追突事故は速度20km以下でもむちうちになる!その時の治療法と対処法とは
監修記事
河野 裕也
理学療法士
交通事故は予測できない大きな衝撃が身体へ加わります。予期せね交通事故では車の走行速度が遅かったとしても首に大きな負担が加わり、むちうちを患ってしまうことが多くあります。
むちうちでは痛みやしびれ、頭痛、めまいなどの様々な症状が生じることがありますが、このような症状が出現した場合、どこに通院し、どのような治療を受ければいいのか悩む方も多いのではないでしょうか。
今回は交通事故によるむちうちの症状や治療方法などを解説します。
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目次
追突事故でむちうちになる速度は「20km/h以下」
自動車の追突事故において、走行速度が時速20㎞以下のスピードであったとしても身体に加わる衝撃は想像以上に大きなものとなりむちうちを患うことがあります。
自動車のスピードが時速20kmと聞くと遅いように感じるかもしれませんが、成人男性の歩行スピードが時速4kmなので、5倍の速さで動いていることになります。
また、衝突の衝撃は速度の2乗に比例するといわれており、5倍の速さであれば25倍、10倍の速さであれば100倍の衝撃を受けます。
そのため、「時速20km位の低速でぶつかったのに、むちうちになった。」ということも、十分ありえることです。
特に追突事故の場合は、全く危険予知していないことが多く、首の筋肉は緩んでいます。それにより、軟部組織(靭帯)のみに過大な力が加わって、損傷が起こり易くなります。
なぜ追突事故でむちうちになるのか
むちうちは、交通事故で体に大きな衝撃を受け、首が可動域を超えて大きく動くことによって首周囲の組織が損傷し症状があらわれます。
むちうちになってしまうと、首の痛みだけではなく、場合によっては腕や背中の痛み、不快感があらわれることもあります。
交通事故で体に衝撃を受け、関節の可動域を超えてしまった場合、靭帯や腱、脊髄が損傷を受けます。簡単にいうと、伸びない紐が無理矢理引っ張られたことで、ほつれてしまった状態です。
交通事故による衝撃を体が逃しきれなかった場合、痛みや不快感以外のダメージも広がってしまいます。自律神経が損傷されてしまった場合、頭痛や吐き気、めまいや不眠などが引き起こされることもあります。
軽い交通事故であったとしても、体に及ぼす影響は本当に大きなものです。決して軽く考えず、お体を第一に考えてしっかりと治療してくださいね。
むちうちの類型5つと症状について
むちうちの症状は、多種多様です。そのため、以下のように5つの類型に分類することができます。
頚椎捻挫型 | 簡単にいうと首の捻挫なので、 首・肩・背中の凝りや痛みを感じます。 |
---|---|
バレー・ルー症候群 | 交通事故の衝撃が首の骨を 通り越して自律神経を傷めると、 めまいや耳鳴り、息苦しさを感じます。 |
神経根症状型 | 神経そのものを支える根本が 圧縮されたり、伸ばされたりして 負荷を受けることにより、身体の色々な箇所にしびれを感じます。 |
脊髄症状型 | 直接脊髄まで損傷すると、身体に 麻痺が残ったり、場合によっては 知覚障害や歩行障害になります。 |
脳髄液減少症 | 脳脊髄液が減少して、 頭痛のほかにも様々な症状が現れ、 下半身麻痺になることもあります。 |
軽い追突事故でのむちうちが「嘘」だと疑われがちな理由
軽い追突事故でむちうちを患うことは十分にあります。
しかし、交通事故の場合は基本的に加害者側の保険会社が治療費や慰謝料を払うため、保険会社からはその程度でむちうちになるだろうかと疑われることもあります。
特に疑われる理由には以下のようなものがあります。
むちうちの痛みが後日出ることもあるから
交通事故によるむちうちは、事故から数日後に症状があらわれることもあります。交通事故直後に痛みが発症しないのは、何故なのでしょうか。
交通事故にあわれた直後は体が興奮状態に陥るため、痛みを感じにくくなっています。時間と共に体の興奮状態が落ち着いていくと、徐々にむちうちの症状があらわれます。
症状があらわれるまでの期間は、事故による衝撃の度合いや被害者の年齢・体格によって異なるため、人それぞれです。交通事故から1〜2日後に痛みがあらわれることもあれば、1〜2週間後に発症することもあります。
交通事故直後に痛みを感じなかった場合でも、すぐに加害者と示談をすることは避けましょう。少しでも違和感や痛みを感じた場合は、整形外科や整骨院など、適切な医療機関を受診することが大切です。
むちうちと追突事故の関連性が疑われる可能性があるから
むちうちの症状は事故直後にあらわれないこともあるため、後からでてきた症状に対して加害者側の保険会社は「追突事故と因果関係があるのか?」と疑ってきます。
そのため、追突事故との因果関係を証明するためにも事故に遭ったらなるべく早期に医療機関を受診し医師の診断を受け、症状が後から出てきた場合にもすぐに医師に相談しましょう。
また、数日たって痛みがあらわれた方で、物損事故で処理したままの場合は、人身事故へ切り替える必要があります。物損事故のままでは、交通事故の怪我の治療費や慰謝料などを加害者に請求することができません。
したがって、交通事故後に痛みがあらわれた場合は、必ず人身事故へ切り替えましょう。
むちうちの通院先
むちうちの治療が想像つかないという方も多いでしょう。むちうちの治療について詳しく説明していきます。治療方法の選択肢は、どんなものがあるのでしょうか。
むちうちを治療するための通院先は以下の2つから自由に選ぶことができます。加害者側の保険会社から支払われる「損害賠償」の適用範囲内で、国土交通省から認められた機関です。
通院先 | 治療内容 |
---|---|
①病院・整形外科 | 医師による治療
痛み止めや湿布の処方 |
②整骨院・接骨院 | 柔道整復師による施術
マッサージや整体 |
※1 ブロック注射は、痛みのある部分の神経に局所麻酔をする治療法です。痛みや筋肉の緊張をとることができるため、痛みの悪循環を断ち切ることを目的に行います。
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交通事故の慰謝料について
スピードが出ていないなかった車と追突しても症状が出ていれば、それは人身事故となります。したがって、補償の対象となり慰謝料を受け取ることができます。
ここでは、慰謝料について詳しく説明していきます。
- 入通院慰謝料
交通事故で入通院を強いられたことによる、被害者の精神的苦痛を補うもの - 後遺障害慰謝料
交通事故の怪我が後遺障害(※2)になってしまったことによる、被害者の精神的苦痛を補うもの
※2 後遺障害は、交通事故が原因で後遺症として残った症状のうち、後遺障害の等級に該当するものを指します。したがって、後遺障害慰謝料は「誰でも受け取れる」という訳ではありません。後遺障害慰謝料を受け取るためには、後遺障害等級認定を申請する必要があるのです。
慰謝料の算定方法
慰謝料を算定する場合、算定基準や計算式などがあります。これにより、妥当な慰謝料が計算することができます。
3つの算定基準
- 自賠責基準
交通事故によって怪我を負った被害者に対して、法律で決められた最低限の補償を行うことが目的です。最低限の補償ということから、3つの基準の中で最も少ない金額となります。 - 任意保険基準
各任意保険会社が決めている基準で、その内容は公開されていない場合がほとんどです。怪我の治療日数や、通院日数によって金額が変動するといわれています。 - 弁護士基準
交通事故による裁判の過去の判例などを参考に、弁護士会が公表している基準です。弁護士基準を使うと、3つの基準の中で、最も高い金額となります。
慰謝料の計算式
計算式は以下の2つがあります。
- 治療期間(入院期間+通院期間)
- 実通院日数(入院期間+実通院日数)×2
自賠責基準の場合は、この2つを比べて少ない方に4,300円をかけたものが、慰謝料の金額となります。そのため、通院期間や通院日数によって金額が変動します。
慰謝料の請求方法
慰謝料の請求は、治療費や通院交通費、休業損害などの損害賠償をまとめて請求することになります。
示談交渉で決めた損害賠償額に納得し、示談書に捺印をした後で、保険金請求書の提出を求められるのです。そのため、慰謝料を含む損害賠償金を受け取るのは示談成立後となります。
保険会社にむちうちと認められるためのポイント
交通事故による保険金のトラブルは実際に多くあります。症状を欺いて保険金を騙し取ろうとする人もいます。
しかし、実際に症状で本当に困っているのに保険が認められないようでは困りますよね。保険会社にむちうちと認められるためにいくつかポイントがありますので、しっかり確認しておきましょう。
まずは医師に診断してもらう
交通事故によるむちうちでは突然の衝撃で興奮しており、事故直後は症状に気が付かないことがあります。
しかし、実際に事故から数日経過して症状が現われたり悪化したりすることが多くあります。事故から時間がある程度経過してしまうと、症状と事故との因果関係を証明することが難しくなってしまいます。
そのため、軽度であっても症状が現われた場合にはすぐに医療機関を受診し適切な医師の診断を受けるようにしましょう。
症状を医師にしっかり伝える
医療機関を受診し医師の診断を受ける際には、症状を具体的にしっかりと伝えることが重要です。
むちうちではレントゲンやMRIなどの画像検査では問題が見つからないことが多いです。つまり、症状の多くが痛みやしびれ、めまい、吐き気、耳鳴り、倦怠感などのような自覚症状で感覚的なものになります。
これらの症状は外観からは判断しづらいため、気づいた症状は全て具体的にしっかりと自ら医師に伝えることが重要となります。
適切に通院する
通院する場合には症状が改善したといって自己判断で通院を終えたり、不必要に通院したりすると適切な補償を受け取れない可能性があります。
医師の判断ではなく自己判断で通院を終えてしまうと通院の必要があまりない軽度の症状だと判断されたり、完治しておらず再発や悪化したりする可能性もあります。
また、通院の頻度が少ないと軽い症状と判断されたり、通院の頻度が多いと必要のない過剰な治療を受けていると判断され治療費や慰謝料が減額される可能性があります。
そのため、適切に通院することが大切です。一般的に適切な通院頻度は週に2~3回程度と考えられています。
また、「現在、通っている通院先で満足な対応や治療が受けられていない。」「引っ越しして、通いづらくなった。」など、様々な理由で通院をやめてしまう方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、通院先を変える転院や病院・整形外科と整骨院・接骨院を併用することも可能です。
転院や病院と整骨院・接骨院を併用をすることでよりよい通院ができることもあります。むちうちの場合、症状を放置してしまうと後遺症が残ってしまい、一生痛みと付き合っていく可能性があります。
後遺症を残さないためにも、転院や病院と整骨院・接骨院の併用を考えることは大切です。
追突事故後のむちうちについてのまとめ
スピードが出ていなかった車との追突事故でも、自分では気づかないうちに大きな負荷がかかっていることもあります。
また、むちうちはしっかりと治療を行わなければ、後遺症が残ることもあります。自分の怪我を治す為にも、むちうちの治療は継続して行うことが大事です。
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この記事を監修したのは…
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。
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