むちうちと腰痛の関係とは?症状や原因、治療法について解説
監修記事
柿野 俊弥
理学療法士
交通事故の怪我を負った場合、むちうちと診断されるケースも多いです。むちうちで生じる症状には、腰痛もあります。
腰痛は生活に大きな支障をきたすので、何とか早く治したいですよね。そこで気になるのが、むちうちが原因で腰痛の症状が出た場合、どのような治療を受けるべきなのか、後遺症が残るのかでしょう。
そこで今回は、むちうちで現れる腰痛の特徴やその症状について詳しく解説し、治療法や後遺症が残った場合についても解説していきます。
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目次
むちうちによる腰痛の症状とは?
むちうちと言えば、首の痛みや肩こりなどが主な症状だというイメージがあるでしょう。
しかし実は、むちうちになった人の4割で腰痛が生じるといわれています。むちうちによる腰痛の特徴について解説していきます。
むちうちによる腰痛の特徴
交通事故でむちうちを起こした場合、腰痛を引き起こすケースも度々見られます。
症状の現れ方としては4つのパターンがあります。
- 何もしていなくても腰付近の筋肉が痛む
- 前かがみになったときに痛みが走る
- 腰を反らしたときに痛みが走る
- 腰から腰の下を中心が痛む
痛めた部位によって痛みの現れ方が変わります。
ズキズキとした痛みや鈍痛の場合は、筋肉などの組織を傷めている可能性があり、腰からお尻、足にかけてビリビリとした痛みが出る場合は神経を傷めている可能性があると考えられます。
詳しい原因について、次項から見ていきましょう。
むちうちによる腰痛の原因とは?
代表的な症状のひとつに、椎間関節捻挫が挙げられます。
腰骨と腰骨で成り立つ「椎間関節」が外部からの強い衝撃によって捻挫を起こすケースです。
ぎっくり腰も椎間関節捻挫のひとつで、同じような症状が表れます。
むちうちによる椎間関節捻挫の痛みは、時間が経過するとともに酷くなる傾向があります。
その痛みがなかなか緩和されなければ、痛みが慢性化する恐れもあります。
その場合は椎間関節捻挫以外に、循環障害(血液やリンパの流れが悪くなること)も原因の1つと考えられます。
さらに、むちうちによる腰痛の原因には、棘間靭帯・棘上靭帯(きょくかんじんたい・きょくじょうじんたい)の損傷も挙げられます。
棘間靭帯・棘上靭帯の損傷とは、背中の突出した部分にある靭帯が何か大きな衝撃を受け、部分断裂や炎症を起こしてしまうものです。
むちうちによる腰痛は、悪循環が重なると身体のマヒに関わる可能性もあります。したがって、治療はしっかりと行うようにしましょう。
むちうちで腰痛を抱えたらどのような医療機関を受診すべき?
むちうちによる腰痛は、どこで治療をすればよいのでしょうか。
ここでは、受診すべき通院先とそれぞれで受けられる治療・施術内容を詳しく解説していきます。
整形外科を受診する
整形外科では、医師や理学療法士が治療を行います。
MRIやレントゲンなどの検査機器で骨の異常を検査し、必要な場合は理学療法士によるリハビリや医師による手術を行います。
治療をしても痛みが緩和されない場合は、痛み止めや湿布の処方もしてもらうことも可能です。
また、整形外科を受診した際は必ず医師に診断書の作成を依頼しましょう。
診断書は、交通事故と怪我との因果関係を明確にするための大切な書面です。
交通事故にあったら、まず整形外科を受診し診断書の取得をしましょう。
リハビリを受ける
多くの整形外科では、リハビリが受けられます。
ごく軽度のむちうちの場合はリハビリの必要はありませんが、基本的にはリハビリをおすすめします。
具体的に行う内容は、運動療法と物理療法です。運動療法では、改善に必要な筋肉の筋力訓練やストレッチ、関節の可動域訓練などを行います。
一方、物理療法ではホットパックやマイクロウェーブなどを用いる温熱療法、電気で筋肉や神経を刺激する電気療法、首や腰を引っ張る牽引療法などを行います。
牽引療法については、悪化するリスクがあるため、行われないことも多いです。
むちうちのリハビリでは首や腰のリハビリしかしないというイメージが強いですが、その限りではありません。
首の損傷が手や足に影響することがあったり、怪我をした方の年齢によっては、安静期間が長いと足の筋力が落ちて生活に支障をきたしたりします。
そのため、首や腰のリハビリに加えて、足の運動や日常生活動作の訓練を行うこともあります。また、必要に応じて、自宅でできる自主トレーニングの指導も行います。
整骨院や接骨院で施術を受ける
整骨院では、柔道整復師が施術を行います。
柔道整復師は国家資格が必要な職業のひとつで、手技療法での施術を主にしています。
手技療法とは、痛みのある部位や周辺に手で触れ、圧迫を加えたりマッサージしたりすることで、治癒を目指す施術方法です。
手技療法の他にも電気療法や超音波療法などで治癒を促す「物理療法」や運動で身体機能の回復を高める「運動療法」があります。
むちうちは、レントゲンやMRIなどでは異常が見つけられない場合があります。
整形外科だけに通院していても痛みが引かないという場合は、治療時間を増やすために整骨院も併用して通院することを検討するとよいでしょう。
むちうちの治療費を加害者に請求できる?
むちうちの治療をする際、「治療費は誰が負担するの?」と疑問に思われる方も多いのではないでしょうか。
むちうちの治療にかかる費用は、損害賠償として加害者に請求することができます。
損害賠償とは、交通事故によって被害者が受けた様々な損害の埋め合わせを、加害者が行うことです。
被害者が請求できる損害賠償は、治療費だけではありません。被害者が加害者に請求できる損害賠償は、大きく分けて以下の3つに分類できます。
- 積極損害
- 消極損害
- 慰謝料
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
積極損害
積極損害とは、交通事故による怪我を治療するために、出費を余儀なくされた場合に発生する損害です。
積極損害で請求できる代表的なものは、以下の通りです。
- 治療費
- 入院雑費
- 手術費
- 通院交通費
- 付添看護費
- 装具・器具などの購入費 など
消極損害
消極損害とは、交通事故にあったことによって、本来得られるはずであった収入が得られなくなった場合に発生する損害です。
消極損害で請求できるものは、2つ。
- 休業損害
- 逸失利益
休業損害
交通事故で怪我を負うと、治療をするために仕事を休まなければいけなくなるかもしれません。
休業損害では、交通事故の怪我を治療するために仕事を休んだことで、収入が減少してしまった場合の減収分が補われます。
逸失利益
交通事故の怪我が後遺障害になってしまうと、交通事故にあう前よりも労働能力が減少してしまう場合があります。
逸失利益とは、交通事故の怪我が後遺障害になってしまったことで労働能力が減少し、本来得られるはずであった収入が得られなくなった場合の減収分をあらわします。
慰謝料
慰謝料とは、交通事故の被害者が受けた精神的苦痛を、加害者が金銭で補ったものです。
被害者が請求できる慰謝料は、2つ。
- 入通院慰謝料
- 後遺障害慰謝料
入通院慰謝料
入通院慰謝料とは、交通事故にあったことで怪我を負い、入通院を強いられた時に被害者が受けた精神的苦痛を、金銭で補ったものです。
自賠責保険の場合、1日あたり4,300円で計算されます。
後遺障害慰謝料
後遺障害慰謝料とは、交通事故による怪我が後遺障害になってしまったことで、被害者が受けた精神的苦痛を金銭で補ったものです。
後遺障害には1級から14級まで等級がついており、等級に応じて慰謝料の金額が変わります。1級が最も高い金額となり、14級が最も低い金額となります。
後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を申請
むちうちによる腰痛は、しびれやマヒなどの神経に関係のある後遺症が残る場合もあります。その場合は、後遺障害等級認定を行いましょう。
後遺障害等級認定とは?
後遺障害等級認定とは、交通事故が原因で残った後遺症が、後遺障害の等級に該当するか、どの等級に値するかを認定するためのものです。
後遺障害等級認定を受け、等級が認定されれば、後遺障害慰謝料や逸失利益を受け取ることができるからです。
むちうちの場合、12級13号や14級9号の等級に該当することが多いといわれています。
- 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
- 14級9号:局部に神経症状を残すもの
後遺障害等級認定の手続き方法
後遺障害の等級を認定してもらうためには、後遺障害等級認定の申請手続きを行う必要があります。
その手続き方法は、以下の2つ。
- 被害者請求:被害者自身が申請手続きを行う方法。
- 事前認定:相手の保険会社に任せる方法。
事前認定の場合は、上記のように相手の保険会社が後遺障害等級認定の手続きを進めてくれます。しかし、被害者請求は、自分自身で後遺障害等級認定の手続きを進めていかなくてはなりません。
被害者請求における後遺障害等級認定の流れ
被害者請求で後遺障害等級認定を申請した場合、以下のような流れで手続きが行われます。
- 被害者は、手続きに必要な書類を集め、自賠責保険会社に自賠責保険金の請求を行う。
- 自賠責保険会社が、被害者から送られてきた書類の確認を行い、損害保険料率算出機構に送る。
- 損害保険料率算出機構が、自賠責保険会社から送られてきた書類で審査を行い、その結果を自賠責保険会社に報告する。
- 自賠責保険会社は、損害保険料率算出機構が出した結果をもとに、等級にあった賠償金を決める。
- その後、被害者は後遺障害等級認定の結果を通知され、賠償金を受け取る。
腰痛で後遺症が残ったら、後遺障害等級認定を!
むちうちによる腰痛は、早めに整形外科を受診しきちんと治療を行うようにしましょう。
もしも腰痛を放置してしまうと慢性化し、後遺症が残ることがあります。
後遺症が残ってしまった場合は、治療を続けていくうえでの費用に関わってくるため、後遺障害等級に申請するようにしましょう。
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この記事を監修したのは…
理学療法士として、回復期病院で脳血管疾患を中心にリハビリテーションを経験。その後、フリーライターに転向。医療・健康分野をはじめ、地域・観光、転職関連などの幅広いジャンルの執筆を行っている。
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