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不全麻痺とは?症状や種類、リハビリもわかりやすく解説

監修記事

河野 裕也

理学療法士

不全麻痺とは「該当箇所にしびれは残るが、ある程度動かすことはできる」のような状態のことをいいます。該当箇所の感覚や運動機能の一部が残る麻痺を不全麻痺、運動機能も感覚も全て失われた麻痺を完全麻痺といいます。

また、不全麻痺は交通事故で起こる可能性のある障害のひとつです。リハビリなどである程度改善する可能性のあるものですが、そのまま後遺症として残存してしまうこともあります。

今回は、以下のような内容をわかりやすく解説します。

  • 不全麻痺とは
  • 不全麻痺と完全麻痺の違い
  • 不全麻痺の原因・症状・種類
  • 交通事故による不全麻痺のリハビリ・経過

不全麻痺について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

不全麻痺とは

不全麻痺とは

不全麻痺とは、運動機能が完全には失われず、一部の機能が残存した状態を指します。

「不全麻痺と完全麻痺の違い」でも解説しますが、不全麻痺の場合は該当箇所の感覚や運動機能の一部は残ります。重症度によって感じ方に違いはあるものの「該当箇所にしびれは残るが、ある程度動かすことはできる」などのような状態を「不全麻痺」と呼んでいます。

交通事故で起こる不全麻痺は、

  • 頭部
  • 手足

などを対象とすることが多いといえます。

また、一か所だけではなく、複数個所に不全麻痺が生じる可能性もあります。

なお不全麻痺は、リハビリなどによって改善することもあります。

不全麻痺と完全麻痺の違い

上でも少し触れましたが、不全麻痺と完全麻痺は同じ「麻痺」とついてはいるものの、症状は大きく異なります。

不全麻痺の場合は運動機能や感覚の一部が残りますが、完全麻痺の場合は運動機能も感覚もすべて失われます。

つまり、完全麻痺の場合は患部に触れても何も感じなくなりますし、該当箇所の筋肉を動かすこともできません

たとえば下半身に完全麻痺が起きた場合は、肛門括約筋に力を入れることもできなくなりますが、不全麻痺の場合はこの機能が残ります。

不全麻痺は交通事故が原因で発症することがある

交通事故で不全麻痺になることがある

交通事故で起きるけがの代表例といえば「むちうち 」ですが、むちうち以外のけがが起きることもあります。そのうちのひとつが「不全麻痺」です。

不全麻痺は「運動機能などの一部分に、麻痺が生じること」をいいます。完全麻痺とは異なり、不全麻痺の場合は一部の機能や感覚が残る状態をいいます。

なお不全麻痺のすべてが交通事故に起因するものではなく、脳卒中などに代表される脳血管疾患によって生じることもあります。

また、原因や症状や部位によって、改善するか否か、完治するか否かが変わってきます。

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不全麻痺の症状

不全麻痺の症状

不全麻痺に限らず、麻痺は脳・脊髄~末梢神経までのどこかの部位で障害が生じた場合に生じるものです。

なお、脊髄損傷の重症度を評価する臨床的なツールに「フランケル分類」があります。

症状はフランケル分類で評価

フランケル分類は、A~Eの5つに分けられています。

段階 状態
A 損傷レベル以下の運動・感覚機能の完全麻痺
B 損傷レベル以下の運動機能の完全麻痺があるが、感覚機能がある程度残存
C 損傷レベル以下の運動機能が残存しているが、実用的ではない
D 損傷レベル以下に実用的な筋力が残っている
E 神経学的脱落なし。異常反射はあってもよい

アルファベットが若いほどに症状が重い、と考えておくとよいでしょう。

なおここでは「A~E」として分けていますが、実際には「フランケルA」「フランケルC」などの呼び方で呼ばれます。

フランケルCの「実用的ではない」とは例えば立つことはできるが10メートルも歩けない状態であったり、フランケルDの「実用的な筋力」とは排泄動作や入浴動作などの日常生活動作が可能であることなどを指します。フランケル分類Eの「神経学的脱落なし」とは運動・感覚機能ともに正常で、膀胱・直腸障害もない状態のことです。

不全麻痺の種類

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不全麻痺の種類は、いくつかあります。

  • 片麻痺
  • 交叉性麻痺
  • 四肢麻痺
  • 対麻痺
  • 単麻痺

それぞれ見ていきましょう。

片麻痺

片麻痺とは、その名前の通り、体の左右どちらかだけに麻痺の症状が起きることをいいます。

この場合、麻痺した側の四肢(左腕と左足もしくは右腕と右足)はもちろん、口を含む顔部分にも麻痺が生じます。そのため、「食べる」「しゃべる」といった口腔機能にも障害が生じるのが特徴です。

交叉性麻痺

「交叉性麻痺」は「交差性麻痺」と書かれることもあります。片麻痺が「右手と右足と右の顔」といったように左右どちらかの片側に麻痺が生じるのに対して、交叉性麻痺は「右手と右足と左の顔」などのように、「片側の顔と、それとは逆の側の身体」に麻痺が生じる状態を指します。

ちなみにこの交叉性麻痺は、脳の橋(きょう)と呼ばれる部分の損傷によって生じますが、この橋は運動以外にも呼吸機能などにも関わる部位であるため、麻痺以外にもさまざまな症状を生じさせる可能性があります。

四肢麻痺

「右腕と右足、左腕と左足」の4つの部位に麻痺が生じることをいいます。交通事故によって首にけがを負った際によく見られる症状であり、交通事故の後遺症としてよく取り上げられる障害でもあります。

なお「四肢麻痺」と言うと手足にだけ麻痺が生じるもののように思われがちですが、誤嚥や肺炎のリスクも高まります。これは、胴体の調整自体が難しくなることによるものです。

対麻痺

対麻痺とは、「両方の下肢(足)に起こる麻痺」のことをいいます。

交通事故が起きたとき、背骨の上側に損傷が起きた場合は上で挙げた四肢麻痺に、それよりも下側に損傷が起きた場合には対麻痺になりやすいと考えられています(ここでは主に「交通事故」を取り上げていますが、脳の障害によって引き起こされることもあります)。

なお対麻痺は足に麻痺が生じますが、排尿障害などを伴うことも多く、性機能に障害が生じることもあります。

単麻痺

上記では複数個所に生じる麻痺について取り上げてきましたが、「単麻痺」と呼ばれる症状もあります。

これは、「右腕あるいは左腕、もしくは右足あるいは左足」などのように、「どこか特定の部位の一か所」にのみ麻痺の症状が生じる状態をいいます。

このように、一口に「麻痺」といっても、「どこに生じるか」「麻痺以外に生じる症状はどのようなものか」には違いが見られます。

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交通事故の不全麻痺はリハビリが大切

交通事故の不全麻痺はリハビリが大切

交通事故によって不全麻痺状態に陥った場合は、受傷後早期からリハビリをしっかり行うことが重要です。不全麻痺は適切な治療やリハビリを続けることによって、改善する可能性があるからです。

可動域訓練

可動域訓練は「ROM訓練」とも呼ばれます。不全麻痺に陥った場合、拘縮(けがをしたことが原因で該当部位を動かす機会が減り、その結果として関節が硬くなって動かしにくくなってしまうこと)が起こりやすくなります。

このような拘縮を避けるために行われるのが、関節を動かすための「可動域訓練」です。

可動域訓練は、受傷後早期の段階から取り組むことになります。これによって、日常生活に支障が出ることを防げます。

筋力トレーニング

不全麻痺は、一部の感覚や運動機能が残っています。また他の「動かせる筋肉」もあるため、この「動かせる筋肉」を最大限使っていこうという目的で行われるのが「筋力トレーニング」です。

「筋力トレーニング」というと、足や腕などの筋肉を鍛える方法が思い浮かぶことが多いかと思われますが、実際には「呼吸するための筋肉」などを鍛える方法もあります。

歩行訓練

歩行訓練は、単純に「筋肉を鍛えるためだけのもの」ではありません。歩行訓練を行うことで、歩行の力を調整する神経ネットワークも活発にできると考えられています。

そのため、交通事故によって麻痺が生じた場合も、歩行訓練を行うことが重要だと考えられています。

特に、けがをした初期から歩行訓練を行うことによって、状況が改善しやすくなると考えられています。

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交通事故による不全麻痺の経過

交通事故による不全麻痺は脳や脊髄などの中枢神経によるものか、脊髄から先の末梢神経によるものかで改善していく経過が異なります。中枢神経による不全麻痺では一般的に受傷後6カ月程度までは回復する見込みがあると言われています。

しかし、この回復は損傷した神経組織自体が再生するのではなく機能が停止していた神経組織がリハビリなどによる刺激によって活動を再開することで機能が回復していくことになります。そのため、ある程度の回復が見込めても後遺症として麻痺が残存してしまう場合があります。

手足の末梢神経による不全麻痺の場合には完治する可能性があります。

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交通事故の不全麻痺は整形外科を受診

現在はQOL(クオリティオブライフ、人生の質)の考え方が広く広まり、「身体症状の改善」だけが唯一絶対の目標とされることはなくなりました。

しかしリハビリによって身体機能の回復を目指すことは、QOLを高めることに繋がります。

そしてこのような適切なリハビリをするためには、不全麻痺などの症状を理解することが重要です。

そして、事故にあった際はまずは「病院」の整形外科などに受診し、正確で正しい診断を受けることが何よりも重要です。

参考
1)一般社団法人日本脊髄外科学会:脊髄損傷

この記事を監修したのは…

国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

この記事の執筆者

理学療法士 / 河野 裕也
国家資格である理学療法士として、約10年間整形外科クリニックで一般の患者様からスポーツ選手の身体のケアに携わり、その後理学療法士の養成校の教員として身体の仕組み、治療技術などについて学生に講義を行っています。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科にて修士取得。

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