腰椎捻挫で仕事を休むことに!治るまでの期間と休業損害について解説
監修記事
河野 裕也
理学療法士
交通事故が原因で腰椎捻挫を発症してしまった場合、損害賠償を請求することができます。治療のために仕事を休まなければいけなくなり、得られなくなった収入を請求することも可能です。
この記事では、交通事故による腰痛捻挫の原因や、請求できる損害賠償の内容についてご紹介しています。
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目次
腰椎捻挫とは?
多くの方が腰椎捻挫という言葉を聞きなれないのではないでしょうか?
腰椎捻挫は、腰椎に無理な力が加わったことによる椎間関節の捻挫が原因で、突然痛みがあらわれる急性腰痛が発症します。腰痛を伴う腰の疾患には、腰椎椎間板ヘルニアや脊柱管狭窄症もあります。これらの症状には、下肢の痛みやしびれといった神経症状を伴うという特徴があります。一方で、腰椎捻挫では神経症状は伴わず、腰痛のみが発症します。安静にしていると痛みは軽減しますが、動いた時に痛みが強くなる傾向にあります。上記の痛みに加え、太ももの裏側にしびれを感じる場合は、腰椎椎間板ヘルニアの可能性が高くなります。
それでは、腰痛捻挫の原因について説明していきます。
腰椎捻挫はどのようにして起こる?
腰椎捻挫は、日常で不自然な体勢で重いものを持ち上げる、急に起き上がる、腰を捻るような動作をした時に起こる可能性があります。また、交通事故で大きな衝撃を受けることで発症する場合もありますが、腰椎という腰の骨に異常があるわけでなく、腰椎周辺にある関節や筋肉の捻挫が原因ともいわれています。
万が一、交通事故で腰痛捻挫と診断された場合は、後遺症として腰痛を慢性化させないためにも、早期の通院が必要になります。
腰椎捻挫の症状は主に腰の痛み!
腰椎捻挫では、腰に激しい痛みがあらわれます。
安静にしていると痛みは軽減しますが、動いた時に痛みが強くなる傾向にあります。
上記の痛みに加え、太ももの裏側にしびれを感じる場合は、椎間板ヘルニアの可能性が高くなります。
腰椎捻挫の治療方法は?
腰椎捻挫の治療方法としては、手術を行わない保存療法を行います。
保存療法の種類として、以下の方法があります。
- 神経ブロック注射
痛みを抑えるために、局所麻酔やステロイド薬を注射し痛みを緩和させます。 - 薬物療法
消炎鎮痛剤や筋弛緩薬を使って痛みを抑えます。 - 理学療法
痛みが治まったころに、筋肉を強化するための体操を行います。
治療方法についてご紹介しましたが、腰椎捻挫になった場合はまず安静にすることが第一です。
腰椎捻挫で仕事を休む期間はどれくらい?
腰椎捻挫では長期間の安静や休業はその後の社会復帰を遅らせてしまう要因となると言われています。
事故の状況によっては症状が重く、ある程度の休業が必要なこともありますが、多くは症状があったとしても極力日常の活動量を維持しておく必要があり、仕事もできる範囲で行うことが推奨されています。
また、数ヶ月にも及ぶ休業が必要であるということを医学的に証明することが難しく、相手の保険会社も納得しないことがあります。その場合、補償を受けられないということもあり得ます。
腰椎捻挫のトータルの治療期間
腰椎捻挫を患った場合、1週間程度で症状が落ち着いてくることが多く、治療期間は平均1〜3カ月程度とされています。
交通事故の状況や個人の回復程度によって異なりますが、重症の場合は4〜6カ月程度かかる場合もあります。6カ月以上治療を継続しても症状が良くならない場合では、医師の判断で症状固定となり後遺障害認定を申請することになります。
症状が慢性化しないためにも、受傷後早期から適切な治療を受けることが重要です。
仕事への復帰は、「無理ない範囲」で
交通事故の治療において、仕事を休んでしまうと収入が減少してしまうため治療よりも仕事を優先してしまう傾向があります。しかし、治療を後回しにして通院の間隔が空いてしまったり途切れてしまったりすると相手の保険会社は「もう治ったのではないか」と思い適切な補償を受けられなくなってしまう可能性があります。
さらに、後遺症が残る場合には通常後遺障害認定を受けることができますが、医師の指示にしたがわずに十分治療をうけていない場合では後遺障害認定を受けることが難しくなります。仕事も大事ですが治療を後回しにするデメリットをしっかりと認識して仕事は無理のない範囲で行うようにしましょう。
仕事を休んだ場合の収入が補償される
交通事故が原因で起きた怪我により、仕事を休まないといけない状態になった場合、被害者の収入は減少してしまいます。しかし、交通事故が原因の怪我で出勤できない場合、休んだ分の収入を休業損害として請求する事ができます。
休業損害を請求できる!
休業損害は、正社員やアルバイトといった雇用形態は関係なく、労働し収入を得ている人であれば請求する権利があります。
ただし、休業損害はあくまで交通事故による怪我が原因で減った収入に対する補償です。したがって、働いておらず収入がない場合や、療養中でも不動産収入などで減収しない場合には、補償対象外となります。
休業損害を請求出来る期間は、症状固定と判断されるか完治するまでになります。
休業損害を支払うのは加害者側の保険会社!
休業損害を請求するには、加害者側の保険会社に休業損害証明書という交通事故で休んだ際の損害を証明するための書類を提出する必要があります。
提出する証明書は、加害者側の保険会社より送られ被害者の勤務先の方が作成します。
腰椎捻挫になった場合請求できる損害賠償は?
交通事故が原因で腰椎捻挫を負ったのであれば、被害者には損害賠償を請求する権利があります。
よく聞く「慰謝料」も、損害賠償の一部です。交通事故の被害者になってしまった際は、受け取れるであろう損害賠償を把握し、損しない様にしましょう。
ここでは、受け取ることができる損害賠償について説明します。
請求できる項目は主に5つ!
交通事故が原因で腰痛捻挫になった場合、請求出来る代表的な損害賠償は5つあります。
治療費 | 交通事故で負った怪我を治すためにかかった治療費 |
---|---|
通院交通費 | 通院時にかかった交通費 |
付添看護費 | 医師の指示により付添看護が必要となった場合に掛かる費用 |
休業損害 | 交通事故が原因で仕事を休むことになった場合の減収部分を請求 |
入通院慰謝料 | 被害者の精神的苦痛を補償するための金銭、治療期間に応じて金額が変動 |
損害賠償は示談成立の後に一括で支払われますが、事前に加害者側の保険会社に相談し申請することで、月払いにしてくれるケースもあります。
ご自身のご都合に合わせて、使い分けるのがいいでしょう。
慰謝料には3つの算出基準がある
慰謝料は、通院日数や後遺障害等級によって金額に差が出てきます。その金額の算出基準には、以下の3種類があります。
- 自賠責基準
すべての車の所有者に加入が義務付けられている自賠責保険による基準
最低限の補償になるため3つの中で最も金額が低い - 任意保険基準
加害者が任意で加入している保険会社による基準
保険会社によって基準が異なり、公表されていない
自賠責基準と同等または少し高額になる - 弁護士基準
過去の裁判例をもとに作成された基準
示談交渉を弁護士に依頼した場合に適用される
3つの基準の中では最も高額になる
後遺障害が認定されると請求項目が増える
上記の5つに加え、腰椎捻挫が後遺障害等級認定を受けた場合は、逸失利益と後遺傷害慰謝料を新たに請求することができます。
逸失利益と後遺傷害慰謝料の2つについてご説明します。
逸失利益
本来得られるべきであるにもかかわらず、債務不履行や不法行為が起きたことによって得られなくなった利益を指します。
この場合は、後遺障害によって労働能力が低下してしまった際の、後遺障害がなければ、将来得られたはずである減収分に応じた金額を請求することになります。
後遺障害慰謝料
後遺障害等級が認定されると、後遺障害慰謝料を受け取ることができます。
金額は1級~14級ある中の、どの等級に振り分けられるのかによって金額が変動し、等級に応じて慰謝料を請求することができます
まとめ
腰椎捻挫は、日常での動作や交通事故により、腰を強打してしまった場合に起こる怪我です。
交通事故が原因で仕事を休まなければいけなくなった場合は、休業損害によって減収分が補償されます。他にも様々な損害賠償請求項目があるので、ご自身が請求できる内容を把握しておくとよいでしょう。
しっかりと補償を受けながら、早期回復に向けた治療を進められることを願っております。
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この記事を監修したのは…
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。
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