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交通事故後の精神不安定状態への対処|うつ病やPTSDで後遺障害等級認定は?

監修記事

柿野 俊弥

理学療法士

交通事故後、精神不安定な状態が続いている方がいるのではないでしょうか。

自分ではどう対処したらよいかわからないと、精神的にもつらく今後が不安になりますよね。

本記事では、交通事故による精神不安定状態への対処方法と、うつ病やPTSDで受けられる可能性がある後遺障害等級認定について解説します。

交通事故後の不安定な精神症状とは

車

交通事故の体験や継続する身体的な苦痛から、精神が不安定な状態に陥る場合があります。

交通事故がどのように精神状態に影響するのかを詳しく見ていきましょう。

急性期には事故が起こったことを受け入れられない精神状態

交通事故の被害者で表情に変化がなく、問いかけに対してきちんと応答できない場合や、あとで自分のとった言動を覚えていない場合があります。心当たりがある方は「急性ストレス障害(ASD)」と呼ばれる精神症状をきたしているかもしれません。

急性ストレス障害は、引き金となる出来事から1ヵ月以内に、強い不安感や特定の記憶の抜け落ちまたはフラッシュバックなどの症状が見られます。これらの症状は、事故を受け入れられないことから生じる身体の防衛反応です。

改善に向けて、ストレス源から遠ざかり周囲に話をして理解してもらうことが大切になります。

交通事故が原因でうつ病を発症するケースがある

うつ病になると次のような症状が生じます。

  • 何もやる気が起こらない
  • 気分が落ち込んだ状態が続く
  • 食欲や睡眠欲が落ちる
  • 不安や焦りを感じる
  • 消えてしまいたいと考えるようになる etc…

交通事故の後、上記のいずれか1つでも当てはまる場合は、すぐに病院を受診してください。

うつ病では常に精神が不安定な状態になり、身体にも影響が現れます。

交通事故や個人で症状の程度に差はありますが、なるべく早く対処しましょう。

数ヶ月経っても今までのような社会生活を送れない精神状態にも

交通事故がきっかけで「PTSD」と呼ばれる精神症状をきたし、数か月経っても社会復帰できないケースがあります。

PTSDの主な症状は次の通りです。

  • 交通事故のつらい記憶がフラッシュバックする
  • 恐怖体験をした状況や場面を避ける傾向が見られる
  • 涙がとまらなくなる
  • 楽しめていたことが楽しめなくなる etc…

このような精神不安定な状態に陥るため、日常生活や仕事に悪影響を及ぼしてしまいます。

PTSDでは、ストレスになる事柄から距離を取り、休息することが大切です。

医療機関への受診や各医療機関や団体が行っている社会復帰プログラムに参加することも検討しましょう。

交通事故が原因で精神不安定な場合は心療内科や精神科へ通院を

病院

「交通事故の後から精神が不安定な状態が続くな」と思ったら、迷わず精神科や心療科へ行きましょう

「迷わず」と述べた理由は、もし精神症状が生じている場合は冷静かつ正確な判断が難しいからです。

受診する科の判断基準は、以下を参考にしてください。

  • 症状が軽い場合→「心療内科」
  • 症状が重い場合→「精神科」

症状の程度がわからない場合は、近くにある方で問題ありません。心療内科を受診して治療は難しいと言われれば、精神科を紹介してもらうことで解決可能です。

つづいて心療内科と精神科で行う治療内容などを解説します。

症状が軽い場合のメンタルケアは心療内科

基本的に、症状が軽い場合は心療内科を受診しましょう。

心療内科では、精神がきっかけで引き起こされる身体の症状「心身症」が主な治療対象です。例えば、円形脱毛症や胃潰瘍などが挙げられます。

心療内科でもうつ病や不安障害などの精神疾患も診ている病院は多いです。

しかし、入院が必要になるような精神疾患は対応できないところもあるため、軽い精神症状の受診が推奨されます。

行われる治療法は、薬物療法や精神療法が主です。

症状が重い場合は精神科を勧められる

症状が重い場合は、精神科を受診した方がよいです。

精神科は文字通り、うつ病や適応障害、統合失調症などの精神疾患が主な治療対象となっています。

基本的にどの精神科でも、すべての精神疾患に対応しているのが特徴です。

入院が必要な精神疾患でも対応できるので、交通事故の後に症状が重いと感じた場合は、精神科を受診した方がよいと言えます。

治療法は、心療内科と比べて大きな差はないため、治療内容で選択しなくても問題ありません。

交通事故後で精神が不安定な場合は後遺障害として扱われることも

治療 怪我 通院

交通事故後に精神的に不安定な状態となった場合、後遺障害として扱われることも後遺障害として認定されるための基準

「後遺障害の等級認定」を申請し、基準を満たすと後遺障害として認められます

後遺障害の等級は1〜14級に分けられており、いずれかの基準に申請した症状が該当するのかが判断されます。

交通事故後で精神が不安定になった場合、後遺障害等級認定の1〜14級のうち該当する可能性があるのは第9級10号、第12級、第14級です。それぞれに該当する症状については、次項から詳しく見ていきましょう。

第9級10号

就労しているか就労意欲がある場合は、身辺日常生活を除いた、能力に関する判断項目のいずれかひとつの能力が失われているもの。あるいは、能力に関する判断項目のいずれか4つ以上の能力について助言や援助が必要とされる障害が残っている場合。

就労意欲の低下または欠落により就労していない場合は、身辺日常生活について助言や援助が必要とされる程度の障害が残っている場合。

第12級相当

就労しているか就労意欲があるものの就労していない場合は、能力に関する判断項目のいずれか4つ以上について、ときに助言や援助が必要とされる障害を残しているもの

就労意欲の低下または欠落により就労していない場合は、身辺日常生活について適切またはおおむねできるもの。

第14級相当

通常の仕事に就くことはできるものの、能力に関する判断項目のいずれかひとつ以上について、ときに助言や援助が必要とされる障害を残しているもの。

関連記事交通事故の後遺症で認定される後遺障害等級14級とは?慰謝料の基礎知識について解説!

交通事故後の精神不安定で後遺障害等級の認定を受けるためのポイント

ポイント,注意点

交通事故による後遺症で後遺障害等級の認定を受けるためのポイントは次の3つです。

  • 後遺症と交通事故との因果関係を証明する
  • 医師による適切な治療を受ける
  • 症状固定の時期

それぞれ詳しく見ていきます。

交通事故との因果関係を証明する

交通事故とうつ病およびPTSDの因果関係を証明するには、客観的な証拠が必要です。証拠になる要素は大きく3つです。

  • 交通事故から病院を受診するまでの期間
  • 交通事故の様子や程度
  • 事故前のうつ病やPTSDになる原因があったかどうか

極端な例をあげると、既往歴がなく環境的な問題もない人が、衝撃的な交通事故を起こした後すぐに精神科を受診していれば、因果関係を証明する客観的な証拠として有力なものになります。

つまり、交通事故後に精神的に不安定になってしまっている場合は、早めに心療内科または精神科を受診し、後遺障害等級認定を申請する際に、医師や弁護士に協力を仰いでから客観的な証拠を集めるようにしましょう。

医師による適切な治療を受ける

医師による適切な治療を受けたかどうかは、後遺障害等級認定において大切なポイントです。

そもそも後遺障害は、治療を受けていたものの完治に至らず症状が残ってしまった後遺症に対して認定されます。

治療を受けていないにもかかわらず、後遺障害等級認定を受けることはできません。もう少し述べると、治療を行っていく中で医師から「症状固定」と判断された場合に申請可能なものです。

POINT

交通事故の後は

交通事故の後は、精神不安定状態の改善を図るためにも心療内科または精神科を受診し、適切な治療を受けましょう。

症状固定の時期

症状固定とは、これ以上治療を継続しても改善の見込みがない状態のことです。先述したように、治療を行っていく中で医師から症状固定と診断されます。

症状固定と診断された後、後遺障害の等級認定を申請したい場合は、医師に「後遺障害診断書」の作成を依頼しましょう。

後遺障害診断書に記載された検査結果や治療経過などを基に、後遺障害と認めるかどうかが判断されます。

関連記事交通事故で症状固定と言われたら?後遺障害も解説<弁護士監修>

交通事故後に後遺障害等級認定を受ければ慰謝料請求が可能

交通事故後に後遺障害等級認定を受ければ慰謝料請求が可能

後遺障害診断書や必要な書類を、損害保険料率算出機構の「自賠責損害調査事務所」に提出し、後遺障害だと認定されれば、加害者側に対して後遺障害慰謝料を請求できます。

ここからは、2種類の「後遺障害等級認定の申請方法」と請求できる「慰謝料額」について解説します。

後遺障害の等級認定の申請方法は2種類

後遺障害の等級認定の申請方法は、事前認定と被害者請求の2種類です。それぞれの申請方法の違いを表で確認してみましょう。

事前認定 被害者請求
手続者 加害者側の保険会社 被害者自身
メリット 手続きをすべて任せられる ・書類を万全に準備し提出できる
・後遺障害等級認定を受けた後、先に自賠責保険による補償金を受け取れる
デメリット ・損害賠償額が被害者請求と比べて少なくなる可能性がある
・納得のいかない後遺障害の等級になる可能性がある
・精神不安定な中、負担になる手続きを行う必要がある
・後遺障害診断書を作成してもらうのに費用がかかる

申請方法の選択でポイントになるのは「手続きによる負担」です。

後遺障害の等級認定や損害賠償の請求の面で考えると、手続きの負担が問題なければ被害者請求の方がよいと言えます。

慰謝料額は3つの基準がある

交通事故後、精神不安定状態に陥り、加害者へ慰謝料を請求する際は3つの基準で慰謝料額が決定されます。

内容 慰謝料額
自賠責基準 被害者への最低限の補償 最も低額
任意保険基準 保険会社ごとに決めた基準で補償 中程度の額
自賠責基準 過去の裁判所の判例を基にした補償 最も高額

弁護士基準は、過去の裁判所の判例をもとにしているため、適切な慰謝料額の請求が可能です。

さらに、専門家である弁護士に加害者側の保険会社との示談交渉を任せられるので、依頼する被害者は安心できるのも特徴です。

後遺障害等級別の後遺障害慰謝料の額

次に自賠責基準と弁護士基準とで慰謝料額がどの程度変わるのか、後遺障害等級ごとに確認してみましょう。

等級 自賠責基準 弁護士基準
第9級 245万円 690万円
第12級 93万円 290万円
第14級 32万円 110万円

交通事故後に精神不安定な状態が続いている場合は受診を

交通事故後に精神不安定な状態が続いている場合は受診を

交通事故後に、気分の落ち込みや意欲の低下のような精神不安定な状態が続いている場合、まずは心療内科や精神科を頼りましょう

また、うつ病やPTSDなどの精神疾患が後遺症として残った場合は、後遺障害の等級認定を申請し、後遺障害と認定されれば、後遺障害慰謝料を請求できることになります。

この記事を監修したのは…

理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

この記事の執筆者

理学療法士 / 柿野 俊弥
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

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