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腰椎捻挫がなかなか治らない理由は?治療法や対処法などもあわせて解説

監修記事

甲斐沼 孟

医師(外科・整形外科他)

腰椎に無理な力が加わることで、腰や背中に急激な痛みを伴う「腰椎捻挫」。交通事故やスポーツなどにより腰椎捻挫の症状が出たものの、なかなか治らないと悩む人もいることでしょう。

本記事では、腰椎捻挫がなかなか治らない理由や、腰椎捻挫の検査方法・治療法などについて解説します。また、腰椎捻挫がなかなか治らない場合の対処法も紹介しますので、つらい腰の痛みを改善したい人はぜひ参考にしてください。

腰椎捻挫がなかなか治らない理由

交通事故で腰が痛い人

腰椎捻挫が完治するまでの期間は3カ月程度とされていますが、人によっては半年以上経ってもなかなか治らないケースもあります。ここでは、腰椎捻挫がなかなか治らない理由を解説します。

もともと腰が負担のかかりやすい部位であるため

上半身と下半身のほぼ中間にある腰部は、もともと負担のかかりやすい部位です。全体重が腰にかかるため、怪我が起こりやすく、どうしても慢性的な負荷が蓄積されやすくなっています。

常に負担がかかる部位であることから、症状が緩和するまでに時間がかかってしまうケースがあると考えられています。

既往症として椎間板ヘルニアなどがあったため

腰の痛みが6カ月以上続いている場合は、ほかの症状が原因となっている可能性もあります。例えば、既往症として変形性腰椎症や椎間板ヘルニアがあり、交通事故などをきっかけに発症すると治りにくくなってしまうでしょう。

少しでも早く回復させるためには、腰に負担をかけないようにすることが大切です。

腰椎捻挫の症状

腰椎捻挫の症状とは(腰の痛み・動くと痛みが増す)

▲腰椎捻挫の症状とは

腰椎捻挫は腰に負担がかかり、筋肉や靭帯、筋膜などが損傷して腰部に痛みが出る疾患です。強い痛みを伴い、前かがみになったまま動けなくなってしまう場合も。

病院によっては腰椎捻挫を「ぎっくり腰」や「急性腰痛症」などと呼ぶこともあり、慢性化を避けるためにも早期の治療が必要だとされています。

関連記事後遺障害等級認定の申請手続きについて

腰椎捻挫の原因

腰椎捻挫は、交通事故やスポーツなどで、腰に外部から強い衝撃が加わった場合に起こります。腰の骨自体には異常がなく、その周りにある関節や筋肉などの損傷が原因となる場合が多いでしょう。

交通事故などの際だけではなく、日常生活のなかで引き起こされるケースも少なくはありません。例えば体を勢いよくひねったり、重いものを持ち上げたりして、腰部に無理な力が加わった場合にも誘発されます。

腰椎捻挫と診断される際に行われる検査

病院などで腰椎捻挫が疑われる際には、いくつかの検査が行われます。ここでは、腰椎捻挫と診断される際に主に行われる検査について解説します。

腰椎捻挫の検査方法:徒手検査(下肢挙上テスト・大腿神経伸張テスト)・画像検査(X線検査・CT・MRI検査)

▲腰椎捻挫の検査方法

画像検査

交通事故などのあとに腰の痛みが続く場合は、レントゲン検査やMRI検査などが行われます。

レントゲン検査では主に骨に異常がないかどうかを調べますが、筋肉や靭帯などが損傷して起こる腰椎捻挫は、レントゲンでは異常が見つけられないケースがほとんどです。

MRI検査では椎間板ヘルニアなどを確認できますが、若年層ではレントゲン検査と同じく、異常が認められない場合もあります。

SLRテスト

SLRテストは、「下肢伸展挙上テスト」とも呼ばれており、神経根の障害を調べるためのテストです。腰部の痛みやしびれなど、腰椎捻挫における神経症状を診断するために行われます。

仰向けに寝た状態で膝を伸ばしたまま足を上げていき、足を持ち上げた時の角度が70°以下の状態で太腿やふくらはぎの裏側に痛みを感じた場合、坐骨神経に障害があると判断されます。

徒手筋力検査

徒手筋力検査とは、腸腰筋・大腿四頭筋・膝部のハムストリングスなどを対象に、筋肉の低下の度合いを調べるものです。腰椎捻挫の検査のためというより、椎間板ヘルニアかどうかを確認する目的で行われます。

5〜0の数字で筋力を評価し、5が正常で、0だと筋の収縮も関節運動も認められないという判断になります。

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整形外科での治療方法

腰椎捻挫を悪化させないためには、医療機関などで適切な治療を行うことが大切です。ここでは、整形外科での腰椎捻挫の治療方法を紹介しますので、どのような治療が行われるのかを把握しておきましょう。

整形外科での腰椎捻挫の治療法(保存両方・痛み止め・物理療法)

▲整形外科での腰椎捻挫の治療法

保存療法

人体を傷つけずに治療する方法の総称を、保存療法といいます。受傷直後は安静を保つ必要があるため、保存療法が腰椎捻挫の基本的な治療方法となるでしょう。

急性期の場合はリハビリを控え、必要に応じて杖やコルセットなどの装具を身につけ、炎症がおさまるのを待つ必要があります。

消炎鎮痛剤(痛み止め)などの処方

整形外科では、レントゲンやMRI検査などで痛みの原因を明らかにした上で、消炎鎮痛剤(痛み止め)や湿布などを処方してもらうことが可能です。痛みを緩和させたり筋肉の緊張を和らげたりしたい場合は、医師と相談のうえ使用しましょう。

物理療法

腰椎捻挫になった場合、急性期は痛み止め等をもらって安静にしておくことが多くなりますが、しばらく時間が経つと物理療法などで改善を図ります。

物理療法とは、牽引・温熱・電気などの物理的なエネルギーを用い、痛みの軽減や血行の改善を目指す治療方法です。

例えば、首を引っ張って症状を緩和する牽引療法、患部に電気刺激を与える電気療法などの治療が行われます。

整骨院・接骨院での治療方法

整形外科に加え、整骨院や接骨院でも腰椎捻挫へのアプローチが可能です。整骨院・接骨院では、国家資格者である柔道整復師による施術を受けられます。

ここでは、整骨院・接骨院での主な施術方法を紹介します。

整骨院での腰椎捻挫の施術法(物理療法・運動療法)

▲整骨院での腰椎捻挫の施術法

物理療法

整骨院や接骨院でも、電気療法や首を引っ張る牽引、患部を温める温熱療法などの物理療法が行われます。

電気療法は鎮痛効果、牽引療法は頚椎の固定やストレッチ、温熱療法は血流の促進など、施術によってさまざまな効果が期待できます。

運動療法

運動療法は、関節の可動域を広げたり筋力トレーニングを行ったりする施術です。受傷後に安静にし続けると、筋肉が衰え新たな痛みを引き起こすことがあるため、運動療法にて腹筋や背筋を鍛え腰椎の負担を軽減する必要があります。

ただし、急性の痛みがある場合は逆に症状が悪化する可能性もあるため、医師と相談のうえで様子を見ながら進めていくことが大切です。

関連記事交通事故の怪我でよくある症状と治療法~骨折・むちうち・腰椎捻挫等~

自分でできる治療方法

自分で行える腰椎捻挫の治療法としては、体を安静にしたりストレッチをしたりすることなどが挙げられます。

腰や背筋のストレッチなどを定期的に行うことで、痛みの緩和につながるでしょう。腰椎捻挫の再発を予防するためにも、腰回りの筋肉を柔軟にしておくことが大切です。

なお、ストレッチは自己流ではなく医師や施術者の指導のもと行うことで、より早い回復につながります。整形外科などに通っている場合は、効果的なストレッチ方法について尋ねてみるとよいでしょう。

腰椎捻挫がなかなか治らない場合の対処法

さまざまな治療法があるものの、腰椎捻挫がなかなか治らないと悩む人も少なくはありません。ここでは、腰椎捻挫の症状が改善されない場合に有効な対処法を紹介します。

転院を検討する

整形外科に通っているにもかかわらずなかなか治らない場合は、治療方針が合っていない可能性も。自分の症状や体の状態に合った治療を行ってもらうためには、思い切って通院先を変えるのもひとつの手となるでしょう。

ただし、交通事故などが原因で治療費を相手側の保険会社に支払ってもらっている場合は、無断で転院しないように注意しなくてはなりません。

病院だけでなく整骨院や接骨院も利用する

交通事故治療で病院と整骨院の併用はできる?

▲交通事故治療で病院と整骨院の併用と注意点

整形外科とあわせて整骨院や接骨院を利用することで、症状に適した施術が見つかるケースもあります。

整骨院・接骨院で施術を担当する柔道整復師は、手術をしたり薬を使ったりせず、捻挫・骨折などを施術する国家資格者です。

整形外科だけではなかなか治らなかったり、患部に直接触れて評価してもらいたかったりする場合は、整骨院・接骨院にも通ってみるとよいでしょう。

POINT

夜遅くまで営業している

夜遅くまで営業しているため通いやすく、マンツーマンで体のケアをしてもらえるなど、整形外科にはないメリットがある点も魅力です。

日常生活での動作に配慮する

整形外科や整骨院・接骨院での施術を継続しても、日常生活で腰椎捻挫を引き起こす動作を行ってしまうとなかなか治らないものです。

治療を効果的なものにし、早い回復を目指すためには、日常生活での動作にも配慮する必要があるでしょう。

例えば、急に腰をひねったり重いものを持ち上げたりすることを避ける、ストレッチや準備運動を怠らないようにするなどといったことを心がけることが重要です。

腰椎捻挫は後遺症として残る可能性も

腰椎捻挫による腰痛や足のしびれなどは、後遺症として残る可能性があるため注意が必要です。治療を続けても症状が改善しないと医師が判断した場合は「症状固定」となり、後遺障害等級認定を申請する必要も出てくるでしょう。

症状固定とは:治療を続けても症状の緩和が見られない状況の事

▲症状固定とは?

後遺症を残さないようにするためには、早期に治療を開始したり、腰椎捻挫の症状に適した治療を継続的に受けたりすることが必要となります。

まとめ

交通事故や日常生活における動作などで引き起こされる腰椎捻挫は、人によっては半年以上経ってもなかなか治らないケースも少なくはありません

その理由としては、腰部がもともと負担がかかりやすい部位であることや、既往症として椎間板ヘルニアなどがあったことが挙げられます。

腰椎捻挫が疑われる場合は整形外科などで適切な検査を受け、症状に合わせた治療を行ってもらうようにしましょう。

なお、なかなか治らない場合は転院や整骨院・接骨院の併用も検討し、治療を継続的に受けることも大切です。

この記事を監修したのは…

専門領域分類
外科, 整形外科, 乳腺外科, 小児外科, スポーツ整形外科, リウマチ, 一般外科, 形成外科, 呼吸器外科, 心臓血管外科, 消化器外科, 脳神経外科, 美容外科, 大腸肛門科, 内科, 内分泌代謝科, アレルギー・膠原病内科, 神経内科, 肝胆膵内科, 消化器内科, 総合内科, 血液内科, 腎臓内科, 循環器内科, 感染症科, 糖尿病内科, 呼吸器内科, 産業医, サル痘, 医療データ, 血液・感染症, 集中治療, 救急科

経歴
平成19年(2007年) 大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部医学科 
卒業 平成21年(2009年) 大阪急性期総合医療センター 外科後期臨床研修医
平成22年(2010年) 大阪労災病院 心臓血管外科後期臨床研修医
平成24年(2012年) 国立病院機構大阪医療センター 心臓血管外科医員
平成25年(2013年) 大阪大学医学部附属病院 心臓血管外科非常勤医師
平成26年(2014年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医員
令和3年(2021年) 国家公務員共済組合連合会大手前病院 救急科医長
令和5年(2023年) TOTO関西支社健康管理室産業医

主な研究内容・論文
〇 「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」
〇 「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」
〇 「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」
〇 「都市部二次救急医療期間の当院における救急要請応需率に関する後方視的検討」
〇 「当院においてリコンビナント・トロンボモジュリン製剤(rTM)投与した播種性血管内凝固症候群(DIC)を合併した感染性敗血症症例の臨床成績」
〇 「腹腔鏡下に治療しえた成人期に発症した先天性Bochdalek孔ヘルニアの一例」

この記事の執筆者

交通事故病院編集部 ライター / T.N
大学を卒業し、出版社で取材や編集業務を経験。その後、WEBメディアの執筆に転向し、事故に関する様々な知識を多くの人に届けるべく、日々邁進中。現在は、交通事故専門士の資格を取得するために勉強をしている。座右の銘は、格物究理。

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