温める?冷やす?むちうちを改善する適切な対処とは
監修記事
宇賀神 絵里
看護師
交通事故でむちうちになってしまった多くの方が、「痛みを和らげるために患部を温めるべきか、冷やすべきか」という疑問を抱えています。
実は、この対処法は症状の時期によって大きく異なります。
本記事では、むちうちの症状に対する適切な対処法について、解説していきます。
むちうちの急性期・慢性期での適切なケア方法、通院先の選び方、そして仕事を休んだ場合の補償まで、症状改善に役立つ情報をお伝えするので、ぜひ参考にしてください。
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むちうちになったら患部は温める?冷やす?
むちうちになったとき、患部を温めるのと冷やすのでは違いがあるのでしょうか。
むちうちの場合、急性期と慢性期で温めるのと冷やすのを使い分けるのがよいとされています。
急性期
急性期とは、交通事故にあった直後〜1ヶ月の期間のことです。この期間には、患部を冷やして安静にするのがよいとされています。
むちうちの急性期では、首の軟部組織に炎症が起きており、腫れや熱感をともなうことがあります。そんな時期に冷やすことで、以下のような効果が期待できます。
- 炎症を抑制し、腫れの軽減
- 痛みの緩和
- 組織の損傷拡大の予防
- 炎症による熱感の軽減
- 神経の興奮を抑え、痛みの悪化を防止
冷やす際は、氷のうやアイスパックを使用し、1回15-20分程度を目安に、2-3時間おきに行うことをおすすめします。
ただし、直接皮膚に当てることは避け、タオルなどで包んでから使用しましょう。
また、寝る前の冷却はとくに効果的です。睡眠中の炎症反応を抑制し、翌朝の痛みや腫れを軽減できるためです。
注意点として、冷やしすぎは血行を悪くする原因となります。皮膚が赤くなったり、しびれを感じたりした場合は、すぐに中止してください。
また、高齢の方や血行障害のある方は、冷却時間を短めにするとよいです。
慢性期
慢性期とは、交通事故にあってから3ヶ月以降のことをいいます。
急性期の炎症が落ち着き、筋肉のコリや硬直が主な症状となってきます。この時期に患部を温めることで以下のような効果が期待できます。
- 血行促進による治癒の促進
- 筋肉の緊張緩和
- 可動域の改善
- 痛みの緩和
- 代謝の促進による老廃物の排出
- 組織の柔軟性の向上
温める方法としては、入浴時のお湯での温熱効果や温かいタオル、カイロなどを活用することができます。
特にに入浴は、全身の血行を促進し、首周りの筋肉の緊張も和らげやすくなります。38-40度程度のぬるめのお湯に15-20分程度つかることで、適度な温熱効果が得られます。
ただし、熱すぎると逆効果になる可能性があるため、心地よい温かさを保つことを心がけましょう。
また、温めすぎると再び炎症が起こったり、悪化したりする可能性があるため、温める時間や回数に注意が必要です。
むちうちはどこへ通院すべき?
むちうちの治療ができるのは、整形外科だけではありません。ここでは、むちうちの通院先についてご紹介していきます。
どこに通院するかはご自身で選択することができるので、あなたが通いやすいところを選ぶようにしましょう。
病院・整形外科
むちうちの治療を受けるうえで最も一般的な通院先は、病院や整形外科です。
医師による診察に加え、レントゲンやMRIなどの画像検査を通じて、首や周辺の状態をきちんと確認することができます。これにより、むちうちの程度や治療の必要性、治療方針の正確な判断が可能です。
また、症状に応じて痛み止めや湿布などの処方を受けられるうえ、必要に応じて診断書の作成も依頼できます。
- 医師が治療を行う。
- レントゲンやMRIなどの検査が受けられる。
- 診断書を書くことができる。
- 痛み止めや湿布の処方をしてもらえる。
整骨院・接骨院
整骨院・接骨院では、柔道整復師による手技を中心とした施術を受けられます。直接体に触れて行う施術は、筋肉の緊張を和らげ、血行を促進する効果があります。
また、電気療法や牽引療法といった機器を使用した治療も行われ、痛みの緩和や機能回復に役立ちます。
整骨院・接骨院の大きな特徴は、比較的柔軟な営業時間にあります。多くの施設が土日診療や夜間診療を行っているため、仕事や学校との両立がしやすいのがメリットです。
- 柔道整復師が施術を行う。
- 身体に触れて行う、手技の施術が受けられる。
- 電気療法や牽引の施術を受けられる。
- 土日や夜遅くでも営業しているところが多い。
- 交通事故に関する知識が豊富な先生もいるので、保険の手続きなどの相談にはアドバイスをくれる。
上記の2つの通院先の場合、治療費は自賠責保険を適用して通院できます。
また、整骨院に通院する場合は、基本的に整形外科との併用通院になるので覚えておきましょう。
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むちうちで仕事を休んだら?
もし交通事故による怪我で治療することになったら、仕事を休まなければならない可能性もありますよね。
その場合、「収入が減ってしまうかも…」と心配になる人もいると思います。
その減収分は、休業損害として請求することができます。
むちうちの治療期間は、だいたい3ヶ月〜6ヶ月程かかります。このように、むちうちの治療は長期間にわたるので、仕事を休まなくてはならない状況になることもあるかもしれません。
休業損害とは、交通事故による怪我の治療で、入院や通院をしていた期間中に仕事を休んだときの収入を請求することができます。これで、減収分を補うことができます。
休業損害の基本的な計算方法はこちらです。
【事故にあう前の収入から、1日あたりの収入(日額)を算出した額】 × 【休業日数】 |
事故にあう前の収入から、1日あたりの収入(日額)を算出した額は、以下の基準により違いがあります。
- 自賠責保険基準
自賠責保険基準では、最低日額6,100円、最高で日額19,000円の実額が認められます。 - 任意保険基準
任意保険基準では、各会社ごとに計算方法や一定の限度額や基準が決められています。保険会社に確認をしましょう。 - 弁護士基準
弁護士基準では、現実の収入をもとに算出できます。
交通事故にあう前の3ヶ月分の収入をもとに、1日当たりの基礎収入を算出するのが一般的です。
その時には、勤務先で交通事故前過去3月分の休業日数とその期間中の給与額などを記載した休業損害証明書を作成する必要があります。
作成した休業損害証明書をもとに、交通事故前3か月分の平均給与額を計算し、それを3ヶ月の日数である90で割り、1日当たりの基礎収入を算出します。
休業損害証明書が正当な証拠として、給与明細・源泉徴収票などを提出しなければなりません。
場合によっては、会社の方に賃金台帳などを提出してもらうこともあります。
自営業者などの場合には、課税証明書や確定申告書などを提出する可能性がありますので、書類の準備をしておきましょう。
関連記事交通事故後、仕事しながら通院が難しい時の対処法や休業補償を解説
まとめ
本記事では、交通事故によるむちうちの適切な対処方法と治療について解説してきました。
むちうちの症状改善には、時期に応じた適切な対処が重要となります。
急性期は冷やすことを中心とし、慢性期(3ヶ月以降)には温めることで症状の緩和を図りましょう。
また、通院を伴う治療については病院や整形外科での診察を基本としながら、必要に応じて整骨院との併用通院を検討することで、より効果的な治療が期待できます。
仕事を休まなければならない場合は、休業損害として補償を受けることができます。その際は必要な書類をしっかりと準備し、適切な手続きを行いましょう。
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この記事を監修したのは…
総合病院脳神経外科勤務後、産婦人科クリニック、消化器内科クリニックにて勤務。現在は内科、消化器内科、リウマチ科、小児科、美容皮膚科クリニックにて看護主任として勤務中。看護師のほか、メディカルアロマセラピスト、ベビーマッサージインストラクターの資格を持つ。
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