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交通事故による股関節の脱臼とは?症状の一覧や後遺障害等級について解説

監修記事

世良 泰

医師(整形外科他)

交通事故で股関節を脱臼する大怪我。

今後、どのような症状が出てくるのか、どういう治療を行っていくのかわからず不安でしょう。

本記事では、股関節脱臼の原因や症状、治療に関して解説した後、股関節脱臼が該当する可能性のある後遺障害等級を紹介します。今後の参考になれば幸いです。

交通事故で股関節脱臼する原因とは

交通事故で股関節脱臼する原因とは

交通事故での股関節脱臼は、ダッシュボードに膝を打ち付け、その衝撃で股関節が後方に脱臼するケースが比較的多いです。

股関節の構造は、骨盤にある「寛骨臼(かんこつきゅう)」と呼ばれるくぼみに大腿骨頭(太ももの骨の丸い部分)がはまり込む形になっています。車に乗っている際は、股関節が80度程度に曲がった姿勢です。

その状態からダッシュボードに膝をぶつけて衝撃が加わると、腰骨の方向に大腿骨頭が抜けてしまうと「股関節脱臼」の状態になります。

股関節脱臼の症状一覧

股関節脱臼の症状一覧

ここでは交通事故でよく発生する、股関節の後方脱臼で起こる症状を紹介します。

  • 強い痛み
  • 股関節周囲の腫れや熱感
  • 股関節の可動域制限
  • 坐骨神経痛
  • しびれ
  • 大腿骨や骨盤の骨折

また、股関節脱臼以外にも他の箇所に怪我を負っている場合は少なくありません。頭部や背中に衝撃が加わり、骨折やむちうち、打撲などの怪我をしている場合もあります。

少しでも異常があれば、すぐに病院を受診してください。

股関節脱臼の治療はまず整復

股関節脱臼の治療はまず整復

大腿骨頭は元々、血管が少ないために血流障害を起こしやすい部位です。そのため、交通事故によって股関節を脱臼した後、できるだけ早く大腿骨頭の位置を戻さなければ、24時間以内に「壊死」する可能性があります。

股関節脱臼は、徒手で整復できる場合もありますが、一般の方が行うのは危険なのですぐに救急車を呼ぶことが大切です。救急車が来るまでは安静にしておきましょう。

レントゲン検査で骨折等の異常所見がなければ帰宅できる

診察ではレントゲン検査の結果を基に、股関節が脱臼していないか、周囲の組織に異常所見が認められないかを確認します。異常が認められなければ、そのまま帰宅可能です。

股関節脱臼を徒手で整復できる可能性は低く、外傷性の股関節脱臼は入院が必要になるケースが多いです。また、股関節の再脱臼は肩と違って多いとはいえませんが、再脱臼が多い場合は骨折を伴うケースです。

脱臼しやすい状態は、将来的に大腿骨頭壊死になり得るため、手術が適応となり入院が必要となります。医師の判断をよく聞き、適切な対応を怠らないようにしましょう。

医師の許可があるまで体重をかけない

股関節脱臼が起こってから整復後、医師の許可が降りるまでは体重をかけてはいけません。股関節を再脱臼するリスクがあるので注意しましょう。

整復をしてから約1週間で松葉杖なしで歩けるようになるケースが多くなっています。

しかし、股関節の脱臼に伴い骨盤(寛骨臼)の骨折があったり症状が重度であったりする場合は、半年以上治療を要する場合もあります。

ベッド上安静は血栓等の合併症リスクがあるため注意

手術を行った場合、血栓症になるリスクは高まっている状態です。理由としては、手術によって身体に備わっている止血機能が亢進するためです。

そのうえ、ベッド上で安静にすると筋肉の活動で血流を維持する「静脈」にて血流が滞り、血栓ができやすくなります。

医師やリハビリの専門家に教えてもらいながら、可能な範囲で身体を動かしましょう。

しかし、医師から安静指示が出ている場合は指示に従い安静にしてください。

股関節脱臼の症状固定はおよそ半年

股関節脱臼の症状固定はおよそ半年

症状固定とは、これ以上治療の必要性がないことを指します。次項から詳しく解説する「後遺障害等級」の認定を申請する場合、症状固定と判断されるまでに半年以内がよいとされています。

しかし、股関節脱臼の症状固定には、およそ半年かかります。半年を過ぎると後遺障害等級の認定を受けるために、不利となる可能性があります。

とはいえ、症状固定と判断するのは医師のため、医師と治療に関して相談してみましょう。

関連記事交通事故で症状固定と言われたら?後遺障害も解説<弁護士監修>

股関節脱臼の後遺症と後遺障害等級

股関節脱臼の後遺症と後遺障害等級

股関節脱臼が症状固定と判断されると、残った症状は「後遺症」とみなされます。そして、後遺障害と認められるためには「後遺障害等級認定」の申請を行い、基準を満たしていると判断される必要があります。

これから、股関節脱臼を起こした場合に認められる後遺障害等級の基準を解説します。

股関節が動かしにくくなる可動域制限

股関節の可動域制限とは、股関節周囲の筋肉や骨、靭帯などの異常で股関節を動かせる範囲が狭まっている状態を指します。

股関節脱臼で生じる可動域制限は、後遺障害等級の8級、10級、12級に認められる可能性があります。それぞれは「可動域制限の程度」に応じて等級が異なります。

  • 8級…1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
  • 10級…1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
  • 12級…1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

股関節の安定が損なわれる動揺関節

股関節の脱臼で、安定性が失われた状態である「動揺関節」となります。動揺関節は、後遺障害等級の表に該当するものはありませんが、準用(後遺障害等級の表には記載されていない障害に対して、程度に応じて等級を定めること)として8級、10級、12級に認められる可能性があります。

それぞれは、必要な「補装具」によって等級が異なります。

  • 8級…常に硬性補装具を必要としている場合
  • 10級…時々、硬性補装具を必要としている場合
  • 12級…重労働などの場合のみ硬性補装具を必要としている場合

動揺関節が習慣性脱臼に該当する場合

痛みやしびれなどの神経障害

股関節脱臼で、痛みやしびれなどの神経障害が生じている場合、後遺障害等級の12級または14級に認められる可能性があります。

12級に該当するか14級に該当するかは、画像検査にて明確な所見が見られるかどうかで判断されます。

  • 12級…局部に頑固な神経症状を残すもの(画像検査にて明確な所見が見られる場合)
  • 14級…局部に神経症状を残すもの(画像検査にて明確な所見が見られず、医学的な証明ができる場合)

関連記事交通事故の後遺症で認定される後遺障害等級14級とは?慰謝料の基礎知識について解説!

まとめ

まとめ

交通事故では、ダッシュボードにぶつけることにより股関節を脱臼するケースが比較的多いです。股関節脱臼を起こした後の対処として、可能な限り早い整復が大切です。手術を行った場合は、合併症を防ぐために安静にしすぎないようにしましょう。

この記事を監修したのは…

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。

池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/

日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター

TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員

AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー

この記事の執筆者

理学療法士 / 柿野 俊弥
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。

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