むちうちのリハビリ内容と最適な頻度は?
監修記事
柿野 俊弥
理学療法士
むちうちは、外部からの力によって頚部の筋肉や靭帯が損傷したものです。治癒を早めるために、リハビリテーションは重要な役割を果たします。
本記事では、むちうちのリハビリテーションの具体的なリハビリ内容や適切なリハビリ頻度、適切なタイミング、通院期間などについて解説します。
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目次
むちうちのリハビリの必要性
むちうちにおける具体的なリハビリの必要性を見ていきましょう。
基本的にリハビリは必要
リハビリは根本的な治療にはなりませんが、基本的に必要です。むちうちでは、頚部周囲の筋肉や靭帯、神経などを損傷します。
リハビリを行わずに放置すると、軽度なケースでも損傷によって首の可動域や硬さに影響が出ることがあります。また、これらの影響が残り、治癒までの期間が長くなる可能性があるのです。
リハビリをしないと治療期間の長期化や症状の慢性化につながる
むちうちは、安静と薬剤療法だけで完全に治癒するのは難しいです。リハビリテーションを行わずに放置してしまうと、治療期間が長くなり、症状が慢性化する可能性があります。
例えば、むちうちで生じた首周囲の筋肉の硬さを放置すると、筋肉が血管を圧迫し、血液の循環が悪化した状態が続くことになります。
血液の循環の悪化は、筋肉の硬さや痛みを助長する原因になるため、さらに状態が悪化するでしょう。このように、悪循環に陥ってしまい、最終的に「後遺症」として症状が残ってしまう可能性があるのです。
また、リハビリテーションは単に症状の改善だけでなく、予防的な効果もあります。むちうちの場合、痛みや可動域制限が解消しても、再発や慢性化のリスクがあります。
リハビリテーションによって筋力や関節のバランスを整え、身体の安定性を高めることで、再発や慢性症状の予防にも役立ちます。
早い段階から適切なリハビリテーションを開始し、専門家の指導のもとで継続的に行うことが重要です。医師の判断とリハビリテーション専門家の協力を通じて、むちうちの症状を最小限に抑え、早期かつ持続的な回復を目指しましょう。
むちうちのリハビリで行われる内容
むちうちのリハビリで実施される具体的な内容を紹介します。
リラクセーション
リラクセーションでは、筋緊張を緩和し、痛みの軽減を図ります。リラクセーションと並行して温熱療法(ホットパックなど)を使用することも一般的です。
これによって筋肉の緊張を緩め、血液循環を促進し、痛みを和らげる効果が期待されます。ストレッチもリラクセーション目的で行われることもあり、筋肉の柔軟性を改善し、症状の軽減に役立ちます。
筋力訓練
むちうちになると、痛みや制限により筋肉を使わずにいる期間があります。しかし、これによって首を支える筋力が低下してしまい、首の関節が不安定になることで、さらに痛みや肩まわりの筋肉の硬さが生じることがあります。
そこで、筋力訓練は、できるだけ早い段階で少しずつ動かしていき、筋力低下を防止しなければなりません。
訓練は、理学療法士を中心としたリハビリテーションの専門家によって、計画された筋力訓練のプログラムを行います。むちうちや身体状態で内容は異なりますが、基本的に首周りの筋肉の強化と筋肉バランスの改善を目指すのが一般的です。
可動域訓練
むちうちで痛みが生じると、首をはじめとした身体の可動域が制限されることがあります。首を寝違えて、首だけでなく肩が凝った経験をしたことがある方は多いでしょう。
むちうちも同じで、首だけに痛みがある場合でも、他の関節の可動域に影響を及ぼす場合があります。
このまま放置すると、関節が拘縮(こうしゅく)を起こし、可動域がますます狭くなるだけでなく、永続的に狭くなった状態になる恐れがあります。
そのため、リハビリで可動域訓練を行い、関節の可動域を改善および維持することが重要です。専門家の指導のもと、適切な可動域訓練を行い、関節の柔軟性や可動域を回復させましょう。
温熱療法
温熱療法は、むちうちのリハビリテーションで一般的な手法の一つです。痛みが出ている部位や筋肉が硬くなった部位を温めることで、血液の循環を促進し、身体状態の緩和が期待されます。一般的にはホットパックが使用されます。
しかし、むちうちを起こしたばかりで炎症のある時期は温熱療法は避けなければなりません。炎症が助長されてしまい、かえって状態が悪くなる場合があります。
自身の判断で温湿布などを用いた温熱療法は行わずに、専門家の指示・指導のもとで行いましょう。
電気療法
むちうちのリハビリテーションでは、電気療法も使用されることがあります。主に低周波や干渉波といった治療器を用いて、痛みの緩和や自然治癒力の促進を目指します。
メカニズムとしては、電気刺激によって筋肉の収縮を引き起こし、血液循環の改善や筋肉の強化を促しますしかし、電気療法は個々の症状や状態に応じて、適切な設定が必要です。
リハビリテーションの専門家のもと、安全に電気療法を行っていきます。
牽引療法
牽引療法は、首を引っ張ることで神経の圧迫を取り除き、症状の改善を目指す治療法です。むちうちによって筋肉が過剰に収縮し、神経が圧迫されている場合、牽引療法を行うことがあります。
ただし、機器を使用した牽引療法は、症状が悪化する可能性があるため注意が必要です。そのため、理学療法士などの専門家が行う「徒手的な牽引」が一般的に行われます。
姿勢や生活習慣の指導
むちうちのリハビリテーションでは、患者の姿勢や生活習慣についての指導も重要な要素です。間違った姿勢や身体の使い方は症状を悪化させる原因となることがあります。
とくに、むちうちは姿勢の影響を受けやすい「首」に症状が現れる場合が多いものです。正しい姿勢の取り方や荷物の持ち方、デスクワークやスマートフォンの使用時の姿勢なども注意するよう専門家によって指導されます。
POINT
炎症のある時期の入浴
炎症のある時期は入浴を控えなければなりません。そういった生活上での注意点も指導してもらいます。むちうちを悪化させず、早く治癒させるためにもきちんと専門家のアドバイスを聞いて実践しましょう。
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むちうちのリハビリを始める適切なタイミング
早期にリハビリを始めることで、筋肉や関節の機能を回復させ、早期の治癒を促すことができます。しかし、むちうちを起こしたばかりの時期は、炎症が起こり、痛みも強いため安静にすることが重要です。
その間、リハビリは行われません。検査結果をもとに医師がリハビリを始めるタイミングを適切に判断してくれます。
むちうちの適切なリハビリ頻度と通院期間
むちうちのリハビリを始める適切なタイミングは分かりましたが「頻度」と「通院期間」はどのくらいがよいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
週に3日から4日程度の頻度がおすすめ
リハビリの頻度と通院期間は、むちうちの症状の程度や個人の状態によって異なりますが、一般的に、「週に3日~4日程度」の頻度がおすすめです。
できるだけリハビリの頻度を上げるほうが治りは早いといわれているため、毎日の通院は日常生活や仕事の都合などで難しい場合もあります。そのため、週4日程度のリハビリスケジュールを立てることが一般的です。
リハビリの通院期間中は、定期的に医師と相談しながら進めましょう。症状の経過を評価し、必要に応じてリハビリの内容や頻度を調整してくれます。
症状が完全に改善するまで中断してはいけない
また、むちうちのリハビリは症状が完全に改善するまで中断してはいけません。症状が軽くなったからといって自己判断でリハビリを中断すると、症状の悪化や慢性化のリスクがあるため注意が必要です。医師の指示に従い、リハビリを継続することが重要になります。
また、リハビリ期間中は自宅での継続的なセルフケアも重要です。医師やリハビリテーション専門家から指示されたエクササイズやストレッチ、姿勢の注意点などを自宅でも実践し、リハビリの成果を最大限に引き出すことが必要です。
注意点として、インターネットやテレビなどで知ったストレッチや筋トレは行わないようにしましょう。自分の状態と合っていない方法であったり、そもそも間違ったやり方の場合があります。
、自身の身体を診てもらった専門家にアドバイスを受けたものを実践してください。
むちうちのリハビリはどこで受けられる?
むちうちのリハビリは整形外科や整骨院で受けることができます。それぞれどのような内容のリハビリを受けられるのかや特徴について見ていきましょう。
整形外科
整形外科では、国家資格を保有した理学療法士のリハビリテーションが受けられます。理学療法士は、症状や状態に応じて適切な運動療法や物理療法を提供します。
医師が在籍しているためむちうちの診察や検査も受けられます。医師や理学療法士が検査結果を共有し、連携してリハビリを受けられるのが特徴です。
むちうちは症状だけでの鑑別が難しく、中には骨折や脱臼を伴っているケースもあります。きちんと検査したうえでリハビリを受けられるのは大きなメリットと言えるでしょう。
整骨院
整骨院では、国家資格を保有した柔道整復師によるリハビリが受けられます。柔道整復師は手技療法や物理療法を用いて、筋肉や関節の調整、痛みの軽減、可動域の改善などを行います。整骨院は、身体のケアやリハビリテーションに特化した施設です。医師が在籍していないため、検査は受けられないことに注意しましょう。
むちうちのリハビリにかかる費用
リハビリテーションには点数と単位が設定されています。点数は医療行為の内容や難易度に応じて設定され、単位は施術の回数や時間に基づいて算定されます。「1点=10円」で、300点の場合は3,000円になります。
リハビリの費用は、保険適用の場合と保険適用ではない場合で異なります。保険適用の場合、国民健康保険や社会保険などの健康保険によって一部負担が軽減されます。
しかし、自己負担分や保険適用外の特定の治療内容には、別途費用がかかる場合もあることに注意が必要です。
保険適用ではない場合は、全額自己負担となるため、事前に施術費用や治療内容について施設に確認しておきましょう。
保険適用と保険適用外の費用を比較したものを下記の表にまとめました。
「むちうちのリハビリにかかる費用の比較」
費用項目 | 保険適用の場合 | 保険適用外の場合 |
初診料 | 864円(288点の自己負担3割) | 2880円(288点を全額自己負担) |
施術費用(運動器リハビリテーション×40分) | 1110円(370点の自己負担3割) | 3700円(370点を全額自己負担) |
合計 | 1974円 | 6580円 |
むちうちは、運動器の疾患として扱われるため「運動器リハビリテーション」を受けることになります。上記の費用と実際にかかる費用は、施設や保険種別によって異なる場合があります。
具体的な費用については、リハビリを受ける施設や医療機関に直接確認しましょう。
また、保険適用の場合は一部負担で済みますが、保険適用外だと全額自己負担しなければなりません。それによって、保険適用の場合と保険適用外の場合とでは「3倍以上」の差が現れます。
まとめ
むちうちになったら、医師の指示のもとできるだけ早い段階でリハビリを開始し、できるだけ高い頻度で通院することが望まれます。
具体的なリハビリの内容としては、リラクセーションや筋力訓練、可動域訓練、温熱療法、電気療法、牽引療法が一般的に行われます。しかし、むちうちや身体状態によって行われないリハビリもあることは把握しておきましょう。
治癒を早め、慢性化を防ぐためにも専門家の指導に従って、きちんとリハビリを行っていくことが大切です。
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この記事を監修したのは…
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。
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