捻挫は何日で治る?早い完治を目指すための応急処置や治療方法について解説
監修記事
世良 泰
医師(整形外科他)
本記事では、捻挫をなるべく早く治す方法について解説します。結論から述べると、捻挫を早く治すには、最初の処置と早い段階での治療が大切です。
スポーツや交通事故で捻挫をして困っている方はぜひ参考にしてください。
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目次
発症してしまう可能性のある捻挫の種類
捻挫でも起こりやすい部位は「足首」です。最も発症数が多いとされています。足首の捻挫は主にスポーツで起こりやすく、「内反捻挫」と呼ばれる、足首を内側に捻ることで生じる捻挫の割合が高いです。
捻挫はほかにも、首や手首、膝などで起こります。交通事故ではむちうち(首の捻挫)が発症しやすいです。
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捻挫してすぐは「RICE処置」で応急処置をする
RICE処置とは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の頭文字を取った応急処置のことです。捻挫などの怪我に対して行われ、症状の悪化や治癒するまでの期間を短縮する効果が期待できます。RICE処置は時代と共に、「PRICE」「POLICE」「PEACE and LOVE」と対応方法もアップデートされて来ていますが、ここでは外傷の応急処置の基本となったRICE処置の具体的な方法について詳しく解説します。
処置 | 説明 |
Rest | 捻挫した部位を安静にする |
Icing | 捻挫した部位を冷やす |
Compression | 捻挫した部位を軽く圧迫する |
Elevation | 捻挫した部位を心臓よりも高い位置に上げる |
Rest(安静)
受傷直後は、捻挫した部位を動かさないよう、安静にしてください。捻挫した部位や状況によって最適な姿勢は異なりますが、基本的には「椅子に座らせる」もしくは「仰向けで横にする」のが良いでしょう。
Icing(冷却)
捻挫した部位を冷やすために、氷水を使用してください。これにより、捻挫による炎症を軽減し、腫れや痛みの悪化を防ぐことができます。
しかし、冷やしすぎには注意が必要です。冷やす時間は15分~20分程度が適切ですが、それ以上冷やすと凍傷のリスクがあります。
また、皮膚や本人の様子に違和感を感じた場合は、一旦冷やすのを止めましょう。さらに、氷水が過度に冷たい場合は、薄いタオルを巻いてから冷やすことで凍傷を予防できます。
近年ではIcingのメリットが証明できないとしてあまり言われなくなってきておりますが、基本の考え方は上記の通りです。
Compression(圧迫)
冷却しながら、捻挫した部位を軽く圧迫してください。圧迫は、炎症による腫れや痛みを軽減し、内出血を止める効果が期待できます。
ただし、強い圧迫は逆効果になるため、本人が痛みを感じない程度が望ましいです。
Elevation(挙上)
捻挫した部位を心臓よりも高い位置に上げると、血液の循環をサポートし、腫れや痛みの悪化を防ぐことができます。
具体的な例を挙げると、足首の捻挫の場合、「仰向けにした状態で椅子の上に足を乗せる」もしくは「足の下に厚めのタオルを入れる」といったやり方があります。
POINT
心臓よりも高い位置がポイント
心臓よりも高い位置に上げながらも、捻挫した部位を動かさなくてよい姿勢や位置にすることも大切です。
一般的な捻挫の治療法
捻挫に対しては、一般的に「保存療法」と「手術療法」の2つの治療法が行われます。
ほとんどのケースは保存療法で治療可能ですが、一部のケースでは手術療法が必要になることもあります。治療法が選択される基準についても説明します。
保存療法
保存療法は、手術療法のように直接原因を取り除くのではなく、症状の改善や緩和を目指す治療です。具体的には、薬を使った治療や運動による治療などが挙げられます。
特に、捻挫では保存療法が適用されるケースが多くなっています。
捻挫は、靭帯や周囲の組織が傷つくことで起こる怪我です。保存療法は、傷ついた組織の治癒をサポートしつつ、鎮痛薬を用いて痛みをコントロールし、患部を動かさないように固定することが大切です。
手術療法
重度の捻挫の場合や「スポーツに復帰して元のパフォーマンス力を戻したい」という患者の場合は、手術療法が適用されることがあります。
また、捻挫を何度も繰り返していて関節が不安定になっている方には、医師が手術を選択するよう促す場合もあります。
手術においては、切れた靭帯の縫合や緩んだ靭帯の再建が行われます。手術後は、2〜3週間のギプス固定が必要で、その後リハビリを繰り返し、生活や社会、スポーツへの復帰を目指すのが一般的な流れです。
捻挫の治療は整形外科を受診する
一般的な捻挫の治療法について理解したところで、次は「どこで捻挫の治療を受けるべきか」について説明します。基本的には整形外科での治療が推奨されています。
その理由と整形外科を受診する目安について見ていきましょう。
整形外科と整骨院の違い
整形外科と整骨院の大きな違いは、「医師が在籍しているかどうか」です。整形外科には医師が在籍しているため、医師による診断や検査を受けることができます。
検査結果を基に、理学療法士や柔道整復師などの専門的な治療家による治療を受けることができます。一方、整骨院には医師が在籍しておらず、主に柔道整復師による徒手療法や電気療法などを受けることができます。
整形外科の方が、医師による診断や検査が可能なメリットがあり、さらに検査結果が科内で共有されているため、スムーズに専門家の治療を受けることができます。迷った場合は、整形外科に受診することをお勧めします。
整形外科を受診する目安
基本的には捻挫をしたら、すぐに整形外科を受診することが望ましいです。しかし、「受診するか悩んでいたら期間が経っていた」という方もいるでしょう。
そういった方は、次のポイントを目安にしましょう。
- 痛みがまったく引かない
- 腫れや痛みが強い
- 動かしてないのに痛みが出る
いずれかに該当する場合、捻挫ではなく骨折している可能性があります。捻挫であっても、放置すると再発しやすくなるため、できるだけ早い受診および治療が大切です。
捻挫の治療期間
軽度の捻挫であれば、痛み自体は1週間〜2週間で収まるでしょう。しかし、損傷した靭帯が治るまではもう少しかかります。
捻挫の程度によっても大きく治療期間は変わってきますので、しっかりと医師の診断を受けましょう。
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捻挫の悪化を防ぐためのポイント
ここでは、捻挫の症状を悪化させない方法を解説します。ポイントは次の3つです。
- 熱をもっているときは温めない
- 早い段階から無理なく動かす
- 捻挫の治療を優先にする
それぞれ詳しく見ていきましょう。
熱をもっているときは温めない
熱を持っているのは、「炎症が起きている証拠」です。患部とその周辺の温度を比較して、患部が熱い場合は温めてはいけません。温めることによって炎症を促進し、捻挫の治癒を妨げることになるからです。
ただし、炎症の段階を過ぎた後は、温めることで治癒を促進する効果があります。自己判断が難しい場合は、医師や専門家に相談することをお勧めします。わからないことがある場合は、自己判断せずに専門家に相談しましょう。
早い段階から無理なく動かす
炎症や痛みが引いてきたら、少しずつ動かすことも大切です。捻挫した部位を固定し続けると、筋肉や靭帯が硬くなり、筋力低下を引き起こすことがあります。
これらは関節の不安定性を引き起こし、結果的に捻挫を悪化させてしまいます。無理のない範囲で、できるだけ動かすようにしましょう。
捻挫の治療を優先にする
「仕事に行かなきゃいけないから病院に行く時間がない」
「子どものお世話をしないと」
このような理由から、捻挫の治療を後回しにする方は少なくありません。軽度の捻挫の場合、それほど痛みが強くないため放置する気持ちは理解できます。しかし、捻挫を放置すると、症状の悪化を促進したり、再発しやすい関節を作り出す原因になります。
軽度〜中等度の捻挫で、適切かつ早めに治療をすれば治癒期間は短く済みます。可能な限り、捻挫の治療を優先しましょう。
捻挫の再発を予防する方法
捻挫は再発予防も大切です。再発を繰り返すと、関節の不安定さが強くなり、最終的には関節が変形する可能性があります。
ここでは、捻挫の再発を防ぐために有効なストレッチ、筋トレ、テーピング固定を紹介します。
どれがあなたの状況に合った方法かというのは個別の症状や回復状況によっても変わってきますので、どれを行うべきかについては医師や専門家の指示を仰ぎましょう。
ストレッチ
筋肉や靭帯が硬くなるのを防ぐためにストレッチを行います。ここでは、足首の捻挫を例に挙げます。足首の捻挫は、すねやふくらはぎの筋肉が硬い人が起こしやすいです。
そのため、これらの筋肉を伸ばすストレッチが有効になります。具体的には次の方法があります。
「すねの筋肉のストレッチ」
- 椅子に座る
- 捻挫した側の足を後ろに引く
- 足の甲を床につけてゆっくり伸ばす
「ふくらはぎの筋肉のストレッチ」
- つま先を段差に乗せた状態で立つ
- 踵を下げながらふくらはぎを伸ばす(気持ちが良い程度)
どちらも簡単に実践できるストレッチのため、ぜひ実践してみるとよいでしょう。
筋力トレーニング
筋肉が硬くならないようにするだけでは、関節は安定しません。ストレッチに並行して筋力トレーニングも行うことが重要です。
ここでも足首を例に挙げます。小指側を上に反らす筋肉を鍛えるのが有効になります。
「タオルギャザー」
- 椅子に座り、前の床にタオルを縦方向に広げる
- タオルに足を乗せる
- 足の裏全体でタオルを掴むような意識でタオルを引き寄せていく
- 一度掴んで引き寄せるごとに踵は床につけた状態で足首を上に挙げる
- 3と4を繰り返す
足首を挙げる際は、親指側ではなく小指側を挙げるように意識することがポイントです。はじめはコツを掴むのが難しいですが、慣れると簡単な運動のため、少しずつ行ってみましょう。
テーピングで足首のサポート
捻挫をしたばかりの時期は、動かさないことが大切です。そのため、テーピングを使用して関節を固定します。
市販されているサポーターは制限力が小さいため、テーピングでの固定をお勧めします。テーピングは、捻挫の方向とは逆に行います。
例えば、足首を内側に捻って捻挫した場合は、足首が内側に入らないようにテーピングで固定してください。また、テーピングを巻く際には、軽く圧迫しながら行うことが重要です。
強く圧迫すると逆効果になるため、注意しながら巻いてください。
関連記事追突事故で怪我を負った…。治療の終了時期はいつになる?
まとめ
捻挫の治療は、早い段階で適切な処置や治療を行うことが重要です。それによって治癒までの期間が大きく左右されます。
基本的には、捻挫をしたら速やかに病院を受診し、医師や専門家の指示を仰ぎましょう。
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この記事を監修したのは…
慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。
池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/
日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター
TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員
AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー
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