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むちうちによる頭痛はどんな痛み?感じ方は天気に左右される?

監修記事

世良 泰

医師(整形外科他)

交通事故で怪我を負うと、「むちうち」と診断される方が多いです。むちうちの症状は、首の痛みや肩こりだけではありません。

頭痛もむちうちにより起こりやすい症状のひとつです。また、むちうちによる頭痛の症状は、天気によってあらわれ方が変化することもあるようです。

そこで今回は、むちうちによる頭痛の症状について解説していきます。

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むちうちとは?

「むちうち」とは?発症の原因や症状等

▲「むちうち」とは?発症の原因や症状等

交通事故にあうと、骨折や打撲、むちうちなどの怪我を負うことがあります。その中でも、事故で最も多いのは、むちうちだといわれています。

軽症者に占める主たる損傷部位が頚部である者の割合は相対的に微増傾向で、平成25年には60%を上回り、他の受傷部位とは全く異なる様相を呈していることから、むち打ち損傷は現在に至るまで交通事故で最も多く発症する傷病である
交通事故による いわゆる“むち打ち損傷”の治療期間は長いのか ―損害賠償を含む心理社会的側面からの文献考証―

上記のように、事故で損傷した部分が頚部(首)のある人は、軽症者のうち60%を占めており、少し増加傾向にあるようです。

したがって、半数以上が首のむちうちの怪我を負っていることがわかります。

また、むちうちは、事故の衝突時に受ける衝撃が原因で引き起こるものです。

事故に受けた衝撃で首が鞭のようにしなり、首周辺の筋肉や靱帯などが損傷してしまうため、痛みや違和感などがあらわれます。

むちうちの症状とは?むちうちが原因で起こる症状の例

▲むちうちが原因で起こる症状の例

むちうちであらわれる症状は、首の痛みや肩こり、腰痛だけではありません。以下のような症状があらわれることもあります。

  • 頭痛
  • めまい
  • 吐き気
  • 耳鳴り
  • 手足のしびれ
  • 身体の麻痺
  • 知覚障害
  • 歩行障害  など

このように、むちうちになると様々な症状があらわれ、風邪と勘違いしてしまいそうな頭痛の症状まであらわれます。

では、なぜむちうちによって頭痛の症状があらわれるのでしょうか。

以下で、詳しく解説していきたいと思います。

【原因別】むちうちによる頭痛はどんな痛み?

むちうちから来る頭痛の痛みの特徴:脈拍に合わせて痛む・後頭部~頭頂部が締め付けられるような痛み

▲むちうちから来る頭痛の痛みの特徴

むちうちによる頭痛には、いくつかの原因が考えられます。

血流不全や神経の障害や圧迫によってズキズキやガンガンといった脈打つような痛みや、後頭部から頭頂部、こめかみにかけて締め付けられるような痛みが生じます。

頚椎の捻挫による頭痛

むちうち発生のメカニズム

▲むちうち発生のメカニズム

交通事故では身体へ想像以上の強い衝撃が加わり、特に後方からの追突では頭が前後に大きく揺さぶられ首に大きな負担が加わります。

そのため、首周囲の筋肉が損傷されたり過度な緊張が生じたりすることで、筋肉の中や筋肉と筋肉の間を走行する血管が圧迫され、血流不全が生じます。

血液は組織に酸素を届け、二酸化炭素や老廃物を回収して運搬しますが、血流不全が生じると組織に酸素が行き渡らなくなり老廃物が溜まっていきます。

この老廃物により、疼痛誘発物質という物質が血管に溜まり、痛みが生じます。

そして痛みが生じることで自律神経の交感神経が過度に興奮し、血管を収縮させます。

交感神経により血管が収縮することでさらに血流不全が起こるという悪循環が生じます。

このように首から頭にかけての血流不全により、ズキズキやガンガンといった脈打つような頭痛が生じやすくなります。

神経の圧迫による頭痛

首から頭部にかけて出ている神経には、大後頭神経、小後頭神経、大耳介神経の3つの後頭神経があります。

これらの神経は、首を支える筋肉である僧帽筋や胸鎖乳突筋などの間から後頭部や側頭部へ出ていきます。

そのため、筋肉が過剰に緊張することで神経を圧迫し頭痛が生じます。

特に後頭部から頭頂部へ広く分布する大後頭神経による症状が多くあります。

小後頭神経は後頭部(耳の後)、大耳介神経は耳の周囲に痛みが生じやすくなります。

ジリジリするような痛みやジンジン、チクチクするような痛み、電気が走るような痛みが不規則に繰り返し発生するのが特徴です。

また、後ろに振り向く動きやヘアブラシなどで髪を梳かしたときに痛みを感じる場合は、これらの神経による痛みの可能性があります。

むちうちによる頭痛は天気の影響を受ける?

むちうちの痛みが天気で左右される理由:雨や曇りの日の気圧の変化によって自律神経が乱れる事が要因ではないか

▲むちうちの痛みが天気で左右される理由

むちうちの頭痛は、天気によって症状が軽くなったり、悪化したりする特徴があります。特に、雨や曇りの日などで頭痛が悪化してしまうようです。

その理由は、気圧の低下により血管が膨張し、神経が圧迫されてしまうことが原因です。

それによって、血行の流れが悪くなり、頭痛が悪化してしまうのです。

むちうちによる頭痛の治療の選択肢

では、むちうちによる頭痛にはどのような治療の選択肢があるのでしょうか。

頭痛を軽減させる方法

むちうちによる頭痛には、痛み止めの服用といった対処が基本になります。まずは痛み止めで様子をみることになるでしょう。

また、あまり一般的な方法ではありませんが、「星状神経節のブロック」という選択肢もあります。星状神経節のブロックに対応していない病院もありますので、まずは医師の指示を仰ぐのがよいでしょう。

「星状神経節のブロック」は星状神経節という首の前にある交感神経に麻酔薬を注射し、神経の緊張を和らげ、上半身の血行を促す注射です。

むちうちによる頭痛は、主に血行が悪くなることであらわれる症状のため、星状神経節のブロックの治療が候補として挙げられます。

星状神経節のブロックの治療は、注射を打つ部分に消毒をし、30秒程度で終了します。

痛みも「チクッ」とする程度なので、強い痛みはないといわれています。

注射を打った後は、20分程度ベッドにて安静にしなければなりません。

また、星状神経節のブロックの治療には、以下に注意が必要です。

  • 血液をサラサラにする薬を内服している方、血が固まりづらい方は事前に相談が必要であること
  • 注射を打って6時間以内の入浴を避けること
  • 注射を打った当日は、自律神経系に影響を及ぼすため激しい運動を避けること

現状発生している頭痛の原因や種類を把握し適切な治療を選択することが回復への第一歩です。

むちうち自体を治療する方法

むちうちそのものの治療は、受傷直後の急性期と一定期間が経過した慢性期で異なります。

むちうちの急性期と慢性期における対処法の違い

▲むちうちの急性期と慢性期における対処法の違い

急性期では炎症による症状が強く出ているため、アイシングで首から後頭部にかけて冷やしたり、首を無理に動かさずに安静を保つ必要があります。

無理に動かしてしまうと炎症をさらに広げてしまったり、炎症が落ち着くまでに時間がかかってしまったりすることがあります。

そのため、場合によっては首にカラーというコルセットを装着して安静を保ちます。

症状がある程度落ち着いてきた慢性期では筋肉が硬くなっていたり、緊張が高まっていたりすることが多いです。

徐々に首や肩甲骨を動かしていくストレッチやホットパックや蒸しタオルなどで温めることで、血流を改善し筋肉を正常な状態へと戻していきます。

事故後の早期の治療開始が重要

交通事故後、痛みがなくても病院に行くべき理由

▲交通事故後、痛みがなくても病院に行くべき理由

交通事故によるむちうちを患った場合、できるだけ早く医療機関を受診し治療を開始することが重要です。

交通事故では不意な状況で強い衝撃を受けているため、重症である可能性もあります。しっかりと医師による診断が必要です。

また、適切な時期に適切な治療を受けないと症状が長引き、場合によっては後遺症として残ってしまう可能性もあります。

事故直後の症状が例え軽度であっても、放置することで安静にすべき時期に安静にできず時間の経過とともに症状が強くなる場合もあります。

大したことはないと自己判断せずにまずは早期に医療機関を受診しましょう。

むちうちによる頭痛は後遺症に注意

後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

▲後遺障害とは?(後遺症と後遺障害の違い)

むちうちの頭痛は、治療を受けなければ治らないこともあります。

場合によっては、後遺症が残ってしまう可能性もあります。

むちうちによる頭痛は、神経の症状であるため、後遺症なのか判断が難しいといわれています。

レントゲンやMRIなどの検査では、身体の異常を発見することができないこともあるため、その場合は神経学的検査を受けることをおすすめします。

悪化の予防や日々の過ごし方の注意点

受傷直後は炎症状態にあるため、炎症を抑えるために入浴は控える必要があります。

入浴することで血流が良くなり炎症を広げてしまい、症状を強くしてしまう可能性があるためです。受傷直後は湯舟への入浴は控え、シャワーで済ますようにすると良いでしょう。

また、首は頭を支えるために通常でも負担がかかっています。

そのため、むちうちにより痛めてしまっている状態ではより一層首への負担に注意が必要です。

頭部が前に出てしまうような不良姿勢や下を向いて作業をしていると首への負担が大きくなります。

適切な姿勢を保つ大切さ

坐骨を立てて座る=姿勢を正しくする

▲坐骨を立てて座る

成人の頭の重さは約4〜6kgあると言われています。

そのため、この頭が少し前に出てしまうだけで、頭を支える首には相当な負担がかかります。

また、下を向くだけで頭の重さの数倍の負担が首にかかります。

そのため、このような不良姿勢を続けてしまうと、症状が悪化する可能性があります。

首を安静に保つことができずに、症状が悪化したり治りが遅くなったりします。

特に座っている姿勢に注意が必要です。

頭が体の真上にくるように背筋を伸ばして深く座ります。

体を左右に揺らしたときに座面に当たる骨が坐骨であり、この坐骨を座面に当てて背筋を伸ばし軽く顎を引くのが適切な姿勢になります。

足元が不安定だと頭の位置もずれやすくなるため足は組まずに踵まで地面に足裏をつけましょう。

むちうちによる頭痛の症状についてのまとめ

むちうちから来る頭痛

交通事故が原因でむちうちになることもあり、一見風邪のような頭痛の症状もあらわれます。

ただの頭痛だと自己判断せずに、交通事故後に頭痛が発生した場合は、きちんと病院での診察を受けましょう。

しっかりと治療を受けなければ、頭痛の症状が後遺症になることもあるので、十分注意してくださいね。

この記事を監修したのは…

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。

池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/

日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター

TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員

AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー

この記事の執筆者

理学療法士 / 河野 裕也
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

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