ける
交通事故によるトラウマやPTSDで運転ができない場合、心療内科や精神科を受診することが重要です。
臨床心理士やカウンセラーによる認知行動療法やEMDR(眼球運動による脱感作療法)などの心理療法が有効とされています。これらは事故に対する恐怖心を軽減し、運転時の不安を少なくする治療法です。
また、必要に応じて抗不安薬や抗うつ薬など薬物療法が併用されることもあります。ただし、薬はトラウマ自体を治すものではなく、症状を和らげ治療を進めやすくする補助的な役割です。
症状の程度や性格、過去の経験などを考慮して最適な治療法が選ばれます。
関連記事交通事故後の精神不安定で心療内科や精神科のメンタルケアは必要?保険や慰謝料も解説
②無理をせず自分のペースで少しずつ運転を再開する
交通事故後、運転に恐怖を感じる場合は無理をせず、自分のペースで少しずつ運転を再開することが大切です。
いきなり長距離を運転したり、交通量の多い道を走ったりするのではなく、まずは運転席に座ってみる、車のエンジンをかける、家の周囲を少しだけ運転するなど、小さなステップから始めましょう。
また、他の人が運転する車に同乗し、運転感覚や交通状況に慣れることも効果的です。
恐怖心が強いときは無理をせず、初心者マークをつけて運転するのも一つの方法です。
③運転中にリラックスできる方法を取り入れる
運転時にリラックスできる方法を取り入れることで、事故による恐怖心や緊張を和らげることができます。
運転前に深呼吸やストレッチ、軽い瞑想を行うと、心身の緊張がほぐれ落ち着いた状態で運転できます。
また、運転中は落ち着く音楽を聴く、アロマディフューザーで好きな香りを楽しむなど、自分がリラックスできる環境を整えることも効果的です。
運転前に緊張が高まる場合は、短時間の休憩を挟むこともポイントです。自分に合った方法を探して取り入れてみましょう。
④信頼できる人にサポートを受ける
事故後の恐怖心を克服するためには、信頼できる人に話を聞いてもらうことも大切です。家族や友人、同じ経験をした人に事故のことや運転への不安を話すことで、気持ちが整理され前向きになれます。
また、運転時に家族や友人に同乗してもらうことで、緊張や恐怖心が軽減され安心して運転できる場合があります。通院やカウンセリングへの付き添いや、運転の練習時にそばにいてもらうだけでも心強いでしょう。
事故後は周囲に助けを求めることも大切です。
⑤ペーパードライバー講習を受ける
事故後に運転への恐怖心が強い場合、ペーパードライバー講習を受けることも効果的です。これは、長期間運転していない人だけでなく、交通事故後に再び運転する自信を取り戻したい人にもおすすめです。
講習ではプロの指導員が同乗し、基礎的な運転技術から実際の道路状況への対応、危険予測まで丁寧に指導してくれます。事故のトラウマで運転できない方は、操作ミスへの不安や事故再発の恐怖が強いため、講習で正しい知識と運転技術を学ぶことで自信を持てるようになります。
⑥事故の原因を分析し、対策する
交通事故後のトラウマ克服には、事故の原因を冷静に分析し、再発防止策を考えることも重要です。
例えば、事故がスピード超過によるものだった場合は速度を落とす、前方不注意が原因なら運転中の注意力を高める、交差点での事故なら左右確認を徹底するなど具体的な対策を立てましょう。
また、運転前に車の点検をする習慣をつける、交通ルールを再確認することも安全運転につながります。
事故原因を振り返ることで、次は同じ失敗をしないという自信が生まれます。
⑦車の安全装備を追加する
交通事故後の恐怖心を和らげるために、車に安全装備を追加することも有効です。
例えば、ドライブレコーダーを設置することで万一事故に遭った際の記録が残り、心理的な安心感が得られます。
また、衝突防止システムや自動ブレーキシステム、バックカメラ、ブラインドスポットモニターなどの先進安全装備を搭載することで、運転時の不安を軽減できます。
特に追突事故がトラウマになっている場合は、自動ブレーキや車間距離制御機能があることで安心感が増すでしょう。安全装備は自分と家族、同乗者を守るための投資でもあります。
事故後に運転できないと感じる自分の気持ちを受け入れるのも大切
交通事故後に運転が怖いと感じるのは、誰にでも起こりうる自然な反応です。恐怖心は心と体が危険を察知して身を守ろうとする正常な反応です。
無理に克服しようと焦ると、かえって症状が悪化することもあるため注意が必要です。自分の気持ちを大切にし、焦らずに克服していくことが重要です。
自己否定を避ける
交通事故後に運転が怖くなるのは、ごく自然で当たり前のことです。それにもかかわらず、「自分は弱い人間だ」と自己否定してしまう人は少なくありません。しかし、こうした自己否定は回復を遅らせ、逆に不安や恐怖心を強める原因になります。
恐怖を感じることは心と体が自分を守ろうとしている証拠です。まずはその気持ちを受け入れ、「怖いと思ってもいい」と自分を許してあげることが大切です。周囲と比較せず、自分のペースで一歩一歩前に進んでいきましょう。
心の回復には時間が必要
交通事故によるトラウマからの回復には、時間がかかることを理解しておく必要があります。恐怖心や不安は、事故という大きな出来事で心に深い傷がついたために起こる自然な反応です。
そのため、無理に克服しようと焦ると、かえって症状が悪化してしまうこともあります。心の回復には個人差があり、数日で落ち着く人もいれば、数ヶ月、数年かかる人もいます。
大切なのは、今日できた小さな進歩を自分で認めることです。どんなに小さなことでも自分を褒めることで、少しずつ自信を取り戻していけます。
事故のトラウマで運転できない方への周りの支援方法
交通事故によるトラウマで運転できなくなった方を支援するためには、本人の気持ちを尊重し、無理に運転を促さないことが重要です。
運転できないことは決して怠けや甘えではなく、心の傷が癒えていない証拠です。トラウマ克服には時間がかかることを理解し、焦らず寄り添っていくことが重要です。
本人の回復のペースを大切にする
交通事故後、運転への恐怖心を克服するペースには個人差があります。周囲が「もうそろそろ運転してみたら?」などと安易に促すと、本人に大きなプレッシャーを与えてしまうことがあります。
無理に運転を促したり、過剰に心配したりすることは逆効果になる場合があるので注意が必要です。事故によるトラウマは心の深い部分に影響するため、焦らず、無理なく克服できるように周囲が見守る姿勢を持つことが大切です。
運転への怖い気持ちや不安を受け止める
交通事故後に運転が怖くなるのは当たり前の反応です。本人の気持ちを否定せず受け止めてあげることが大切です。
不安や恐怖心は、誰かに話すことで少しずつ軽くなります。家族や友人など信頼できる人が寄り添う姿勢でいることは、本人にとって大きな支えになります。
焦らず寄り添い、本人が少しでも前に進めるようサポートしていくことが大切です。
受診を勧める・通院をサポートする
もし事故後に運転への恐怖心が強く、日常生活にも支障が出ているようであれば、心療内科や精神科の受診を勧めることが大切です。
通院を決めた場合、予約や送迎、付き添いなど具体的にサポートすることで本人の不安を軽減できます。本人が安心して通院できるよう環境を整えてあげることも大切です。
交通事故のトラウマで通院したら治療費や慰謝料を請求できる?
交通事故によるトラウマで心療内科や精神科へ通院した場合、加害者側の自賠責保険や任意保険に対して治療費や慰謝料を請求できます。
▲自賠責保険とは?
精神的な傷害も「交通事故による傷害」として認められるため、外傷と同じく治療費や入通院慰謝料、休業損害などの賠償請求が可能です。
ただし、請求するには事故との因果関係を証明する必要があります。事故から時間が経ってから受診した場合は、事故が原因であることを証明するのが難しくなることがあるため注意が必要です。
ASDやPTSDの症状があると感じたら、なるべく早めに病院を受診し、診断書を取得しておくことが重要です。
▲交通事故治療における診断書の内容と役割
交通事故によるPTSDの後遺障害等級認定
交通事故によるPTSDが重度で、治療を続けても症状が改善せず日常生活や仕事に支障が残る場合、後遺障害等級が認定されることがあります。
▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)
後遺障害等級認定とは、事故で負った障害が今後も残ると判断された場合に認定されるもので、認定されると後遺障害慰謝料や逸失利益などの補償を受けることが可能です。
精神障害であるPTSDの場合、等級は9級から14級が適用されることが多く、症状の重さや日常生活・労働への影響度によって判断されます。例えば、PTSDの症状で労働能力が著しく制限される場合は9級、仕事や日常生活に支障があるもののある程度可能な場合は12級や14級とされます。
ただし、認定には医師の診断書や精神科の通院記録、具体的な症状や生活状況の詳細な資料が必要です。
交通事故によるPTSDの後遺障害等級認定については、下記の記事で詳しく解説しています。
関連記事交通事故後の精神不安定で心療内科や精神科のメンタルケアは必要?保険や慰謝料も解説
交通事故のトラウマで車を運転できない場合でも克服する方法はある
交通事故のトラウマで車を運転できなくなったとしても、克服する方法はあります。恐怖心は心が自分を守ろうとする正常な反応です。自分の気持ちを受け入れ、無理をしないことが大切です。
そして、なるべく早めに心療内科や精神科での治療やカウンセリングを受けたり、ペーパードライバー講習で運転技術を学び直したり、周囲にサポートしてもらうなど、できることから取り組みましょう。事故の原因を分析して対策を立てる、安全装備を追加して安心感を高めるなどの方法も有効です。
克服には時間がかかりますが、焦らず自分のペースで進めていくことが大切です。
〈参考文献〉
文部科学省 外傷体験とは:https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/clarinet/002/003/010/005.htm
内閣府 交通事故の被害者の精神的反応:https://www8.cao.go.jp/koutu/sien/tanto-3-02.html
警察庁 交通事故による精神的反応:https://www.npa.go.jp/koutsuu/kikaku/jikosupport/report/pdf/16jigyouhoukoku/2-3.pdf
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この記事を監修したのは…
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。
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