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捻挫と骨折の見分け方 | 症状や対処法についても解説

監修記事

世良 泰

医師(整形外科他)

事故などで足首を痛めた場合、骨折なのか捻挫なのか判断が難しいことがあります。

捻挫だと思っても実は骨折を伴っている場合もあり、初期の適切な治療が重要です。

そこでこの記事では捻挫と骨折のセルフチェックの方法や症状の違いについて解説していきます。

捻挫・骨折の見分け方

足首を捻った場合、単純な捻挫だと思ってしまいがちですが実は骨折しているということがあります。

骨折が疑われる場合は医療機関を受診し適切な治療が必要となります。

捻挫と骨折を見分ける簡易的な方法としてOttawa ankle rules(オタワの足関節ルール)というものがあります。

これは5つのテストから捻挫なのか骨折なのかを判断する評価方法で、カナダのオタワ市民病院の医療チームがレントゲン検査の必要性の判断基準として公開したものです。

  1. 脛骨下端(内くるぶし)より上方6センチまでの後方の圧痛
  2. 腓骨下端(外くるぶし)より上方6センチまでの後方の圧痛
  3. 第五中足骨基部の圧痛
  4. 舟状骨の圧痛
  5. 患肢で4歩以上荷重ができない

この5つのテストのうち1つでもあてはまるものがあれば骨折を疑い、医療機関でレントゲン検査が必要となります。

レントゲン検査とは

▲レントゲン検査とは

触診による痛みの確認

骨折している場合には、触診による圧痛がみられます。

圧痛とは圧迫刺激を加えたときに生じる痛みのことであり、骨折が疑われる部位を触診しながら圧痛を確認していきます。

骨を覆っている骨膜には知覚神経が豊富にあり、骨折している場合には強い痛みが生じます。

足首の骨折を疑う場合には脛骨下端(内くるぶし)から6㎝上まで、腓骨下端(外くるぶし)から6㎝上まで、第五中足骨基部(小指の骨の付け根)、舟状骨(足裏の内側アーチの最も高い部分)に強い痛みが生じるかを確認していきます。

怪我直後の歩行確認

骨折している場合は一人で歩けないことがほとんどです。

荷重により骨折した部位に刺激が入ることで強い痛みが生じます。そのため、その場で歩けるか歩けないかを確認していきます。

足を引きずるようにしてでも誰かの手を借りずに一人で4歩以上歩行が可能な場合は「歩ける」と判断します。一人で4歩以上歩行できない場合は「歩けない」と判断します。歩けない場合は骨折が疑われます。

現状の歩行確認

怪我直後と同様に現状の歩行の可否を確認していきます。

一人で4歩以上の歩行が可能な場合を「歩ける」、4歩以上歩けない場合を「歩けない」と判断します。

足を引きずっていても一人で歩けている場合は「歩ける」とします。怪我直後と現状で歩けている場合は骨折の可能性は低いと考えます。

また厳密には骨折でも歩いてくる人はいます。これは捻挫の付着部剥離骨折の場合など、荷重で負担があまりかからない場合です。

痛みや歩行に問題がある場合は病院で診断を

触診による痛みの確認で脛骨下端(内くるぶし)から6㎝上まで、腓骨下端(外くるぶし)から6㎝上まで、第五中足骨基部、舟状骨に強い圧痛がみられる場合や一人で4歩以上歩けない場合は骨折の可能性が疑われます。

これらはあくまで簡易的なチェック方法なので、骨折が疑われる場合は整形外科などの病院でレントゲン検査を受けてしっかり診断してもらう必要があります。

関連記事骨折をしたら何科を受診する?診断方法から治療中の過ごし方までを紹介

骨折の症状・特徴

交通事故で足を骨折した人

骨折とは骨が折れた状態のことを指します。骨が折れた状態は大きく2つに分類されます。

骨の連続性が断たれている骨折を「完全骨折」といい、一般的に骨折と呼ばれるものはこの完全骨折を指します。

一部に連続性が残った骨折を「不全骨折」といい、いわゆるひびが入った状態のことを指します。

骨折が起きた場合には骨折部に強い痛みが生じます。痛みの程度は骨折した部位や折れ方によって異なりますが、急激で激しい痛みが特徴的です。

骨折した部位では皮下組織が損傷し内出血や腫れが生じます。また、骨折によっては骨が正常な位置からずれたり歪んだりすることで目視でもわかるほどの変形が生じる場合があります。

骨折の部位によっては神経が圧迫されたり損傷されることでしびれや感覚障害が生じることもあります。骨折部位では軋轢音が確認されることがあります。

骨折部位を圧迫することでバキバキ、ボキボキ、ギシギシ、グズグズといった音が感じられ、その場合は完全骨折が疑われます。

関連記事骨折を早く治す方法とは?治癒を助ける生活習慣や対処法を解説

捻挫の症状・特徴

捻挫とは、関節に力が加わっておこる怪我のうち、骨折や脱臼を除いたもの、つまりX線(レントゲン)で異常がない関節の怪我のことです。

捻挫が起きた場合の症状は足首周囲が腫れ、痛みが生じます。また、靱帯が損傷すると関節周囲の血管も損傷し内出血が生じ腫れてきます。炎症による痛みの発痛物質が作られることで痛みが生じます。

また、足首の捻挫の場合は内側に捻って生じることが多く、足首の外側の靱帯が損傷され、その部位(外くるぶしの前下方)に強い圧痛が生じます。

骨折している場合には歩行が困難ですが、捻挫の場合は荷重することで痛みは生じるものの歩行は可能なことが多いです。

関連記事捻挫は何日で治る?早い完治を目指すための応急処置や治療方法について解説

捻挫・骨折の対処法(RICE処置)

RICE処置 とは

▲応急処置で大切なRICE処置とは

捻挫や骨折の対処法として「RICE処置」があります。RICE処置とは外傷を受けたときの応急処置の基本と言われています。

Rest(安静)・Icing(冷却)・Compression(圧迫)・Elevation(挙上)の4つの処置のそれぞれの頭文字を合わせて「RICE処置」と呼ばれています。

まずはRest(安静)を保つことが重要です。患部を動かすことで損傷した組織がさらに損傷される可能性があります。患部が動かないように固定することで安静を保ちます。

腫れが広がると損傷されていない組織まで2次的に損傷される可能性があるため、Icing(冷却)やCompression(圧迫)Elevation(挙上)することで腫れを最小限に抑えます。

このように早期にRICE処置を行うことで腫れや痛みを抑える効果があります。

しかし、このRICE処置は最近では言われなくなってきており、RICEにP=Protection(患部保護)をつけた「PRICE」、また、「POLICE」「PEACE and LOVE」と発展してきております。ただ、「POLICE」「PEACE and LOVE」については専門的になりますので、家庭でできる処置としてRICE処置を基本として覚えておくのは良いでしょう。

また、RICE処置はあくまで緊急処置であり適切に行わないと圧迫障害などを引き起こす可能性があるため早めに病院へ行くことが重要です。

Rest:安静を保つ

まずは患部を安静に保つことが重要です。患部を動かすことで損傷した組織がさらに損傷したり炎症を強めてしまい悪化する可能性があります。

そのため、運動中であればすぐに運動を中止し副子やテーピングなどで患部を固定します。

Icing:患部を冷却する

組織が損傷すると炎症により患部に腫れが生じます。腫れが広がると二次性の低酸素障害によって損傷していない周りの組織の細胞が壊死してしまう可能性があります。

そのため、患部を氷水で冷却します。冷却することで毛細血管が収縮し、腫れを抑えられます。ビニール袋や氷嚢に氷を入れて患部を冷却します。

患部の感覚が冷たい感じからヒリヒリする感じへと変化し、徐々に患部の感覚が無くなっていきます(目安は15~20分程度)。患部の感覚が無くなったら氷を外します。痛みが再度出てきたらまた冷却します。

上記が基本的なIcingの方法ですが、近年ではIcingのメリットが証明出来ないとしてIcingは行われなくなってきております。

Compression:テーピングなどで圧迫する

腫れを抑えたり血種の形成を抑えるためにテーピングなどで圧迫をします。圧迫することで内出血や組織間に浸出液が侵入することを防ぐことができます。

スポンジやテーピングパッドを腫れてきそうな部位にあて、テーピングや弾性包帯で軽く圧迫固定します。

圧迫が強すぎると圧迫障害を生じ、末梢への血流が阻害されしびれなどを引き起こす場合があります。そのため、ときどき指先の爪や皮膚などをつまんで血色の戻りを確認します。

Elevation:患部を心臓より高い位置に挙げる

腫れを抑えるためにIcing(冷却)とCompression(圧迫)とともに患部を心臓より高い位置に保つようにします。

心臓より患部が高いことによって患部の血液が心臓に向かって流れ、内出血による腫れを抑えることができます。

仰向けに寝た状態でイスの上に足を乗せたり、座布団やクッション、毛布などで高さを作ってその上に足を乗せたりします。

関連記事RICE処置の具体的な方法や目的・効果|間違った処置を防ぐために正しく覚えよう

骨折の受診で不安があるなら相談を

今回は捻挫と骨折のセルフチェックの方法や応急処置の方法について解説してきました。

捻挫と骨折の判断は難しいことがあり、捻挫だと思っても実は骨折している可能性があります。

本記事はあくまでセルフチェックや応急処置の基本についての解説ですので、骨折は早めに医療機関を受診しレントゲン検査や医師の診断を受けるようにしましょう。

この記事を監修したのは…

慶應義塾大学医学部卒。初期研修後、市中病院にて内科、整形外科の診療や地域の運動療法指導などを行う。スポーツ医学の臨床、教育、研究を行いながら、プロスポーツや高校大学、社会人チームのチームドクターおよび競技団体の医事委員として活動。運動やスポーツ医学を通じて、老若男女多くの人々が健康で豊かな生活が送れるように、診療だけでなくスポーツ医学に関するコンサルティングや施設の医療体制整備など幅広く活動している。「健康を通じて人々の夢や日常を応援すること」をミッションに2024年6月に池尻大橋せらクリニックを開院。

池尻大橋せらクリニックHP
https://sera-clinic.com/

日本整形外科学会専門医
日本内科学会認定内科医
公衆衛生学修士
International Olympic Committee Diploma in Sports Medicine
日本スポーツ協会公認スポーツドクター
日本医師会認定健康スポーツ医
日本整形外科学会認定スポーツ医
日本障がい者スポーツ協会公認障がい者スポーツ医
Performance Enhancement Specialist (National Academy of Sports Medicine)
Corrective Exercise Specialist (National Academy of Sports Medicine)
日本医師会認定産業医
ロコモアドバイスドクター

TWOLAPSチームドクター(陸上)
LADORĒメディカルアドバイザー
日本陸上連盟医事委員

AuB株式会社 顧問ドクター
株式会社富士急ハイランド 医療顧問
株式会社リハサク メディカルアドバイザー

この記事の執筆者

理学療法士 / 河野 裕也
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

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