ハンドル外傷とは?交通事故や自転車で起こる危険な損傷部位や症状
監修記事

柿野 俊弥
理学療法士
ハンドル外傷は、交通事故でハンドルが胸部や腹部に強打することで発生する怪我の総称です。
車の運転手がハンドルに衝突したり、子供が自転車で転倒してハンドルで腹部を打撲したりすることで、臓器損傷や肋骨骨折などが起こりやすいとされています。
外見上は軽傷に見えても重篤な怪我を負っていたり、症状が遅れて現れる場合もあるため、事故後は速やかに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。
本記事では、ハンドル外傷の原因・損傷部位・症状・治療法を分かりやすく解説します。
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目次
ハンドル外傷とは
ハンドル外傷は、日本救急医学会にて「交通事故に際してハンドルで胸部や上腹部を打撲して受傷する外傷の総称」と定義されています。
引用:一般社団法人 日本救急医学会「ハンドル外傷」
自動車の運転手がハンドルに衝突する場合と、子どもが自転車で転倒してハンドルで腹部を打つ場合の2つのパターンがあります。

▲自動車のハンドルによるハンドル外傷
自動車事故では、正面衝突や急ブレーキの際、シートベルトを着用していないと体が前方に投げ出されてハンドルに強くぶつかります。
▲自転車のハンドルによるハンドル外傷
自転車事故は、子どもに多く見られます。転倒時に前輪が回転し、ハンドルの先端が腹部に突き刺さるような形で強い力が加わります。
子どもは体が小さく、腹部の筋肉や脂肪が薄いため、衝撃が内臓に直接伝わりやすいのが特徴です。
ハンドル外傷では、軽い打撲やあざ程度にしか見えなくても、骨折や内臓損傷など重篤な損傷をおよぼす可能性があります。
近年は、シートベルトやエアバッグの普及により自動車でのハンドル外傷は減少傾向にありますが、自転車事故によるハンドル外傷は依然として注意が必要です。
ハンドル外傷で起こりやすい損傷部位
ハンドル外傷では、主に腹部と胸部の臓器が損傷を受けやすくなります。どのような損傷が起こるのか、部位別に詳しく見ていきましょう。
腹部の損傷
腹部へのハンドル外傷では、膵臓、小腸・十二指腸、肝臓・脾臓、腎臓などが損傷しやすくなります。
膵臓は背骨の前に位置しているため、ハンドルと背骨の間で挟まれやすく、損傷を受けやすい臓器です。初期症状が軽いことが多いため、診断が遅れることがあります。
時間が経ってから腹痛が強くなったり、膵液が漏れ出して重篤な状態になることがあるため注意が必要です。
小腸・十二指腸の損傷では、腸管が破れると腸の内容物がお腹の中に漏れ出し、腹膜炎を起こす危険があります。
内出血や穿孔(穴が開くこと)のリスクがあり、手術が必要になる場合もあります。
また、肝臓・脾臓は血流が豊富なため、損傷すると大量出血を起こす危険があります。
胸部の損傷
胸部へのハンドル外傷では、心臓・大動脈、胸骨・肋骨、肺などが損傷を受ける可能性があります。
心臓・大動脈損傷はまれですが、自動車事故の強い衝撃で起こると致命的になる可能性があります。
胸骨・肋骨骨折は、胸の打撲で骨折が起き、折れた骨が肺に損傷をおよぼすことがあります。
肺の損傷では、気胸(肺に穴が開いて空気が漏れる)や血胸(胸腔内に血がたまる)などが起こり、呼吸障害がみられます。
ハンドル外傷の症状
ハンドル外傷の主な症状は以下のとおりです。
- 腹部の強い痛みや圧痛
- 吐き気や嘔吐
- お腹の張り(腹部膨満)
- 胸部の痛みや呼吸困難
- 内出血(あざ)
見た目は軽い外傷でも、体の内部では重度の損傷を起こしている場合があります。
とくに子どもの場合は体幹が短く、臓器が大きく、腹部の筋・脂肪が弱いため、外から力が伝わりやすく、深くにある内臓にも損傷がおよびやすいため注意が必要です。
子どもの自転車によるハンドル外傷で「ハンドル痕」がある場合は、内部臓器の損傷を強く疑うサインとなります。
傷を受けた直後は症状が軽くても、遅れて重篤化する場合もあるため軽視は禁物です。
痛み・嘔吐・膨満・呼吸困難などの症状がある場合は、すぐに医療機関での治療が必要です。
関連記事【交通事故】胸の痛み放置は危険!原因・対処法・慰謝料まで解説
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ハンドル外傷の通院と治療
外見が軽くても放置せず、事故後はできるだけ早く受診し適切な検査・治療を受けることが重要です。数時間後に痛み・吐き気が出ることもあるため、要注意です。
関連記事追突事故で痛くなくても病院受診する理由-痛みが出た時へ備えよう
ハンドル外傷は何科に行く?
ハンドル外傷を受けたら、救急科・外科・消化器外科など、すぐに検査や治療ができる病院へ行きましょう。意識がもうろうとしていたり、お腹が強く痛む場合は、すぐに救急車を呼んでください。
どこに行けばいいか分からない場合は、さまざまな診療科がある総合病院の救急外来がおすすめです。
夜や休日の場合は、救急相談センター(#7119)に電話すると、病院に行く必要があるか、どこの病院がいいかを相談できます。
子どもの場合でも、小児科ではなく、怪我を専門に診る整形外科や外科に行くことが大切です。
関連記事交通事故後の病院受診は何科? 症状別の診療科、受診の流れを解説
診断・検査
医療機関では、以下のような検査をもとに診断されます。
- 問診:事故の状況や、ハンドルが当たった部位など受傷状況を確認する
- 体の診察:腹部や胸を押して痛みがあるか、ハンドルの跡があるかを確認する
- 血液検査:肝臓や膵臓の数値を調べて、内臓が傷ついていないかを確認する
- 超音波検査(エコー):腹部内の出血を調べる
- CT検査:造影剤で怪我の場所や程度を詳しく調べる
見た目は軽い怪我でも、検査をしないと重い怪我を見逃すことがあるので、事故の後は必ず病院で診てもらうことが大切です。
また、受傷直後のCT検査で異常が見つからなくても、もう一度検査すると見つかることがあります。
治療方法
怪我の場所や重さによる治療法は以下のとおりです。
- 安静にして様子を見る:食事を止めて点滴をしながら自然に治るのを待つ
- 手術:腸に穴が開いたり、大量出血の場合に、傷ついた内臓を修復したり取り除いたりする
- 集中治療:重度の怪我の場合、集中治療室で呼吸を助ける機械や輸血などを行う
治療を選ぶときに大切なのは、膵臓の管が傷ついているかどうかです。傷ついていなければ経過観察になりますが、傷ついていれば手術が必要です。
また、腹部内の圧力が上がって内臓の働きに障害が出る「腹部コンパートメント症候群」という合併症にも注意が必要です。
ハンドル外傷の予防策
ハンドル外傷は、適切な予防策により発生リスクを大幅に減らせる可能性があります。ここで自動車と自転車それぞれの予防方法を確認しておきましょう。
自動車の事故
シートベルトを正しく着用することで、事故時に体が前に飛び出してハンドルにぶつかるのを防ぎ、被害を抑えることができます。
シートベルトは体を座席にしっかり固定し、事故の衝撃で前に飛び出すのを防ぎます。
腰ベルトは腰骨の位置に、肩ベルトは鎖骨を通るように正しく装着することが大切です。
エアバッグは、ハンドルへの衝撃を緩和し、頭部や胸部の損傷を防ぐ効果が期待できます。
ただし、エアバッグはシートベルトと一緒に使うことで効果を発揮するため、エアバッグがあってもシートベルトは必ず着用しましょう。
自転車の転倒や衝突
坂道などでスピードが出やすい場所では、子どもに降りて押して歩くよう教えましょう。
ブレーキが効きにくくなったり、バランスを崩しやすくなったりするため、大人が注意を促すことが大切です。
自転車の改善としては、ハンドルの先端部分の面積を広くし柔らかくする、金属部分が露出しない構造にするなど、ハンドルの工夫をして受傷時の衝撃を緩和する対策が挙げられます。
また、体に合ったサイズの自転車に乗ることも大切で、足が地面にしっかり着き、ハンドルが遠すぎない高さに調整しましょう。
【Q&A】ハンドル外傷に関するよくある質問
ハンドル外傷についてよくある質問をまとめました。
Q. ハンドル外傷とは何ですか?
交通事故でハンドルが胸部や腹部に強く当たることで起こる怪我の総称です。
自動車の運転手がハンドルに衝突する場合と、子どもが自転車で転倒してハンドルで腹部を打つ場合があります。
外見は軽症でも内臓に重大な損傷がある場合があり、数時間後から症状が悪化することもあるため注意が必要です。
Q. ハンドル外傷で損傷しやすい臓器はどこですか?
膵臓・肝臓・脾臓・腎臓などの腹部臓器が損傷しやすいです。とくに膵臓は背骨との間で圧迫されやすく、損傷程度とは裏腹に、初期症状が軽いことがあるため注意が必要です。
胸部では肋骨骨折や肺損傷、まれではありますが心臓・大動脈損傷も起こる場合があります。
Q. 自転車事故で起こるハンドル外傷はどんな症状がありますか?
自転車のハンドル外傷では、腹部打撲による強い痛みや「丸いハンドル痕」、嘔吐やショック症状が現れることがあります。
とくに子どもの場合は体が小さく腹部の筋肉が薄いため、軽い事故でも膵臓や肝臓などの臓器損傷に伴う症状が現れる可能性があります。
Q. ハンドル外傷を受けたらすぐに病院へ行くべきですか?
はい、外見では軽症に見えても内臓損傷が見逃されるリスクがあるため、すぐに受診すべきです。
とくに腹部にハンドル痕や痛み、嘔吐・冷汗などがある場合は、急いで救急受診が必要だと言えます。
事故直後は症状がなくても、数時間から数日後に血腫が破裂したり、腸管の小さな傷が拡大したりする可能性が考えられます。
Q. ハンドル外傷を予防する方法はありますか?
自動車ではシートベルトの着用とエアバッグの活用が重要です。使用していない場合と比べて、衝撃を大幅に軽減できます。
自転車では適切なサイズの自転車を選び、スピードの出しすぎに注意することが大切です。
また、ハンドルの先端を柔らかい素材でカバーする、金属部分が露出しない構造にするなどの工夫も必要になります。
ハンドル外傷は早期受診が重要
ハンドル外傷は、交通事故や自転車事故で起こる怪我です。見た目は軽い打撲程度でも、膵臓や肝臓などの臓器が損傷している可能性があります。
とくに子どもの自転車事故では、体が小さいため内臓への影響が大きくなりやすいです。
事故後は症状が軽くても、時間が経ってから重症化することがあるため、必ず医療機関を受診し、CT検査などの適切な診断や治療を受けることが大切です。
ハンドル外傷を防ぐためにも、日頃からのシートベルトの着用やエアバッグの活用、自転車の安全性向上、子どもへの自転車安全指導など、予防策を講じておきましょう。
〈参考文献〉
小児自転車ハンドル外傷の特徴に関する検討:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaam/24/11/24_933/_pdf
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この記事を監修したのは…
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。
この記事の執筆者
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