交通事故後の応急処置は重要。具体的な対処法や手順を解説
監修記事
島谷 柚希
看護師
車を運転する人、自転車に乗る人など、交通事故は誰もが遭遇する危険性があります。
突然の事故に遭遇したときに落ち着いて救護処置を行うには、事前に知識を持っておくことが重要です。
もしもの時に、あなたや周りの人を守るための交通事故時の応急処置について解説します。
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目次
交通事故の応急処置とは
交通事故現場での応急処置は、負傷者の救命率をも左右する重要な行為です。
交通事故現場に居合わせて直ちに救護できるのですから、救護者の迅速な行動が負傷者の予後をも左右します。
交通事故を実際に目撃している方が救護をする場合、負傷者がどの様なけがを負ったのか予測が可能な場合もあるでしょう。
また、道路交通法において「交通事故の現場では、事故にかかわった人が運転を停止し、要救護者を救護することは義務である」とされています。
救護義務をスムーズに遂行するためには、応急処置の流れを知っておく必要があるのです。
応急処置を行うことで生存率が上がる
交通事故で負傷した人の心臓や呼吸が止まり、救護が遅れた場合、時間の経過とともに生存率が急激に低下してしまいます。
心臓停止後は約3分、呼吸停止後は約10分、多量出血後は約30分、応急処置をせずに放置してしまうと 死亡率が50%を超えるといわれています。
しかし 応急処置を行うと、応急処置をしない場合に比べても生存率が約2倍になります。そのため、事故後の応急処置は重要なのです。
交通事故時の応急処置の具体的な手順
では、交通事故が発生した場合の、応急処置の具体的な手順を解説していきます。
応急処置の前に現場の安全を確保する
交通事故の状況によっては、さらなる事故の発生という、2次被害に繋がる恐れもあります。
まずは、負傷者を安全な場所に移動させるようにしてください。
そして、事故車の移動や必要に応じてハザードランプや発煙筒を使用します。
救護者は可能であれば要救護者に近づく時にマスク装着をすることをお勧めします。呼吸の確認などで呼気を確認するときなどに要救護者に近づき、思いもよらない感染症に感染することを防ぐためです。
負傷者の確認をする
まず負傷者に声をかけて意識の有無を確認します。
呼びかけに反応しない・開眼しない・返答がはっきりしない場合は、意識不明の状態であるため、すぐに救急車を呼びます。
確認するべき項目としては、以下の通りです。
- 呼吸の確認
負傷者の口元や鼻に耳を近づけて、呼吸ができているかを確認 - 脈拍の確認
喉仏のすぐ横にある頚動脈という血管に指を当てて、振動を感じるか確認 - 出血の確認
負傷者の体を目視し、出血があるかを確認
上記を確認したときに脈拍の振動を感じない場合、呼吸をしていない場合は、すぐに心臓マッサージや人工呼吸を行う必要があります。
また、負傷者が出血している場合は、止血も必要です。
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救急車やAEDの手配をする
負傷者の状態によっては、心臓マッサージ・止血など複数の処置がただちに必要な場合もあるでしょう。
また、自分が負傷者の手当てで手が離せない場合は、119番通報などを周囲の人に協力を依頼します。
協力を要請するときは周囲の方に具体的に手をかざして指示をしましょう。「誰か救急車を呼んでください」では、皆自分のことだと思わないのです。指示方法は次のようなものです。
「黒いジャンパーのあなた、救急車を呼んでください」
「私の右にいるあなた、AEDを探してきてきてください」
などです。
心臓マッサージを行うと、2〜3分で腕が疲れてくる場合もありますので複数名で負傷者を救護するのがベストでしょう。
交通事故の場合、警察への通報も周囲の人に依頼します。
止血(直接圧迫止血)
負傷者が 出血している場合は、止血が必要です。
止血を行う際は、血液による感染症を防ぐためにビニール袋を使用するようにしてください。
止血方法としては、「直接圧迫止血」と「間接圧迫止血」がありますが、交通事故では基本的に直接圧迫止血を行います。
手順としては、負傷者の傷口に清潔なハンカチやタオルを直接当てます。
そして、手のひらで傷口を圧迫して止血を行います。このとき、出血している部分を心臓よりも高い位置に持ち上げると、止血効果が高まります。
AEDを装着する
AEDは、機械で自動的に心電図を解析して、除細動が必要かを決定します。除細動が必要な場合は、音声で指示を出し、負傷者に電気ショックを与えます。
AEDの使用手順としては、以下の通りです。
- AEDの準備をして、電源を入れる
- 電極パッドを右胸と左わき腹に貼る
- 音声の指示に従い、負傷者から離れる
- ボタンを押して、電気ショックを与える
AEDを使用し、電気ショック不要の指示がでたら、心臓マッサージと人工呼吸を再開させます。
5分ごとにAEDが心電図を解析してくれるため、AEDの指示に従うようにしてください。
心臓マッサージ(胸骨圧迫)
AEDがある場合、装着したまま心臓マッサージをします。
ショックが必要かどうかはAEDの器械でアナウンスがありますが、電極をつけたままであれば、心電図が記録できるからです。
用意ができればAEDの装着が先で、AEDが到着したらすぐに付けます。
胸の中心(乳頭と乳頭を結ぶ線の中央)に一方の手のひらの付け根部分を当て、その手の上にもう一方の手を重ねます。
そして、垂直に体重が加わるように両肘を真っ直ぐに伸ばし、肩が圧迫する部位の真上に来るような姿勢をして心臓を圧迫します。
心臓マッサージを行うときのポイントとしては、以下の通りです。
- 胸が4~5㎝程度沈む程、強く圧迫する
- 1分間に100回のテンポで圧迫する
- 絶え間なく、30回連続で圧迫する
- 圧迫後は、胸が元の高さに戻るように、圧迫を解除する
心臓マッサージは、負傷者が動き出す、うめき声を出す、普段通りの息を始めるまで続けます。
救急隊が到着したら、AEDに心電図記録が残っているため、そのままAEDを渡します。
人工呼吸
負傷者が呼吸をしていないようであれば、気道を確保して人工呼吸を行います。
気道を確保するには、負傷者を仰向けに寝かせて片手で負傷者の額を押さえながら、もう片方の手の指先をあごの先端に当てて持ち上げます。このようにすることで、喉の奥が広がり、負傷者の体に息を吹き込むことができます。
人工呼吸を行う手順は、負傷者の気道を確保したまま、負傷者の口を自分の口で覆って密着させ、ゆっくりと息を吹き込みます。このとき、以下の3つに注意してください。
- 吹き込んだ息が負傷者の鼻から漏れ出さないように、負傷者の鼻をつまんだまま人工呼吸を行う
- 負傷者の胸が上がるのが確認できるまで、息を吹き込む
- 約1秒間かけて息を吹き込む ※息を吹き込むのは、2回まで
また、人工呼吸は心臓マッサージを始める前に2回行い、心臓マッサージを30回行った後に2回行います。
心臓マッサージ30回と人工呼吸2回は、基本的にセットで繰り返し行い、負傷者が息を始めるまで行いましょう。
ただし、マウストゥーマウスの人工呼吸は、感染症に罹患するリスクもあるため、救護上の義務行為ではありません。
可能であれば行ってください。人工呼吸用のマウスピースを携帯している方は、使用したうえで人工呼吸を実施しましょう。
救急隊に引き継ぐ
救急車の到着時間は、救急要請から平均で10分といわれています。
現場で負傷者を発見してから救急隊に引き渡すまでにいつ、どの様な処置をしたのかを伝えます。
時間と行った処置が重要ですので、何かを観察した時には、時計を確認しましょう。救急隊に伝える情報は主に以下の通り。
- 意識の消失を確認した時間
- 心肺停止になった時間
- 心臓マッサージを開始した時間
- 圧迫止血を開始した時間
- 負傷者が訴えている症状(頭・腰・首の痛みなど)
- 嘔吐した場合回数など
- 気になった要救護者の症状(手足が冷たい・悪寒戦慄があるなど)
救護は救急隊が到着するまで継続します。
負傷者はケガをして不安ですので、救護に当たる場合は救急隊が到着するまで声をかけ、励ましてあげましょう。
交通事故の応急処置のまとめ
交通事故の負傷者の生存率を上げるには、事故現場に居合わせた人の応急処置が重要です。
突然の交通事故でも正しい応急処置ができるように、予備知識として今回の記事が参考になれば幸いです。
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この記事を監修したのは…
看護師として小児外科、整形外科、健康診断機関など医療現場などで勤務。
この経験を生かし、疾病の予防や健康増進に関する情報を発信する医療・健康ライターとしても活動をしている。
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